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帝都の大学
人馬一体の試み Ⅰ
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マルギットと並ぶようにして、馬を歩ませる。
ミスカンサスは本当に冷静で、淡々と進む馬だ。癖らしい癖も無ければ、主張もないようである。
__それはそれで、気がかりだけれども。これは様子見ね。
馬は往々にして賢い。乗り手によっては下に見ることもあるから、こちらの出方を見ているのかもしれない。
それはそうと、鞍である。
横乗りの女鞍は、鐙に片足だけを置いて、もう一方は鞍に引っ掛けるような姿勢で、そこまで不安定ではないものの、やはり跨っているほうが両足を鐙につけているから格段に安定感は勝るのがわかる。
「すみません、少し離れます」
呼ばれたので、とマルギットが申し訳無さそうに一礼して、キルシェのそばから離脱して、止まった馬上から見渡すゲオルクの方へと駆け出していく。
それを見送ってから、馬体の厚みを実感して試しに立ち上がってみるものの、思ったほど鞍と臀部との間に空間がないように思う。膝に近い太ももは馬体の厚みで、鞍から離れず接したままだ。
__立ったとしても、思ったほど馬体からは離れないのね。なるほど。
キルシェがひっそりと立ち乗りを試していれば、一馬身ほど先を行くリュディガーの歩みが止まったのを、視界の端で捉えた。
「__キルシェ、耳飾りが無くなっている」
落としたか、と彼は来た方へと地面の上を浚うように視線を流していく。
「ああ、それは大丈夫です。目敏いですね、していないのに気づくなんて」
承知だということを笑顔で伝えるキルシェ。
「それは、まぁ……違和感があってな。何か足りない、と。__外していたのか」
ええ、と彼に並んだところで馬を止め、布に包んだそれを見せる。それを見た途端、僅かにリュディガーが眉をひそめた。
「まさか、それ、手に持ったまま乗ったのか?」
「ええ」
「乗ってから、ずっと今まで?」
「ええ、そうよ。外すことを考えていなくて、小物入れを持参し忘れたの」
器用だな、と笑うリュディガー。
「__私が預かろうか?」
「いいの?」
「ああ、かまわない」
革の腰当ての下から見え隠れするのは、小ぶりな合切袋。つい先日、そこから土器を取り出していた袋である。
その口を片手で寛げた彼は、中をちらり、と見て手を止める。
「__あ、待った。これがあった」
言って、合切袋から取り出したのは、さらに小さな小物入れの空袋。
「それなら、入るだろう。貸しておく。紐が長めだから、締めた紐の輪に手首を通せば、とりあえずは落とさないはずだ」
手にしたそれは、とても柔らかい革製。もしかしたら先日の土器は、更にここに入れられていたのかもしれない。
「今日だけお借りしますね。次回はちゃんと持ってきます」
助かります、とキルシェは彼の厚意を受け取って、その中に包みごと耳飾りを入れて口を縛り、紐の輪に手首を潜らす。
長めとは彼は言ったが、ほどよいゆとりしかないから、これなら口が空いてしまうことも、手首が抜けて仕舞うこともなさそうだ。
「__やはり、細いな」
「え?」
「通せば、とは言ったが、私では手が通らん」
自嘲してリュディガーが示す彼の腕は、たしかに太い。
「私の手首でも通らなかったかもしれないのに、通せばと言ったのね」
「通るだろう、とは分かっていた。先日、掴まざるを得なかったからな」
人の悪い笑みを浮かべられ、キルシェは顔に染まるのがわかった。
__蛍の……。
足をぬかるみにとられ、靴からすっぽりと足だけ抜け、均衡を崩した自分の失態を思い出す。キルシェは口を一文字に引き結んで、片手で顔を押さえた。
「お願い……忘れて」
「難しい相談だな。私だけが握る君の弱みだから」
ちらつかせて、交渉を優位に__傍から見れば笑い話だろうが、キルシェには未だに笑い話に昇華できない失態なのだから、優良な交渉材料には違いない。
「リュディガーって、結構、人が悪いですよね」
「おや、今頃気づいたか。__まあ、ビルネンベルク先生には劣るが」
はぁ、とため息を零して、顔を押さえていた手を離す__と、その視界の遠い所に、ヘルゲが何か作業をしている姿があった。
「あれは……的、よね……?」
怪訝な声に、リュディガーも視線の先を見やる。
「……的、だな」
それは、夏至祭の矢馳せ馬で見かけた、菱形の的。その数3つ。柵の支柱に括り付けてあるだけだが、間違いなくそれだった。
その真ん中の的へ、ゲオルクが速歩で馬を進めた。
「__諸君、注目!」
馬場全体に響き渡るよう声を張る彼に、一様に馬を止める候補者たち。
「これが、本番に使う的だ。知っているだろうが、これをご覧の通り等間隔で3つ配置して、それを順次射抜いてもらう」
ゲオルクはそこで馬体を的に対して並行にすると手綱を離し、身体を伸び上がらせるようにして立った。
「鞍に尻はつけない、立ち透かしという乗り方で駆け抜ける。馬への指示は舌鼓と手綱だ」
__舌鼓と手綱……。手綱?
キルシェは反芻する言葉に、首をかしげてしまう。
「まあ、厳密には手放しで走ることになるから、舌鼓と……あれだ、あれ、以心伝心というやつだな。それで御す」
そこからが不思議で、手放しを強調するように手を挙げるゲオルクの身体の重心が少しばかり後ろへずれたように見えた直後、馬体が後退していく。
これには、おお、と驚いた小さな声がほうぼうから漏れ聞こえた。
「まぁ、重心の掛け方だな。これをするには、確実に馬との間に信頼がなければならない……そう、所謂、人馬一体に近いものだ」
そのまま端の的を通り過ぎようというところで手綱を持ち、馬首を返したゲオルクは彼が先程までいた場所まで駆け戻る。
「リュディガー」
戻りながら、彼はリュディガーを呼びつける。それに、はっ、と反射にも近い反応で短く答えた彼。
キルシェに、行ってくる、と目配せで言ってから、小さく短い舌打ち__舌鼓を2つして馬を走らせた。
そして、ゲオルクにリュディガーがたどり着いたときにはヘルゲも傍にいて、その彼からリュディガーは何かを手渡されるのだった。
ミスカンサスは本当に冷静で、淡々と進む馬だ。癖らしい癖も無ければ、主張もないようである。
__それはそれで、気がかりだけれども。これは様子見ね。
馬は往々にして賢い。乗り手によっては下に見ることもあるから、こちらの出方を見ているのかもしれない。
それはそうと、鞍である。
横乗りの女鞍は、鐙に片足だけを置いて、もう一方は鞍に引っ掛けるような姿勢で、そこまで不安定ではないものの、やはり跨っているほうが両足を鐙につけているから格段に安定感は勝るのがわかる。
「すみません、少し離れます」
呼ばれたので、とマルギットが申し訳無さそうに一礼して、キルシェのそばから離脱して、止まった馬上から見渡すゲオルクの方へと駆け出していく。
それを見送ってから、馬体の厚みを実感して試しに立ち上がってみるものの、思ったほど鞍と臀部との間に空間がないように思う。膝に近い太ももは馬体の厚みで、鞍から離れず接したままだ。
__立ったとしても、思ったほど馬体からは離れないのね。なるほど。
キルシェがひっそりと立ち乗りを試していれば、一馬身ほど先を行くリュディガーの歩みが止まったのを、視界の端で捉えた。
「__キルシェ、耳飾りが無くなっている」
落としたか、と彼は来た方へと地面の上を浚うように視線を流していく。
「ああ、それは大丈夫です。目敏いですね、していないのに気づくなんて」
承知だということを笑顔で伝えるキルシェ。
「それは、まぁ……違和感があってな。何か足りない、と。__外していたのか」
ええ、と彼に並んだところで馬を止め、布に包んだそれを見せる。それを見た途端、僅かにリュディガーが眉をひそめた。
「まさか、それ、手に持ったまま乗ったのか?」
「ええ」
「乗ってから、ずっと今まで?」
「ええ、そうよ。外すことを考えていなくて、小物入れを持参し忘れたの」
器用だな、と笑うリュディガー。
「__私が預かろうか?」
「いいの?」
「ああ、かまわない」
革の腰当ての下から見え隠れするのは、小ぶりな合切袋。つい先日、そこから土器を取り出していた袋である。
その口を片手で寛げた彼は、中をちらり、と見て手を止める。
「__あ、待った。これがあった」
言って、合切袋から取り出したのは、さらに小さな小物入れの空袋。
「それなら、入るだろう。貸しておく。紐が長めだから、締めた紐の輪に手首を通せば、とりあえずは落とさないはずだ」
手にしたそれは、とても柔らかい革製。もしかしたら先日の土器は、更にここに入れられていたのかもしれない。
「今日だけお借りしますね。次回はちゃんと持ってきます」
助かります、とキルシェは彼の厚意を受け取って、その中に包みごと耳飾りを入れて口を縛り、紐の輪に手首を潜らす。
長めとは彼は言ったが、ほどよいゆとりしかないから、これなら口が空いてしまうことも、手首が抜けて仕舞うこともなさそうだ。
「__やはり、細いな」
「え?」
「通せば、とは言ったが、私では手が通らん」
自嘲してリュディガーが示す彼の腕は、たしかに太い。
「私の手首でも通らなかったかもしれないのに、通せばと言ったのね」
「通るだろう、とは分かっていた。先日、掴まざるを得なかったからな」
人の悪い笑みを浮かべられ、キルシェは顔に染まるのがわかった。
__蛍の……。
足をぬかるみにとられ、靴からすっぽりと足だけ抜け、均衡を崩した自分の失態を思い出す。キルシェは口を一文字に引き結んで、片手で顔を押さえた。
「お願い……忘れて」
「難しい相談だな。私だけが握る君の弱みだから」
ちらつかせて、交渉を優位に__傍から見れば笑い話だろうが、キルシェには未だに笑い話に昇華できない失態なのだから、優良な交渉材料には違いない。
「リュディガーって、結構、人が悪いですよね」
「おや、今頃気づいたか。__まあ、ビルネンベルク先生には劣るが」
はぁ、とため息を零して、顔を押さえていた手を離す__と、その視界の遠い所に、ヘルゲが何か作業をしている姿があった。
「あれは……的、よね……?」
怪訝な声に、リュディガーも視線の先を見やる。
「……的、だな」
それは、夏至祭の矢馳せ馬で見かけた、菱形の的。その数3つ。柵の支柱に括り付けてあるだけだが、間違いなくそれだった。
その真ん中の的へ、ゲオルクが速歩で馬を進めた。
「__諸君、注目!」
馬場全体に響き渡るよう声を張る彼に、一様に馬を止める候補者たち。
「これが、本番に使う的だ。知っているだろうが、これをご覧の通り等間隔で3つ配置して、それを順次射抜いてもらう」
ゲオルクはそこで馬体を的に対して並行にすると手綱を離し、身体を伸び上がらせるようにして立った。
「鞍に尻はつけない、立ち透かしという乗り方で駆け抜ける。馬への指示は舌鼓と手綱だ」
__舌鼓と手綱……。手綱?
キルシェは反芻する言葉に、首をかしげてしまう。
「まあ、厳密には手放しで走ることになるから、舌鼓と……あれだ、あれ、以心伝心というやつだな。それで御す」
そこからが不思議で、手放しを強調するように手を挙げるゲオルクの身体の重心が少しばかり後ろへずれたように見えた直後、馬体が後退していく。
これには、おお、と驚いた小さな声がほうぼうから漏れ聞こえた。
「まぁ、重心の掛け方だな。これをするには、確実に馬との間に信頼がなければならない……そう、所謂、人馬一体に近いものだ」
そのまま端の的を通り過ぎようというところで手綱を持ち、馬首を返したゲオルクは彼が先程までいた場所まで駆け戻る。
「リュディガー」
戻りながら、彼はリュディガーを呼びつける。それに、はっ、と反射にも近い反応で短く答えた彼。
キルシェに、行ってくる、と目配せで言ってから、小さく短い舌打ち__舌鼓を2つして馬を走らせた。
そして、ゲオルクにリュディガーがたどり着いたときにはヘルゲも傍にいて、その彼からリュディガーは何かを手渡されるのだった。
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