LAST TORTURE 〜魔界の拷問吏と捕虜勇者〜

3333(トリささみ)

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拷問14日目 〜最後の時〜

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「…よう。」

地下牢の最奥の独房。
リーモンはルタの前に現れた。

「…魔王は?」
「今日は拷問はナシだ。
最終日前日にジタバタしたって意味ないだろうって、陛下には言ってきといた。」
「…なら、何しに来た?」
「話しに来た。」

リーモンはその場でドカッと胡座をかく。

「いよいよ明日だな、調子はどうだ?」
「…良いわけねえ。」
「だろうな。」
「……」
「……」
「「……」」

暫く沈黙が続いた後、ルタが口を開く。

「俺が此処に捕まる前、どんな風だったか聞いてきたな。」
「ああ。」
「多分アンタが推察している通りだ。
お袋が死んで、狂ったように伝説の勇者としての責務に執着する親父と…
優秀すぎるくらい優秀なのに努力家で、尚且つ他人にも厳しい兄貴の二人と暮らしていた。」
「……」

リーモンは黙って話に聞き入る。

「住んでた村では花形みたいに持て囃されててな。
伝説の勇者とその息子たちが住んでいるなんて、この世にふたつとないステータスだ。
……だからこそ辛かった。
親父と兄貴からは、魔物にやられて身も心も弱っていたのを『それでも伝説の勇者の息子か』と叱り飛ばされて。
当時の俺では到底倒せない筈だった魔獣を倒せても『俺がお前くらいの年頃にはもっと強い魔獣を倒せてた』って説教されて。
近所の人たちにも『さすが伝説の勇者の息子』だの『父と兄を見習え』だの言われ続けてきた。
……誰も俺のことを、ひとりの人間として見てくれなかった。」
「……」
「アンタ、前に言ったな。
『伝説の勇者の息子でも民衆の期待の星でもない、ただひとりの男としての新しい人生は約束できる』って。
具体的に何してくれるんだ?」
「……」

リーモンはあるものを取り出した。
特殊な魔石と呪印が施された首輪だ。

「あるスジに頼んで作らせた、主と奴隷の絆を絶対のものとする特注の首輪だ。
この首輪にかけて、俺はお前の生涯の自由と安寧を誓う。
贅沢はさせられねえし、お前が依存しきれるぐらいの頼り甲斐は無い。
だが俺はお前を、ひとりの人間の男…ルタとして愛する。
お前が俺のために何かしてくれたときは『ありがとう』って感謝して。
お前が何か凄いことや良いことをしたときは『よくやった』って褒めて。
お前がどうしても自分に自信を持てなくなったときは、俺が代わりにお前の良いところを見つける。
そんな当たり前の関係になりたいんだ。」
「…それが当たり前の関係?」
「ああ、少なくとも俺はそう思ってる。」

ルタがハッと微笑む。

「そんなの、主と奴隷じゃねえだろ。」
「お前や他の奴らには違うだろうが、俺にとってはそれが主と奴隷の当たり前の関係だ。
奴隷が主に全てを捧げ、主は奴隷に望むものを捧げる。
…お前はどうなんだ?
もし俺以外の全てから解放されたら、お前は何がしたいんだ?」
「……………」

ルタは熟考の後、呟く。

「アンタとずっと一緒にいたい。
アンタに甘えたい、褒められたい、愛されたい、セックスしたい。
……楽しいこと、幸せな気分になれること、気持ちいいこと、たくさんしたい。」
「ああ、叶えてやる。全部な。」

リーモンは首輪を手に立ち上がる。

「あんまり単独で長いこと居座ってたら、陛下からお叱りを受けかねねえ。
今日はこのくらいにしておく。
またな……いや、じゃあな。」
「……ああ。」

名残惜しさを胸に、リーモンは自室へと帰り明日を待った。
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