LAST TORTURE 〜魔界の拷問吏と捕虜勇者〜

3333(トリささみ)

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拷問6日目 〜夜時間〜

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「報告は以上で御座います。」
「うむ。」

リーモンの報告に、魔王は軽く頷く。

「何か要望はあるか?」
「はい。明日の拷問に使いたいものがあるのですが…」
「何だ?」
「わたくしの知人のひとりに、特殊な拷問器具を備えている男がおりまして。
その者の元へ彼奴を連行したいのです。」

魔王は目を丸くしたが、リーモンを信じて首を縦に振る。

「良かろう。我も同行しよう。」
「有難う御座います。」
「うむ。用はそれだけか?ならば解散としよう。」

魔王と別れ、リーモンは件の男と遠隔魔法で連絡を取る。

「リーモンじゃん。久しぶり。」
「おう、俺だ。ちょっといいか?」

リーモンは早々に用件を話す。

「明日の朝、お前の力を借りたい。
報酬は30万でいいか?」
「いや困るよ。どんな相手に、どうして欲しいか、具体的に言ってくれないと。」
「おおっと、そうだった。すまねえ。」

リーモンは一拍置いて、告げる。

「いま魔王陛下からの依頼を受けてるんだ。
地下牢に幽閉した伝説の勇者の息子の拷問。」
「ええ?とんだ一大任務じゃん。」
「ああ。それでな、ソイツの…」

リーモンは具体的な拷問内容を話す。

「…なるほどー。君らしいやり方だね。」
「ああ。引き受けてくれるか?」
「いいよ。」

男はアッサリ承諾した。

「いきなりこんな依頼、悪いな。
じゃあ、また明日の朝。」
「ノープロブレム。
せっかく久々の仕事だからね。
それにぶっちゃけると興味津々なんだ。
伝説の勇者の息子がどんなものか。」

リーモンはニカッと笑って親指を立てる。

「おうよ!楽しみにしてろ。
たくさんの愛玩奴隷を見てきたこの俺様が、太鼓判を押すくらいイイ男だからな。」
「あははは!うん。期待してるよ。」

男は笑って親指を突き返した。

「それじゃあ僕は今から準備しとくから。」
「おうよ。しっかり頼むぜ。」
「うん。それじゃあね。」

通信を消した。

「さて、と…明日の拷問はこれで問題ないな。」

やることを済ませたリーモンは、新たな情報を収集するべく酒場へ赴いた。

(俺は基本この城から出られねえから、外でバリバリ活躍してる奴らの話は貴重だ。)

酒場にはひとりの酔っぱらいがいる。
リーモンは葡萄酒を注文した。

「ふひひひひィ~……ヒック。」
「おう兄ちゃん、随分とゴキゲンじゃねえか。」
「本当にそう見えるかァ? 
此処へはヤケ酒に来てんだよ。」

ひとりで飲んでいた酔っぱらいは、ジョッキを叩きつける。

「そりゃすまねえ。何かあったのか?」
「何かも何も。ウチの上司だった幹部が、勇者のクソ野郎にやられちまったんだよ。」
「…は?まさかその勇者、ユタとかいう名前じゃねえだろうな?」
「名前なんか知らねえよ。
ただウチのアジトに殴り込みに来て『ルタは何処だ』だの『弟を返せ』だの喚いてたな。
言ってることは意味不明だが、強さも出鱈目でな。
俺は命からがら逃げてきたよ。」
「……」

リーモンは途方に暮れたように停止する。

「んで、魔王様の采配で他の幹部の部下になったんだが…
上司を見捨てて逃げた卑怯者のレッテルを貼られて、居場所がねえんだわ。」
「ああ、それはしんどいな。
まあその幹部だっていつまで持つか分かんねえんだし、悩んでるだけ損だろ。」
「…ああ…」

酔っぱらいは腕を組み、背凭れに凭れかかって椅子を傾ける。

「この最近で幹部、めっきり減っちまったなあ…
炎のメラメーラに水のアクアスフィード。
風のヒュルリーに雷のピシャーン、土のアース。
この5人さえいれば俺たち魔王軍は怖いモノなんか無いって、みんな喜び勇んでたのになあ…」
「ええと、誰が誰に倒されたんだっけか?」

酔っぱらいは上を宙に見て、思い起こす。

「ええと…まず最初は…
幹部の中でも最弱だった土のアースが、地下牢に幽閉された伝説の勇者の息子に、やられたんだっけな。
それから幹部の中で最強だった炎のメラメーラがやられて。
その後ウチのボスだった雷のピシャーンが、あのクソ勇者に倒されて。
んで俺が今所属してるのは、水のアクアスフィードんとこだ。」
「…あと、ふたり。たったのふたり。」

リーモンが意気消沈しているのを見て、流石の酔っぱらいも空気を読んだのだろう。
席から立ち上がった。

「…帰るわ。なんか酔いが覚めちまった。」
「ああ。じゃあな。」

ひとりになったリーモンは気まずい沈黙のなか葡萄酒を飲み、帰路に就いた。
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