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拷問5日目 〜休息日〜
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「…ふああぁぁ。」
朝。五日ぶりの惰眠を貪ったリーモンは軽いストレッチをする。
「さて、と…それじゃあ。」
気分を少し引き締めたところで、魔王の元へと向かう。
「む、貴様か。どうした?」
「外出の許可を頂きたく、参上しました。」
魔王の表情が一瞬訝しげに歪む。
「しもべどもに申しつけられない用か?」
「はい。危険を伴いますので、自ら責任を持って行いたいことが。」
「…一体なんだ?」
魔王が神妙な顔つきで聞く。
「下界に参り、伝説の勇者とその一族どもについて調べたいのです。」
魔王は肩透かしを食らったかのように呆ける。
「彼奴らの居所を調べるつもりなら無駄だぞ、それは重要機密だ。
下界中の人間どもが、結託して口を閉ざしておる。
偵察に行かせたしもべどもも、悉く排除された。」
「居所でなければ、よろしいのですね?」
とうとうリーモンの意図が分からなくなった魔王が首を捻る。
「いったい何がしたいのだ。」
「伝説の勇者の息子について、調べたいのです。
彼奴の強みと弱み、性格、その他諸々を。」
「…まあ良い。隠密の魔道具が欲しければしもべどもに言え。
魔族は下界を彷徨うだけでも人間に警戒される。
くれぐれも用心しろ。」
「有難う御座います。」
ルタとの『交渉材料』が欲しかっただけなのだが、うまく誤魔化せた。
リーモンは魔界を旅立ち、下界へと足を踏み入れた。
行き先は下界一広いと言われている大国の王城。
(ふむ。陛下からお借りした姿と魔力の気配を隠す魔道具、効果は覿面のようだな。)
近衛兵たちを通りすがり、図書室に入る。
(此処か…伝説の勇者についての資料はどうやって探せばいいのだろうか。)
リーモンは取り敢えず周囲に目をやり、カウンターに置かれたクリスタルを見つける。
(ああ、これで探すのか。)
クリスタルに手を置くと、脳内にビジョンが浮かぶ。
(成程…彼処にあるのか。)
だだっ広い図書室の片隅で、本を一冊取り熟読する。
(伝説の勇者は辺鄙な農村の生まれで、長い旅で都へと行き、幼少期から憧れていた冒険者になった。
そして勇者としてひとりで先代魔王を倒し、この大国の王に認められ、第一王女を娶った。
ふむ。そしてその後は…)
さらにその続きを読む。
(妻である第一王女とともに故郷に帰り、天寿をまっとうした両親たち親族を見送り、二人の息子を授かる。
第一子である長男のユタ…前に酒場で聞いたアイツの兄。
それと第二子である次男のルタ…アイツだ。
第一王女はルタを生む際、大変な難産であったため死んでしまった。
それにショックを受けた伝説の勇者が二人の息子を連れて、何処かへと消えてしまった。
……要するに、いま陛下がお探しの伝説の勇者の一族はルタの兄と父、この二人か。
アイツ本人とアイツの兄貴について、何か情報は無いのか?)
数冊の本を取り、読み耽る。
しかし他は益体もない、くだらないゴシップや信憑性のない都市伝説じみた説がふんだんに盛り込まれており、とどのつまり時間と労力の浪費だった。
(有名人にはよくあることだが…情報の精査くらい、王城の図書室ならしろってんだ。)
取り敢えず得た情報をノートに取り、王城を後にした。
(さて。一日の終わりにはまだ早すぎる時間だな。)
リーモンは隠密の魔法を解除し、人間に化ける。
(…一度、行ってみたかったんだよな。)
そしてハンバーガー屋で食事をし、SMクラブで人間たちのするそれを吟味しまくった。
朝。五日ぶりの惰眠を貪ったリーモンは軽いストレッチをする。
「さて、と…それじゃあ。」
気分を少し引き締めたところで、魔王の元へと向かう。
「む、貴様か。どうした?」
「外出の許可を頂きたく、参上しました。」
魔王の表情が一瞬訝しげに歪む。
「しもべどもに申しつけられない用か?」
「はい。危険を伴いますので、自ら責任を持って行いたいことが。」
「…一体なんだ?」
魔王が神妙な顔つきで聞く。
「下界に参り、伝説の勇者とその一族どもについて調べたいのです。」
魔王は肩透かしを食らったかのように呆ける。
「彼奴らの居所を調べるつもりなら無駄だぞ、それは重要機密だ。
下界中の人間どもが、結託して口を閉ざしておる。
偵察に行かせたしもべどもも、悉く排除された。」
「居所でなければ、よろしいのですね?」
とうとうリーモンの意図が分からなくなった魔王が首を捻る。
「いったい何がしたいのだ。」
「伝説の勇者の息子について、調べたいのです。
彼奴の強みと弱み、性格、その他諸々を。」
「…まあ良い。隠密の魔道具が欲しければしもべどもに言え。
魔族は下界を彷徨うだけでも人間に警戒される。
くれぐれも用心しろ。」
「有難う御座います。」
ルタとの『交渉材料』が欲しかっただけなのだが、うまく誤魔化せた。
リーモンは魔界を旅立ち、下界へと足を踏み入れた。
行き先は下界一広いと言われている大国の王城。
(ふむ。陛下からお借りした姿と魔力の気配を隠す魔道具、効果は覿面のようだな。)
近衛兵たちを通りすがり、図書室に入る。
(此処か…伝説の勇者についての資料はどうやって探せばいいのだろうか。)
リーモンは取り敢えず周囲に目をやり、カウンターに置かれたクリスタルを見つける。
(ああ、これで探すのか。)
クリスタルに手を置くと、脳内にビジョンが浮かぶ。
(成程…彼処にあるのか。)
だだっ広い図書室の片隅で、本を一冊取り熟読する。
(伝説の勇者は辺鄙な農村の生まれで、長い旅で都へと行き、幼少期から憧れていた冒険者になった。
そして勇者としてひとりで先代魔王を倒し、この大国の王に認められ、第一王女を娶った。
ふむ。そしてその後は…)
さらにその続きを読む。
(妻である第一王女とともに故郷に帰り、天寿をまっとうした両親たち親族を見送り、二人の息子を授かる。
第一子である長男のユタ…前に酒場で聞いたアイツの兄。
それと第二子である次男のルタ…アイツだ。
第一王女はルタを生む際、大変な難産であったため死んでしまった。
それにショックを受けた伝説の勇者が二人の息子を連れて、何処かへと消えてしまった。
……要するに、いま陛下がお探しの伝説の勇者の一族はルタの兄と父、この二人か。
アイツ本人とアイツの兄貴について、何か情報は無いのか?)
数冊の本を取り、読み耽る。
しかし他は益体もない、くだらないゴシップや信憑性のない都市伝説じみた説がふんだんに盛り込まれており、とどのつまり時間と労力の浪費だった。
(有名人にはよくあることだが…情報の精査くらい、王城の図書室ならしろってんだ。)
取り敢えず得た情報をノートに取り、王城を後にした。
(さて。一日の終わりにはまだ早すぎる時間だな。)
リーモンは隠密の魔法を解除し、人間に化ける。
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