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煌めきの都
欠ケル夜 Ⅰ
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夜会は、広いホールでの待機から始まった。
「__ナハトリンデン卿と夫人、ご到着」
__ナハトリンデン卿……。
そういえば、自分はナハトリンデンという姓だった。
天井の高いホール内に朗々と響く到着を告げる声に、マイャリスは改めて意識させられた。
ちらり、と横に並ぶ、自分の良人__ナハトリンデン当主を見上げる。
上背があり、武官らしく隙のない立ち居振る舞いの威風堂々たる彼。
ここに来て、より纏う雰囲気が張り詰めたものになったように思えた。
羽織物を、使用人のひとりに預ける__とそこで、マイャリスは、自分たちに向けられる視線に気づく。
会場に集まった尽くが、自分たちをしげしげと見ているのだ。彼らは一様に、隣の大柄のナハトリンデンへと向けられていた。
__血も凍った『氷の騎士』と恐れられるナハトリンデン卿、だものね。
州侯の腹心。
州侯のご下知こそが絶対の法で、それから外れた者は断罪することを躊躇わない。
黒い甲冑を纏っている姿ばかりだから、顔を晒すことは珍しいのだろうか。
しかしながら、彼ら視線は畏怖の視線だけでなく、好奇の目も含まれているのは何故__と、考えるまでもなく、すぐに悟る。
それは間違いなく、自分自身に向けられているのだ、と。
ナハトリンデン卿と夫人__そういう肩書での入場を果たしたので、『氷の騎士』の隣にいる者は、その妻。
ではナハトリンデンの妻とは、どこの何者なのか__興味を抱かないはずがないだろう。
これを知る者はやはり限られているのかもしれない。
ずっとその存在すら広く知られていないのが、州侯の娘__養女であるが__の自分なのだ。
リュディガーに促される形で会場を進むが、視線こそ向けてくるが、近づく者はいない。皆、道をあけるようにさがるばかりで距離を取る。
どうやら、血も凍った『氷の騎士』と普段から懇意にしている者は勿論、これから馴れ合いをする肝が座った者はいないらしい。
ついにマイャリスは、会場の奥の一際多く人が集まっていた場所へと至った。
何故人がこれほど集まっているのか__疑問に思うまでもなく、近づくほどに人垣が割れ、その向こうに佇む州侯の姿が見て取れた。
第一礼装の養父は、リュディガーより線は細いものの、侯を戴く者としての貫禄は十二分にある。
そしてその背後には、ひとりの近衛騎士。リュディガーほど大柄ではないものの、大きい部類に入る近衛騎士は、口布をしていて顔の全体を見ることは叶わなかったが、唯一見える双眸に、マイャリスは足を止めかけてしまった。
__あのときの……マーガレットを連れいていった、あの近衛。
視線が合った近衛は、ほくそ笑んだように目元が歪んだ__それはまさしく、マーガレットを連行した騎士がしていた目元だった。
後に知ったが、この者は空位となった筆頭十人隊長の座についた者。フルゴルが言うに、リュディガーの次に、以前から重用されている者らしい。
視線の不快感から、マイャリスは視線を断ち切って州侯へと戻した。
夜会の礼装であるリュディガーは、武人の名残を残しながらも恭しく挨拶をとり、マイャリスも倣って淑女の礼をとった。
「息災そうだな」
顔を上げたところで、まっすぐ養父ロンフォールの視線と交わった。
「お父様も。お招きいただき、ありがとうございます」
州侯の視線は次いでリュディガーへと向けられる。
「ハイムダルはどうだ」
「こちらとは違い、もう冬です」
「領地運営は」
「よい領地管理人を得ましたので、恙無く。打ち捨てられた村々を整理するのが、目下の課題ですが」
「良きに計らえ」
「はっ」
リュディガーは改めて礼をとる。それを見て、マイャリスもまた礼を取り、州侯の元を後にし、大窓の間の壁へと向かう。
そこに陣取っていた者は、始終観察していたから『氷の騎士』夫妻の行動を察し、さりげなくその場を後にしていった。しかしながら、彼らは雑談を交わしながら、視線はこちら__雑談の内容もきっとこちらのことに違いなかった。
「何か飲むか」
椅子へ座るよう促されるまま、腰を据えたところでリュディガーが問う。
「要りません」
形骸化した夫婦__マイャリスは、会話を続けるつもりはない、と示すように短く抑揚なく答え、窓の外をちらり、と見やった。
すでに夜の帳が落ちた外。
室内の明かりが反射して見えにくいが、目を凝らせば、星月夜__まさしく満月が昇ってくるところだった。
天空に昇ったときよりも、地平に近いそれは黄金色で大きい満月。冴え冴えとした印象なのは、秋らしい澄んだ空気に満ちているからだろうか。
__月蝕になると言うけれど……。
この満月が欠けていく様は、想像できない。
__欠けて、その後はどうなるのかしら……。
欠け始めたら州侯の悲願が始まるのか、それとも完全に月が欠けて姿を消したらなのか__いつの時点からでさえわからない。
ただ間違いなく、今夜悲願が果たされる。
__わざわざ、私を呼びつけるぐらいだもの……。
疎んじていた養女に見せつけたいもの、ということなのだろう。
側近くで探りを入れていた、というリュディガーでさえ全くもって全容がわからなかった、という悲願。
__まずもって、良くないことに違いないのでしょうけれど。
無意識にマイャリスは、小さくため息を零していた。
そして、視線を父__州侯の方へと向ける。
州侯は、薄い青の瞳に何を見ているのか。
挨拶に代わる代わる応じる父。その腹の中で何を抱えているのか。
何も知らない哀れな者共、とでも思って嘲っているのだろうか。
__……ここにいる人達は、どうなるの……。
不意に至った疑問に、マイャリスは、息を呑んだ。
リュディガー独りで、対処できる量ではない。
__切り捨てられる……のではないの。
出来得る限り助けるだろうが、彼独りで彼らすべてを守り抜くなど到底無理な話だ。
どのような事が起きるか知れないのだ。彼に至っては、父に対抗するだろうから、もっとも危険極まりない。
__どうやってもこぼれ落ちる命というものが出てくるものなんだよ。
不意に脳裏に蘇るのは、すらりとした優美な立ち居振る舞いの恩師の姿__顔、声だった。
「__ナハトリンデン卿と夫人、ご到着」
__ナハトリンデン卿……。
そういえば、自分はナハトリンデンという姓だった。
天井の高いホール内に朗々と響く到着を告げる声に、マイャリスは改めて意識させられた。
ちらり、と横に並ぶ、自分の良人__ナハトリンデン当主を見上げる。
上背があり、武官らしく隙のない立ち居振る舞いの威風堂々たる彼。
ここに来て、より纏う雰囲気が張り詰めたものになったように思えた。
羽織物を、使用人のひとりに預ける__とそこで、マイャリスは、自分たちに向けられる視線に気づく。
会場に集まった尽くが、自分たちをしげしげと見ているのだ。彼らは一様に、隣の大柄のナハトリンデンへと向けられていた。
__血も凍った『氷の騎士』と恐れられるナハトリンデン卿、だものね。
州侯の腹心。
州侯のご下知こそが絶対の法で、それから外れた者は断罪することを躊躇わない。
黒い甲冑を纏っている姿ばかりだから、顔を晒すことは珍しいのだろうか。
しかしながら、彼ら視線は畏怖の視線だけでなく、好奇の目も含まれているのは何故__と、考えるまでもなく、すぐに悟る。
それは間違いなく、自分自身に向けられているのだ、と。
ナハトリンデン卿と夫人__そういう肩書での入場を果たしたので、『氷の騎士』の隣にいる者は、その妻。
ではナハトリンデンの妻とは、どこの何者なのか__興味を抱かないはずがないだろう。
これを知る者はやはり限られているのかもしれない。
ずっとその存在すら広く知られていないのが、州侯の娘__養女であるが__の自分なのだ。
リュディガーに促される形で会場を進むが、視線こそ向けてくるが、近づく者はいない。皆、道をあけるようにさがるばかりで距離を取る。
どうやら、血も凍った『氷の騎士』と普段から懇意にしている者は勿論、これから馴れ合いをする肝が座った者はいないらしい。
ついにマイャリスは、会場の奥の一際多く人が集まっていた場所へと至った。
何故人がこれほど集まっているのか__疑問に思うまでもなく、近づくほどに人垣が割れ、その向こうに佇む州侯の姿が見て取れた。
第一礼装の養父は、リュディガーより線は細いものの、侯を戴く者としての貫禄は十二分にある。
そしてその背後には、ひとりの近衛騎士。リュディガーほど大柄ではないものの、大きい部類に入る近衛騎士は、口布をしていて顔の全体を見ることは叶わなかったが、唯一見える双眸に、マイャリスは足を止めかけてしまった。
__あのときの……マーガレットを連れいていった、あの近衛。
視線が合った近衛は、ほくそ笑んだように目元が歪んだ__それはまさしく、マーガレットを連行した騎士がしていた目元だった。
後に知ったが、この者は空位となった筆頭十人隊長の座についた者。フルゴルが言うに、リュディガーの次に、以前から重用されている者らしい。
視線の不快感から、マイャリスは視線を断ち切って州侯へと戻した。
夜会の礼装であるリュディガーは、武人の名残を残しながらも恭しく挨拶をとり、マイャリスも倣って淑女の礼をとった。
「息災そうだな」
顔を上げたところで、まっすぐ養父ロンフォールの視線と交わった。
「お父様も。お招きいただき、ありがとうございます」
州侯の視線は次いでリュディガーへと向けられる。
「ハイムダルはどうだ」
「こちらとは違い、もう冬です」
「領地運営は」
「よい領地管理人を得ましたので、恙無く。打ち捨てられた村々を整理するのが、目下の課題ですが」
「良きに計らえ」
「はっ」
リュディガーは改めて礼をとる。それを見て、マイャリスもまた礼を取り、州侯の元を後にし、大窓の間の壁へと向かう。
そこに陣取っていた者は、始終観察していたから『氷の騎士』夫妻の行動を察し、さりげなくその場を後にしていった。しかしながら、彼らは雑談を交わしながら、視線はこちら__雑談の内容もきっとこちらのことに違いなかった。
「何か飲むか」
椅子へ座るよう促されるまま、腰を据えたところでリュディガーが問う。
「要りません」
形骸化した夫婦__マイャリスは、会話を続けるつもりはない、と示すように短く抑揚なく答え、窓の外をちらり、と見やった。
すでに夜の帳が落ちた外。
室内の明かりが反射して見えにくいが、目を凝らせば、星月夜__まさしく満月が昇ってくるところだった。
天空に昇ったときよりも、地平に近いそれは黄金色で大きい満月。冴え冴えとした印象なのは、秋らしい澄んだ空気に満ちているからだろうか。
__月蝕になると言うけれど……。
この満月が欠けていく様は、想像できない。
__欠けて、その後はどうなるのかしら……。
欠け始めたら州侯の悲願が始まるのか、それとも完全に月が欠けて姿を消したらなのか__いつの時点からでさえわからない。
ただ間違いなく、今夜悲願が果たされる。
__わざわざ、私を呼びつけるぐらいだもの……。
疎んじていた養女に見せつけたいもの、ということなのだろう。
側近くで探りを入れていた、というリュディガーでさえ全くもって全容がわからなかった、という悲願。
__まずもって、良くないことに違いないのでしょうけれど。
無意識にマイャリスは、小さくため息を零していた。
そして、視線を父__州侯の方へと向ける。
州侯は、薄い青の瞳に何を見ているのか。
挨拶に代わる代わる応じる父。その腹の中で何を抱えているのか。
何も知らない哀れな者共、とでも思って嘲っているのだろうか。
__……ここにいる人達は、どうなるの……。
不意に至った疑問に、マイャリスは、息を呑んだ。
リュディガー独りで、対処できる量ではない。
__切り捨てられる……のではないの。
出来得る限り助けるだろうが、彼独りで彼らすべてを守り抜くなど到底無理な話だ。
どのような事が起きるか知れないのだ。彼に至っては、父に対抗するだろうから、もっとも危険極まりない。
__どうやってもこぼれ落ちる命というものが出てくるものなんだよ。
不意に脳裏に蘇るのは、すらりとした優美な立ち居振る舞いの恩師の姿__顔、声だった。
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