LAST TORTURE 〜魔界の拷問吏と捕虜勇者〜

3333(トリささみ)

文字の大きさ
上 下
1 / 46

拷問0日目 〜プロローグ〜

しおりを挟む
「…来たか。」

魔界の中心。魔王城。
最上階の自室で大窓からの景色を見下ろしていた魔王が、ふと後方に瞳を動かす。

「幹部からお呼びと聞き、馳せ参じました。
拷問吏のリーモンで御座います。」

リーモンは扉のそばで跪いて名乗る。

「うむ。早速だが貴様への依頼を説明する。
ついて来い。」

魔王に連れられるがまま移動した先は地下牢。
その最奥にある独房…の数歩手前で止められた。

「今、。少し待て。」

魔王が独房に入ると、中からガチャガチャと金属音が響く。

「もう良い。入れ。」

魔王の指示のもと入ると、一糸纏わぬ姿で拘束され吊り上げられた人間の青年と対面した。

「…これは。」

彼を目に入れた瞬間、リーモンは息を飲む。
齢は二十ほどであろうか。
筋骨逞しい肉体に相応しくない珠のような肌と、彫刻刀で彫られたような顔立ち。
そして何より、吸い込まれそうなほどに深い瞳の色。

「明日から貴様の拷問を担当するリーモンだ。名乗れ。」
「……」

青年はリーモンの顔面に唾を吐きかけた。

ーーーーーバキイッ!!

魔王が青年の顔面を殴る。

「名乗るまで何度でも殴るぞ。」
「……」

青年は魔王に唾を吐きかけた。

ーーーーードガアッ!!

鳩尾に膝が直撃し、青年は唸りとともに胃の内容物を漏らす。

「此奴はかつて先代の魔王を打ち倒した、伝説の勇者の息子だ。
愚かにも単独で我に戦いを挑んだところを、返り討ちにして生け捕った。」

魔王が青年の髪を乱暴に掴みあげると、彼は射殺さんとばかりに睨みつける。

「だが見ての通り強情な餓鬼でな。
これまで数々の高名な拷問吏に依頼をしたが、全く口を割らん。
そこで貴様の噂を耳にした。
曲者ばかりが揃う拷問吏の中でも特に風変わりだが、受けた依頼は必ず成功させる貴様の噂を。」
「勿体なきお言葉…」

リーモンは頭を深く下げる。

「貴様への依頼は単純だ。
此奴を拷問し、伝説の勇者とその一族の居所を自白させろ。」
「…飽く迄単なる質問なのですが、断ることは可能でしょうか?」
「これは願いではない。命令だ。
出来ないのならば命は無いと思え。」
「…左様で御座いますか。」

リーモンはそれだけ言ってかぶりを振る。

「我も幹部どもも、此奴には辟易させられておるのだ。
滅多なことを申すな。」
「それはそれは、大変失礼致しました。」
「だが、そのぶん褒美は手厚くする。
貴様が此奴を半月の間までに自白させることができれば、貴様の望むものを何でもひとつ叶えてみせよう。何を望む?」

リーモンは返答に詰まって押し黙る。

「……望み、ですか……」
「まあそれも成功させられればの話だ。
まずは拷問に専念せよ。」
「畏まりました。」
「さて、このくらいにしておこう。
拷問は明日から、朝の部と夕の部に分けて行ってもらう。
必要な道具や施設があるのならば、前日までに我がしもべどもに申しつけよ。」
「痛み入ります。」
「ふむ。ではついてこい。」

魔王に再び連れられた先で、リーモンはひとつの部屋に案内された。
先程の魔王の部屋と比べて狭いが、自宅に比べれば格段に広く、ベッドやラックなど生活に必要な家具が揃っている。

「彼奴の拷問をしている間、貴様にはこの部屋で生活してもらう。
風呂や手洗いは自由に使え。
食事は配給するし、望みがあるならしもべどもに申しつければ良い。
他にも必要なものがあれば言うがいい。」
「それはそれは、何から何までご配慮いただき恐縮です。」

リーモンが逃げ出さないよう城に閉じ込めるための待遇であることは、本人も承知の上である。

「ふむ。それでは我はこれで去ろう。
明日の朝、彼奴の拷問の時間に来る。」
「畏まりました。」

魔王が部屋から出て、ひとりになったリーモンは改めて周囲を見回す。
魔族の王の家だけあってやはり豪奢な内装をしており、そのどれもが最高級の品であることは窺い知れる。
次いで先程の伝説の勇者の息子を思い出す。
あの男…人間にしては珍しいほどに美しかった。
先代魔王を討った伝説の勇者となれば、一国の王女を娶るのも容易いことだろう。
更にあの鍛え抜かれた若く瑞々しい肉体。

(クックック…!!!)

今回の拷問は楽しめそうだ。
リーモンはこれからのことに想いを馳せながら、ベッドに乗って瞳を閉じた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

青少年病棟

BL
性に関する診察・治療を行う病院。 小学生から高校生まで、性に関する悩みを抱えた様々な青少年に対して、外来での診察・治療及び、入院での治療を行なっています。 ※性的描写あり。 ※患者・医師ともに全員男性です。 ※主人公の患者は中学一年生設定。 ※結末未定。できるだけリクエスト等には対応してい期待と考えているため、ぜひコメントお願いします。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

禁断の祈祷室

土岐ゆうば(金湯叶)
BL
リュアオス神を祀る神殿の神官長であるアメデアには専用の祈祷室があった。 アメデア以外は誰も入ることが許されない部屋には、神の像と燭台そして聖典があるだけ。窓もなにもなく、出入口は木の扉一つ。扉の前には護衛が待機しており、アメデア以外は誰もいない。 それなのに祈祷が終わると、アメデアの体には情交の痕がある。アメデアの聖痕は濃く輝き、その強力な神聖力によって人々を助ける。 救済のために神は神官を抱くのか。 それとも愛したがゆえに彼を抱くのか。 神×神官の許された神秘的な夜の話。 ※小説家になろう(ムーンライトノベルズ)でも掲載しています。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

身体検査

RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、 選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

処理中です...