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帝都の大学
信頼に不誠実
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伏せることは少しばかり心苦しいが、嘘はついていないのだから、と内心自分をなだめるキルシェ。
__文官になれば、帝都には留まれるでしょうね。
そうすれば、後から__順当にいって2年後になるだろうか__卒業するはずのリュディガーは、龍帝従騎士団の龍騎士になって、顔を合わせることもあるかもしれない。
場合によっては、仕事を一緒にするかもしれない。
__そして、またこうして蛍を見せに連れてきてくれるのでしょう。
歩みを再開し、前を進むリュディガーの、広い背中を見上げる。
帝都で、まだ行ったことのないところにも、頼めば連れ出してくれるかもしれない。
__きっと、楽しいのでしょう。
否、間違いなく楽しいに違いない。
故郷に帰るよりも間違いなく楽しいはずだ。
__でも……。
「__っ」
思案にふけっていた所、ずぐっ、と靴がぬかるみに取られてしまった。どうやらリュディガーが踏んでいた道から外れたところを踏んでしまったらしい。
足をひねるようにして抜こうとするも、かなり深く靴が沈んでしまっていてなかなか抜けない。慌てて今度は力を振り絞って足を上へ持ち上げれば、靴から足だけが抜けてしまった。
その動きも勢いも予想外。容易く均衡を崩させる。
すぐ側の草葉の影に、ちらり、と光るものが見え、それがわずかな月明かりを弾いた沢だとわかったときには、もはや身体は均衡を取り戻せないところまで崩れていた。
それでも手を伸ばして何かしら掴もうとするのだが、がっちり、と空を掻く手を__手首を掴まれてた。
直後、ぐい、と手首を引っ張られ、暗がりの景色が滑ったと思ったときには、リュディガーの腕の中に収まっていた。
途端に温かいのは、厚い彼の身体が密着しているからで、鼻をかすめる香りも、涼やかなものではなく落ち着いた深みの中にほんのりと甘さがある心地いい香りなのは、彼の懐の中にあるから__状況を整理していくにつれ、キルシェは身体を強張らせてしまう。
__待って。甘い……心地いい……?
この期に及んで、何を__転げそうになってから早まっている鼓動が、際立って煩くなる。
「振り向いたら、沢に落ちるところで驚いた」
どうしたんだ、と問いながら、腰に回していた手の力を緩めて、リュディガーは身を離す。
動揺をしている自分と違い、彼は至極落ち着いていて、キルシェはなおのこと恥ずかしさを覚え、顔が火照った。
「あ、足を__靴をとられて……」
「__ああ、本当だ」
わずかに離れた場所に靴を見出したのだろう。
リュディガーはキルシェの支えに手を残し、屈んでもう一方の手を伸ばして埋もれているキルシェの靴を掴んだ。そして、やや捻るようにして引っ張ると、ぐぶっ、と空気を含んだ音を立てて靴が抜ける。
力があるリュディガーがそこそこの力を使って抜いていたから、履いたままのキルシェでは抜け出すことはできなかったはずだ。
「足が抜けてよかった。でなければ、今頃尻もちをついて大惨事だったはずだ」
リュディガーは支えていた手を、彼の肩へ乗せるよう誘導すると自身は屈み、付着した汚れを沢の汚れを手で掬って何度かかけて落としにかかる。
「今はこれが限界だな。__足を」
屈んだまま靴を振って水を切るリュディガーの催促に一瞬躊躇うも、キルシェはスカートの裾を上げて宙ぶらりんにしていた足を差し出した。
大きな手が踵から踝を固定するようにそっと触れ、つま先に靴をあてがう。
「捻っては?」
「……いません」
辛うじて答えた声は、恥ずかしさでかなり小声になってしまった。
よかった、と頷き、あてがっていた靴の中に足を納める。それは本当に壊れ物を扱うように優しいもの。
「ありがとうございます」
キルシェは地面に足を下ろすと幾度か踏みしめては、履かせてもらった靴の具合を確かめる。
「大丈夫そうだな」
はい、と答えるもかなり小声だ。
「すまない。行きは何事もなかったから、支えは要らないだろうと思っていて」
言ってリュディガーはキルシェが一方の手で持つ弦楽器の袋をやんわりと取り上げると、肘を折った腕に手を乗せるよう少し浮かせて示した。
戸惑いながらも、失態を晒した事実にキルシェは彼の厚意を受け入れて、肘に近い腕に手を乗せた。
そして、リュディガーはやや身体を横にしながら、歩みを再開する。行く手と、続くキルシェの様子をかなりの頻度で交互に観ながら、ゆっくりと。
暗がりとは言え、視線を合わせると落ち着いてきた顔の火照りが再発しそうで、キルシェは足元をじっ、と見ながら進んだ。
__暗がりでよかった……。
そうして暫くすると、リュディガーの歩みが止まって、はっ、と我に帰った。
気がつけば、あの黒い狐と邂逅したあたりまで戻ってきていて、周囲は比較的明るくなっていた。
リュディガーはその場に屈んで、すぐ側の草地を示す。
そこには、置いていった土器(かわらけ)があるのだが、ここを立ち去ったときには注がれていたはずのお酒がなくなっていて、しかも乾いていた。
傾いてこぼれたというわけでもないそれに、キルシェは驚いてしまった。
__お酒は蒸発しやすいけれど、これは早すぎるのでは……。無論、お酒の濃さにもよるのでしょうけれど。
怪訝にするキルシェをよそに、リュディガーは多くを語らず、その土器を合切袋にしまい、次いでカンテラに明かりをともした。
闇夜に慣れていた目にはあまりにも眩しくて、色が飛んでしまうほど。
思わず手を翳して目を守った。
__もしかしたら、蛍もこういう気持ちなのかもしれない。
「蛍の気持ちがわかるだろう」
今まさにキルシェも考えていたことだった。
くすくす笑う声にキルシェは目を細めてリュディガーを見る。
そこには、穏やかでありながら悪戯な笑みを浮かべている彼がいて、こそばゆい気持ちに苦笑を浮かべて頷いた。
そして、改めてそのカンテラを持つ方の腕を支えに使うよう、彼が浮かせて示すので、キルシェは先程と同様にその腕に手を置く。
やがて歩きやすい川辺の道へ出、見慣れた景観になってくると、夜も深まっているからいつもよりは静かであるが、喧騒が聞こえてくる。
月影を負いながら、歩く道中。どちらもほぼ無言だった。
それでも気まずいということを感じたことは、およそない。
__信頼しているから、なのでしょうね……。
それは大いにあるだろう。__お互いに。
__でも、私は、少し彼に伏せた……。
先程の、仕事の話。中央の文官の働き口の話を断っているということを伏せた。
__不誠実……。
「__かなり寒さに耐えていたのではないか?」
「え?」
ふと、横から__頭上からかかる声に見上げると、いくらか心配そうな顔のリュディガーがいた。
「難しい顔をしている」
指摘に一瞬、きょとん、としたキルシェは、すぐに自嘲しながら頷いた。
「そうみたいです。さっきの失態も、足が寒さで強張っていたからみたいで……でも、お湯に浸かれば大丈夫ですから」
「……なにか羽織るものか、ひざ掛けを持ってくるべきだったな」
唸ってから前へと視線を戻しぼやくリュディガーに、キルシェは彼の腕に置いていた手を軽く引いて、注意を向けさせる。
「今日は__今日も、本当にありがとうございました」
一瞬、僅かに目を見開いた彼は、すぐに穏やかな表情になって頷く。
「そんなに礼を重ねて言われるほどではないがな」
くつり、と笑ってリュディガーは視線を戻した。
__……彼の信頼に甘えている。
前を見据えて歩く彼の横顔を見るに、しくり、と胸の奥底で、かすかに疼く。
__ごめんなさい、リュディガー。
宮妓の奏でる音楽は、もはやそのときには聞こえないほど離れただろうに、物悲しい女性の歌声のような旋律は耳の裏に張り付いてはなれなかった。
__文官になれば、帝都には留まれるでしょうね。
そうすれば、後から__順当にいって2年後になるだろうか__卒業するはずのリュディガーは、龍帝従騎士団の龍騎士になって、顔を合わせることもあるかもしれない。
場合によっては、仕事を一緒にするかもしれない。
__そして、またこうして蛍を見せに連れてきてくれるのでしょう。
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__きっと、楽しいのでしょう。
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__でも……。
「__っ」
思案にふけっていた所、ずぐっ、と靴がぬかるみに取られてしまった。どうやらリュディガーが踏んでいた道から外れたところを踏んでしまったらしい。
足をひねるようにして抜こうとするも、かなり深く靴が沈んでしまっていてなかなか抜けない。慌てて今度は力を振り絞って足を上へ持ち上げれば、靴から足だけが抜けてしまった。
その動きも勢いも予想外。容易く均衡を崩させる。
すぐ側の草葉の影に、ちらり、と光るものが見え、それがわずかな月明かりを弾いた沢だとわかったときには、もはや身体は均衡を取り戻せないところまで崩れていた。
それでも手を伸ばして何かしら掴もうとするのだが、がっちり、と空を掻く手を__手首を掴まれてた。
直後、ぐい、と手首を引っ張られ、暗がりの景色が滑ったと思ったときには、リュディガーの腕の中に収まっていた。
途端に温かいのは、厚い彼の身体が密着しているからで、鼻をかすめる香りも、涼やかなものではなく落ち着いた深みの中にほんのりと甘さがある心地いい香りなのは、彼の懐の中にあるから__状況を整理していくにつれ、キルシェは身体を強張らせてしまう。
__待って。甘い……心地いい……?
この期に及んで、何を__転げそうになってから早まっている鼓動が、際立って煩くなる。
「振り向いたら、沢に落ちるところで驚いた」
どうしたんだ、と問いながら、腰に回していた手の力を緩めて、リュディガーは身を離す。
動揺をしている自分と違い、彼は至極落ち着いていて、キルシェはなおのこと恥ずかしさを覚え、顔が火照った。
「あ、足を__靴をとられて……」
「__ああ、本当だ」
わずかに離れた場所に靴を見出したのだろう。
リュディガーはキルシェの支えに手を残し、屈んでもう一方の手を伸ばして埋もれているキルシェの靴を掴んだ。そして、やや捻るようにして引っ張ると、ぐぶっ、と空気を含んだ音を立てて靴が抜ける。
力があるリュディガーがそこそこの力を使って抜いていたから、履いたままのキルシェでは抜け出すことはできなかったはずだ。
「足が抜けてよかった。でなければ、今頃尻もちをついて大惨事だったはずだ」
リュディガーは支えていた手を、彼の肩へ乗せるよう誘導すると自身は屈み、付着した汚れを沢の汚れを手で掬って何度かかけて落としにかかる。
「今はこれが限界だな。__足を」
屈んだまま靴を振って水を切るリュディガーの催促に一瞬躊躇うも、キルシェはスカートの裾を上げて宙ぶらりんにしていた足を差し出した。
大きな手が踵から踝を固定するようにそっと触れ、つま先に靴をあてがう。
「捻っては?」
「……いません」
辛うじて答えた声は、恥ずかしさでかなり小声になってしまった。
よかった、と頷き、あてがっていた靴の中に足を納める。それは本当に壊れ物を扱うように優しいもの。
「ありがとうございます」
キルシェは地面に足を下ろすと幾度か踏みしめては、履かせてもらった靴の具合を確かめる。
「大丈夫そうだな」
はい、と答えるもかなり小声だ。
「すまない。行きは何事もなかったから、支えは要らないだろうと思っていて」
言ってリュディガーはキルシェが一方の手で持つ弦楽器の袋をやんわりと取り上げると、肘を折った腕に手を乗せるよう少し浮かせて示した。
戸惑いながらも、失態を晒した事実にキルシェは彼の厚意を受け入れて、肘に近い腕に手を乗せた。
そして、リュディガーはやや身体を横にしながら、歩みを再開する。行く手と、続くキルシェの様子をかなりの頻度で交互に観ながら、ゆっくりと。
暗がりとは言え、視線を合わせると落ち着いてきた顔の火照りが再発しそうで、キルシェは足元をじっ、と見ながら進んだ。
__暗がりでよかった……。
そうして暫くすると、リュディガーの歩みが止まって、はっ、と我に帰った。
気がつけば、あの黒い狐と邂逅したあたりまで戻ってきていて、周囲は比較的明るくなっていた。
リュディガーはその場に屈んで、すぐ側の草地を示す。
そこには、置いていった土器(かわらけ)があるのだが、ここを立ち去ったときには注がれていたはずのお酒がなくなっていて、しかも乾いていた。
傾いてこぼれたというわけでもないそれに、キルシェは驚いてしまった。
__お酒は蒸発しやすいけれど、これは早すぎるのでは……。無論、お酒の濃さにもよるのでしょうけれど。
怪訝にするキルシェをよそに、リュディガーは多くを語らず、その土器を合切袋にしまい、次いでカンテラに明かりをともした。
闇夜に慣れていた目にはあまりにも眩しくて、色が飛んでしまうほど。
思わず手を翳して目を守った。
__もしかしたら、蛍もこういう気持ちなのかもしれない。
「蛍の気持ちがわかるだろう」
今まさにキルシェも考えていたことだった。
くすくす笑う声にキルシェは目を細めてリュディガーを見る。
そこには、穏やかでありながら悪戯な笑みを浮かべている彼がいて、こそばゆい気持ちに苦笑を浮かべて頷いた。
そして、改めてそのカンテラを持つ方の腕を支えに使うよう、彼が浮かせて示すので、キルシェは先程と同様にその腕に手を置く。
やがて歩きやすい川辺の道へ出、見慣れた景観になってくると、夜も深まっているからいつもよりは静かであるが、喧騒が聞こえてくる。
月影を負いながら、歩く道中。どちらもほぼ無言だった。
それでも気まずいということを感じたことは、およそない。
__信頼しているから、なのでしょうね……。
それは大いにあるだろう。__お互いに。
__でも、私は、少し彼に伏せた……。
先程の、仕事の話。中央の文官の働き口の話を断っているということを伏せた。
__不誠実……。
「__かなり寒さに耐えていたのではないか?」
「え?」
ふと、横から__頭上からかかる声に見上げると、いくらか心配そうな顔のリュディガーがいた。
「難しい顔をしている」
指摘に一瞬、きょとん、としたキルシェは、すぐに自嘲しながら頷いた。
「そうみたいです。さっきの失態も、足が寒さで強張っていたからみたいで……でも、お湯に浸かれば大丈夫ですから」
「……なにか羽織るものか、ひざ掛けを持ってくるべきだったな」
唸ってから前へと視線を戻しぼやくリュディガーに、キルシェは彼の腕に置いていた手を軽く引いて、注意を向けさせる。
「今日は__今日も、本当にありがとうございました」
一瞬、僅かに目を見開いた彼は、すぐに穏やかな表情になって頷く。
「そんなに礼を重ねて言われるほどではないがな」
くつり、と笑ってリュディガーは視線を戻した。
__……彼の信頼に甘えている。
前を見据えて歩く彼の横顔を見るに、しくり、と胸の奥底で、かすかに疼く。
__ごめんなさい、リュディガー。
宮妓の奏でる音楽は、もはやそのときには聞こえないほど離れただろうに、物悲しい女性の歌声のような旋律は耳の裏に張り付いてはなれなかった。
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