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帝都の大学
令嬢然
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五矢目を射掛け、相変わらずの成果にリュディガーは息を小さく吐き、空を見上げる。夜の帳に覆われつつある空には、ちらほらと星が見えるようになった。
夜目は利く方だが、そろそろ潮時だろう。急激に夜気が寒くなってきているのだ。武官の自分はともかく、弓射に付き合ってくれているキルシェにはいささか堪えるはず。
リュディガーは弓手と馬手をそれぞれ見、結んでは開いて、調子を伺う素振りを示す。
「……腕が怠い……荷車の運搬ごときで。武官の端くれだったのに体がなまっているようだ。今日はこのあたりで__」
当たり障りのない嘘を混ぜ、早々に切り上げることを高みの見物をしているはずの指南役へ提案しようと振り返るが、視界に捉えた途端思わず息を飲んだ。
淡く柔らかい橙色の灯りは、光を放つ性質を持つ魔石から放たれている。蝋燭とは違い、魔力の干渉がなければ安定した光だ。
その光を掲げた柱の横に、いつものように座っている彼女は、その柱に膝を抱えて座ったままもたれ掛かって微動だにしない。
「キルシェ?」
無理をさせたか__そう思って近づいて声を掛けてみるが、反応がない。
銀の御髪と同じ、絹のような艶の銀の長い睫毛が影を落とす目元は伏せられて、瑞々しい唇から溢れる静かで穏やかな呼吸は、明らかに寝息だ。
無理もない、とリュディガーは思いながら、自身が羽織っていた羽織を掛けてやる。
弓射の腕がいいとはいえ、あの草の束を道の半ばまで抱えて運ぶには、体力的にかなり無理をしていたはずだ。
__真面目すぎるし、素直すぎる性格が災いしたと言ってもいい……。
庶民であればすぐに車を借りるという選択肢が浮かんだだろうが、そこはやはり育ちの良さ故浮かばなかったのだろう。常日頃、困らない程度に一般的で庶民的な常識を身につけて行動しているとはいえ、彼女はそもそも土台が違っているのだ。
周囲から浮いてしまうほど、洗練された優美な所作。身振り手振りは最小限。一本の軸が通ったような足運び。文字を綴る指先はもちろん、それを見つめる視線は鼻先を通って品位にあふれている。リュディガーが知る限り、彼女が姿勢を崩したことはない。
そして、彼女はそれらに気づいていない。気付ける範囲で気をつけているようだが、染み付いてしまっている部分はどうにも気づきにくい。
品のある振る舞いは、孤高にも通じる。そしてそれは畏敬を相手に抱かせ、ともすれば自信過剰にうつり、見下されたと思う者もいる。
__そして、お高く止まっていると言われる。
彼女の場合はそれが顕著だった。
指南役になってもらう以前から、彼女のことは噂で聞いていた。かなり注目の的であったのは事実だ。
あれだ、と教えられずとも、遠巻きに見かけて、彼女のことだとわかったほど。
__ご存知かもしれませんが……キルシェです。キルシェ・ラウペン。
指南役になってもらって、初めて挨拶を交わしたとき、そう彼女が言った言葉は、それだけ注目されているという自覚があるからだ。きっと知っているだろうから挨拶するまでもないだろうけど__という。
その彼女が困ったような笑顔で手を差し出したとき驚いてしまったのは、握手を交わすとは思っても見なかったから。
令嬢への挨拶は、手の甲への口づけだ。てっきり、令嬢への挨拶として、手の甲を差し出されると思っていたから、驚いてしまった。
見かけたことのある彼女からは__朝の鍛錬で目撃した厳しく怜悧な横顔の彼女からは想像できないほどの馴れ合い。
指南はするが、立場としては学友として対等であろうという心の現れだったのは、指南を受けてみてよくわかった。
「__寝ているのかい?」
「ビルネンベルク先生」
ふいに声が近くで聞こえ、そちらを見れば、ビルネンベルクが穏やかな顔で佇んでいた。
「あれから時間が経っていたのに、食堂にあらわれていないと聞いてね。こちらだろうと思って様子を見に来たんだ」
「お探しに? 御用ですか?」
「いや、違う。あれだけの重労働をさせてしまったんだ。お腹が空いてさっさと早めの夕食にしただろうと思っていたのに、私が先程食堂へ行ったとき姿がなかった。ちょうどいた君の友人に尋ねたら、まだ見かけていないと言われて、まさか、と思ってここへ来ただけだ。言い出しっぺは、キルシェだろう」
「はい。今日はいいと言ったのですが、譲らなそうで折れました」
だろうだろう、とくつくつ笑うビルネンベルクは、キルシェの顔を覗き込む。学生とはいえキルシェは年頃の女性だ。いささか失礼だろう、と思うが、心に留める。
「よく寝ている。__リュディガー、頼めるかい?」
何が、と問わずともビルネンベルクの要請を察した。
「かまいませんが……」
女性寮は、教官らの棟の中にある。
大学は男所帯といってもいいぐらい、男の比率がおよそ九割と高い。防犯の観点に加え、間違いが起こらないように、との配慮だ。男女はそれぞれの寮を、許可なく自由に行き来はできない規則になっている。
故に、いくら許可をもらうとはいえ、ビルネンベルクが運んでしまえば、教官という立場もあって具合がいいはず。
__それに、あの草の束をひょい、と担げたのだし、力不足とも思えない。
リュディガーの考えを察したらしい、ビルネンベルクは両手を示して肩を竦める。
「さっきの草の束を運んで、私の細腕が悲鳴をあげててもう無理なんだ」
困ったものだよ、と笑うビルネンベルク。
__嘘だ。
あの程度、造作ないし疲れもしないはず。
さきほどの草の束を肩に乗せた様を思い出し、咄嗟に出そうになる言葉を飲んだ。きっと渋い顔をしているに違いない。
「大丈夫大丈夫。私も一緒に行って見届けるから」
くつくつ、と笑う教官の顔。
__面倒なだけだ。
「ほらほら、ラウペンの令嬢が震えだす前に」
「……承知しました」
処置なし、とため息をこぼしてリュディガーは急ぎ、放った矢を回収し、弓とともに然るべき場所へ戻す。
そして、御免、と小さく言って、華奢な体を横抱きに持ち上げた。
刹那、小さく彼女の首筋で光るのは、彼女がいつも身につけている耳飾り。
石は青。白味がつよいものから、深い青まで色はばらつきのある石が、それぞれ丸や四角にカットされていて、金で幾何学的に留められたもの。見かけない形状のそれは前衛的でいて品があり、物としては華美にも見えるが、彼女が身につける分には悪目立ちせず、つけていることも気が付かないことがあるほど馴染んでいる。
そこで鼻をかすめる香り。しっとりとしながらも、ふわりと柔らかく香るのは、彼女の香水か。それを放っている虚脱して身を委ねる柔らかい体。
リュディガーは不意打ちを食らって、どきり、としたが、ビルネンベルクに茶化されて玩具にされるのは御免こうむる、とばかりに平静を装う。
「下手な者に任せられないんだ、彼女は」
「……は?」
「育ちが良すぎるから。彼女は浮いているだろう」
先導するビルネンベルクが言う言葉に、リュディガーは肯定も否定もしなかった。それにビルネンベルクは肩越しにちらりと振り返る。
「__気にかけてあげてくれ」
教官として、それをみているのだろう。
だからこそ、いつも彼女を呼び出しているが、それ自体、良くも悪くも気に入りだと揶揄される。
「私独りでは、限界がある」
担当教官は、科目としてでなく束ねる立場として複数人を担当する。ビルネンベルクの場合20人前後のはず。そして彼の場合、教官でもそこそこの地位として、大学の運営にも携わっている。
「……落第しかけていますが」
途端、ビルネンベルクが声を出して笑い出す。
「うん。だから、君が落第したくないのなら、しっかりついてまわるといいよ、ということにもなる」
「左様で」
リュディガーは渋い顔になるしかなかった。
夜目は利く方だが、そろそろ潮時だろう。急激に夜気が寒くなってきているのだ。武官の自分はともかく、弓射に付き合ってくれているキルシェにはいささか堪えるはず。
リュディガーは弓手と馬手をそれぞれ見、結んでは開いて、調子を伺う素振りを示す。
「……腕が怠い……荷車の運搬ごときで。武官の端くれだったのに体がなまっているようだ。今日はこのあたりで__」
当たり障りのない嘘を混ぜ、早々に切り上げることを高みの見物をしているはずの指南役へ提案しようと振り返るが、視界に捉えた途端思わず息を飲んだ。
淡く柔らかい橙色の灯りは、光を放つ性質を持つ魔石から放たれている。蝋燭とは違い、魔力の干渉がなければ安定した光だ。
その光を掲げた柱の横に、いつものように座っている彼女は、その柱に膝を抱えて座ったままもたれ掛かって微動だにしない。
「キルシェ?」
無理をさせたか__そう思って近づいて声を掛けてみるが、反応がない。
銀の御髪と同じ、絹のような艶の銀の長い睫毛が影を落とす目元は伏せられて、瑞々しい唇から溢れる静かで穏やかな呼吸は、明らかに寝息だ。
無理もない、とリュディガーは思いながら、自身が羽織っていた羽織を掛けてやる。
弓射の腕がいいとはいえ、あの草の束を道の半ばまで抱えて運ぶには、体力的にかなり無理をしていたはずだ。
__真面目すぎるし、素直すぎる性格が災いしたと言ってもいい……。
庶民であればすぐに車を借りるという選択肢が浮かんだだろうが、そこはやはり育ちの良さ故浮かばなかったのだろう。常日頃、困らない程度に一般的で庶民的な常識を身につけて行動しているとはいえ、彼女はそもそも土台が違っているのだ。
周囲から浮いてしまうほど、洗練された優美な所作。身振り手振りは最小限。一本の軸が通ったような足運び。文字を綴る指先はもちろん、それを見つめる視線は鼻先を通って品位にあふれている。リュディガーが知る限り、彼女が姿勢を崩したことはない。
そして、彼女はそれらに気づいていない。気付ける範囲で気をつけているようだが、染み付いてしまっている部分はどうにも気づきにくい。
品のある振る舞いは、孤高にも通じる。そしてそれは畏敬を相手に抱かせ、ともすれば自信過剰にうつり、見下されたと思う者もいる。
__そして、お高く止まっていると言われる。
彼女の場合はそれが顕著だった。
指南役になってもらう以前から、彼女のことは噂で聞いていた。かなり注目の的であったのは事実だ。
あれだ、と教えられずとも、遠巻きに見かけて、彼女のことだとわかったほど。
__ご存知かもしれませんが……キルシェです。キルシェ・ラウペン。
指南役になってもらって、初めて挨拶を交わしたとき、そう彼女が言った言葉は、それだけ注目されているという自覚があるからだ。きっと知っているだろうから挨拶するまでもないだろうけど__という。
その彼女が困ったような笑顔で手を差し出したとき驚いてしまったのは、握手を交わすとは思っても見なかったから。
令嬢への挨拶は、手の甲への口づけだ。てっきり、令嬢への挨拶として、手の甲を差し出されると思っていたから、驚いてしまった。
見かけたことのある彼女からは__朝の鍛錬で目撃した厳しく怜悧な横顔の彼女からは想像できないほどの馴れ合い。
指南はするが、立場としては学友として対等であろうという心の現れだったのは、指南を受けてみてよくわかった。
「__寝ているのかい?」
「ビルネンベルク先生」
ふいに声が近くで聞こえ、そちらを見れば、ビルネンベルクが穏やかな顔で佇んでいた。
「あれから時間が経っていたのに、食堂にあらわれていないと聞いてね。こちらだろうと思って様子を見に来たんだ」
「お探しに? 御用ですか?」
「いや、違う。あれだけの重労働をさせてしまったんだ。お腹が空いてさっさと早めの夕食にしただろうと思っていたのに、私が先程食堂へ行ったとき姿がなかった。ちょうどいた君の友人に尋ねたら、まだ見かけていないと言われて、まさか、と思ってここへ来ただけだ。言い出しっぺは、キルシェだろう」
「はい。今日はいいと言ったのですが、譲らなそうで折れました」
だろうだろう、とくつくつ笑うビルネンベルクは、キルシェの顔を覗き込む。学生とはいえキルシェは年頃の女性だ。いささか失礼だろう、と思うが、心に留める。
「よく寝ている。__リュディガー、頼めるかい?」
何が、と問わずともビルネンベルクの要請を察した。
「かまいませんが……」
女性寮は、教官らの棟の中にある。
大学は男所帯といってもいいぐらい、男の比率がおよそ九割と高い。防犯の観点に加え、間違いが起こらないように、との配慮だ。男女はそれぞれの寮を、許可なく自由に行き来はできない規則になっている。
故に、いくら許可をもらうとはいえ、ビルネンベルクが運んでしまえば、教官という立場もあって具合がいいはず。
__それに、あの草の束をひょい、と担げたのだし、力不足とも思えない。
リュディガーの考えを察したらしい、ビルネンベルクは両手を示して肩を竦める。
「さっきの草の束を運んで、私の細腕が悲鳴をあげててもう無理なんだ」
困ったものだよ、と笑うビルネンベルク。
__嘘だ。
あの程度、造作ないし疲れもしないはず。
さきほどの草の束を肩に乗せた様を思い出し、咄嗟に出そうになる言葉を飲んだ。きっと渋い顔をしているに違いない。
「大丈夫大丈夫。私も一緒に行って見届けるから」
くつくつ、と笑う教官の顔。
__面倒なだけだ。
「ほらほら、ラウペンの令嬢が震えだす前に」
「……承知しました」
処置なし、とため息をこぼしてリュディガーは急ぎ、放った矢を回収し、弓とともに然るべき場所へ戻す。
そして、御免、と小さく言って、華奢な体を横抱きに持ち上げた。
刹那、小さく彼女の首筋で光るのは、彼女がいつも身につけている耳飾り。
石は青。白味がつよいものから、深い青まで色はばらつきのある石が、それぞれ丸や四角にカットされていて、金で幾何学的に留められたもの。見かけない形状のそれは前衛的でいて品があり、物としては華美にも見えるが、彼女が身につける分には悪目立ちせず、つけていることも気が付かないことがあるほど馴染んでいる。
そこで鼻をかすめる香り。しっとりとしながらも、ふわりと柔らかく香るのは、彼女の香水か。それを放っている虚脱して身を委ねる柔らかい体。
リュディガーは不意打ちを食らって、どきり、としたが、ビルネンベルクに茶化されて玩具にされるのは御免こうむる、とばかりに平静を装う。
「下手な者に任せられないんだ、彼女は」
「……は?」
「育ちが良すぎるから。彼女は浮いているだろう」
先導するビルネンベルクが言う言葉に、リュディガーは肯定も否定もしなかった。それにビルネンベルクは肩越しにちらりと振り返る。
「__気にかけてあげてくれ」
教官として、それをみているのだろう。
だからこそ、いつも彼女を呼び出しているが、それ自体、良くも悪くも気に入りだと揶揄される。
「私独りでは、限界がある」
担当教官は、科目としてでなく束ねる立場として複数人を担当する。ビルネンベルクの場合20人前後のはず。そして彼の場合、教官でもそこそこの地位として、大学の運営にも携わっている。
「……落第しかけていますが」
途端、ビルネンベルクが声を出して笑い出す。
「うん。だから、君が落第したくないのなら、しっかりついてまわるといいよ、ということにもなる」
「左様で」
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