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煌めきの都
虚妄ノ影 Ⅳ
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影は、四つ足__獣だった。
しかしアンブラが討っていた四つ足と異なり、それはたしかに黒いのだが、豊かな毛に覆われた獣だった。
見事な毛並み__とりわけ豊かに膨らんでいるのは、尾。
大きな三角の立ち耳。
細く長い口は、犬のようだが、犬ではない。
黄昏色の相貌__その中にある瞳孔は縦に割けて、まるで猫のよう。
「__狐……」
それは紛れもなく黒い狐。
しかしながら、纏う雰囲気は孤高そのもの。神聖な獣というものをこの目で見たことはないが、おそらくこの狐はその部類にはいるのではないだろうか。
その優美な姿に息を呑んで見守っていると、狐はマイャリスの側近くにまでやってきた。
「何をしている。何故離れた」
リュディガーは、その狐に語りかけた。いくらかそれは、鋭い口調。対して黒狐は涼しい目元の黄昏色の瞳で一瞥をくれるだけだった。
まったく、とその様子にため息交じりに言葉を零したリュディガー。
「__マイャリス。君は鏡の確保へ向かってくれ」
素直に頷けない。
鏡は確保せねばならない__それは不思議と今の自分にとっての一番の目的。なさねばならないことだと思っている。
だが、鏡のある場所、方角がなんとなくわかる程度の感覚。しかも、先程から、その方角が上へ下へ、前後左右、移って定まらなく、自身がなくなっている。果たしてそんな感覚頼みで、魔穴の中を進んでいいものかどうかわからないのだ。
鏡の存在を今しがた知り、認知しただけの自分。
魔穴の中に踏み入ったのだって、初めてなのだから。
「アンブラが道中は守る」
何を言っているのだろう。
アンブラの姿はどこにもない__そう言おうとしたが、それよりも先に黒狐が動いて封じた。
黒狐はふわりと飛び上がると、マイャリスの肩に飛び乗ったのだ。その重さは見た目に反して軽く、まるで羽のよう。そして、優美な尾を首にまわしてきた。その様は毛皮の襟巻き。
細長い鼻先を持ち上げ、横目でマイャリスを見た。
「__暫し、肩を借ります」
狐は軽く口を開いた。その口から漏れ出る言葉は人語で、しかも声は__
「アンブラ……なの?」
是、とその黒狐は答えたから、マイャリスは驚きに言葉を逸した。
「ここに留まっているのは、得策ではない」
すい、と琥珀色の瞳が動いて前方を見据えた。
四つ足の異形を棘が貫き、棘が捉え損ねた異形を前に出たリュディガーが斬り伏せていく様を見つめる。
そのリュディガーを見ながら、ロンフォールが歩み寄ってくるのがマイャリスの視界が捉えた。
「マイャリス殿、鏡を強く意識してください」
アンブラの耳打ちに従うマイャリス。
転々、と移ろう鏡の気配が、途端に止まった。
自分の足元付近が妙に気になる。なにやら光るものがあったように思え、そちらへ視線を思わず向けた。だが、そこには黄金色の草地が覆っていて、その葉の影に光るものはなかった。
__でも、ある……気がする。
ざわざわ、とした焦燥感。
逸る気持ち。
額の一角が熱い。
視界の端で、ロンフォールが地を蹴ってリュディガーへ駆けた。四つ足の異形と、ロンフォールを同時に相手取るリュディガー。
明らかに多勢に無勢な様相で、攻合の最中ロンフォールが繰り出した一撃がリュディガーの腕から血を走らせた。
その光景に一瞬固まったマイャリスに、リュディガーが攻合しながら言い放つ。
「行け!」
「待っ__」
突然、身体の重心がぶれて、自分が意識した足元へ引っ張られ、言葉を失う。そして身体が草地に触れる前に、視界いっぱいに光が弾けた。
直後、足の感覚__足が接地した感覚と同時に上下左右の感覚が整い、景色が変わってした。
「このあたりは清浄のようだ。__ここですか」
黒狐が問う。
真っ黒い空間に、拳大の青白い光が漂う景色。
__たぶん、あちら。
自信なく頷いて、気になる方を指さした。
そちらを見やる琥珀色の瞳が、細められる。
「……そのようだ。参りましょう」
「あの、リュディガーは……」
「殿を。あわよくば捕縛」
お分かりだろう、と添える言葉に、マイャリスは下唇を噛み締めた。
彼がいるのは、清浄な空間ではなくなってしまった。
そこに独り取り残してきた。
逼迫している状況に置いてきた。
「アンブラだけでも、戻れませんか? 鏡は私が必ず__」
「申し訳ない。御身の安全が優先されます」
ぴしゃり、という言葉がぴったりな物言いに、口をつぐむマイャリス。
「貴女様がご存命だった。そして、貴女は獬豸の血胤__少々予定が変わったのです」
予定、と反芻すると、琥珀色の瞳が横目で細められる。
「……何がどうなっているのか、ご説明申し上げる。だから、今は、鏡を確保して私とともに行動を。これまでの、何もかもを無駄にしないためにも」
何もかも__。
養父に奪われた者たち。踏みにじられた者、虐げられた者。
自分が気づかないうちに起きていたこと。
__気づかなかったでは、すまされない。
関係ない、と一蹴することができない。看過することなどもってのほかだ。
__そしてこれから、同じ災難に見舞われる人だっているかもしれない。いえ、もういることでしょう。
リュディガーがこれまで耐えて耐えて、身も心も削って準備をしてきたに違いない。それらも無駄にはしたくはない。
__しては駄目。
ぐっ、とこらえて歩み始めるマイャリス。
ひたひた、と歩く足に伝わる感触は、石の表面を歩いているときのようだった。
「彼は“ウケイシャ”だ。ただの龍騎士以上に、瘴気への耐性が強い」
「その“ウケイシャ”とは何なのですか」
すい、と動く琥珀色の相貌。どこか笑っているように見えた。
「魔性の類と、契約を交わした者のこと。ウケイ、とは契約の古の呼び方」
__それで、契約者と言うの。
「契約ということは……取引をしているということですか」
「我々を小間使とするのであれば、当然のこと。ご安心召されい。我々は、龍帝の息がかかった魔性。一般的な契約者と異なり、代償も軽いものだ」
「代、償……?」
穏やかな響きではないそれに、思わず足を止めてしまう。
「彼は、抑揚がない、と思われはせなんだか。あまりにも感情の起伏がない、と」
それは感じた。
だが、彼の立場上そうなって当然だったのではなかろうか。
「喜怒哀楽の喜と楽を、我々に差し出した」
「我々……フルゴルのことですか?」
「ご明察」
アンブラと似たような気配を見せていた彼女。似通った装身具を纏っている彼女。
「フルゴルは、白狐。我々ふたりと契約するのであれば、ふたつ。我々は、ふたりでひとつ、という形態ではないのでな。__喜怒哀楽とは申せ、あくまで表情を。だが、表情が動かねば、心もそこまで引っ張られない。好都合、ということでそのように」
潜り込むには、嫌な仕事をしなければならない。
顔色ひとつ変えず、忠臣を演じるには好都合ということだろう。
__いずれ、心が死ぬぞ。
不意に、いつぞや彼が言っていた言葉が蘇った。
__貴方は、どうなの……。
しかしアンブラが討っていた四つ足と異なり、それはたしかに黒いのだが、豊かな毛に覆われた獣だった。
見事な毛並み__とりわけ豊かに膨らんでいるのは、尾。
大きな三角の立ち耳。
細く長い口は、犬のようだが、犬ではない。
黄昏色の相貌__その中にある瞳孔は縦に割けて、まるで猫のよう。
「__狐……」
それは紛れもなく黒い狐。
しかしながら、纏う雰囲気は孤高そのもの。神聖な獣というものをこの目で見たことはないが、おそらくこの狐はその部類にはいるのではないだろうか。
その優美な姿に息を呑んで見守っていると、狐はマイャリスの側近くにまでやってきた。
「何をしている。何故離れた」
リュディガーは、その狐に語りかけた。いくらかそれは、鋭い口調。対して黒狐は涼しい目元の黄昏色の瞳で一瞥をくれるだけだった。
まったく、とその様子にため息交じりに言葉を零したリュディガー。
「__マイャリス。君は鏡の確保へ向かってくれ」
素直に頷けない。
鏡は確保せねばならない__それは不思議と今の自分にとっての一番の目的。なさねばならないことだと思っている。
だが、鏡のある場所、方角がなんとなくわかる程度の感覚。しかも、先程から、その方角が上へ下へ、前後左右、移って定まらなく、自身がなくなっている。果たしてそんな感覚頼みで、魔穴の中を進んでいいものかどうかわからないのだ。
鏡の存在を今しがた知り、認知しただけの自分。
魔穴の中に踏み入ったのだって、初めてなのだから。
「アンブラが道中は守る」
何を言っているのだろう。
アンブラの姿はどこにもない__そう言おうとしたが、それよりも先に黒狐が動いて封じた。
黒狐はふわりと飛び上がると、マイャリスの肩に飛び乗ったのだ。その重さは見た目に反して軽く、まるで羽のよう。そして、優美な尾を首にまわしてきた。その様は毛皮の襟巻き。
細長い鼻先を持ち上げ、横目でマイャリスを見た。
「__暫し、肩を借ります」
狐は軽く口を開いた。その口から漏れ出る言葉は人語で、しかも声は__
「アンブラ……なの?」
是、とその黒狐は答えたから、マイャリスは驚きに言葉を逸した。
「ここに留まっているのは、得策ではない」
すい、と琥珀色の瞳が動いて前方を見据えた。
四つ足の異形を棘が貫き、棘が捉え損ねた異形を前に出たリュディガーが斬り伏せていく様を見つめる。
そのリュディガーを見ながら、ロンフォールが歩み寄ってくるのがマイャリスの視界が捉えた。
「マイャリス殿、鏡を強く意識してください」
アンブラの耳打ちに従うマイャリス。
転々、と移ろう鏡の気配が、途端に止まった。
自分の足元付近が妙に気になる。なにやら光るものがあったように思え、そちらへ視線を思わず向けた。だが、そこには黄金色の草地が覆っていて、その葉の影に光るものはなかった。
__でも、ある……気がする。
ざわざわ、とした焦燥感。
逸る気持ち。
額の一角が熱い。
視界の端で、ロンフォールが地を蹴ってリュディガーへ駆けた。四つ足の異形と、ロンフォールを同時に相手取るリュディガー。
明らかに多勢に無勢な様相で、攻合の最中ロンフォールが繰り出した一撃がリュディガーの腕から血を走らせた。
その光景に一瞬固まったマイャリスに、リュディガーが攻合しながら言い放つ。
「行け!」
「待っ__」
突然、身体の重心がぶれて、自分が意識した足元へ引っ張られ、言葉を失う。そして身体が草地に触れる前に、視界いっぱいに光が弾けた。
直後、足の感覚__足が接地した感覚と同時に上下左右の感覚が整い、景色が変わってした。
「このあたりは清浄のようだ。__ここですか」
黒狐が問う。
真っ黒い空間に、拳大の青白い光が漂う景色。
__たぶん、あちら。
自信なく頷いて、気になる方を指さした。
そちらを見やる琥珀色の瞳が、細められる。
「……そのようだ。参りましょう」
「あの、リュディガーは……」
「殿を。あわよくば捕縛」
お分かりだろう、と添える言葉に、マイャリスは下唇を噛み締めた。
彼がいるのは、清浄な空間ではなくなってしまった。
そこに独り取り残してきた。
逼迫している状況に置いてきた。
「アンブラだけでも、戻れませんか? 鏡は私が必ず__」
「申し訳ない。御身の安全が優先されます」
ぴしゃり、という言葉がぴったりな物言いに、口をつぐむマイャリス。
「貴女様がご存命だった。そして、貴女は獬豸の血胤__少々予定が変わったのです」
予定、と反芻すると、琥珀色の瞳が横目で細められる。
「……何がどうなっているのか、ご説明申し上げる。だから、今は、鏡を確保して私とともに行動を。これまでの、何もかもを無駄にしないためにも」
何もかも__。
養父に奪われた者たち。踏みにじられた者、虐げられた者。
自分が気づかないうちに起きていたこと。
__気づかなかったでは、すまされない。
関係ない、と一蹴することができない。看過することなどもってのほかだ。
__そしてこれから、同じ災難に見舞われる人だっているかもしれない。いえ、もういることでしょう。
リュディガーがこれまで耐えて耐えて、身も心も削って準備をしてきたに違いない。それらも無駄にはしたくはない。
__しては駄目。
ぐっ、とこらえて歩み始めるマイャリス。
ひたひた、と歩く足に伝わる感触は、石の表面を歩いているときのようだった。
「彼は“ウケイシャ”だ。ただの龍騎士以上に、瘴気への耐性が強い」
「その“ウケイシャ”とは何なのですか」
すい、と動く琥珀色の相貌。どこか笑っているように見えた。
「魔性の類と、契約を交わした者のこと。ウケイ、とは契約の古の呼び方」
__それで、契約者と言うの。
「契約ということは……取引をしているということですか」
「我々を小間使とするのであれば、当然のこと。ご安心召されい。我々は、龍帝の息がかかった魔性。一般的な契約者と異なり、代償も軽いものだ」
「代、償……?」
穏やかな響きではないそれに、思わず足を止めてしまう。
「彼は、抑揚がない、と思われはせなんだか。あまりにも感情の起伏がない、と」
それは感じた。
だが、彼の立場上そうなって当然だったのではなかろうか。
「喜怒哀楽の喜と楽を、我々に差し出した」
「我々……フルゴルのことですか?」
「ご明察」
アンブラと似たような気配を見せていた彼女。似通った装身具を纏っている彼女。
「フルゴルは、白狐。我々ふたりと契約するのであれば、ふたつ。我々は、ふたりでひとつ、という形態ではないのでな。__喜怒哀楽とは申せ、あくまで表情を。だが、表情が動かねば、心もそこまで引っ張られない。好都合、ということでそのように」
潜り込むには、嫌な仕事をしなければならない。
顔色ひとつ変えず、忠臣を演じるには好都合ということだろう。
__いずれ、心が死ぬぞ。
不意に、いつぞや彼が言っていた言葉が蘇った。
__貴方は、どうなの……。
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