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帝都の大学
地固まる前に
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キルシェが身の上話をして以降は、いよいよ本格的に食事となった。その彼女はそれぞれを口に運ぶ度、大げさだ、と笑ってしまうほど目を輝かせた。
彼女のような階級が食べる洗練された料理に比べ、良く言えば新鮮味があり、悪く言えばあまりにも土着な大衆料理。
先入観なく、分け隔てない人柄のキルシェであれば、受け入れられるかもしれない、と予想立てていたことはもちろんだが、実際に気に入ってくれたのは、リュディガーには安堵ともに嬉しいことだった。
食事の間の会話は、ほとんどが大学の話。それに少しばかり、リュディガーの古巣__龍帝従騎士団の頃の話を加えたもの。
キルシェらのような良家の者は、身振り手振りは卑しいとし、彼女もその躾の賜物で身に染み付いているが故に、他所のテーブルよりは静かだった。それは、リュディガーらのテーブルが賑やかさに欠けているわけではなく、言うなれば穏やかで柔らかい食卓の表れ。
どちらかといえば、お互い聞く側になることが多いから、会話はさほど続かないと思ったが、特に労せず思いの外会話が弾んだ。それはおそらく、キルシェが思いも寄らない反応を返すからだろう。
大学に通っている特異な令嬢だ。好奇心の塊といえる質もあるのかもしれない。身振り手振りが少ない分、表情がよく変わるのも、また飽きさせない。
それらに加え、彼女が歩み寄ったこと__自らの明かしにくい部分を、明かせる範囲で告げてくれたことで、リュディガーもより踏み込みやすくなったのも大きい。
不躾に相手の領分に踏み込まない__侵さないことも誠実さだと思っているリュディガーには、彼女との距離感は一緒にいることが多い割に、離れていたように思う。
きっとこのままの距離感なのだろう__そう思っていた。
別段、指南してもらう分には十分だったし、同門と言うには憚られない距離だからそこまで気にしていなかったが、ビルネンベルクから、彼女のことを気にかけてやってほしい、と言われている手前、今少し距離を縮めた方がよいのかも、と思い始めていたのだ。
__雨降って地固まるという。そうは言っても放置して変に固まられては困るから、キルシェを連れて食事に行くように。
そうビルネンベルクが言った言葉の意味するところが、最初全くもってわからなかった。そのときの表情は、悪巧みを考えた子供のそれで、おそらくケプレル子爵への報復を思いついたからの表情だったのだろうが、それがなおさら理解を遠ざけた。
だが、言葉に従ってみて、なるほど、とビルネンベルクの思惑がわかったような気がした。
__彼女の背景を知るには好機だった、ということか……。
おそらく、今日を逃したら、彼女の口から身の上話は聞けず仕舞いだったことだろう。
誰でもよいわけではない内容なのは違いない。だからといって、ビルネンベルクの口から言うことは不躾もいいところ。
__どうやら自分は、先生から全幅の信頼を置かれている上、かなり高く買われているらしい。
重苦しい雰囲気には一切ならず、かなり打ち解けた夕餉は、あっという間に時間が経つもの。
キルシェはもうだいぶ前から手が止っていて、食事は結局、大部分をリュディガーが平らげた。彼女が言うにはいつもよりは多く食べたらしいが、それでもリュディガーにしてみれば、普段見かける彼女の食事より多く摂ったかも知れないと言う程度のように思う。
__まあ、食欲はないかもしれない、と思っていたからよかったか。
「__デザートは食べるだろうか?」
「お気遣いをありがとうございます。ですが、もうお腹がいっぱいなので」
「そうか。__このまま、待っていてくれ」
はい、と頷くのを見て、リュディガーは席を立って、カウンターへと向かう。
店主に食事の礼とともに食後のお茶をそろそろ出して欲しい旨を伝え、帰り際に受け取れるよう葡萄酒を一本見繕ってもらう。見守るキルシェにそれと悟られないよう支払いを済ませて、心付けをカウンターへ置き、席へと戻った。
遅れてテーブルを片付けに現れた店員に、キルシェは美味しかったと賛辞を送り、柔和な笑みを浮かべる店員は、グラスへ水を足してから、器用に重ねた皿を両手に掲げ、一度で持ち去ってしまった。
「__すごいですね」
感嘆した声を浮かべるキルシェに、リュディガーは小さく笑う。
「あれは、当たり前?」
「まあ、器用なのは違いないが」
「そう……」
見守る店員は、カウンターにそれらをおくと、すでに準備されていたお茶が載ったトレイを手に戻ってきた。そして、それをゆっくりと頂く。
もはやほとんど会話はなかったが、気まずい雰囲気はまるでない。そんな中、背もたれに身を預けてゆったりと座るリュディガーは、キルシェが店内を興味深そうに見渡している様を、見守るに終止した。
さて、とリュディガーはキルシェが存分に休んだのを見て取って、心付けをテーブルに置き、席を立つ。
キルシェの外套をまずは手に取り、リュディガーは背後に回り込んで袖を通す補助をし、自らも外套に袖を通していると、見計らったように店員が麻紐で簡易的に括った葡萄酒を運んでくる。
「あら、これは?」
「__当店からのサービスの品です」
キルシェの問いかけに、リュディガーが言葉を発するより先に、よく気がつく店員が他のテーブルには聞こえない程度の声であるが、それでもしっかりと聞こえるよう答えた。
ここの店は、店長もさることながら店員もよく気が利き、機転が利くと評判なのだ。
「ありがたく頂こう」
さっと外套を着ながら、葡萄酒を受け取って目配せで店員に礼を述べれば、穏やかな表情で不自然でない仕草の頷きを返す店員。そして、彼はランタンを示すので、頷きを返せば、無駄のない仕草でランタンに火を灯してくれる。
心付けをテーブルに置き、ランタンを手にしてキルシェを促し、その場を離れた。
カウンターの店長にも会釈をして向かう出入り口には、別の店員が待ち構えていて、頃合いを見計らうようにして扉を開けてにこやかに送り出してくれた。
身体が夜気に晒されるが、芯まで温まっている今は寧ろ心地よく感じる。隣のキルシェに寒くないかを問うてみたが、彼女もどうやら同様らしい。
食事へ出たときと同じ道をたどり初めて見ると、どっぷり闇に飲まれた街は、さらに蠱惑な気配を醸している。
まず間違いなく縁もゆかりも無いキルシェは、そうした気配がやはり物珍しいのだろう。店内を見渡していた以上に、注意深く周囲を見張っている。
言葉は相変わらず少なく、それでいて気まずくない雰囲気。気の置けない仲とはこのことか__そんなことを思って、リュディガーが空の十六夜を見上げたときだった。
「__あっ」
キルシェの身体が視界の端で大きく沈んだのが見え、反射的に酒瓶を持つ方の腕で沈んだキルシェの身体を受け止めるように、腕を出せば、ちょうど細腰を支える形になった。
「急にどうした?」
「余所見をしすぎていたようで……躓きました」
「足は? 大丈夫か?」
「ええ。大丈夫だと」
体勢を戻し、足首の様子を探るキルシェの足元をカンテラで照らす。裾から覗く細い足首は、簡単に折れそうなほど儚げで、いくらか心配をしたが、それをくるり、とゆっくり捻る動きを見るに、どうやら大丈夫なようだ。リュディガーは、小さく胸を撫で下ろした。
そして、ほら、と酒瓶を握る拳を差し出すのだが、意図を読み取れないキルシェが困惑するので小さく笑う。
「支えに。__流石にこの時間では、荷車は借りにくい」
「……それはそうですね」
苦笑したキルシェは手を拳に添えるのだが、そこでもう一方の手で酒瓶を預かろうとする。
「それはいい。君は、片手を塞がないでいてくれ。万が一のとき、手を付けないのは危険だ。__持って欲しいときは、言う」
「……わかりました」
それ以上は食い下がらずに応じたキルシェとともに、リュディガーは歩むのだった。
相変わらず、言葉は少ないまま__。
彼女のような階級が食べる洗練された料理に比べ、良く言えば新鮮味があり、悪く言えばあまりにも土着な大衆料理。
先入観なく、分け隔てない人柄のキルシェであれば、受け入れられるかもしれない、と予想立てていたことはもちろんだが、実際に気に入ってくれたのは、リュディガーには安堵ともに嬉しいことだった。
食事の間の会話は、ほとんどが大学の話。それに少しばかり、リュディガーの古巣__龍帝従騎士団の頃の話を加えたもの。
キルシェらのような良家の者は、身振り手振りは卑しいとし、彼女もその躾の賜物で身に染み付いているが故に、他所のテーブルよりは静かだった。それは、リュディガーらのテーブルが賑やかさに欠けているわけではなく、言うなれば穏やかで柔らかい食卓の表れ。
どちらかといえば、お互い聞く側になることが多いから、会話はさほど続かないと思ったが、特に労せず思いの外会話が弾んだ。それはおそらく、キルシェが思いも寄らない反応を返すからだろう。
大学に通っている特異な令嬢だ。好奇心の塊といえる質もあるのかもしれない。身振り手振りが少ない分、表情がよく変わるのも、また飽きさせない。
それらに加え、彼女が歩み寄ったこと__自らの明かしにくい部分を、明かせる範囲で告げてくれたことで、リュディガーもより踏み込みやすくなったのも大きい。
不躾に相手の領分に踏み込まない__侵さないことも誠実さだと思っているリュディガーには、彼女との距離感は一緒にいることが多い割に、離れていたように思う。
きっとこのままの距離感なのだろう__そう思っていた。
別段、指南してもらう分には十分だったし、同門と言うには憚られない距離だからそこまで気にしていなかったが、ビルネンベルクから、彼女のことを気にかけてやってほしい、と言われている手前、今少し距離を縮めた方がよいのかも、と思い始めていたのだ。
__雨降って地固まるという。そうは言っても放置して変に固まられては困るから、キルシェを連れて食事に行くように。
そうビルネンベルクが言った言葉の意味するところが、最初全くもってわからなかった。そのときの表情は、悪巧みを考えた子供のそれで、おそらくケプレル子爵への報復を思いついたからの表情だったのだろうが、それがなおさら理解を遠ざけた。
だが、言葉に従ってみて、なるほど、とビルネンベルクの思惑がわかったような気がした。
__彼女の背景を知るには好機だった、ということか……。
おそらく、今日を逃したら、彼女の口から身の上話は聞けず仕舞いだったことだろう。
誰でもよいわけではない内容なのは違いない。だからといって、ビルネンベルクの口から言うことは不躾もいいところ。
__どうやら自分は、先生から全幅の信頼を置かれている上、かなり高く買われているらしい。
重苦しい雰囲気には一切ならず、かなり打ち解けた夕餉は、あっという間に時間が経つもの。
キルシェはもうだいぶ前から手が止っていて、食事は結局、大部分をリュディガーが平らげた。彼女が言うにはいつもよりは多く食べたらしいが、それでもリュディガーにしてみれば、普段見かける彼女の食事より多く摂ったかも知れないと言う程度のように思う。
__まあ、食欲はないかもしれない、と思っていたからよかったか。
「__デザートは食べるだろうか?」
「お気遣いをありがとうございます。ですが、もうお腹がいっぱいなので」
「そうか。__このまま、待っていてくれ」
はい、と頷くのを見て、リュディガーは席を立って、カウンターへと向かう。
店主に食事の礼とともに食後のお茶をそろそろ出して欲しい旨を伝え、帰り際に受け取れるよう葡萄酒を一本見繕ってもらう。見守るキルシェにそれと悟られないよう支払いを済ませて、心付けをカウンターへ置き、席へと戻った。
遅れてテーブルを片付けに現れた店員に、キルシェは美味しかったと賛辞を送り、柔和な笑みを浮かべる店員は、グラスへ水を足してから、器用に重ねた皿を両手に掲げ、一度で持ち去ってしまった。
「__すごいですね」
感嘆した声を浮かべるキルシェに、リュディガーは小さく笑う。
「あれは、当たり前?」
「まあ、器用なのは違いないが」
「そう……」
見守る店員は、カウンターにそれらをおくと、すでに準備されていたお茶が載ったトレイを手に戻ってきた。そして、それをゆっくりと頂く。
もはやほとんど会話はなかったが、気まずい雰囲気はまるでない。そんな中、背もたれに身を預けてゆったりと座るリュディガーは、キルシェが店内を興味深そうに見渡している様を、見守るに終止した。
さて、とリュディガーはキルシェが存分に休んだのを見て取って、心付けをテーブルに置き、席を立つ。
キルシェの外套をまずは手に取り、リュディガーは背後に回り込んで袖を通す補助をし、自らも外套に袖を通していると、見計らったように店員が麻紐で簡易的に括った葡萄酒を運んでくる。
「あら、これは?」
「__当店からのサービスの品です」
キルシェの問いかけに、リュディガーが言葉を発するより先に、よく気がつく店員が他のテーブルには聞こえない程度の声であるが、それでもしっかりと聞こえるよう答えた。
ここの店は、店長もさることながら店員もよく気が利き、機転が利くと評判なのだ。
「ありがたく頂こう」
さっと外套を着ながら、葡萄酒を受け取って目配せで店員に礼を述べれば、穏やかな表情で不自然でない仕草の頷きを返す店員。そして、彼はランタンを示すので、頷きを返せば、無駄のない仕草でランタンに火を灯してくれる。
心付けをテーブルに置き、ランタンを手にしてキルシェを促し、その場を離れた。
カウンターの店長にも会釈をして向かう出入り口には、別の店員が待ち構えていて、頃合いを見計らうようにして扉を開けてにこやかに送り出してくれた。
身体が夜気に晒されるが、芯まで温まっている今は寧ろ心地よく感じる。隣のキルシェに寒くないかを問うてみたが、彼女もどうやら同様らしい。
食事へ出たときと同じ道をたどり初めて見ると、どっぷり闇に飲まれた街は、さらに蠱惑な気配を醸している。
まず間違いなく縁もゆかりも無いキルシェは、そうした気配がやはり物珍しいのだろう。店内を見渡していた以上に、注意深く周囲を見張っている。
言葉は相変わらず少なく、それでいて気まずくない雰囲気。気の置けない仲とはこのことか__そんなことを思って、リュディガーが空の十六夜を見上げたときだった。
「__あっ」
キルシェの身体が視界の端で大きく沈んだのが見え、反射的に酒瓶を持つ方の腕で沈んだキルシェの身体を受け止めるように、腕を出せば、ちょうど細腰を支える形になった。
「急にどうした?」
「余所見をしすぎていたようで……躓きました」
「足は? 大丈夫か?」
「ええ。大丈夫だと」
体勢を戻し、足首の様子を探るキルシェの足元をカンテラで照らす。裾から覗く細い足首は、簡単に折れそうなほど儚げで、いくらか心配をしたが、それをくるり、とゆっくり捻る動きを見るに、どうやら大丈夫なようだ。リュディガーは、小さく胸を撫で下ろした。
そして、ほら、と酒瓶を握る拳を差し出すのだが、意図を読み取れないキルシェが困惑するので小さく笑う。
「支えに。__流石にこの時間では、荷車は借りにくい」
「……それはそうですね」
苦笑したキルシェは手を拳に添えるのだが、そこでもう一方の手で酒瓶を預かろうとする。
「それはいい。君は、片手を塞がないでいてくれ。万が一のとき、手を付けないのは危険だ。__持って欲しいときは、言う」
「……わかりました」
それ以上は食い下がらずに応じたキルシェとともに、リュディガーは歩むのだった。
相変わらず、言葉は少ないまま__。
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