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拷問6日目 〜昼休憩〜
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「い~い湯だろ?ルタ。」
魔王城の大浴場。
四肢を失ったルタにかけ湯をさせながら、リーモンは鼻歌を歌う。
「……なあ。」
浴場に連行される間も沈黙を保っていたルタが、ふとリーモンに話しかける。
「なんだ?」
「アンタ、本当に拷問吏なのか?」
「当たり前だろ。何が言いたい?」
「……」
ルタは再び黙る。
リーモンは『何が言いたい』と聞いたが、彼の心中は概ね理解できる。
「言ったろ?俺はお前が今まで相手してきた拷問吏どもとは違う。
質問に答えてやったんだ、コッチの質問にも答えてもらうぞ。」
「何だ?」
リーモンは頭の中で聞きたいことと順番を軽くまとめてから、第一の質問に入る。
「なんでそんなに一族の連中を庇う?」
「……お前、家族いないのか?」
「いねえよ。少なくともひとりで魔王陛下を討伐しようなんて、無謀な行為に走らせるほど追い詰めるような家族は。」
「……」
ルタは黙りこくる。
垂れ下がった頭からは、その表情は読み取れない。
「…どこまで知ってる?」
「お前の母親が運悪く死んで、伝説の勇者の父親と、最強の幹部を倒したエリートの兄がいることだけだ。」
「……」
「なあ、ルタ。」
リーモンは背後から抱きしめる形で、ルタを我が身に寄せる。
「ここらでちょっと変わらねえか?」
「…何が言いたい。」
「お前は伝説の勇者の息子として生まれてきたんだから、魔王陛下を倒さなければいけない。
親父と兄貴に、そういう風に教えられてきたんじゃねえのか?」
「……」
ルタは沈黙するが、反論が一切ないことから、全てリーモンの推察通りだと察せられる。
「お前は生まれてきた時点でひとりの人間だ。従う義務なんざねえ。
親父や兄貴の言うことにも、下界の人間どもの勝手な期待にもな。」
「っ……テメエに何が分かる!!」
ルタは首や胴体を振り乱して暴れる。
「がああぁっ!!!!」
しかしその直後、悲鳴を上げて倒れた。
「ルタッ!!」
リーモンはルタを抱え直して顔を上げさせる。
意識は失ってなかったが、それよりも…
「ルタ、お前……泣いてるのか?」
「……」
ルタは秘密を暴かれたかのように、恥も外聞もなく呆然とリーモンを見つめる。
その裸の瞳のなんと美しいことか。
「…クククッ。」
リーモンは思わず笑みを浮かべ、ルタの涙を舌で掬い取る。
「っ!……」
ルタは一瞬、小動物のように身を竦めたが、すぐに警戒を解いた。
「そうだ…怯えることはない。
俺はお前に何も望まない。
ありのままのお前を愛している。」
「……」
リーモンはルタをその腕に閉じ込める。
「さっきのは陛下が四肢を外す際につけた魔法の効果だろう。
痛くなかったか?」
「…電撃でも食らったかのように痺れたが、お前は何ともないんだな。」
「そうだな。魔法だからな。」
それからふたりは身を清め、安らかな入浴を楽しんだ。
魔王城の大浴場。
四肢を失ったルタにかけ湯をさせながら、リーモンは鼻歌を歌う。
「……なあ。」
浴場に連行される間も沈黙を保っていたルタが、ふとリーモンに話しかける。
「なんだ?」
「アンタ、本当に拷問吏なのか?」
「当たり前だろ。何が言いたい?」
「……」
ルタは再び黙る。
リーモンは『何が言いたい』と聞いたが、彼の心中は概ね理解できる。
「言ったろ?俺はお前が今まで相手してきた拷問吏どもとは違う。
質問に答えてやったんだ、コッチの質問にも答えてもらうぞ。」
「何だ?」
リーモンは頭の中で聞きたいことと順番を軽くまとめてから、第一の質問に入る。
「なんでそんなに一族の連中を庇う?」
「……お前、家族いないのか?」
「いねえよ。少なくともひとりで魔王陛下を討伐しようなんて、無謀な行為に走らせるほど追い詰めるような家族は。」
「……」
ルタは黙りこくる。
垂れ下がった頭からは、その表情は読み取れない。
「…どこまで知ってる?」
「お前の母親が運悪く死んで、伝説の勇者の父親と、最強の幹部を倒したエリートの兄がいることだけだ。」
「……」
「なあ、ルタ。」
リーモンは背後から抱きしめる形で、ルタを我が身に寄せる。
「ここらでちょっと変わらねえか?」
「…何が言いたい。」
「お前は伝説の勇者の息子として生まれてきたんだから、魔王陛下を倒さなければいけない。
親父と兄貴に、そういう風に教えられてきたんじゃねえのか?」
「……」
ルタは沈黙するが、反論が一切ないことから、全てリーモンの推察通りだと察せられる。
「お前は生まれてきた時点でひとりの人間だ。従う義務なんざねえ。
親父や兄貴の言うことにも、下界の人間どもの勝手な期待にもな。」
「っ……テメエに何が分かる!!」
ルタは首や胴体を振り乱して暴れる。
「がああぁっ!!!!」
しかしその直後、悲鳴を上げて倒れた。
「ルタッ!!」
リーモンはルタを抱え直して顔を上げさせる。
意識は失ってなかったが、それよりも…
「ルタ、お前……泣いてるのか?」
「……」
ルタは秘密を暴かれたかのように、恥も外聞もなく呆然とリーモンを見つめる。
その裸の瞳のなんと美しいことか。
「…クククッ。」
リーモンは思わず笑みを浮かべ、ルタの涙を舌で掬い取る。
「っ!……」
ルタは一瞬、小動物のように身を竦めたが、すぐに警戒を解いた。
「そうだ…怯えることはない。
俺はお前に何も望まない。
ありのままのお前を愛している。」
「……」
リーモンはルタをその腕に閉じ込める。
「さっきのは陛下が四肢を外す際につけた魔法の効果だろう。
痛くなかったか?」
「…電撃でも食らったかのように痺れたが、お前は何ともないんだな。」
「そうだな。魔法だからな。」
それからふたりは身を清め、安らかな入浴を楽しんだ。
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