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拷問10日目 〜休息日〜
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「すみませーん。いらっしゃいますかー?」
魔王城からかなり離れたところにある山荘。
リーモンは扉をノックして、主の所在を確かめる。
「待っていたぞ。」
主は扉越しに返事をした。
「入るが良い。鍵はかけていない。」
「はい。失礼します。」
リーモンは扉を開けた瞬間、面食らう。
部屋には大量の鞭や拘束具やその他のグッズがビッシリと揃えられており、さらには三角木馬などの大型な道具も備えられている。
「どうした?まさかこのくらいで怖気付いた訳ではあるまい。」
「いやいや、俺ひとりにコレは気合い入れすぎですよ……師匠。」
リーモンの師匠サードンは、以前も着ていた民族衣装を勢いよく脱ぐ。
するとボンデージと荒縄を纏った屈強な肉体が露になった。
「やっぱり…今でも着てたんですね、それ。」
「無論。真のサディストとは、マゾヒストの真意を理解する者。
水と油ではない、サディズムとマゾヒズムは表裏一体なのだ。」
サードンは鞭を床で打ち鳴らす。
「さて、何を望む?」
「……」
リーモンは暫く考えた後、口を開いた。
「俺は今、自分の無力さを痛感してます。
伝説の勇者の息子を拷問して今日で10日も経つのですが、いまだに彼奴を自白させられずにいます。
だから師匠の責めを通して、真のサディズムについて再び学びたいんです。」
「……よかろう。」
サードンは鞭を引く。
「言うまでもないが私の責めは厳しい。覚悟はいいか?」
「はい!」
こうしてサードンとリーモンの鍛錬が始まった。
ーーーーービシイイイィィィンッ!!!!
「うがああぁぁぁ!!!」
「ヒィヒィ喚くな、見苦しい!!
この程度の鞭で音を上げているようでは、真のサディズムなど理解出来んぞ!!」
サードンの鞭が、リーモンの肉体を強く打つ。
リーモンは脊椎にかけて電撃が走り、全身に痺れが回る。
比べる物が無いほどに痛く、堪えていても悲鳴を上げてしまうのだが、同時にハードなトレーニングを終えた後のような爽快感もある。
鞭ひとつに置いても、サードンの腕は他のプロたちとは圧倒的に違う。
これが真のサディストというものなのだろうか?
ーーーーーバシイイイイイィィィィィンッ!!!!
「ぎゃああああぁぁぁ!!!」
「ええい!いい加減にしろ、この軟弱者が!
私と袂を分かってから怠けていたのか!?」
「そ、そうです!!リーモンはお師匠様がいないと鍛錬も出来ない軟弱者です!
お師匠様、この軟弱者をどうかお叱りください!!」
「…そうだな…」
サードンは鞭を振るう手を止めず、考える。
出来る限りリーモンが傷つくような、それでいて致命的でない範疇の罵倒を模索しているのだろう。
「この軟弱者、能無しが!!
貴様は社会の底辺を這いずる蛆虫だ!!」
「ぐぅっ…そうです。俺は何の取り柄もない、救いようのない負け犬です。」
「アッハッハ!!これでもくらえ、負け犬!!」
ーーーーーバッチィィイィィィイイイィンッ!!!!
「ひぎいいいぃぃぃぃいいい!!!!」
鍛錬はそれからも続き、気付けば窓の外が暗くなっていた。
「む…もうこんな時間か。」
サードンは嗜虐の手を止めた。
「ぐぅ、や、やっと終わった…」
リーモンは這いつくばったまま、震えながら窓を見上げる。
「…して、成果はあったか?
真のサディズムについて理解するという本願に。」
「……」
リーモンはやおら床に座り、項垂れる。
「付き合ってもらっておいて申し訳ないんですが…俺はまだまだ真のサディズムについて理解できません。
ただ覚悟はつきました。」
「やれるのだな?」
「はい。」
「ふむ。よかろう。
明日の拷問に障る、早く帰ることだ。」
「はい。ありがとうございました。」
リーモンは帰りの馬車に揺られ、自身を見直す。
体力はもはや気絶寸前だが、肉体には怪我も痕も残っていない。
あれだけ長い間いじめられても後には何も残らないと言うのは、やや寂しい気もする。
だがアザだらけ鬱血まみれの体で捕虜に会えば、拷問吏としての面目が丸潰れだ。
そこをサードンは配慮してくれたのだろう。
(疲労も寝れば全快するだろう。そんな感覚がする。)
師匠からの励ましを胸に、リーモンは帰路に就いた。
魔王城からかなり離れたところにある山荘。
リーモンは扉をノックして、主の所在を確かめる。
「待っていたぞ。」
主は扉越しに返事をした。
「入るが良い。鍵はかけていない。」
「はい。失礼します。」
リーモンは扉を開けた瞬間、面食らう。
部屋には大量の鞭や拘束具やその他のグッズがビッシリと揃えられており、さらには三角木馬などの大型な道具も備えられている。
「どうした?まさかこのくらいで怖気付いた訳ではあるまい。」
「いやいや、俺ひとりにコレは気合い入れすぎですよ……師匠。」
リーモンの師匠サードンは、以前も着ていた民族衣装を勢いよく脱ぐ。
するとボンデージと荒縄を纏った屈強な肉体が露になった。
「やっぱり…今でも着てたんですね、それ。」
「無論。真のサディストとは、マゾヒストの真意を理解する者。
水と油ではない、サディズムとマゾヒズムは表裏一体なのだ。」
サードンは鞭を床で打ち鳴らす。
「さて、何を望む?」
「……」
リーモンは暫く考えた後、口を開いた。
「俺は今、自分の無力さを痛感してます。
伝説の勇者の息子を拷問して今日で10日も経つのですが、いまだに彼奴を自白させられずにいます。
だから師匠の責めを通して、真のサディズムについて再び学びたいんです。」
「……よかろう。」
サードンは鞭を引く。
「言うまでもないが私の責めは厳しい。覚悟はいいか?」
「はい!」
こうしてサードンとリーモンの鍛錬が始まった。
ーーーーービシイイイィィィンッ!!!!
「うがああぁぁぁ!!!」
「ヒィヒィ喚くな、見苦しい!!
この程度の鞭で音を上げているようでは、真のサディズムなど理解出来んぞ!!」
サードンの鞭が、リーモンの肉体を強く打つ。
リーモンは脊椎にかけて電撃が走り、全身に痺れが回る。
比べる物が無いほどに痛く、堪えていても悲鳴を上げてしまうのだが、同時にハードなトレーニングを終えた後のような爽快感もある。
鞭ひとつに置いても、サードンの腕は他のプロたちとは圧倒的に違う。
これが真のサディストというものなのだろうか?
ーーーーーバシイイイイイィィィィィンッ!!!!
「ぎゃああああぁぁぁ!!!」
「ええい!いい加減にしろ、この軟弱者が!
私と袂を分かってから怠けていたのか!?」
「そ、そうです!!リーモンはお師匠様がいないと鍛錬も出来ない軟弱者です!
お師匠様、この軟弱者をどうかお叱りください!!」
「…そうだな…」
サードンは鞭を振るう手を止めず、考える。
出来る限りリーモンが傷つくような、それでいて致命的でない範疇の罵倒を模索しているのだろう。
「この軟弱者、能無しが!!
貴様は社会の底辺を這いずる蛆虫だ!!」
「ぐぅっ…そうです。俺は何の取り柄もない、救いようのない負け犬です。」
「アッハッハ!!これでもくらえ、負け犬!!」
ーーーーーバッチィィイィィィイイイィンッ!!!!
「ひぎいいいぃぃぃぃいいい!!!!」
鍛錬はそれからも続き、気付けば窓の外が暗くなっていた。
「む…もうこんな時間か。」
サードンは嗜虐の手を止めた。
「ぐぅ、や、やっと終わった…」
リーモンは這いつくばったまま、震えながら窓を見上げる。
「…して、成果はあったか?
真のサディズムについて理解するという本願に。」
「……」
リーモンはやおら床に座り、項垂れる。
「付き合ってもらっておいて申し訳ないんですが…俺はまだまだ真のサディズムについて理解できません。
ただ覚悟はつきました。」
「やれるのだな?」
「はい。」
「ふむ。よかろう。
明日の拷問に障る、早く帰ることだ。」
「はい。ありがとうございました。」
リーモンは帰りの馬車に揺られ、自身を見直す。
体力はもはや気絶寸前だが、肉体には怪我も痕も残っていない。
あれだけ長い間いじめられても後には何も残らないと言うのは、やや寂しい気もする。
だがアザだらけ鬱血まみれの体で捕虜に会えば、拷問吏としての面目が丸潰れだ。
そこをサードンは配慮してくれたのだろう。
(疲労も寝れば全快するだろう。そんな感覚がする。)
師匠からの励ましを胸に、リーモンは帰路に就いた。
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