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帝都の大学
お駄賃と相場
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さらにキルシェはスカート__前掛けの上に落ちているだろう、細かい汚れを払おうと持ち上げたところで、リュディガーが言う。
「__あれ……それは前掛けだったのか」
「ええ、前掛けですよ」
これは朝からしていたのだが、前掛けだと彼はこの時初めて気づいたらしい。
「例の染み隠しに」
キルシェは、ちらり、とその鮮やかな刺繍の前掛けを避けて、スカートに広がる葡萄酒の染みを示した。
赤地に黒、青緑、金の幾何学的な刺繍が施されたそれは、キルシェの出身であるイェソド州の女性が日常的に身につける前掛けである。見た目の華やかさにも重きをおいているのが特徴。
「それは、君が刺した?」
「叩き込まれました。大学に入ってからはやっておりませんし、家を出るまででしたから、そんなに数はないのですが……ほら、嫁入り道具に持っていく習わしがあるので」
「……なるほど」
物心着いた頃から嫁ぐまでに日用品に刺繍をしておき、嫁入り道具として持参するのが、帝国各地にある古くからの習わし。これは、上流階級でも伝統的に続いていることである。
ご他言にもれず、キルシェも用意してある。ただ、寄宿学校、大学生活という人生で、あまりにも時間がないため、数は一般的な数に比べれば少ないことは違いない。
「変です?」
「変ではないが……昨夜とは打って変わって、庶民だな、と」
キルシェは裕福な環境であるから上流階級のくくりに入るが、無位なことには違いない。庶民と言えば庶民なのだ。
それを失念しているリュディガーの言葉に、思わず笑ってしまう。
「夫人がおっしゃっていたでしょう? 私は何でも着こなせるのです」
「__のようだ」
冗談めかして胸を張ってすまし顔をして見せれば、リュディガーは罰の悪い顔で苦笑を浮かべた。
__先生がいたら、弄らずにはいられない顔でしょうね。先生は今頃何を……あら? 先生……?
何か失念している気がする。何だっただろうか、とそれほど深く考える前に、キルシェは思い出した。
「あ! そういえば」
「ん?」
「先生から、預かっているものがあったのでした」
「ほう?」
「先程、船に乗り込まれるとき、別れてから開けるように、と仰られて……」
これ、とキルシェは自身の荷物に引っ掛けておいた手のひら大の包みを取り出して、膝に置き広げる。
すると巾着と、それに封書が添えられていて、キルシェは封書をまずは手に取り開封する。
「まぁ……」
「なんだって?」
食事をすすめながら、リュディガーが問う。
「……先生、見越していたみたいです」
怪訝にするリュディガーに、キルシェは手紙の文面を読み上げる。
「__お手伝い、ご苦労様だったね。いつも我儘に付き合ってくれて、ありがとうキルシェ。乗合馬車は、もしかしたら最終便に乗りそびれるかもしれないから、そうなった時はこれを使って、リュディガーと相談の上、お宿をとって休みなさい。明日に出ても矢馳せ馬の鍛錬には間に合うはずだから、慌てないように。2人分のお駄賃も添えてあるからね__だそうです」
「お駄賃……」
「ええ、お駄賃」
「……言、い、か、たぁ……」
げんなり、として区切って言うリュディガーに、思わず笑って手紙を渡す。
「先生らしいが……まったく」
その文面を辿った彼は、虚脱するようにため息を零した。
キルシェは、巾着の口を開けて中身を確認する。
その中には、折りたたまれた紙が2つ入っていて、まずはそれを取り出してみると、ずしり、と重い丸い物が包まれるようにして折りたたまれた代物だった。
もしや、と思いひとつ__キルシェへ、と書かれた方を開いてみれば、中には銅貨が3枚。
銅貨には、龍面の横顔が刻印されている。これは1枚で1ルムの価値。
帝国において、貨幣は金銀銅、そして青銅が使われている。どれもそれぞれの含有率によって価値が異なり、刻印によって見分ける。
一月の平均収入は30ルム前後で、今回忍ばされていた3ルムというお駄賃は、日当に換算しても多い方__否、多すぎると言ってもよい。
「気づかれないよう、包んで音がしないようにしていたようです」
リュディガーにも、彼の名前が記された同様のそれを渡す。
受け取った彼も中身を改めるが、そちらには銅貨が1枚。
「私は、運搬だけだぞ。多いだろう、これは」
「先生は、必ず寄越すんですよね……妥当な対価だから、と。そのぐらい助けられているんだから受け取ってくれ、と」
以前、薬草を運搬した時も、後から食事を労いでご馳走になった。常に欠かさず、どんな形であれお礼をするのがビルネンベルク担当教官なのだ。
呻くようにお駄賃を見つめるリュディガーを他所に、巾着の中を改めてみれば、そこには矢車菊の刻印がされた銀貨。これは5ルムの価値がある。
「__お宿代ということ……よね?」
「多すぎる」
リュディガーは頭を抱えた。
「相場がおかしいだろう。どんな宿に泊まれと言うんだ」
「お宿はだいたいどのぐらいなの?」
「ぴんきりだが__」
「ぴんきり……?」
「あー……色々あるということだ。選ばなければ、一泊、素泊まりで30ミトリぐらいでも十分だ」
ミトリはルムの下の貨幣単位。100ミトリで1ルムとなる。
「すみません、素泊まり、とは?」
「食事が提供されない宿泊のことだ」
「食事は……?」
「外で食べる」
なるほど、とキルシェは頷いた。
「この街でも5ルムの宿といったら__あぁ……そうか、そういうことか。それはそうか、当然だな」
リュディガーは急に勢いを欠いて、独りごちて空を仰いだ。
「どうしたのです?」
キルシェが尋ねるが、しばし彼は空を仰いだままだった。そして、ため息を吐き出すようにしながら、顔を下ろしてキルシェへと向ける。
「__君が居て、安宿には泊まるな、ということだ」
「ですが、先程も申し上げましたが、私、どんなお宿でも大丈夫ですよ?」
リュディガーは肩をすくめてカトラリーを取る。
「君が良くても、先生がよくない、とのご判断だ。私も、安普請のところに泊めるつもりはない。まったくもって同意見だ。だが、先生は私が考えている以上のところを、最低限と定めている、ということだ」
「はぁ……」
歯切れ悪く答えれば、苦笑を浮かべるリュディガーは残りの食事の片付けに入った。
「まがりなりにも、ビルネンベルク家のドゥーヌミオンのお付きでご相伴相手を務めるようなご令嬢なわけだから」
「……吊床にも寝かせていただいたのに?」
「それとこれとは別、ということだな」
「別……?」
「先生がその場にいて、篩いにかけた逗留先__目の当たりにして、納得して、提示したところから選ばせ、君と同じ環境で寝るんだ。だが今はいないだろう」
キルシェは呻いた。
「私が同じ立場なら、同じことをしたと思うから、先生のご意向には素直に従う」
「そうなの?」
ああ、とリュディガーはさも、当たり前、と言わんとする顔で頷いた。
「__辿り着いた先でいくつか見繕いはするが、それは、先生があとで聞いても怪訝な顔をされないような宿にさせてもらう。そういうわけで、野宿なんてことは選択肢から消えるということだ」
__確かに、お代を出してもらって、ご意向に反してはいけないわよね……。
「至極残念そうな顔をしているようだが、最終決定権は君にある。見繕った中から選んでくれ」
わかりました、とキルシェは苦笑した。
「__あれ……それは前掛けだったのか」
「ええ、前掛けですよ」
これは朝からしていたのだが、前掛けだと彼はこの時初めて気づいたらしい。
「例の染み隠しに」
キルシェは、ちらり、とその鮮やかな刺繍の前掛けを避けて、スカートに広がる葡萄酒の染みを示した。
赤地に黒、青緑、金の幾何学的な刺繍が施されたそれは、キルシェの出身であるイェソド州の女性が日常的に身につける前掛けである。見た目の華やかさにも重きをおいているのが特徴。
「それは、君が刺した?」
「叩き込まれました。大学に入ってからはやっておりませんし、家を出るまででしたから、そんなに数はないのですが……ほら、嫁入り道具に持っていく習わしがあるので」
「……なるほど」
物心着いた頃から嫁ぐまでに日用品に刺繍をしておき、嫁入り道具として持参するのが、帝国各地にある古くからの習わし。これは、上流階級でも伝統的に続いていることである。
ご他言にもれず、キルシェも用意してある。ただ、寄宿学校、大学生活という人生で、あまりにも時間がないため、数は一般的な数に比べれば少ないことは違いない。
「変です?」
「変ではないが……昨夜とは打って変わって、庶民だな、と」
キルシェは裕福な環境であるから上流階級のくくりに入るが、無位なことには違いない。庶民と言えば庶民なのだ。
それを失念しているリュディガーの言葉に、思わず笑ってしまう。
「夫人がおっしゃっていたでしょう? 私は何でも着こなせるのです」
「__のようだ」
冗談めかして胸を張ってすまし顔をして見せれば、リュディガーは罰の悪い顔で苦笑を浮かべた。
__先生がいたら、弄らずにはいられない顔でしょうね。先生は今頃何を……あら? 先生……?
何か失念している気がする。何だっただろうか、とそれほど深く考える前に、キルシェは思い出した。
「あ! そういえば」
「ん?」
「先生から、預かっているものがあったのでした」
「ほう?」
「先程、船に乗り込まれるとき、別れてから開けるように、と仰られて……」
これ、とキルシェは自身の荷物に引っ掛けておいた手のひら大の包みを取り出して、膝に置き広げる。
すると巾着と、それに封書が添えられていて、キルシェは封書をまずは手に取り開封する。
「まぁ……」
「なんだって?」
食事をすすめながら、リュディガーが問う。
「……先生、見越していたみたいです」
怪訝にするリュディガーに、キルシェは手紙の文面を読み上げる。
「__お手伝い、ご苦労様だったね。いつも我儘に付き合ってくれて、ありがとうキルシェ。乗合馬車は、もしかしたら最終便に乗りそびれるかもしれないから、そうなった時はこれを使って、リュディガーと相談の上、お宿をとって休みなさい。明日に出ても矢馳せ馬の鍛錬には間に合うはずだから、慌てないように。2人分のお駄賃も添えてあるからね__だそうです」
「お駄賃……」
「ええ、お駄賃」
「……言、い、か、たぁ……」
げんなり、として区切って言うリュディガーに、思わず笑って手紙を渡す。
「先生らしいが……まったく」
その文面を辿った彼は、虚脱するようにため息を零した。
キルシェは、巾着の口を開けて中身を確認する。
その中には、折りたたまれた紙が2つ入っていて、まずはそれを取り出してみると、ずしり、と重い丸い物が包まれるようにして折りたたまれた代物だった。
もしや、と思いひとつ__キルシェへ、と書かれた方を開いてみれば、中には銅貨が3枚。
銅貨には、龍面の横顔が刻印されている。これは1枚で1ルムの価値。
帝国において、貨幣は金銀銅、そして青銅が使われている。どれもそれぞれの含有率によって価値が異なり、刻印によって見分ける。
一月の平均収入は30ルム前後で、今回忍ばされていた3ルムというお駄賃は、日当に換算しても多い方__否、多すぎると言ってもよい。
「気づかれないよう、包んで音がしないようにしていたようです」
リュディガーにも、彼の名前が記された同様のそれを渡す。
受け取った彼も中身を改めるが、そちらには銅貨が1枚。
「私は、運搬だけだぞ。多いだろう、これは」
「先生は、必ず寄越すんですよね……妥当な対価だから、と。そのぐらい助けられているんだから受け取ってくれ、と」
以前、薬草を運搬した時も、後から食事を労いでご馳走になった。常に欠かさず、どんな形であれお礼をするのがビルネンベルク担当教官なのだ。
呻くようにお駄賃を見つめるリュディガーを他所に、巾着の中を改めてみれば、そこには矢車菊の刻印がされた銀貨。これは5ルムの価値がある。
「__お宿代ということ……よね?」
「多すぎる」
リュディガーは頭を抱えた。
「相場がおかしいだろう。どんな宿に泊まれと言うんだ」
「お宿はだいたいどのぐらいなの?」
「ぴんきりだが__」
「ぴんきり……?」
「あー……色々あるということだ。選ばなければ、一泊、素泊まりで30ミトリぐらいでも十分だ」
ミトリはルムの下の貨幣単位。100ミトリで1ルムとなる。
「すみません、素泊まり、とは?」
「食事が提供されない宿泊のことだ」
「食事は……?」
「外で食べる」
なるほど、とキルシェは頷いた。
「この街でも5ルムの宿といったら__あぁ……そうか、そういうことか。それはそうか、当然だな」
リュディガーは急に勢いを欠いて、独りごちて空を仰いだ。
「どうしたのです?」
キルシェが尋ねるが、しばし彼は空を仰いだままだった。そして、ため息を吐き出すようにしながら、顔を下ろしてキルシェへと向ける。
「__君が居て、安宿には泊まるな、ということだ」
「ですが、先程も申し上げましたが、私、どんなお宿でも大丈夫ですよ?」
リュディガーは肩をすくめてカトラリーを取る。
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「はぁ……」
歯切れ悪く答えれば、苦笑を浮かべるリュディガーは残りの食事の片付けに入った。
「まがりなりにも、ビルネンベルク家のドゥーヌミオンのお付きでご相伴相手を務めるようなご令嬢なわけだから」
「……吊床にも寝かせていただいたのに?」
「それとこれとは別、ということだな」
「別……?」
「先生がその場にいて、篩いにかけた逗留先__目の当たりにして、納得して、提示したところから選ばせ、君と同じ環境で寝るんだ。だが今はいないだろう」
キルシェは呻いた。
「私が同じ立場なら、同じことをしたと思うから、先生のご意向には素直に従う」
「そうなの?」
ああ、とリュディガーはさも、当たり前、と言わんとする顔で頷いた。
「__辿り着いた先でいくつか見繕いはするが、それは、先生があとで聞いても怪訝な顔をされないような宿にさせてもらう。そういうわけで、野宿なんてことは選択肢から消えるということだ」
__確かに、お代を出してもらって、ご意向に反してはいけないわよね……。
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