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帝都の大学
夜のお喋り Ⅰ
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馬車を乗り継ぎ乗り継ぎ、およそ3回。
到着したのは、帝都まであと1回の乗り継ぎですむ街ツェーレン。
規模としてはかなり小規模なそこは、運河から離れているものの、徒歩でも3、4時間あれば帝都に辿り着けるような立地。
日中であれば遠く霞んで、まるで幻影のように帝都が見える__だが、今は夕闇の中に、息を潜めたような、ぽつぽつ、とした明かりが朧げに滲んで見えるばかり。
あと僅か、というところで進むのをやめたのはリュディガーの判断。
探せば馬車はあるだろうが、この街へ到着したときには日も傾いてしまって、帝都の門をくぐれるかどうかわからなかった。
北に聳える岩山『龍の山』に守られる帝都は、東西と南に大きな門があり、これらは日が沈む頃には閉門してしまうのだ。
閉門は厳格で、公の荷馬車などでない限り、開門されることはない。
街へ到着するなり、ここで逗留することを決めたリュディガーは、宿を4つ提案してきた。
街といえども小規模だから、どれもさほど距離が離れておらず固まっていて、見て回ることが出来た。
その中で、中心から外れた閑静な場所にある宿にキルシェは決めた。
宿は二階建て。帝都近郊の街であるから、何も催し物がなくても常に半数以上は埋まっていて、他の宿も同様かそれ以上の混み具合のようだった。
宿の近くには穏やかな流れの川があり、これは運河へと流れ込む川である。__これが、この宿に決めた理由だった。
早々に宿を決められたお陰で、食堂が込み合う前に宿で食事を済ませられた。
そして、食事後は別れてそれぞれの部屋に下がる。
キルシェがあてがわれた部屋は、2階の浴室とご不浄が備えられている部屋。こうした設備は共有であることが多く、この部屋のように別途部屋に備えられている場合、それは格上の部屋である。
宿の部屋は、謂うなれば、中の上__大学の部屋よりも広く、調度品もそれなりのもの。寝台も、一人で寝るには広すぎる。
この部屋で食事以外のことが済ませてしまうから、食後は籠もってしまうことは必至。
手持ち無沙汰になる前にキルシェは湯浴みをし、窓際のテーブルで一服のお茶をとった。
満月に近い今夜は、月明かりに照らされて夜の景色がよく見える。周囲の景観が気に入って決めたキルシェは、それを眺めながらゆっくりとお茶を飲む。
そのお茶の最後の一口を口に含んだところで、外に見える川辺に人影があることに気づいた。
植栽された木々でだいぶ隠されていたから、この時まで気づかなかった人影。
「リュディガー……?」
背の高い彼を見落としそうもないのだが、どうやら彼は長椅子に腰掛けているらしく、気づくのが遅れたようだ。
昼以降__この街にたどり着くまでの道中の彼が、少しばかりいつもと違ったように思えた。
他愛ない会話はするにはするが、それは大抵自分から話題を振ればできる会話で、彼からは少なかったように思う。
どちらもお喋りというほうではないし、無言で過ごしても苦にならない間柄で、そこまで気にしなくてよいのかもしれないが、キルシェにはずっとひっかかっていのだ。
どこか自分に対して、彼が腫れ物に触れるようにも、キルシェの目には見えていた。
__様子を見にいこう……。
キルシェは、昼に着ていた前掛けと薄手の羽織物を纏うと、毛足の長い絨毯が敷かれた部屋を後にした。
静かで涼しく、川のせせらぎの合間に虫の音が聞こえる川辺__キルシェが決め手にした川沿いの道には、ずらり、と紫陽花が植え付けられていた。
それはしかし、残念なことに時期がずれていて、色あせた花が残っているだけ。それでも、それはそれで味があるように見える。
その植栽の向こうの長椅子にリュディガーは座っていた。
声をかけようとしたキルシェは、しかし彼の姿を間近に見て迷いが生じた。
両膝にそれぞれ肘をつき、前傾する彼は、水面を遠い視線で眺めているのだが、徐に白鑞でできているのだろう小型の水筒を取り出すと、一口煽ったのだ。そして、ため息を零す様は、中身が酒だと示唆していた。
何を考えているのか__リュディガーは、手元の白鑞の水筒を遠い眼差しで見つめて、振るように燻らせる。
普段の彼と違い、どこか声を掛けるには憚られる雰囲気に、キルシェは半歩下がる__が、その動きを視界に捉えたらしい彼が、はっ、として顔を向けてきた。
驚いた表情で、キルシェを見つめたまま固まって動かないリュディガー。キルシェもまたそこまでの驚かれ方をされるとは思わなかったから、固まってしまった。
「……こん、ばんは……」
辛うじて言ってはみるが、顔は強張った笑みになっていることだろう。
それを聞いて、リュディガーは我に返ったように瞬いて、軽く手を上げる。
__えぇっと……。
「……窓から見えたので……」
キルシェは宿の2階の窓を指し示す。
「そう、か」
「ええ。……あの、それだけで……」
そう。目的はなかった。
彼がいて、それを見かけたから、部屋を後にしてここにいる。
恐らくだが、彼の反応を見るに、独りで思案したいことがあったのだろう。現に思いにふけていたのだから、これ以上長居をして、広げられもしない取り繕うような会話で間をもたせるのは、迷惑に違いない。
「それ……だけ……です、の、で……」
途端に、考えもなくやって来た自分が気恥ずかしくなって、キルシェは誤魔化すように視線を落として笑みを浮かべる。
「えぇっと……では、おやすみな__」
「キルシェ」
言う先を制するように名を呼ぶリュディガーに、さらに半歩下がろうとしていたキルシェは足を止める。
彼を見れば、席を立ったところだった。
「待ってくれ。まだ寝るつもりがないのなら、少し時間をくれないか?」
わざわざ立ち上がって言った彼の言葉はあまりにも予想外で、キルシェは、えっ、と目を見開いた。
「……お邪魔、では?」
「いや。食事の後、まだ夕闇だったし、就寝するだろう時間までだいぶあるから、このあたりの景色が気に入っていたのなら散歩でも、と……実は声をかけようか迷っていたんだ」
「それは……そうしてくださっていたら、とても嬉しかったです」
キルシェが穏やかに笑って言えば、リュディガーは苦笑を浮かべる。
「だが、疲れているだろう、と声をかけるのはやめた。__で、こうして独りでぼんやりしていたわけだ」
「そうでしたか。お気遣いをありがとう。__もし、今からでもよろしいのなら、是非」
「散歩をするにはもう暗すぎるから__ここでよければ」
彼は座っていた長椅子を示して、座るように促す。
キルシェは頷いて、長椅子へと歩み寄り腰を下ろした。
「__時期だったら、綺麗だったでしょうね」
「そうだな」
何が、とは言わずとも、並んで座ろうとする彼は何を言っているのか理解したらしい。自分たちの背後、そして対岸に植栽されている紫陽花に視線をそれぞれ流すリュディガー。
「まあ、これでも十分な景色だ。君のお眼鏡にかなうぐらいの」
「ですね。__お酒を飲んでいらしたの?」
ああ、と頷いて、白鑞の水筒を軽く掲げるリュディガー。
「リュディガーでも、そういう風にお酒を飲むことがあるのね」
「お行儀悪く飲むことだってあるさ」
「……お行儀悪いの? それは」
「君が水筒で、こうして飲むのは、世間一般からしたら、あまり心象は良くないんじゃないか? そういう意味では」
肩をすくめて白鑞を示すリュディガー。
「素行不良?」
「__と思われるかもしれないな」
「リュディガーも思います?」
「私は……最初目の当たりにしたら驚くだろうが、そこまでは思わないな。なら、一緒に__と飲み始めるだろう」
キルシェはくすり、と笑う。
「流石にこれは口をつけてしまったから……何か、贖ってこようか? 酒でなくても何か……」
「いえ、大丈夫です。ありがとう」
キルシェは、空を振り仰ぐ。
銀砂を振りまいたような空。
満月に近づいていて明るい空ではあるものの、帝都とは違い人工的な地上の明かりが少ない分、よく見えた。
到着したのは、帝都まであと1回の乗り継ぎですむ街ツェーレン。
規模としてはかなり小規模なそこは、運河から離れているものの、徒歩でも3、4時間あれば帝都に辿り着けるような立地。
日中であれば遠く霞んで、まるで幻影のように帝都が見える__だが、今は夕闇の中に、息を潜めたような、ぽつぽつ、とした明かりが朧げに滲んで見えるばかり。
あと僅か、というところで進むのをやめたのはリュディガーの判断。
探せば馬車はあるだろうが、この街へ到着したときには日も傾いてしまって、帝都の門をくぐれるかどうかわからなかった。
北に聳える岩山『龍の山』に守られる帝都は、東西と南に大きな門があり、これらは日が沈む頃には閉門してしまうのだ。
閉門は厳格で、公の荷馬車などでない限り、開門されることはない。
街へ到着するなり、ここで逗留することを決めたリュディガーは、宿を4つ提案してきた。
街といえども小規模だから、どれもさほど距離が離れておらず固まっていて、見て回ることが出来た。
その中で、中心から外れた閑静な場所にある宿にキルシェは決めた。
宿は二階建て。帝都近郊の街であるから、何も催し物がなくても常に半数以上は埋まっていて、他の宿も同様かそれ以上の混み具合のようだった。
宿の近くには穏やかな流れの川があり、これは運河へと流れ込む川である。__これが、この宿に決めた理由だった。
早々に宿を決められたお陰で、食堂が込み合う前に宿で食事を済ませられた。
そして、食事後は別れてそれぞれの部屋に下がる。
キルシェがあてがわれた部屋は、2階の浴室とご不浄が備えられている部屋。こうした設備は共有であることが多く、この部屋のように別途部屋に備えられている場合、それは格上の部屋である。
宿の部屋は、謂うなれば、中の上__大学の部屋よりも広く、調度品もそれなりのもの。寝台も、一人で寝るには広すぎる。
この部屋で食事以外のことが済ませてしまうから、食後は籠もってしまうことは必至。
手持ち無沙汰になる前にキルシェは湯浴みをし、窓際のテーブルで一服のお茶をとった。
満月に近い今夜は、月明かりに照らされて夜の景色がよく見える。周囲の景観が気に入って決めたキルシェは、それを眺めながらゆっくりとお茶を飲む。
そのお茶の最後の一口を口に含んだところで、外に見える川辺に人影があることに気づいた。
植栽された木々でだいぶ隠されていたから、この時まで気づかなかった人影。
「リュディガー……?」
背の高い彼を見落としそうもないのだが、どうやら彼は長椅子に腰掛けているらしく、気づくのが遅れたようだ。
昼以降__この街にたどり着くまでの道中の彼が、少しばかりいつもと違ったように思えた。
他愛ない会話はするにはするが、それは大抵自分から話題を振ればできる会話で、彼からは少なかったように思う。
どちらもお喋りというほうではないし、無言で過ごしても苦にならない間柄で、そこまで気にしなくてよいのかもしれないが、キルシェにはずっとひっかかっていのだ。
どこか自分に対して、彼が腫れ物に触れるようにも、キルシェの目には見えていた。
__様子を見にいこう……。
キルシェは、昼に着ていた前掛けと薄手の羽織物を纏うと、毛足の長い絨毯が敷かれた部屋を後にした。
静かで涼しく、川のせせらぎの合間に虫の音が聞こえる川辺__キルシェが決め手にした川沿いの道には、ずらり、と紫陽花が植え付けられていた。
それはしかし、残念なことに時期がずれていて、色あせた花が残っているだけ。それでも、それはそれで味があるように見える。
その植栽の向こうの長椅子にリュディガーは座っていた。
声をかけようとしたキルシェは、しかし彼の姿を間近に見て迷いが生じた。
両膝にそれぞれ肘をつき、前傾する彼は、水面を遠い視線で眺めているのだが、徐に白鑞でできているのだろう小型の水筒を取り出すと、一口煽ったのだ。そして、ため息を零す様は、中身が酒だと示唆していた。
何を考えているのか__リュディガーは、手元の白鑞の水筒を遠い眼差しで見つめて、振るように燻らせる。
普段の彼と違い、どこか声を掛けるには憚られる雰囲気に、キルシェは半歩下がる__が、その動きを視界に捉えたらしい彼が、はっ、として顔を向けてきた。
驚いた表情で、キルシェを見つめたまま固まって動かないリュディガー。キルシェもまたそこまでの驚かれ方をされるとは思わなかったから、固まってしまった。
「……こん、ばんは……」
辛うじて言ってはみるが、顔は強張った笑みになっていることだろう。
それを聞いて、リュディガーは我に返ったように瞬いて、軽く手を上げる。
__えぇっと……。
「……窓から見えたので……」
キルシェは宿の2階の窓を指し示す。
「そう、か」
「ええ。……あの、それだけで……」
そう。目的はなかった。
彼がいて、それを見かけたから、部屋を後にしてここにいる。
恐らくだが、彼の反応を見るに、独りで思案したいことがあったのだろう。現に思いにふけていたのだから、これ以上長居をして、広げられもしない取り繕うような会話で間をもたせるのは、迷惑に違いない。
「それ……だけ……です、の、で……」
途端に、考えもなくやって来た自分が気恥ずかしくなって、キルシェは誤魔化すように視線を落として笑みを浮かべる。
「えぇっと……では、おやすみな__」
「キルシェ」
言う先を制するように名を呼ぶリュディガーに、さらに半歩下がろうとしていたキルシェは足を止める。
彼を見れば、席を立ったところだった。
「待ってくれ。まだ寝るつもりがないのなら、少し時間をくれないか?」
わざわざ立ち上がって言った彼の言葉はあまりにも予想外で、キルシェは、えっ、と目を見開いた。
「……お邪魔、では?」
「いや。食事の後、まだ夕闇だったし、就寝するだろう時間までだいぶあるから、このあたりの景色が気に入っていたのなら散歩でも、と……実は声をかけようか迷っていたんだ」
「それは……そうしてくださっていたら、とても嬉しかったです」
キルシェが穏やかに笑って言えば、リュディガーは苦笑を浮かべる。
「だが、疲れているだろう、と声をかけるのはやめた。__で、こうして独りでぼんやりしていたわけだ」
「そうでしたか。お気遣いをありがとう。__もし、今からでもよろしいのなら、是非」
「散歩をするにはもう暗すぎるから__ここでよければ」
彼は座っていた長椅子を示して、座るように促す。
キルシェは頷いて、長椅子へと歩み寄り腰を下ろした。
「__時期だったら、綺麗だったでしょうね」
「そうだな」
何が、とは言わずとも、並んで座ろうとする彼は何を言っているのか理解したらしい。自分たちの背後、そして対岸に植栽されている紫陽花に視線をそれぞれ流すリュディガー。
「まあ、これでも十分な景色だ。君のお眼鏡にかなうぐらいの」
「ですね。__お酒を飲んでいらしたの?」
ああ、と頷いて、白鑞の水筒を軽く掲げるリュディガー。
「リュディガーでも、そういう風にお酒を飲むことがあるのね」
「お行儀悪く飲むことだってあるさ」
「……お行儀悪いの? それは」
「君が水筒で、こうして飲むのは、世間一般からしたら、あまり心象は良くないんじゃないか? そういう意味では」
肩をすくめて白鑞を示すリュディガー。
「素行不良?」
「__と思われるかもしれないな」
「リュディガーも思います?」
「私は……最初目の当たりにしたら驚くだろうが、そこまでは思わないな。なら、一緒に__と飲み始めるだろう」
キルシェはくすり、と笑う。
「流石にこれは口をつけてしまったから……何か、贖ってこようか? 酒でなくても何か……」
「いえ、大丈夫です。ありがとう」
キルシェは、空を振り仰ぐ。
銀砂を振りまいたような空。
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