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帝都の大学
リュディガーの父
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川辺からそれた道から、すぐ住宅街の並びに挟まれるようにして続く、石畳の道へと入ったリュディガー。方角としては、中央の大通りへ向かう形だと思われる。
道幅は2人が並んで歩けるぐらいの幅で、迫ってくるような左右の建物に圧倒され、見上げると建物の間を縫うようにして渡された紐に洗濯物が靡いていた。
石畳で土が少ない通りだが、建物の出入口の左右に何かしら植えられるように土を晒していて、もれなくそこには、何かしら植えられている。花はもちろんのこと、それに負けない数で葡萄もよく見かけ、壁に這わせるようにしたその葡萄の枝葉は、かなりの年数そこにあったのだろう。いくつものベランダを渡るようにして芽吹いている。
すれ違う人々は、川沿いの道よりも増え、すれ違う度に会釈をお互いし合い、そうしてどれほどたったか、リュディガーがある建物の前で足を止めた。
入り口の左右には、薔薇。薄い橙色の花の蕾はまだ小さく芽を出したばかりのそれは、直ぐ側の葡萄ほど伸びてはいないものの、壁に誘引するには十分伸びていて、入り口の屋根のようになっていた。
リュディガーはその建物の、ガラス戸を開けて、キルシェを中へ入るよう促した。そこはどうやら共同の玄関口らしい。
集合住宅、というもののようで、踏み入った先の廊下には、同じ扉がいくつも並んでいる。
廊下の奥にある階段をリュディガーはのぼり、二階へ至った。その二階の階段から最も近い部屋から、数えて3つ目の扉の前で足を止め、解錠する。
「戻りました、父さん」
「__おかえり、リュディガー」
__リュディガーのお父様……。
応じる声に、思わず息を詰め身構えるキルシェ。
咄嗟に扉の影に隠れて、中を見ないようにしていれば、リュディガーが中へ入るように促す。
「え__」
__玄関で待っているのじゃないの……?
狼狽えていると、笑ったリュディガーが背中を押す。
「さすがに、廊下で待たせるわけには行かない。男所帯だからあれだが、まあ、廊下よりはましだから、入ってくれ」
半ば押し切られる形で踏み入った室内。大学の寮の部屋よりいくらか狭いそこは、どうやら居間らしい。
くつろぐためのソファーとローテーブルに、窓辺に置かれた食卓のテーブルと椅子。そして、今の時期には眠りに入っている暖炉がある。
リュディガーは、窓辺の食卓の周りに荷を置きはじめた。キルシェもそちらに歩み寄ろうとするのだが、こつ、こつ、という音の合間に、何かを引きずるような音がして思わず足を止める。
そちらを振り返れば、奥へと続く扉から、中年の男がちょうど顔をのぞかせたところだった。
「おや__」
茶色い髪と髭には白髪が混じり、やや灰色がかった青い瞳は、キルシェを見て驚きに見開かれるのだが、やや間を置いて柔らかく細められる。
「__こんにちは」
「こ、こんにちは」
どうにか応じられたが、顔は緊張して強張っているのが自分でもわかる。
「食材を買ってくると言っていたが、いい加減、家政婦さんまで雇ったのかい?」
「違いますよ。同じ大学の学生です」
買ってきた食材を袋から出すリュディガーの答えを聞き、中年の男はソファーへと足をすすめるのだが、そこで初めて彼が杖をついているのだとキルシェは知った。やや右足を引きずるように歩くその様に、咄嗟に手を出そうとするが、中年の男は柔らかい笑みのまま軽く首を振って制し、彼はソファーに腰を下ろした。
「ご挨拶が遅れました。キルシェ・ラウペンです」
キルシェは、スカートの裾を持ち恭しく淑女の礼を取る。
「ローベルトです、ラウペン女史」
「どうぞ、キルシェ、と」
心得たというように笑みを深めて、ローベルトが一つ頷く。そしてキルシェとリュディガーとを交互に見比べる。
「__じゃあ、いい人かい?」
ふぅ、っと一息つくように背もたれに身を預ける中年の男は、杖をソファーに立てかけるようにして脇に置きながら、拘りなくその言葉を発した。
__いい、人……?
キルシェは、心臓が一つ早く跳ねた心地がして、思わず目を見開く。それと同時に、一瞬だが視界の端にいたリュディガーの動きが止まった。しかし、彼はすぐに手元の動きを再開する。
「……大学で私の苦手分野を克服しようと、専任で強化してくれている方です」
「学生さんなのに先生かい。大学には、お若い先生もいらっしゃるんだね」
「ほら……以前お話したでしょう。担当教官から紹介された学生がいる、と。__彼女のことです」
「あぁ~、はいはい。その方か」
笑いながらローベルトが言えば、リュディガーはやれやれ、と首を軽く振る。
「それで、今日は何でまたキルシェさんを伴って?」
「荷物を落としたところを、たまたま近くにいた彼女が見つけて手伝ってくれて、そのまま運んでくれたんです」
キルシェが持つ鶏卵とパンが載った籠を取ったリュディガーは、もう一方の手で持てる量の食材を手に、隣の部屋へと移った。
「おや、この時期に林檎があったのかい」
「ええ。北部の最後のものらしいです」
ちらり、と林檎が見えたらしいローベルトはの言葉に、奥の部屋から声だけが返ってきた。
開け放たれた扉から見えるそこは、どうやら台所らしい。広さとしては人が2人並んで作業できるかどうかという空間で、大きな身体のリュディガーは無駄のない動きで、迷いなく物を収めて戻ってくる。
その手にはグラスが3つと硝子の水差し。
二人分をソファー前に置いて水を注ぎ、ローベルトとキルシェへ配し、もう一つは荷物を広げたテーブルへ空のまま水差しとともに置き、代わりに袋から青い一握りほどの大きさの小瓶を取り出した。
何度か振ってから小瓶の栓を外し、空のグラスを手に取る。そして、目線を底に添えた親指に合わせ、その厚みほど小瓶の中身を注ぎ、ソファーに腰掛けるローベルトに歩み寄って彼の前に置いた。
「苦いんだがね」
「ちゃんと飲んでくださいよ」
「砂糖でもいれてくれないか」
「またそういうことを。駄目です」
はいはい、と笑いながらローベルトはグラスを口へ運ぶと一気に煽り、直後、顔を歪める。すかさず水を差し出すリュディガーに、空のグラスと交換して受け取って、何口かに分けて水を飲んだ。
その時、午の鐘が鳴った。幾重にも折り重なるような音は、遠くからのようでも近くからのようでもある。おそらく外の建物に反響しているためだろう。
窓の外には、建物の合間__連なる洗濯物の合間に、見え隠れするように、先程までいた小川が見えた。
「__キルシェさん」
窓の外を見入っていたキルシェは、名を呼ばれて我に返り、ローベルトを見る。
「すみません、外を見ていて……聞き漏らしました。えぇっと……?」
柔和に笑んだ彼は、リュディガーへ視線を向けた。
「キルシェ、急ぎの用事があるか?」
「いえ。今日は__何も無くなったので……」
「あぁ……そうか」
語尾を濁して言えば、察しがいいリュディガーは、講書のことに気づいたようだった。
「__その……昼食をご一緒にどうだろうか、と父が聞いたんだ。大したものはないが」
え、と言葉に詰まってローベルトを改めて見れば、深く頷く。
「でも、そんなつもりは__」
「どのみち、これから父の食事を作るから、ひとり増えようが変わらない。それに、食べないにしても、急ぎでないなら、わかる道まで案内するにはちょっと待ってもらいたい」
「__だから、同じように待ってもらうなら、食べて行ってもらったほうがいいな、という訳だよ」
食堂は昼食の提供を終えてしまっているに違いない。だからといって、どこかで贖って大学へ持ち帰り、食べるにしては、確かに遅すぎる。
「……なんだか、悪いですが。助かります」
よかった、とローベルトは破顔した。
道幅は2人が並んで歩けるぐらいの幅で、迫ってくるような左右の建物に圧倒され、見上げると建物の間を縫うようにして渡された紐に洗濯物が靡いていた。
石畳で土が少ない通りだが、建物の出入口の左右に何かしら植えられるように土を晒していて、もれなくそこには、何かしら植えられている。花はもちろんのこと、それに負けない数で葡萄もよく見かけ、壁に這わせるようにしたその葡萄の枝葉は、かなりの年数そこにあったのだろう。いくつものベランダを渡るようにして芽吹いている。
すれ違う人々は、川沿いの道よりも増え、すれ違う度に会釈をお互いし合い、そうしてどれほどたったか、リュディガーがある建物の前で足を止めた。
入り口の左右には、薔薇。薄い橙色の花の蕾はまだ小さく芽を出したばかりのそれは、直ぐ側の葡萄ほど伸びてはいないものの、壁に誘引するには十分伸びていて、入り口の屋根のようになっていた。
リュディガーはその建物の、ガラス戸を開けて、キルシェを中へ入るよう促した。そこはどうやら共同の玄関口らしい。
集合住宅、というもののようで、踏み入った先の廊下には、同じ扉がいくつも並んでいる。
廊下の奥にある階段をリュディガーはのぼり、二階へ至った。その二階の階段から最も近い部屋から、数えて3つ目の扉の前で足を止め、解錠する。
「戻りました、父さん」
「__おかえり、リュディガー」
__リュディガーのお父様……。
応じる声に、思わず息を詰め身構えるキルシェ。
咄嗟に扉の影に隠れて、中を見ないようにしていれば、リュディガーが中へ入るように促す。
「え__」
__玄関で待っているのじゃないの……?
狼狽えていると、笑ったリュディガーが背中を押す。
「さすがに、廊下で待たせるわけには行かない。男所帯だからあれだが、まあ、廊下よりはましだから、入ってくれ」
半ば押し切られる形で踏み入った室内。大学の寮の部屋よりいくらか狭いそこは、どうやら居間らしい。
くつろぐためのソファーとローテーブルに、窓辺に置かれた食卓のテーブルと椅子。そして、今の時期には眠りに入っている暖炉がある。
リュディガーは、窓辺の食卓の周りに荷を置きはじめた。キルシェもそちらに歩み寄ろうとするのだが、こつ、こつ、という音の合間に、何かを引きずるような音がして思わず足を止める。
そちらを振り返れば、奥へと続く扉から、中年の男がちょうど顔をのぞかせたところだった。
「おや__」
茶色い髪と髭には白髪が混じり、やや灰色がかった青い瞳は、キルシェを見て驚きに見開かれるのだが、やや間を置いて柔らかく細められる。
「__こんにちは」
「こ、こんにちは」
どうにか応じられたが、顔は緊張して強張っているのが自分でもわかる。
「食材を買ってくると言っていたが、いい加減、家政婦さんまで雇ったのかい?」
「違いますよ。同じ大学の学生です」
買ってきた食材を袋から出すリュディガーの答えを聞き、中年の男はソファーへと足をすすめるのだが、そこで初めて彼が杖をついているのだとキルシェは知った。やや右足を引きずるように歩くその様に、咄嗟に手を出そうとするが、中年の男は柔らかい笑みのまま軽く首を振って制し、彼はソファーに腰を下ろした。
「ご挨拶が遅れました。キルシェ・ラウペンです」
キルシェは、スカートの裾を持ち恭しく淑女の礼を取る。
「ローベルトです、ラウペン女史」
「どうぞ、キルシェ、と」
心得たというように笑みを深めて、ローベルトが一つ頷く。そしてキルシェとリュディガーとを交互に見比べる。
「__じゃあ、いい人かい?」
ふぅ、っと一息つくように背もたれに身を預ける中年の男は、杖をソファーに立てかけるようにして脇に置きながら、拘りなくその言葉を発した。
__いい、人……?
キルシェは、心臓が一つ早く跳ねた心地がして、思わず目を見開く。それと同時に、一瞬だが視界の端にいたリュディガーの動きが止まった。しかし、彼はすぐに手元の動きを再開する。
「……大学で私の苦手分野を克服しようと、専任で強化してくれている方です」
「学生さんなのに先生かい。大学には、お若い先生もいらっしゃるんだね」
「ほら……以前お話したでしょう。担当教官から紹介された学生がいる、と。__彼女のことです」
「あぁ~、はいはい。その方か」
笑いながらローベルトが言えば、リュディガーはやれやれ、と首を軽く振る。
「それで、今日は何でまたキルシェさんを伴って?」
「荷物を落としたところを、たまたま近くにいた彼女が見つけて手伝ってくれて、そのまま運んでくれたんです」
キルシェが持つ鶏卵とパンが載った籠を取ったリュディガーは、もう一方の手で持てる量の食材を手に、隣の部屋へと移った。
「おや、この時期に林檎があったのかい」
「ええ。北部の最後のものらしいです」
ちらり、と林檎が見えたらしいローベルトはの言葉に、奥の部屋から声だけが返ってきた。
開け放たれた扉から見えるそこは、どうやら台所らしい。広さとしては人が2人並んで作業できるかどうかという空間で、大きな身体のリュディガーは無駄のない動きで、迷いなく物を収めて戻ってくる。
その手にはグラスが3つと硝子の水差し。
二人分をソファー前に置いて水を注ぎ、ローベルトとキルシェへ配し、もう一つは荷物を広げたテーブルへ空のまま水差しとともに置き、代わりに袋から青い一握りほどの大きさの小瓶を取り出した。
何度か振ってから小瓶の栓を外し、空のグラスを手に取る。そして、目線を底に添えた親指に合わせ、その厚みほど小瓶の中身を注ぎ、ソファーに腰掛けるローベルトに歩み寄って彼の前に置いた。
「苦いんだがね」
「ちゃんと飲んでくださいよ」
「砂糖でもいれてくれないか」
「またそういうことを。駄目です」
はいはい、と笑いながらローベルトはグラスを口へ運ぶと一気に煽り、直後、顔を歪める。すかさず水を差し出すリュディガーに、空のグラスと交換して受け取って、何口かに分けて水を飲んだ。
その時、午の鐘が鳴った。幾重にも折り重なるような音は、遠くからのようでも近くからのようでもある。おそらく外の建物に反響しているためだろう。
窓の外には、建物の合間__連なる洗濯物の合間に、見え隠れするように、先程までいた小川が見えた。
「__キルシェさん」
窓の外を見入っていたキルシェは、名を呼ばれて我に返り、ローベルトを見る。
「すみません、外を見ていて……聞き漏らしました。えぇっと……?」
柔和に笑んだ彼は、リュディガーへ視線を向けた。
「キルシェ、急ぎの用事があるか?」
「いえ。今日は__何も無くなったので……」
「あぁ……そうか」
語尾を濁して言えば、察しがいいリュディガーは、講書のことに気づいたようだった。
「__その……昼食をご一緒にどうだろうか、と父が聞いたんだ。大したものはないが」
え、と言葉に詰まってローベルトを改めて見れば、深く頷く。
「でも、そんなつもりは__」
「どのみち、これから父の食事を作るから、ひとり増えようが変わらない。それに、食べないにしても、急ぎでないなら、わかる道まで案内するにはちょっと待ってもらいたい」
「__だから、同じように待ってもらうなら、食べて行ってもらったほうがいいな、という訳だよ」
食堂は昼食の提供を終えてしまっているに違いない。だからといって、どこかで贖って大学へ持ち帰り、食べるにしては、確かに遅すぎる。
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