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帝都の大学
果報者
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「__私は……果報者ですね」
「キルシェ?」
ぽつり、と思わずこぼれてしまった言葉。それを拾い上げたリュディガーの怪訝な声に顔を上げる。
「これまで、先生以外で、これほど気にかけてくれた人に出会えたことがない。__あ、屋敷の使用人を除いて、ですよ。……幸か不幸か、それもあまり気にしなかった性分でしたから、これまで独りで……拒絶してきた覚えもないんですが、深く踏み込ませるには難しいので、私の場合」
「よく、わからないが……人それぞれ、事情はあるだろう」
「__私は、養子なんです」
リュディガーが目を見開いたのを見、キルシェは困ったように笑い、テーブルの上の鈴蘭に視線を落とした。
これを明かすのは、ビルネンベルク以外では初めてだ。
__もしかしたら、先生から他の教官にも話がそれとなく耳に入れているかもしれないけれど……。
場の空気が凍ったわけではないが、食事を前にするような話ではない__キルシェは誤魔化すように肩を竦めた。
「面白い話ではないので、私の話はこれでお終いに__」
「いや、続けてくれ」
言う先を制され、キルシェは驚いた。
「君にいとって、私は友人なのだろう?」
「それは……そうですが……そう思われること自体、ご迷惑では?」
なんの、とリュディガーは笑う。
「__私が弓射で、どれほど迷惑かけていると思っている。それに比べれば__むしろ、教えてもらっている立場なのに、友人としてくれている方が恐れ多い」
明るい口調で自嘲じみて言ったリュディガーは、そこで真摯な表情になる。
「__話せる範囲でかまわない」
キルシェは、ひゅっ、と息を詰めた。
__リュディガーは、よく解っている……察しが良すぎる。
そして、一度目を伏せてから、手元に視線を落としたまま口を開く。
「__言っても、変わらない生活だったんです。それでも声を上げていたら、煙たがられて、寄宿学校へ……」
「寄宿学校」
ええ、と頷いたところで、リュディガーが視界の端で手を軽く翳すのが見え、キルシェは口を噤む。リュディガーの視線の先を見れば、店員が近づいてきているところだった。
数種類の腸詰め、潰した馬鈴薯、牛の煮込み__それらを置いて去っていく店員。
「……父の恩人が私の実父だったらしく、小さい私を引き取ってくださいました。とてもご恩は感じています。だからこそ、父の仕事がもっとよくなるように、と善意からでしたが、口を出しすぎてしまったようです。だから、寄宿学校へ入れられました」
「ご尊父とご母堂は……?」
「魔物に襲われた、と聞いています」
「それは……お気の毒に……」
いえ、と首を振るキルシェ。
「寄宿学校というのは、社交界入りする前の、子女が入るような寄宿学校……?」
「修道院の」
苦笑して答えると、リュディガーが難しい顔をした。
リュディガーが言う寄宿学校は、良家の子女が社交界入りをする前、教養はもちろん、淑女としての礼儀礼節、舞踏などの嗜みを仕上げるように習うところだ。良家の子女の花嫁修業の場とも言える。
ここは入らなければならない、と言うものでない。家々の判断に委ねられている。
対して修道院の寄宿学校は、文字通り修道院__神学校という側面が強い。
大学よりもさらに隔絶された環境で、基本的な教養を身につけ、質素清貧な生活を営み、信仰を噛み締め、悔い改め、奉仕する心を養うというもの。良家の子女が送り込まれることは、ほぼない場所だ。そしてそういう子女は、訳あり__素行不良な子女とみなされ、ほんの僅かな失敗でも、厳しい躾をされる。
厳しさから逃げようとする子もいたほどだ。
朝の礼拝に備えて礼拝堂で待機するのを、わずかでも遅れただけで怠けているとされ、極寒の中、井戸水を浴びせられたこともある。そんなものは序の口で、おそらく、理不尽ということは味わい尽くしたように思う。
__灰色……。
リュディガーが言っていたが、その頃の記憶は思い出すと全てがまさしく灰色なのだ。
__夢だったようにも思える……。
曖昧で、ぼやけていて、まるで幻影のよう。
最終的に、声を上げるだけ無駄ということが続いていて、息をしながら死んでいたと言ってもいい。
考えることも放棄して、言われるがままという生活__当時は一切疑問に思わなくなっていた。
そこは3年で卒業になる。修道院の寄宿学校にいた子は、司祭などになりたがっていた信心深い子たちばかりだから、神官職についたはずだ。ただ自分だけ、故郷に帰った。
「寄宿学校を卒業して戻って、家では徹底して令嬢としての教育が待っていて……それは別に当たり前のことですし、父が望んでいるので従っていて……。でも、私も意外と強からしくて……嫁がされるのも構わないですが、もっと知識があれば状況が変えられるかもと思い、大学へ通わせて欲しい、と懇願して__今ここにいます」
そこへ、さらに運ばれてくる料理。チーズを綴じた平たく丸いパン、羊の香草焼き、鶏の串焼き、ほうれん草のペースト状の添え物。
「父にしてみれば、ちょうどよかったんですよ。一通り叩き込めるだけ叩き込んで、仕上げても、ときどき仕事に口を出すのは変わらずで……手に余るじゃじゃ馬だったはずですから」
__嫌なら、さっさと適当なところへ嫁がせればいいのに……。
実父が恩人だとは申せ、養父は物好きだと思う。
__まあ、それも時間の問題よね……。
キルシェは困ったように笑う。遅かれ早かれ、それは訪れることに変わりはない。
従うことが恩返しだと思っている自分は、素直にそれに従うだろう。
__それまでは、自由に……。
だからこそ、ここへ来た。
父の支えになりたい、ということももちろんだが、自分で今後を選べる可能性が広がるかもしれない__そうした下心もあってだ。もしかしたら嫁ぎ先が制約少なく、より自由になるかもしれない。
「……ここに来られてよかったです。__リュディガーと知り合えましたから」
「大げさだ」
「私には、大きなことです」
今後を選べる選べないにせよ、彼という得難い朋友を得られた。
__それだけでも、自分というものに価値がいくらかでもあったと思い直すことができたのだもの……。
「__と、まぁ……こんなところです」
これまで口外をしないでいたのは、人を選ぶ内容だからだ。賢しらに不幸を見せびらかして悲劇の主人公に酔っている、と思われても困るし、それ以上に変に気を使わせてしまっては申し訳ない。
そうか、とひとりごちるように頷くリュディガーは、逡巡する。そのわずかな間でさえ、キルシェには審判を待っているような心地だった。
「……食べようか。これ以上スープを冷ますのは、どうかと思う」
そして、とくに拘りなく、加えて冗談めかして言うリュディガー。その反応に、拒絶されることが杞憂に終わったことを知る。
「……そうですね」
自嘲するように苦笑を浮かべるキルシェ。そして、改めてテーブルの上を眺めるのだが、そこで固まってしまった。
会話の合間に届けられていた料理だったから、気づけなかったが、テーブルにぎりぎり乗り切ったような品数がそこにある。
豆とトマトのスープ、パン、葉物野菜のサラダと、キャベツを発酵させた漬物、チーズが数種類とハムが並ぶ皿、数種類の腸詰め、潰した馬鈴薯、牛の煮込み、チーズを綴じた平たい円形のパン、羊の香草焼き、鶏の串焼き、ほうれん草のペースト状の添え物__。
「__リュディガー、大学の食事は足りている?」
「別段、足りないと思うことはないが」
スープを飲んでいたリュディガーが、怪訝に眉をひそめる。
大学の食事は、毎日献立が変わるものの、目の前のテーブルに並んでいる量ほどはない。二人分で考えてみても、大学での二食分にはなる量だ。
「まあ、確かに龍騎士の頃よりは少ないのは間違いないな。それでも、私は大食らいじゃないし、身体をそこまで使うわけではないから、あれはあれで十分だ」
「……そうなのですか」
それにしても、量が多い気がするが__とは、キルシェは飲み込んで、カトラリーを手にとる。
「あえてテーブルが賑やかになるよう注文したんだ。__まあ、とにかく、食べようじゃないか。食べたら、美味しさで色々思うところはふっとぶのは保証する。気分が軽くなるはずだ」
早速スープを飲み干し終えたリュディガーは、羊の香草焼きをひとつ取皿に移して、促すようにキルシェの前に置くのだった。
まるでその表情はしんみりした場の空気を和ますかのように、いたずらに笑んでいる。
「__ありがとうございます」
何に対してとは明確には言わなかったが、ゆっくりと頷き返すあたり、彼は察してくれているのだろう。
__本当に……果報者だわ……。
「キルシェ?」
ぽつり、と思わずこぼれてしまった言葉。それを拾い上げたリュディガーの怪訝な声に顔を上げる。
「これまで、先生以外で、これほど気にかけてくれた人に出会えたことがない。__あ、屋敷の使用人を除いて、ですよ。……幸か不幸か、それもあまり気にしなかった性分でしたから、これまで独りで……拒絶してきた覚えもないんですが、深く踏み込ませるには難しいので、私の場合」
「よく、わからないが……人それぞれ、事情はあるだろう」
「__私は、養子なんです」
リュディガーが目を見開いたのを見、キルシェは困ったように笑い、テーブルの上の鈴蘭に視線を落とした。
これを明かすのは、ビルネンベルク以外では初めてだ。
__もしかしたら、先生から他の教官にも話がそれとなく耳に入れているかもしれないけれど……。
場の空気が凍ったわけではないが、食事を前にするような話ではない__キルシェは誤魔化すように肩を竦めた。
「面白い話ではないので、私の話はこれでお終いに__」
「いや、続けてくれ」
言う先を制され、キルシェは驚いた。
「君にいとって、私は友人なのだろう?」
「それは……そうですが……そう思われること自体、ご迷惑では?」
なんの、とリュディガーは笑う。
「__私が弓射で、どれほど迷惑かけていると思っている。それに比べれば__むしろ、教えてもらっている立場なのに、友人としてくれている方が恐れ多い」
明るい口調で自嘲じみて言ったリュディガーは、そこで真摯な表情になる。
「__話せる範囲でかまわない」
キルシェは、ひゅっ、と息を詰めた。
__リュディガーは、よく解っている……察しが良すぎる。
そして、一度目を伏せてから、手元に視線を落としたまま口を開く。
「__言っても、変わらない生活だったんです。それでも声を上げていたら、煙たがられて、寄宿学校へ……」
「寄宿学校」
ええ、と頷いたところで、リュディガーが視界の端で手を軽く翳すのが見え、キルシェは口を噤む。リュディガーの視線の先を見れば、店員が近づいてきているところだった。
数種類の腸詰め、潰した馬鈴薯、牛の煮込み__それらを置いて去っていく店員。
「……父の恩人が私の実父だったらしく、小さい私を引き取ってくださいました。とてもご恩は感じています。だからこそ、父の仕事がもっとよくなるように、と善意からでしたが、口を出しすぎてしまったようです。だから、寄宿学校へ入れられました」
「ご尊父とご母堂は……?」
「魔物に襲われた、と聞いています」
「それは……お気の毒に……」
いえ、と首を振るキルシェ。
「寄宿学校というのは、社交界入りする前の、子女が入るような寄宿学校……?」
「修道院の」
苦笑して答えると、リュディガーが難しい顔をした。
リュディガーが言う寄宿学校は、良家の子女が社交界入りをする前、教養はもちろん、淑女としての礼儀礼節、舞踏などの嗜みを仕上げるように習うところだ。良家の子女の花嫁修業の場とも言える。
ここは入らなければならない、と言うものでない。家々の判断に委ねられている。
対して修道院の寄宿学校は、文字通り修道院__神学校という側面が強い。
大学よりもさらに隔絶された環境で、基本的な教養を身につけ、質素清貧な生活を営み、信仰を噛み締め、悔い改め、奉仕する心を養うというもの。良家の子女が送り込まれることは、ほぼない場所だ。そしてそういう子女は、訳あり__素行不良な子女とみなされ、ほんの僅かな失敗でも、厳しい躾をされる。
厳しさから逃げようとする子もいたほどだ。
朝の礼拝に備えて礼拝堂で待機するのを、わずかでも遅れただけで怠けているとされ、極寒の中、井戸水を浴びせられたこともある。そんなものは序の口で、おそらく、理不尽ということは味わい尽くしたように思う。
__灰色……。
リュディガーが言っていたが、その頃の記憶は思い出すと全てがまさしく灰色なのだ。
__夢だったようにも思える……。
曖昧で、ぼやけていて、まるで幻影のよう。
最終的に、声を上げるだけ無駄ということが続いていて、息をしながら死んでいたと言ってもいい。
考えることも放棄して、言われるがままという生活__当時は一切疑問に思わなくなっていた。
そこは3年で卒業になる。修道院の寄宿学校にいた子は、司祭などになりたがっていた信心深い子たちばかりだから、神官職についたはずだ。ただ自分だけ、故郷に帰った。
「寄宿学校を卒業して戻って、家では徹底して令嬢としての教育が待っていて……それは別に当たり前のことですし、父が望んでいるので従っていて……。でも、私も意外と強からしくて……嫁がされるのも構わないですが、もっと知識があれば状況が変えられるかもと思い、大学へ通わせて欲しい、と懇願して__今ここにいます」
そこへ、さらに運ばれてくる料理。チーズを綴じた平たく丸いパン、羊の香草焼き、鶏の串焼き、ほうれん草のペースト状の添え物。
「父にしてみれば、ちょうどよかったんですよ。一通り叩き込めるだけ叩き込んで、仕上げても、ときどき仕事に口を出すのは変わらずで……手に余るじゃじゃ馬だったはずですから」
__嫌なら、さっさと適当なところへ嫁がせればいいのに……。
実父が恩人だとは申せ、養父は物好きだと思う。
__まあ、それも時間の問題よね……。
キルシェは困ったように笑う。遅かれ早かれ、それは訪れることに変わりはない。
従うことが恩返しだと思っている自分は、素直にそれに従うだろう。
__それまでは、自由に……。
だからこそ、ここへ来た。
父の支えになりたい、ということももちろんだが、自分で今後を選べる可能性が広がるかもしれない__そうした下心もあってだ。もしかしたら嫁ぎ先が制約少なく、より自由になるかもしれない。
「……ここに来られてよかったです。__リュディガーと知り合えましたから」
「大げさだ」
「私には、大きなことです」
今後を選べる選べないにせよ、彼という得難い朋友を得られた。
__それだけでも、自分というものに価値がいくらかでもあったと思い直すことができたのだもの……。
「__と、まぁ……こんなところです」
これまで口外をしないでいたのは、人を選ぶ内容だからだ。賢しらに不幸を見せびらかして悲劇の主人公に酔っている、と思われても困るし、それ以上に変に気を使わせてしまっては申し訳ない。
そうか、とひとりごちるように頷くリュディガーは、逡巡する。そのわずかな間でさえ、キルシェには審判を待っているような心地だった。
「……食べようか。これ以上スープを冷ますのは、どうかと思う」
そして、とくに拘りなく、加えて冗談めかして言うリュディガー。その反応に、拒絶されることが杞憂に終わったことを知る。
「……そうですね」
自嘲するように苦笑を浮かべるキルシェ。そして、改めてテーブルの上を眺めるのだが、そこで固まってしまった。
会話の合間に届けられていた料理だったから、気づけなかったが、テーブルにぎりぎり乗り切ったような品数がそこにある。
豆とトマトのスープ、パン、葉物野菜のサラダと、キャベツを発酵させた漬物、チーズが数種類とハムが並ぶ皿、数種類の腸詰め、潰した馬鈴薯、牛の煮込み、チーズを綴じた平たい円形のパン、羊の香草焼き、鶏の串焼き、ほうれん草のペースト状の添え物__。
「__リュディガー、大学の食事は足りている?」
「別段、足りないと思うことはないが」
スープを飲んでいたリュディガーが、怪訝に眉をひそめる。
大学の食事は、毎日献立が変わるものの、目の前のテーブルに並んでいる量ほどはない。二人分で考えてみても、大学での二食分にはなる量だ。
「まあ、確かに龍騎士の頃よりは少ないのは間違いないな。それでも、私は大食らいじゃないし、身体をそこまで使うわけではないから、あれはあれで十分だ」
「……そうなのですか」
それにしても、量が多い気がするが__とは、キルシェは飲み込んで、カトラリーを手にとる。
「あえてテーブルが賑やかになるよう注文したんだ。__まあ、とにかく、食べようじゃないか。食べたら、美味しさで色々思うところはふっとぶのは保証する。気分が軽くなるはずだ」
早速スープを飲み干し終えたリュディガーは、羊の香草焼きをひとつ取皿に移して、促すようにキルシェの前に置くのだった。
まるでその表情はしんみりした場の空気を和ますかのように、いたずらに笑んでいる。
「__ありがとうございます」
何に対してとは明確には言わなかったが、ゆっくりと頷き返すあたり、彼は察してくれているのだろう。
__本当に……果報者だわ……。
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