LAST TORTURE 〜魔界の拷問吏と捕虜勇者〜

3333(トリささみ)

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拷問12日目 〜予期せぬ休息〜

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「なんだ、これは!?一体どういうことだ!!」

朝の地下牢。
ルタを拘束するためにひとり独房に入った魔王は、尋常じゃない声色で叫ぶ。

「陛下、微力ながらわたくしに出来ることはございますか?」

リーモンは独房の外で、何が起きたかも分からないまま、努めて冷静に声をかける。

「…入れ。」

魔王の許可のもと独房に入ると、リーモンは目を見開いた。

「ルタ!!?」

昨夜一頻り可愛がって帰らせた筈の彼が、ボロ布のように倒れていた。

「かなりの重傷だ。
これでは今日の拷問は不可能だろう。」
「…左様で御座いますか。」
「いま治療班を呼ぶ。自室に貴様は帰っていろ。」
「畏まりました。」

リーモンは不安が残るものの、ルタをしもべたちに任せて自室に引き返した。

「…クソがっ!!!」

意気阻喪と苛立ちで、枕を壁に投げつける。
犯人は分からないが、動機は分かりきっている。

(……俺のせいだ。
俺がいつまで経っても、アイツを自白させられねえから。
焦れた一部の連中が、勝手に独房に入ってアイツをリンチしたんだ。)

周囲からの評価を改めて認識すると同時に、自分の無力さに苛まれる。

(悔やんでいても仕方ねえ。
俺は俺で今やれることをやろう。)

リーモンは立ち上がり、時間を置いて魔王に会いに向かった。

「失礼致します。」
「む、貴様は…」
「ルタ…伝説の勇者の息子は、どのような様子でしょうか。」
「案ずるな。命に別状はない。
ただ失血量が多いから、やはり今日の拷問は出来ん。」
「……」

リーモンは改めて跪き畏まる。

「どうか彼奴に会う許可を頂けませぬか?」
「何故だ?」
「今回の問題が起こったのは、すべてわたくしの不徳の致すところでございます。
今この場でお詫び申し上げるとともに、彼奴にも挽回のチャンスを頂きたいのです。」
「………構わん。好きにするがいい。
しもべどもには申しつけておこう。」
「有難う御座います。」

許可を貰えたところで、リーモンは早速彼の元へと走る。

「ルタッ!!!」

医務室の扉を開け、ベッドの上で硬く瞳を閉ざすルタを見つける。

「ルタ…」
「んっ…」

リーモンがルタの手を両手で包み込むと、彼は呼び寄せられたかのように目を覚ます。

「ルタ!」

リーモンはルタを抱きしめる。

「何も出来ずにごめんな。怖かったな。辛かったな。」

ルタはきつく抱き締めるリーモンの背を撫でる。

「大したことねえよ。
元はと言えば俺が一族の居所を吐かねえのが原因だし。」
「お前を拷問するのは俺だ。
他の連中に手出しはさせねえ。」
「…はは。アンタらしいな。」

ルタは抱擁に身を委ねる。

「………決めた。」
「ん?どうした?」

ルタが腕の中でボソリと呟いたのを、リーモンは聞き逃さなかった。

「約束する。
アンタの拷問の終わり…15日目に、一族の居所を自白する。」

リーモンは驚愕し、ルタの顔を覗く。

「いいのか?」
「やる。そう決めた。
てかそのために今まで拷問してきたんだろ?」
「そりゃそうだが…」

リーモンは困惑したが、やがてフッと笑って再びルタを抱きしめる。

「分かった。俺が生きるのも死ぬのも、お前の自白次第なんだ。
すべてお前に任せる。」
「ああ…ありがとうな。」

ふと周囲の視線に気付き、ルタがそわそわとしだす。

「なあ…もうやめないか?
周りの連中が俺らを見てるぞ。」
「やめねえ。見てえ奴らには見させてやればいい。
それよりも俺はお前を感じていたい。」
「まったく、フフ…」

ルタは呆れ気味に笑い、リーモンの気が済むまで付き合った。
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