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帝都の大学
呼ブもの
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その日は、朝からざわめいていた。
ざわめいていたからこそ、目が覚めたと言ってもいい。目覚めたときから頭は冴えていて、妙な心地がしていた。
新緑が日に日に濃くなったこの頃、この日は富に空は晴れ渡って渡る風も爽やかだ。
鮮やかな青葉、天の蒼穹__見れば見るほどしっくりこない。
__この違和感は何だ。まさか……。
いくらかの予見を抱きながら普段通りに講義に出ていれば、その窓の外に、まっすぐ接近する龍の影をみた。
それはあまりにも低空で、大学の敷地の上をぐるり、と旋回したのだ。まるで何かを探すかのようなその龍。
まさか、と半信半疑でいたのだが、その龍と目があった__刹那、龍が咆哮を軽く上げる。
__疾ク。
降って湧いた言葉に確信を得たリュディガーは、騒然となる室内を気にせず、教官に断りをいれ、急ぎ建物の外へ出た。
その姿を見るや否や、迷わず降り立つ龍。
腹は黒、背は白の鱗。種をアルビオン。馬よりも大きな龍だが、これでも龍の中では小柄にはいる。
思い起こせば、昨夜一度目覚めたときにもあった感覚。そのときには、気のせいだろう、と再び寝入る事ができていた。__それが、膨れ上がっての目覚めだったのだ、と今目の前にある光景を見て、納得した。
感慨深く眺めていると、軽く吠える龍。
__行クゾ。
またも降って湧く言葉。
__コレヲ忘レタカ。コレハ、オ前ヲ覚エテイル。
さらに続く言葉に、リュディガーは苦笑を返す。
「__キルシウム」
名付けた名を呼べば、目の前に降り立った龍が目を細めて小さく啼く。
__ソウ。コレハ、キルシウム。オ前ノ牙、爪、眼、翼。
その傍らに、遅れて降り立った二頭の龍も同様の種の龍で、その背から見知った顔が飛び降るように着地すると駆け寄ってくる。
見慣れた__久しく自分が袖を通していない制服に身を包んだ彼ら。それも、甲冑に加え、口布をつけた兜を被っている。
この濃い紫の口布は、瘴気を防ぐための装備だ。一般的に出回っているものより精度が高い、龍騎士様に作られたものだ。
徐にその兜を外す龍騎士の横をすり抜けて、手荷物を持った龍騎士はリュディガーの横に手にした荷を置き、軽く広げ始める。
兜を外した龍騎士は灰茶の髪と灰の瞳の青年で、リュディガーに馴染みがある顔。名をグスタフ・エノミア__麾下だった。
「溢れました」
開口一番の彼の、静かで端的な言葉。
この世には天綱と呼ばれる条理が働いていて、それによってこの世界は保たれている。それはしかし、絶妙な均衡の元に成り立っている__らしい。
その天綱がほつれたところが、“魔穴”と呼ばれる現象として現れる。この世の理の届かぬ異方の彼方。次元の狭間であり穴。その中は、瘴気と魔素の渦巻く、魑魅魍魎が跋扈する沼のよう。
魔穴へ真っ先に急行して、対処するのが龍騎士。大抵は魔物の量をある程度減らせれば、綻びが元に戻り魔穴は塞げる。
魔穴が生じて、そこから零れ落ちる魔物は少なからずいる。その量が、現地で対処している龍騎士の対処能力を上回ると、文字通り魔物が溢れ出すのだ。
__あのざわめきはすべて、これだった。
予感はしていた。そうではないのだろうか、と。
だが、溢れるほどの魔穴は、そうそう起こり得ない。だからこそ、まさか、と疑いもしていた。
一気に全身が冷えた心地になって、嫌な汗が吹き出したのがわかる。だがすぐに、腹の底から沸き上がるように膨れるのは__覚悟。
「召集です。ナハトリンデン卿」
その呼び名を、久しぶりに甲冑を纏った龍騎士にされると、より自覚させられる己の使命__背に負っている、忠義の証たる鷲獅子の文様。
「承知した。方角は」
「東です。首都州の州境近く」
「わかった」
リュディガーは頷いて、その場で構わず薄着になると、そばに控える龍騎士__これは見たことがない顔だった。恐らく最近入ってきた者なのだろう__から、制服を受け取って纏う。
暇をもらってこそいるが、龍騎士を完全に退団したわけではなく、緊急の招集には応じる。そのため、自身専用の装備一式の予備が龍騎士団に預けられている。
彼らは、それを持ってきたのだ。
「……ん?」
「いかがされましたか?」
上の制服を纏い終えたところで、襟元や腕周りなどところどころにゆとりが大きいように感じて、思わず声をもらしていた。
ただ、着用には問題ない。この上に鎧をかけるから、どのみちこの程度のゆとりなどそこまで気にはならない。
「いや、なんでも無い」
「左様で。その……下の制服は__」
「このままでいい。一式持ってきてもらって悪いが、流石にここで脱ぐわけにも行かない」
言ってちらり、と周囲を見れば数多の衆目。
「時間が惜しい。__甲冑を」
はっ、と歯切れよく答え、鋼の胴当てを取り付けにかかる龍騎士。
「ところで、編成は?」
「旧ナハトリンデン小隊__私以下がつきます。彼も」
答えたのは、兜を外して見守る龍騎士。彼が最後に視線で示すのは、リュディガーの装備を身につける補助をしている龍騎士だった。
「名は?」
「パスカル・デッサウであります」
「よろしく頼む。デッサウ」
「はっ」
受け応えながらも、パスカルは手元の動きを止めない。
リュディガーは手甲を装着しながら、その彼を一度見て、次いでエノミアへ視線を投げれば、視線の意味するところを察したエノミアが、口角に力を込めるように笑む。
「__有能です」
エノミアの言葉に、リュディガーは頷く。
「デッサウ」
「はっ」
「有能なら私より前へ出るな」
「は__え……?」
肩当ての装着を片方終え、もう一方を肩に据えたところで、デッサウは口布と眉庇の間から見える緑の目をぱちくりさせて、思わず手を止めた。
「それが、私が魔穴において麾下に求めることの第一だ。__ただ、助言も諫言も歓迎するが」
「は……はい」
「勇敢と向こう見ずは別のものだ。号令がなければ、出てはならない。厳命だ」
「心得、ました……」
歯切れ悪いパスカルは、ちらり、とエノミアを見るが、彼は笑って肩を竦めるばかり。彼は困惑したまま、装着を再開する。
「エノミア。どういう教育をしてきた」
「ナハトリンデン卿を参考にさせていただいているのですが」
冗談めかして問えば、肩をすくめるエノミア。その悪びれる素振りすらない様に思わず笑う。
「なら、今日改めて見直すように」
「御意。__それから、他に招集された龍騎士も加わりますので」
「八騎か?」
「その予定と聞いております。現地でシュタウフェンベルク卿が詳細を」
「承知した」
「あ、あの、ナハトリンデン卿、伝言が」
手元を止めぬまま、デッサウが恐る恐る声を発した。視線で促せば、彼はかなり迷った風でいて、背後のエノミアへ一度視線を向けてから、決意を新たにしたように視線を向けてくる。
「__日暮れまでには来い。さもなくば、腑抜けと今後呼ぶぞ、と」
「……エルンストか」
心当たりがあって名を言えば、デッサウがぎこちなく頷く。
「は、はい」
__あいつ……。
エルンスト・フォン・シェンク__同期のすかした顔が浮かんで、やれやれ、と首を振る。
「も、申し訳ございません」
「君が謝ることではない。気にするな。伝令、確かに受け取った」
「はっ」
デッサウのお陰もあって手際よく、肩当て、手甲、膝当て、脛当てと、最短で装備を整え終え、いざ兜を被ろうとしたところで見守る周囲の人垣が割れた。
「待ちなさい、ナハトリンデン」
割れた人垣から放たれる朗々たる声に、リュディガーは、はっ、とした。
ざわめいていたからこそ、目が覚めたと言ってもいい。目覚めたときから頭は冴えていて、妙な心地がしていた。
新緑が日に日に濃くなったこの頃、この日は富に空は晴れ渡って渡る風も爽やかだ。
鮮やかな青葉、天の蒼穹__見れば見るほどしっくりこない。
__この違和感は何だ。まさか……。
いくらかの予見を抱きながら普段通りに講義に出ていれば、その窓の外に、まっすぐ接近する龍の影をみた。
それはあまりにも低空で、大学の敷地の上をぐるり、と旋回したのだ。まるで何かを探すかのようなその龍。
まさか、と半信半疑でいたのだが、その龍と目があった__刹那、龍が咆哮を軽く上げる。
__疾ク。
降って湧いた言葉に確信を得たリュディガーは、騒然となる室内を気にせず、教官に断りをいれ、急ぎ建物の外へ出た。
その姿を見るや否や、迷わず降り立つ龍。
腹は黒、背は白の鱗。種をアルビオン。馬よりも大きな龍だが、これでも龍の中では小柄にはいる。
思い起こせば、昨夜一度目覚めたときにもあった感覚。そのときには、気のせいだろう、と再び寝入る事ができていた。__それが、膨れ上がっての目覚めだったのだ、と今目の前にある光景を見て、納得した。
感慨深く眺めていると、軽く吠える龍。
__行クゾ。
またも降って湧く言葉。
__コレヲ忘レタカ。コレハ、オ前ヲ覚エテイル。
さらに続く言葉に、リュディガーは苦笑を返す。
「__キルシウム」
名付けた名を呼べば、目の前に降り立った龍が目を細めて小さく啼く。
__ソウ。コレハ、キルシウム。オ前ノ牙、爪、眼、翼。
その傍らに、遅れて降り立った二頭の龍も同様の種の龍で、その背から見知った顔が飛び降るように着地すると駆け寄ってくる。
見慣れた__久しく自分が袖を通していない制服に身を包んだ彼ら。それも、甲冑に加え、口布をつけた兜を被っている。
この濃い紫の口布は、瘴気を防ぐための装備だ。一般的に出回っているものより精度が高い、龍騎士様に作られたものだ。
徐にその兜を外す龍騎士の横をすり抜けて、手荷物を持った龍騎士はリュディガーの横に手にした荷を置き、軽く広げ始める。
兜を外した龍騎士は灰茶の髪と灰の瞳の青年で、リュディガーに馴染みがある顔。名をグスタフ・エノミア__麾下だった。
「溢れました」
開口一番の彼の、静かで端的な言葉。
この世には天綱と呼ばれる条理が働いていて、それによってこの世界は保たれている。それはしかし、絶妙な均衡の元に成り立っている__らしい。
その天綱がほつれたところが、“魔穴”と呼ばれる現象として現れる。この世の理の届かぬ異方の彼方。次元の狭間であり穴。その中は、瘴気と魔素の渦巻く、魑魅魍魎が跋扈する沼のよう。
魔穴へ真っ先に急行して、対処するのが龍騎士。大抵は魔物の量をある程度減らせれば、綻びが元に戻り魔穴は塞げる。
魔穴が生じて、そこから零れ落ちる魔物は少なからずいる。その量が、現地で対処している龍騎士の対処能力を上回ると、文字通り魔物が溢れ出すのだ。
__あのざわめきはすべて、これだった。
予感はしていた。そうではないのだろうか、と。
だが、溢れるほどの魔穴は、そうそう起こり得ない。だからこそ、まさか、と疑いもしていた。
一気に全身が冷えた心地になって、嫌な汗が吹き出したのがわかる。だがすぐに、腹の底から沸き上がるように膨れるのは__覚悟。
「召集です。ナハトリンデン卿」
その呼び名を、久しぶりに甲冑を纏った龍騎士にされると、より自覚させられる己の使命__背に負っている、忠義の証たる鷲獅子の文様。
「承知した。方角は」
「東です。首都州の州境近く」
「わかった」
リュディガーは頷いて、その場で構わず薄着になると、そばに控える龍騎士__これは見たことがない顔だった。恐らく最近入ってきた者なのだろう__から、制服を受け取って纏う。
暇をもらってこそいるが、龍騎士を完全に退団したわけではなく、緊急の招集には応じる。そのため、自身専用の装備一式の予備が龍騎士団に預けられている。
彼らは、それを持ってきたのだ。
「……ん?」
「いかがされましたか?」
上の制服を纏い終えたところで、襟元や腕周りなどところどころにゆとりが大きいように感じて、思わず声をもらしていた。
ただ、着用には問題ない。この上に鎧をかけるから、どのみちこの程度のゆとりなどそこまで気にはならない。
「いや、なんでも無い」
「左様で。その……下の制服は__」
「このままでいい。一式持ってきてもらって悪いが、流石にここで脱ぐわけにも行かない」
言ってちらり、と周囲を見れば数多の衆目。
「時間が惜しい。__甲冑を」
はっ、と歯切れよく答え、鋼の胴当てを取り付けにかかる龍騎士。
「ところで、編成は?」
「旧ナハトリンデン小隊__私以下がつきます。彼も」
答えたのは、兜を外して見守る龍騎士。彼が最後に視線で示すのは、リュディガーの装備を身につける補助をしている龍騎士だった。
「名は?」
「パスカル・デッサウであります」
「よろしく頼む。デッサウ」
「はっ」
受け応えながらも、パスカルは手元の動きを止めない。
リュディガーは手甲を装着しながら、その彼を一度見て、次いでエノミアへ視線を投げれば、視線の意味するところを察したエノミアが、口角に力を込めるように笑む。
「__有能です」
エノミアの言葉に、リュディガーは頷く。
「デッサウ」
「はっ」
「有能なら私より前へ出るな」
「は__え……?」
肩当ての装着を片方終え、もう一方を肩に据えたところで、デッサウは口布と眉庇の間から見える緑の目をぱちくりさせて、思わず手を止めた。
「それが、私が魔穴において麾下に求めることの第一だ。__ただ、助言も諫言も歓迎するが」
「は……はい」
「勇敢と向こう見ずは別のものだ。号令がなければ、出てはならない。厳命だ」
「心得、ました……」
歯切れ悪いパスカルは、ちらり、とエノミアを見るが、彼は笑って肩を竦めるばかり。彼は困惑したまま、装着を再開する。
「エノミア。どういう教育をしてきた」
「ナハトリンデン卿を参考にさせていただいているのですが」
冗談めかして問えば、肩をすくめるエノミア。その悪びれる素振りすらない様に思わず笑う。
「なら、今日改めて見直すように」
「御意。__それから、他に招集された龍騎士も加わりますので」
「八騎か?」
「その予定と聞いております。現地でシュタウフェンベルク卿が詳細を」
「承知した」
「あ、あの、ナハトリンデン卿、伝言が」
手元を止めぬまま、デッサウが恐る恐る声を発した。視線で促せば、彼はかなり迷った風でいて、背後のエノミアへ一度視線を向けてから、決意を新たにしたように視線を向けてくる。
「__日暮れまでには来い。さもなくば、腑抜けと今後呼ぶぞ、と」
「……エルンストか」
心当たりがあって名を言えば、デッサウがぎこちなく頷く。
「は、はい」
__あいつ……。
エルンスト・フォン・シェンク__同期のすかした顔が浮かんで、やれやれ、と首を振る。
「も、申し訳ございません」
「君が謝ることではない。気にするな。伝令、確かに受け取った」
「はっ」
デッサウのお陰もあって手際よく、肩当て、手甲、膝当て、脛当てと、最短で装備を整え終え、いざ兜を被ろうとしたところで見守る周囲の人垣が割れた。
「待ちなさい、ナハトリンデン」
割れた人垣から放たれる朗々たる声に、リュディガーは、はっ、とした。
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