142 / 247
帝都の大学
別れ路の慟哭 Ⅲ
しおりを挟む
「……耳飾りに気づいたのは、君だったか」
赤く腫れた手を労る彼に問えば、わずかばかりに息を詰めた気配がした。
「……ああ」
「そうか……」
魔物に襲われる事件があったのは、3日前。
翌日、日が昇って霧が薄れてから、遺品等の回収がされた。
それにエルンストも関わっていた。
引き上げられた遺品のひとつに見覚えがあった彼は、すぐさま帝都へと舞い戻り、大学へと報せ、ビルネンベルクに出向いてもらって確認をしてもらった。
遺品はすでに、遺族のもとへと届けられていると、ビルネンベルクから聞かされている。
キルシェの訃報をリュディガーが聞いたのは、2日目の昨日。そして今日、こうしてここにいるのは、キルシウムのお陰だった。
通常であれば、帝都からは一週間前後はかかる距離だ。
すぐに駆けつけて状況を確認したかったが、あまりにも距離がありすぎる。父ローベルトのもとを訪れ、様子が可笑しいことを気にかけられたが毅然と平静を装い、いつものように世話をして__それでも無意識に足は帝都の東、街道の始まりに向いていた。
そうしていると、突然目の前にキルシウムが降り立ったのだ。__乗レ、と。
龍から降り立ったこと、そして認識票を確認した州軍の者は、非番の龍騎士だと思って、状況を説明してくれたのだ。__そして、今に至る。
しばしの無言の後、ため息交じりに彼が言葉を零す。
「__見間違いであったなら、と思ったよ」
「……」
「……お前は、ビルネンベルク様に教えられたのか」
「ああ……」
「遺品は……キルシェ嬢のものだと確認を取れたあとすぐに、ご遺族のもとへ届けられた」
「……先生から伺っている」
__彼女の、養父に、か……。
もう一方が揃ってから、引き渡す__では駄目だったのだろうか。
__駄目に決まっているな。
証拠があるのなら、すぐに報せに行くべきだ。
「聞いた話じゃ、密葬にするそうだな。そうっとしておいてほしい、と」
__そうっと、か……。
それは何故だろう。
自分の目論見が、彼女の死で狂ったからだろうか__。
戻ってきた従順な養女を、嫁がせ地位を盤石にする目論見。
__相手は龍騎士の大隊長以上の地位で、やっと釣り合いがとれるような存在。
有名貴族か、はたまた州政府の中枢にいるような輩か__。
__どちらにせよ、彼女が死んだことを嘆くことはないだろうな。
どこまで話しが進んでいたか知らないが、顔さえも合わせていないのだろう。近々会うはずだったラウペンの令嬢が死んだ、という程度。
__不幸だと、決めつけないで。
彼女のその言葉が、どうにも胸につかえていて、今でも鮮明に声も顔も思い出せる。
リュディガーは目を伏せて、労られている手に意識を向けた。
じんわり、と包み込む石が温かい。この石は火性を帯びた魔石で、こうして部分的に温めるためのものである。
指先にも血が通い始めたのか、ちりちり、とする感覚が出てきた。ここに至るまで、自身の手の有様など気にもしなかった。
「……もう大丈夫だ。感覚が戻ってきた。__ありがとう」
言って、彼の手から逃れ、握り込まされた石を彼に返す。
視線をどうしても合わせられず、リュディガーは視線を事切れた魔物へと向けた。
__こいつが、殺した……。
事切れてしまっているそれを、今更さらに嬲ろうとは思いはしないが、怒りのやり場がどこにも向けられない。
しかし不思議なもので、腸が煮えくり返る想いでいたというのに、事切れた魔物を見るにつけ、次第に自身の心が凪いでいく心地がする。
魔物の傍で龍騎士のひとりとやりとりをしていた獣人が、キルシウムの顔に近い首を、恐れることなく軽く撫でるのが見えた。キルシウムは嫌がる素振りを見せない。
龍騎士が駆る龍は、主人か、あるいは同胞とみなした者以外に触れられるのを、あまり好まない。
一般人も、龍という存在には畏敬の念を持っているため、羨望を抱くことはあっても、軽々しく触れようとまではしないものだ。
「__その男は、やはり龍騎士だったか」
歩み寄る獣人の声に、エルンストは顔を上げる。
「装備が甘いので、判断に迷ったぞ。無謀なこともしかけていたしな。__暇をもらっていたのだな、お前さんは」
険しい表情だったエルンストは、リュディガーにばかり気を取られていたからだろう、その獣人の姿を見てあっけにとられたような顔をした。
「ビルネンベルク……様……?」
直ぐ側まできて、槍を抱え込むようにして支えにし、屈む獣人。
その表情は、人の悪い笑みを浮かべている。
「いかにも。しかと正直に話せば__私は、アルティミシオン・フォン・ウント・ツー・ビルネンベルクだ」
これには、リュディガーもエルンストも言葉を逸した。
アルティミシオン・フォン・ウント・ツー・ビルネンベルク。帝国の重鎮たるその名を知らぬものはいない。
重鎮とされているから、もっと年配の姿を想像していたが、獣人の性なのだろうか、アルティミシオンは壮年というには若い見た目だった。ただ、貫禄は間違いなくある。どっしり構えて、何事にも動じなさそうな雰囲気。
慌てて、居住まいを正して跪礼をとるが、くつくつ、と笑われて制される。
「公の場ではない。やめてくれ。__色々と面倒で、州軍の連中には、ただの南兎の民で通っているのだからな。お前さんたちが龍騎士だから、正直に明かしたに過ぎん」
ちらり、と彼が見やった方から、人の群れがやってくるのが見えた。
さきほど離れていった州軍である。
「あとは、彼らに任せてもよかろう。現れるとしても、もはや雑魚ばかりだろうからな」
ふむ、とひとりごちたアルティミシオンは、リュディガーの肩に手をおいた。
その手は、よく知るビルネンベルクと似たような、長い指先の手。だが、武人らしく節くれだって力強く見えた。
「詳しくは聞かないが、親しい知り合いが不幸に見舞われたのだろうことは察した。__気をしっかりもて」
リュディガーは応えられず、視線を落とすに留める。そこには、遺髪。__銀の遺髪があった。
おい、とエルンストが肘で小突くが、反応さえできない。
非礼だとは思う。だが、それがどうした。
__どうでもいい。
国家の重鎮に非礼を働いて、それで罰があるのであれば、それを受けてもいいように思う。
__罰してくれ……。
息が詰まる。
いっそ罰してくれたほうが、いくらか気が楽になる__気がする。
__彼女は、もう、いない……。
重くのしかかる現実に、呼吸が苦しくなる。
本当に手の届かないところに行ってしまった。
もう二度と会うこともできない。
もしかしたら、いずれ__描いていた淡い期待さえも、打ち砕かれた。
__彼女の未来を潰した責任の一端は、俺にある……。
故郷へ戻る決意をしていた彼女。
どのような想いで、この道を進んでいたのか。
絶望していたのか。それともわずかばかりでも、戻ってからの展望に希望をいだいていてくれたのだろうか。
どちらにせよ、魔物に襲われた恐怖はすべてを凌駕したことだろう。
「……心中察してあまりある」
独り言のように言って、大きな手が離れていった。
「死別はいくら重ねても、身を裂かれるような気持ちに苛まれることに違いない」
リュディガーは、布の上の銀の遺髪を遠い視線で見つめた。
夢で、この銀の髪が広がる寝台で寝たのを思い出した。窓から差し込んだ月の明かりに照らされて、息を呑むほど美しかったのを覚えている。
__あの夢は……。
あれは、自分の妄想や願望が生み出したただの淫夢ではなかったのか。あるいは、死にゆく彼女の想いが『もの』となって__とそこでリュディガーは首を振る。
__なんて都合よい解釈をするんだ、俺は。
「……ビルネンベルク公。これを、お預かりしても?」
「私よりも親しい貴公が持つほうがよかろう。__良きに計らえ」
「ありがとう存じます」
衣嚢からハンカチを取り出す。__そのハンカチは、キルシェから贈られたものだ。
銀の御髪に手を伸ばす。
手の震えがおさまらない。
「__寒いな……悴んで……」
思ってもない言葉で誤魔化して、自嘲しながらぎこちなく銀の御髪を拾い上げてハンカチに乗せる。
__……私と貴方は、これ以上一緒にならない運命だったのよ。
思い起こされた言葉に、喉が詰まった。
視界が滲むのは、頭に当たる雨粒が肌を伝って目に入り込むからだ。
他の遺髪も続けて拾い上げ、丁寧に包んで、懐に忍ばせる。
__良きに、か。
良きに、とはどうすれば良いのだろう。
請け負わせてもらったが、何も考えられない。
呆然と残骸を__霧が薄くなった谷を見やることしかできなかった。
赤く腫れた手を労る彼に問えば、わずかばかりに息を詰めた気配がした。
「……ああ」
「そうか……」
魔物に襲われる事件があったのは、3日前。
翌日、日が昇って霧が薄れてから、遺品等の回収がされた。
それにエルンストも関わっていた。
引き上げられた遺品のひとつに見覚えがあった彼は、すぐさま帝都へと舞い戻り、大学へと報せ、ビルネンベルクに出向いてもらって確認をしてもらった。
遺品はすでに、遺族のもとへと届けられていると、ビルネンベルクから聞かされている。
キルシェの訃報をリュディガーが聞いたのは、2日目の昨日。そして今日、こうしてここにいるのは、キルシウムのお陰だった。
通常であれば、帝都からは一週間前後はかかる距離だ。
すぐに駆けつけて状況を確認したかったが、あまりにも距離がありすぎる。父ローベルトのもとを訪れ、様子が可笑しいことを気にかけられたが毅然と平静を装い、いつものように世話をして__それでも無意識に足は帝都の東、街道の始まりに向いていた。
そうしていると、突然目の前にキルシウムが降り立ったのだ。__乗レ、と。
龍から降り立ったこと、そして認識票を確認した州軍の者は、非番の龍騎士だと思って、状況を説明してくれたのだ。__そして、今に至る。
しばしの無言の後、ため息交じりに彼が言葉を零す。
「__見間違いであったなら、と思ったよ」
「……」
「……お前は、ビルネンベルク様に教えられたのか」
「ああ……」
「遺品は……キルシェ嬢のものだと確認を取れたあとすぐに、ご遺族のもとへ届けられた」
「……先生から伺っている」
__彼女の、養父に、か……。
もう一方が揃ってから、引き渡す__では駄目だったのだろうか。
__駄目に決まっているな。
証拠があるのなら、すぐに報せに行くべきだ。
「聞いた話じゃ、密葬にするそうだな。そうっとしておいてほしい、と」
__そうっと、か……。
それは何故だろう。
自分の目論見が、彼女の死で狂ったからだろうか__。
戻ってきた従順な養女を、嫁がせ地位を盤石にする目論見。
__相手は龍騎士の大隊長以上の地位で、やっと釣り合いがとれるような存在。
有名貴族か、はたまた州政府の中枢にいるような輩か__。
__どちらにせよ、彼女が死んだことを嘆くことはないだろうな。
どこまで話しが進んでいたか知らないが、顔さえも合わせていないのだろう。近々会うはずだったラウペンの令嬢が死んだ、という程度。
__不幸だと、決めつけないで。
彼女のその言葉が、どうにも胸につかえていて、今でも鮮明に声も顔も思い出せる。
リュディガーは目を伏せて、労られている手に意識を向けた。
じんわり、と包み込む石が温かい。この石は火性を帯びた魔石で、こうして部分的に温めるためのものである。
指先にも血が通い始めたのか、ちりちり、とする感覚が出てきた。ここに至るまで、自身の手の有様など気にもしなかった。
「……もう大丈夫だ。感覚が戻ってきた。__ありがとう」
言って、彼の手から逃れ、握り込まされた石を彼に返す。
視線をどうしても合わせられず、リュディガーは視線を事切れた魔物へと向けた。
__こいつが、殺した……。
事切れてしまっているそれを、今更さらに嬲ろうとは思いはしないが、怒りのやり場がどこにも向けられない。
しかし不思議なもので、腸が煮えくり返る想いでいたというのに、事切れた魔物を見るにつけ、次第に自身の心が凪いでいく心地がする。
魔物の傍で龍騎士のひとりとやりとりをしていた獣人が、キルシウムの顔に近い首を、恐れることなく軽く撫でるのが見えた。キルシウムは嫌がる素振りを見せない。
龍騎士が駆る龍は、主人か、あるいは同胞とみなした者以外に触れられるのを、あまり好まない。
一般人も、龍という存在には畏敬の念を持っているため、羨望を抱くことはあっても、軽々しく触れようとまではしないものだ。
「__その男は、やはり龍騎士だったか」
歩み寄る獣人の声に、エルンストは顔を上げる。
「装備が甘いので、判断に迷ったぞ。無謀なこともしかけていたしな。__暇をもらっていたのだな、お前さんは」
険しい表情だったエルンストは、リュディガーにばかり気を取られていたからだろう、その獣人の姿を見てあっけにとられたような顔をした。
「ビルネンベルク……様……?」
直ぐ側まできて、槍を抱え込むようにして支えにし、屈む獣人。
その表情は、人の悪い笑みを浮かべている。
「いかにも。しかと正直に話せば__私は、アルティミシオン・フォン・ウント・ツー・ビルネンベルクだ」
これには、リュディガーもエルンストも言葉を逸した。
アルティミシオン・フォン・ウント・ツー・ビルネンベルク。帝国の重鎮たるその名を知らぬものはいない。
重鎮とされているから、もっと年配の姿を想像していたが、獣人の性なのだろうか、アルティミシオンは壮年というには若い見た目だった。ただ、貫禄は間違いなくある。どっしり構えて、何事にも動じなさそうな雰囲気。
慌てて、居住まいを正して跪礼をとるが、くつくつ、と笑われて制される。
「公の場ではない。やめてくれ。__色々と面倒で、州軍の連中には、ただの南兎の民で通っているのだからな。お前さんたちが龍騎士だから、正直に明かしたに過ぎん」
ちらり、と彼が見やった方から、人の群れがやってくるのが見えた。
さきほど離れていった州軍である。
「あとは、彼らに任せてもよかろう。現れるとしても、もはや雑魚ばかりだろうからな」
ふむ、とひとりごちたアルティミシオンは、リュディガーの肩に手をおいた。
その手は、よく知るビルネンベルクと似たような、長い指先の手。だが、武人らしく節くれだって力強く見えた。
「詳しくは聞かないが、親しい知り合いが不幸に見舞われたのだろうことは察した。__気をしっかりもて」
リュディガーは応えられず、視線を落とすに留める。そこには、遺髪。__銀の遺髪があった。
おい、とエルンストが肘で小突くが、反応さえできない。
非礼だとは思う。だが、それがどうした。
__どうでもいい。
国家の重鎮に非礼を働いて、それで罰があるのであれば、それを受けてもいいように思う。
__罰してくれ……。
息が詰まる。
いっそ罰してくれたほうが、いくらか気が楽になる__気がする。
__彼女は、もう、いない……。
重くのしかかる現実に、呼吸が苦しくなる。
本当に手の届かないところに行ってしまった。
もう二度と会うこともできない。
もしかしたら、いずれ__描いていた淡い期待さえも、打ち砕かれた。
__彼女の未来を潰した責任の一端は、俺にある……。
故郷へ戻る決意をしていた彼女。
どのような想いで、この道を進んでいたのか。
絶望していたのか。それともわずかばかりでも、戻ってからの展望に希望をいだいていてくれたのだろうか。
どちらにせよ、魔物に襲われた恐怖はすべてを凌駕したことだろう。
「……心中察してあまりある」
独り言のように言って、大きな手が離れていった。
「死別はいくら重ねても、身を裂かれるような気持ちに苛まれることに違いない」
リュディガーは、布の上の銀の遺髪を遠い視線で見つめた。
夢で、この銀の髪が広がる寝台で寝たのを思い出した。窓から差し込んだ月の明かりに照らされて、息を呑むほど美しかったのを覚えている。
__あの夢は……。
あれは、自分の妄想や願望が生み出したただの淫夢ではなかったのか。あるいは、死にゆく彼女の想いが『もの』となって__とそこでリュディガーは首を振る。
__なんて都合よい解釈をするんだ、俺は。
「……ビルネンベルク公。これを、お預かりしても?」
「私よりも親しい貴公が持つほうがよかろう。__良きに計らえ」
「ありがとう存じます」
衣嚢からハンカチを取り出す。__そのハンカチは、キルシェから贈られたものだ。
銀の御髪に手を伸ばす。
手の震えがおさまらない。
「__寒いな……悴んで……」
思ってもない言葉で誤魔化して、自嘲しながらぎこちなく銀の御髪を拾い上げてハンカチに乗せる。
__……私と貴方は、これ以上一緒にならない運命だったのよ。
思い起こされた言葉に、喉が詰まった。
視界が滲むのは、頭に当たる雨粒が肌を伝って目に入り込むからだ。
他の遺髪も続けて拾い上げ、丁寧に包んで、懐に忍ばせる。
__良きに、か。
良きに、とはどうすれば良いのだろう。
請け負わせてもらったが、何も考えられない。
呆然と残骸を__霧が薄くなった谷を見やることしかできなかった。
0
お気に入りに追加
164
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
【完結】お飾りの妻からの挑戦状
おのまとぺ
恋愛
公爵家から王家へと嫁いできたデイジー・シャトワーズ。待ちに待った旦那様との顔合わせ、王太子セオドア・ハミルトンが放った言葉に立ち会った使用人たちの顔は強張った。
「君はお飾りの妻だ。装飾品として慎ましく生きろ」
しかし、当のデイジーは不躾な挨拶を笑顔で受け止める。二人のドタバタ生活は心配する周囲を巻き込んで、やがて誰も予想しなかった展開へ……
◇表紙はノーコピーライトガール様より拝借しています
◇全18話で完結予定
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

愛しき夫は、男装の姫君と恋仲らしい。
星空 金平糖
恋愛
シエラは、政略結婚で夫婦となった公爵──グレイのことを深く愛していた。
グレイは優しく、とても親しみやすい人柄でその甘いルックスから、結婚してからも数多の女性達と浮名を流していた。
それでもシエラは、グレイが囁いてくれる「私が愛しているのは、あなただけだよ」その言葉を信じ、彼と夫婦であれることに幸福を感じていた。
しかし。ある日。
シエラは、グレイが美貌の少年と親密な様子で、王宮の庭を散策している場面を目撃してしまう。当初はどこかの令息に王宮案内をしているだけだと考えていたシエラだったが、実はその少年が王女─ディアナであると判明する。
聞くところによるとディアナとグレイは昔から想い会っていた。
ディアナはグレイが結婚してからも、健気に男装までしてグレイに会いに来ては逢瀬を重ねているという。
──……私は、ただの邪魔者だったの?
衝撃を受けるシエラは「これ以上、グレイとはいられない」と絶望する……。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

領地経営で忙しい私に、第三王子が自由すぎる理由を教えてください
ねむたん
恋愛
領地経営に奔走する伯爵令嬢エリナ。毎日忙しく過ごす彼女の元に、突然ふらりと現れたのは、自由気ままな第三王子アレクシス。どうやら領地に興味を持ったらしいけれど、それを口実に毎日のように居座る彼に、エリナは振り回されっぱなし!
領地を守りたい令嬢と、なんとなく興味本位で動く王子。全く噛み合わない二人のやりとりは、笑いあり、すれ違いあり、ちょっぴりときめきも──?
くすっと気軽に読める貴族ラブコメディ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる