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帝都の大学
よりどりみどり
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矢馳せ馬の広場から離れ、街路樹が並ぶ通りへと出る。そのまま進んでいけば、街路樹の切れ目が見えて、日除けの布を頭から被った。
常であれば日傘だが、人混みの中を行くことが安易に予想されるのだから、持ち出してはいない。
しばらくは並んで歩くゆとりがあったのだが、リュディガーが目指す先の通りへ歩みを進めれば進めるほど混み合ってきて、屋台が見え始める頃には、人と肩がぶつからないことなどなくなってきた。
覚悟の上ではあったのだが、自分たちだけでなく、ここに居る人すべて目的があって移動しているから、矢馳せ馬の会場以上に進むのが困難でキルシェは人の波に呑まれそうになるから困った。
視界も開けていないし、背の高いリュディガーの姿さえ見えなくなりそうになる。
__こんなに賑わうのね……。
「……っ」
たじたじ、としながらも、賑わいに感化され高揚していたところに、突然足から起こった痛み。どうやら誰かに踏まれたらしい。それも強かに。
犯人を探す余裕などはない。相手も悪気があって踏んだわけではないのだろうことは、この状況を見れば明白だ。
痛みに顔を足へ向け、少しばかり靴が踏まれて汚れているのを確認して、次いで顔を上げたときには、完全にリュディガーを見失っていた。
さっ、と冷水を浴びた心地に青ざめて立ち止まる__が周囲が立ち止まらせてなどはくれず、気勢を削がれてしまったキルシェは人々に揉まれ、体勢を崩され、進むべき方向へさえも歩みだせなくなってしまった。
まずい、と歯を食いしばって、自分を叱咤しながら、とにかく進もうとあがく。しかしそれが中々にままならない。
__はぐれる……!
否、もうすでにはぐれてしまっていると言っていい。人混みの中、周囲を見渡してみるが、リュディガーの姿はまるで見当たらない。
声を上げても、掻き消えてしまうだろう喧騒。
__一度、離脱すべきかもしれない……。
日除けの布を頭から外して、周囲を見張る。
人が少ない場所は。できればこのあたりが見渡せて、リュディガーを見つけられて__そんなことを考えて、人混みの向こうを必死に見ようとしていたところで、ぐいっ、と手を掴まれた。
それは大きな力強い手で、その手の主が誰かを見ようと振り返る間もなく、次の瞬間には引っ張られるようにして懐に納められていた。
咄嗟に手をついた胸元は、ついさっき見た衣服と香りだと思っていれば、周囲から庇うようにして背中から肩へ腕を回されて空間を作られた。そこではじめて顔を上げることができて、探し求めていた案内人の顔がそこにあった。
「一瞬だったが、肝をつぶした」
リュディガーは、そのままの体勢で周囲の邪魔にならないよう少し歩みを進めながら、これほどとは、と苦笑を浮かべて言う。その言葉__声に、キルシェは心底安堵した。
「__ここを抜ければ、少し減るはずだ」
言外に、このまま耐えてくれ、と言われていると察し頷くと、日除けの布を彼が被せる。
矢馳せ馬の会場でそうであったように、彼が片手で道をこじ開けるようにして、キルシェの背を押しながら進みはじめた。
そうして彼の予想通り人の数が減ったところで、少しばかり視界が開ける。
帝都で最も古く、最も広い広場__中黄広場。
四苑の左京と右京とを分ける大通りが貫くそこに、見上げるほど大きな構造物が設置されている。
東西南北の大きな柱に固定された真鍮の円環。そこに吊るさる形で半円の土台のような基部にあたる石__岩があり、そこから放射状に地面へ向かって枝を伸ばす形状の岩。
黒のような、それでいて白銀色の鋼のような見た目の金属。照りは複雑で、青や紫、黄色など多彩な色を示し、これは蝶の羽根や玉虫の色と同様の所謂構造色。
その鮮やかで複雑な発色を見せるわりに無機質な印象の表面を、艶かしく幾何学的な筋状の起伏が走っている。放射状に伸びた部分は、これが突出して伸びている部分。
一見して歪でおどろおどろしい見た目だが、これこそがまさに、他の州都へと瞬時に移動できる古代の叡智__転移装置。
「転移装置は封印されているのですよね?」
「ああ。混乱を避けるため、前後三日間含めてな」
故に予め人々は来ていて、この期間中帝都の宿は不足し、近隣の街や村もそのせいで人が多いらしい。
もし封じていなければその手の問題は解決するのだろうが、この広場が常に混乱を極めることは明白である。
人の流動を殺しきることはできないため、封印期間中は、空を行く飛行挺や、運河を行く船、街道を行く乗り合い馬車が便数を増やして対応している。
減ったとはいえ、人の流れはまだある。それでも庇うようにして歩く必要はないほどで、リュディガーはキルシェから少し身を引き、距離を作りすぎないよう気をつけながら、人の流れの隙きを突くように屋台を覗く。
ようやっとここに至り、キルシェも屋台を覗ける余裕が生まれた。そして、キルシェは広場にあふれる香りに思わず高鼻をする。
香ばしい香り、甘い香り__人に呑まれて気づけなかったが、自分もお腹は減っているらしい。
各都市の名物名産を広げる屋台は、普段の帝都以上に揃わないものはないだろうというほどの豊富な品揃えである。
日用品から消え物、果ては宝飾品まで、なんでも__。
目移りしそうな中で、まずリュディガーが選んだのは、肉などの具を小麦粉の生地で包んで揚げたもの。拳ほどの大きさのそれを4つ贖っているとき、キルシェはその店の少し離れたところに見えた屋台に目を引かれた。
くすんだ赤い色や黄土色、辛子色に土色が混ざった色、そして烏賊墨のように真っ黒な棒状の何かが、屋台に暖簾のように凧糸で吊るさっていたのだ。
保存食には違いなさそうで、一見して腸詰めのようにみえるが、胴はいびつにごつごつとしているし、下に引き伸ばして限界で千切れたような突起があるからどうにも違う。
「__あれは、チュルチだな」
「何?」
「チュルチ。ネツァク州の伝統的なお菓子だ」
「お菓子なの? あれ」
イェソドとネツァク州は隣同士であるが、山岳地に阻まれ、陸路よりは空路と海路、転移装置での往来が基本。しかしながら、イェソドは昔から瘴気が溜まりやすく、好んで来る者は少ないため、首都州以外の隣州2つとは交流が盛んではない。
「確か、葡萄の果汁を煮込んで、小麦粉だったかな……それで液状の生地を作って、糸に胡桃とか木の実を通したのを浸し、天日で乾かしたものだったはずだ」
ネツァク州は葡萄の産地。葡萄酒作りの本拠地といっていいぐらい、盛んに栽培と醸造がされている。
説明しがなら、別の店で蓮の葉に包まれた蒸飯を買うリュディガーの後に続く。
「そう。初めてみたわ」
「イェソドではないのか」
「あるのかもしれないけれど、私は見かけたことはないわ」
「__あれも、ネツァク州のものだな」
言ってチュルチを売る店の隣を、顎をしゃくって示すリュディガー。そこでは、湯気が立ち昇っている。
「胡荽が入っているのが特徴の水餃子」
「胡荽……コエンドロ?」
「そう、それ。コエンドロ。コリアンダーというのだったか、最近は」
彼が言ったのは、薬草学での呼び名だ。
リュディガーは、キルシェを促しながらその店に寄り、竹の筒にいくつか入れてもらう。汁物を扱う屋店ならば、竹の筒を器にして提供するので、手ぶらでも気兼ねなく買うことができる。
それを横目に、キルシェは隣の店のチュルチを観察した。
__不思議な食べ物だわ。……食べ物なのよね、これ。
見れば見るほど、噛むことすら難しいのではないだろうか、と思えてくる。
歪なゴツゴツとした棒状のそれ。硬そうな見た目は、腸詰めと違いぬらり、とした照りがある。葡萄の汁をつかっているのであれば、甘いのだろう。
__甘いの……?
匂いは鼻を近づければあるのかもしれないが、食欲をそそる香りは眺める距離のここからではしない。寧ろ、水餃子の下ごしらえが近くで行われているから、胡荽の匂いにばかり気を取られてしまう。
じっ、と観察していたチュルチが2本外された。どうやら2本が一本の糸でつながって、その中間点で吊るさっていたようだ。
観察していたそれを目で追えば、そのチュルチはリュディガーの手に渡っていくので、キルシェは、はっ、と我に帰った。
常であれば日傘だが、人混みの中を行くことが安易に予想されるのだから、持ち出してはいない。
しばらくは並んで歩くゆとりがあったのだが、リュディガーが目指す先の通りへ歩みを進めれば進めるほど混み合ってきて、屋台が見え始める頃には、人と肩がぶつからないことなどなくなってきた。
覚悟の上ではあったのだが、自分たちだけでなく、ここに居る人すべて目的があって移動しているから、矢馳せ馬の会場以上に進むのが困難でキルシェは人の波に呑まれそうになるから困った。
視界も開けていないし、背の高いリュディガーの姿さえ見えなくなりそうになる。
__こんなに賑わうのね……。
「……っ」
たじたじ、としながらも、賑わいに感化され高揚していたところに、突然足から起こった痛み。どうやら誰かに踏まれたらしい。それも強かに。
犯人を探す余裕などはない。相手も悪気があって踏んだわけではないのだろうことは、この状況を見れば明白だ。
痛みに顔を足へ向け、少しばかり靴が踏まれて汚れているのを確認して、次いで顔を上げたときには、完全にリュディガーを見失っていた。
さっ、と冷水を浴びた心地に青ざめて立ち止まる__が周囲が立ち止まらせてなどはくれず、気勢を削がれてしまったキルシェは人々に揉まれ、体勢を崩され、進むべき方向へさえも歩みだせなくなってしまった。
まずい、と歯を食いしばって、自分を叱咤しながら、とにかく進もうとあがく。しかしそれが中々にままならない。
__はぐれる……!
否、もうすでにはぐれてしまっていると言っていい。人混みの中、周囲を見渡してみるが、リュディガーの姿はまるで見当たらない。
声を上げても、掻き消えてしまうだろう喧騒。
__一度、離脱すべきかもしれない……。
日除けの布を頭から外して、周囲を見張る。
人が少ない場所は。できればこのあたりが見渡せて、リュディガーを見つけられて__そんなことを考えて、人混みの向こうを必死に見ようとしていたところで、ぐいっ、と手を掴まれた。
それは大きな力強い手で、その手の主が誰かを見ようと振り返る間もなく、次の瞬間には引っ張られるようにして懐に納められていた。
咄嗟に手をついた胸元は、ついさっき見た衣服と香りだと思っていれば、周囲から庇うようにして背中から肩へ腕を回されて空間を作られた。そこではじめて顔を上げることができて、探し求めていた案内人の顔がそこにあった。
「一瞬だったが、肝をつぶした」
リュディガーは、そのままの体勢で周囲の邪魔にならないよう少し歩みを進めながら、これほどとは、と苦笑を浮かべて言う。その言葉__声に、キルシェは心底安堵した。
「__ここを抜ければ、少し減るはずだ」
言外に、このまま耐えてくれ、と言われていると察し頷くと、日除けの布を彼が被せる。
矢馳せ馬の会場でそうであったように、彼が片手で道をこじ開けるようにして、キルシェの背を押しながら進みはじめた。
そうして彼の予想通り人の数が減ったところで、少しばかり視界が開ける。
帝都で最も古く、最も広い広場__中黄広場。
四苑の左京と右京とを分ける大通りが貫くそこに、見上げるほど大きな構造物が設置されている。
東西南北の大きな柱に固定された真鍮の円環。そこに吊るさる形で半円の土台のような基部にあたる石__岩があり、そこから放射状に地面へ向かって枝を伸ばす形状の岩。
黒のような、それでいて白銀色の鋼のような見た目の金属。照りは複雑で、青や紫、黄色など多彩な色を示し、これは蝶の羽根や玉虫の色と同様の所謂構造色。
その鮮やかで複雑な発色を見せるわりに無機質な印象の表面を、艶かしく幾何学的な筋状の起伏が走っている。放射状に伸びた部分は、これが突出して伸びている部分。
一見して歪でおどろおどろしい見た目だが、これこそがまさに、他の州都へと瞬時に移動できる古代の叡智__転移装置。
「転移装置は封印されているのですよね?」
「ああ。混乱を避けるため、前後三日間含めてな」
故に予め人々は来ていて、この期間中帝都の宿は不足し、近隣の街や村もそのせいで人が多いらしい。
もし封じていなければその手の問題は解決するのだろうが、この広場が常に混乱を極めることは明白である。
人の流動を殺しきることはできないため、封印期間中は、空を行く飛行挺や、運河を行く船、街道を行く乗り合い馬車が便数を増やして対応している。
減ったとはいえ、人の流れはまだある。それでも庇うようにして歩く必要はないほどで、リュディガーはキルシェから少し身を引き、距離を作りすぎないよう気をつけながら、人の流れの隙きを突くように屋台を覗く。
ようやっとここに至り、キルシェも屋台を覗ける余裕が生まれた。そして、キルシェは広場にあふれる香りに思わず高鼻をする。
香ばしい香り、甘い香り__人に呑まれて気づけなかったが、自分もお腹は減っているらしい。
各都市の名物名産を広げる屋台は、普段の帝都以上に揃わないものはないだろうというほどの豊富な品揃えである。
日用品から消え物、果ては宝飾品まで、なんでも__。
目移りしそうな中で、まずリュディガーが選んだのは、肉などの具を小麦粉の生地で包んで揚げたもの。拳ほどの大きさのそれを4つ贖っているとき、キルシェはその店の少し離れたところに見えた屋台に目を引かれた。
くすんだ赤い色や黄土色、辛子色に土色が混ざった色、そして烏賊墨のように真っ黒な棒状の何かが、屋台に暖簾のように凧糸で吊るさっていたのだ。
保存食には違いなさそうで、一見して腸詰めのようにみえるが、胴はいびつにごつごつとしているし、下に引き伸ばして限界で千切れたような突起があるからどうにも違う。
「__あれは、チュルチだな」
「何?」
「チュルチ。ネツァク州の伝統的なお菓子だ」
「お菓子なの? あれ」
イェソドとネツァク州は隣同士であるが、山岳地に阻まれ、陸路よりは空路と海路、転移装置での往来が基本。しかしながら、イェソドは昔から瘴気が溜まりやすく、好んで来る者は少ないため、首都州以外の隣州2つとは交流が盛んではない。
「確か、葡萄の果汁を煮込んで、小麦粉だったかな……それで液状の生地を作って、糸に胡桃とか木の実を通したのを浸し、天日で乾かしたものだったはずだ」
ネツァク州は葡萄の産地。葡萄酒作りの本拠地といっていいぐらい、盛んに栽培と醸造がされている。
説明しがなら、別の店で蓮の葉に包まれた蒸飯を買うリュディガーの後に続く。
「そう。初めてみたわ」
「イェソドではないのか」
「あるのかもしれないけれど、私は見かけたことはないわ」
「__あれも、ネツァク州のものだな」
言ってチュルチを売る店の隣を、顎をしゃくって示すリュディガー。そこでは、湯気が立ち昇っている。
「胡荽が入っているのが特徴の水餃子」
「胡荽……コエンドロ?」
「そう、それ。コエンドロ。コリアンダーというのだったか、最近は」
彼が言ったのは、薬草学での呼び名だ。
リュディガーは、キルシェを促しながらその店に寄り、竹の筒にいくつか入れてもらう。汁物を扱う屋店ならば、竹の筒を器にして提供するので、手ぶらでも気兼ねなく買うことができる。
それを横目に、キルシェは隣の店のチュルチを観察した。
__不思議な食べ物だわ。……食べ物なのよね、これ。
見れば見るほど、噛むことすら難しいのではないだろうか、と思えてくる。
歪なゴツゴツとした棒状のそれ。硬そうな見た目は、腸詰めと違いぬらり、とした照りがある。葡萄の汁をつかっているのであれば、甘いのだろう。
__甘いの……?
匂いは鼻を近づければあるのかもしれないが、食欲をそそる香りは眺める距離のここからではしない。寧ろ、水餃子の下ごしらえが近くで行われているから、胡荽の匂いにばかり気を取られてしまう。
じっ、と観察していたチュルチが2本外された。どうやら2本が一本の糸でつながって、その中間点で吊るさっていたようだ。
観察していたそれを目で追えば、そのチュルチはリュディガーの手に渡っていくので、キルシェは、はっ、と我に帰った。
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