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ゲーム開始。
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「つまり、私たちはこの問題を解かないといけない。」
彼女が言い放ったこの言葉を、今俺に降りかかっているどうしようもない事実を、俺は受け止められずにいた。
この問題を解かないと、本当に死んでしまう、という事実を。
「…………ねぇ。」
「何?」
再びの沈黙の後、彼女がゆっくりと口を開いた。
「あのキャラクター、ビミョーにダサくない?」
「………だよな!」
2人はとりあえず現実逃避した。
「そうそう、俺もなんかあのマスコット、ビミョ~にダサいなぁ、ってちょうど思ってたんだよ。」
「奇遇ね。私もよ。」
彼女はモニターに映ったキャラクターを指差していう。
「あの、微妙に可愛いとも、キモいとも取れない曖昧な顔に、可愛いともオシャレとも言えない水玉模様のファッション。体の至る所についているハートやリボン、雷マークやドクロマーク、所々破けた服がキャラクターの魅力を強調するどころか、逆にマスコットの方向性を失わせてるわ。このマスコット、ズブのど素人が作ったのかしら?ってレベルの出来よね。」
「おお!見事な観察眼だな。」
「でしょ!やっぱり毎日オシャレに気にかけてるとわかっちゃうのよねぇ~。」
「さすがだな。俺はオシャレの『お』の字の『o』すら知らないからなぁ~。」
「へっへん!」
彼女は胸を張って自慢げである。そんな彼女に、俺はこう問いかけた。
「で?どうするんだ?この状況。」
「あ。」
彼女の目から輝きがさサッと消える。
「……とりあえずこの問題を解かないと、後20分で確実に死ぬ……。まず、この問題を解いてから考えましょう。」
「…………そうだな。」
「1番とかどうだろう?正解っぽくね?」
「そうね。確かに。」
俺たちは今、共に生き残るため、協力して問題を解こうとしている。……なんてことを考えているのは、アキバだけである。
アキバが呑気に問題の答えを考えている裏で、彼女はいかにしてアキバを殺し、自分が生き残ろうかということだけを考えていた。
……このデスゲームの特質上、今ここでコイツを殺したところで、首輪の爆発は止まらない……。なら、やはり今はまだコイツを生かしておいて、答えに辿り着いた後に不意打ちで殺し、コイツを爆発させる。これが得策ね。まったく……カードキー持ってるかと思ってコイツを助けてやったのに……使えないやつね。まあ、せめて死ぬまで私の役に立ちなさい……
彼女はニヤリ、と笑みを浮かべた。
……なんか、良からぬことを考えてるんだろうなぁ……。
フフフフ、という彼女の隠しきれていない笑い声を聞き、アキバは呆れた。
せめて悪巧みするならバレないようにしろよ……。
アキバは憐れみの目で彼女を見つめる。
それにしても、コイツやっぱりなんか抜けてるなぁ……。逃げるルートの真反対に行ってしまったことといい、うっかりスイッチ踏んだことといい、カードキー持ってないことといい、悪巧みを隠しきれてないことといい……。俺がいうのもなんだけど、よくこれで裏社会生きてこれたな……。
「…………。」
「…………。」
「あと3分!」
マスコットが明るい声で2人に呼びかけた。
そんなこんなで、20分あった時間も、残りわずか3分となってしまった。
「…ねぇ、解けた?」
「………無理。」
彼女は焦っていた。なぜなら、彼らは一切問題を解けていないからである。
そして、当然だが彼女の作戦は問題が解けなければ成立しない。最初のうちはアキバが問題を解くのを待っているだけだったが、残り10分を切ったところで、彼女も痺れを切らし、脳をフル回転して問題を解き始めた。
しかし、解けない。当然である。こんな理不尽極まりない問題、解けるわけがない。
そもそも、この問題はまともに解くことができないように設定されている。それもそう、これはデスゲームなのだ。観客が見たいのは単なるクイズ番組ではなく人の本性を曝け出した、泥臭い争い。ゆえに、問題を正解しまくってデスゲームが間延びしないよう、基本的にはどの問題も理不尽な難易度に設定されている。そのことだけは、彼女も計算外だった。
………そして、限界が来た。
「あ゛~っ!もうだめよ!こんな問題解けるわけない!」
残り3分を切り、焦りを隠しきれなくなった彼女はついに思考を放棄した。
「そ、そんなこと言うなって!まだ解けるかもしれないだろ。」
アキバは彼女を慰めるように言う。
「じゃあアンタは少しでも解答に近づけたの?」
豹変した彼女の態度に、アキバは動揺しつつ、答える。
「い、いや……」
「だいたい、アンタは使えなさすぎるのよ!」
彼女はアキバの胸ぐらを両手でガシッと掴んだ。
「アンタがカードキー持ってるって思って助けてあげたのに!それなのに、カードキー持ってないって言うし、問題は一向に解けないし!」
「な、なんだと!じゃあカードキー目当てで俺を助けたのか!?」
アキバはカッとなって彼女に怒鳴りかける。
「当たり前でしょ!それ以外になんの価値があるの?」
「な、なんだと!」
アキバが彼女に殴りかかろうとした瞬間、ビビビッ、と首輪から警音が鳴る。
「一定以上の衝撃を感知しました。すぐに離れてください。」
首輪から警告システムの声が発せられた。
しまった!首輪に衝撃を加えすぎた!
警報で少しだけ頭を冷やしたアキバと彼女は、手を振り解いていったん少し距離を取った。そして、再び彼女はアキバに呼びかける。
「第一、アンタはずっと私に頼ってばっかりじゃない!」
「そ、そんなの仕方ないだろ!こっちはこんなこと初めてなんだ!それよりも、こんなことになったのはお前が俺をここに連れてきたからだろ!お前がなんとかしろよ!」
「人のせいにしてる暇があったら、アンタも少しは自分で考えなさいよ!それとも、アンタの頭は人に責任をなすりつけることしか考えられないの?」
「っ!……………。」
……アキバは、何も言い返せなかった。
「あと2分!」
「もうあと2分しかない……ああ、もうどうしようもない……カードキーもないし、問題も解けないし……。こんなつもりじゃ……こんな計画じゃなかったのに……。」
彼女はもはや言い争う気力も無くなったのか、ヘナヘナとその場で足から崩れ落ちた。
……アキバは、ずっと黙り込んでいた。
確かに、いままでずっと「死にたくない」と思いながらも、一度として自分で助かる方法を考えたことはなかった。
どんな時でも、ただ現状を人のせいにしていただけ……か。ぐうの根も出ないな……。
いや、落ち込むのは後だ。今は、
…ぎゅっと拳を握りしめる。
なんとかして、助かる方法を考えないと!
彼女が言い放ったこの言葉を、今俺に降りかかっているどうしようもない事実を、俺は受け止められずにいた。
この問題を解かないと、本当に死んでしまう、という事実を。
「…………ねぇ。」
「何?」
再びの沈黙の後、彼女がゆっくりと口を開いた。
「あのキャラクター、ビミョーにダサくない?」
「………だよな!」
2人はとりあえず現実逃避した。
「そうそう、俺もなんかあのマスコット、ビミョ~にダサいなぁ、ってちょうど思ってたんだよ。」
「奇遇ね。私もよ。」
彼女はモニターに映ったキャラクターを指差していう。
「あの、微妙に可愛いとも、キモいとも取れない曖昧な顔に、可愛いともオシャレとも言えない水玉模様のファッション。体の至る所についているハートやリボン、雷マークやドクロマーク、所々破けた服がキャラクターの魅力を強調するどころか、逆にマスコットの方向性を失わせてるわ。このマスコット、ズブのど素人が作ったのかしら?ってレベルの出来よね。」
「おお!見事な観察眼だな。」
「でしょ!やっぱり毎日オシャレに気にかけてるとわかっちゃうのよねぇ~。」
「さすがだな。俺はオシャレの『お』の字の『o』すら知らないからなぁ~。」
「へっへん!」
彼女は胸を張って自慢げである。そんな彼女に、俺はこう問いかけた。
「で?どうするんだ?この状況。」
「あ。」
彼女の目から輝きがさサッと消える。
「……とりあえずこの問題を解かないと、後20分で確実に死ぬ……。まず、この問題を解いてから考えましょう。」
「…………そうだな。」
「1番とかどうだろう?正解っぽくね?」
「そうね。確かに。」
俺たちは今、共に生き残るため、協力して問題を解こうとしている。……なんてことを考えているのは、アキバだけである。
アキバが呑気に問題の答えを考えている裏で、彼女はいかにしてアキバを殺し、自分が生き残ろうかということだけを考えていた。
……このデスゲームの特質上、今ここでコイツを殺したところで、首輪の爆発は止まらない……。なら、やはり今はまだコイツを生かしておいて、答えに辿り着いた後に不意打ちで殺し、コイツを爆発させる。これが得策ね。まったく……カードキー持ってるかと思ってコイツを助けてやったのに……使えないやつね。まあ、せめて死ぬまで私の役に立ちなさい……
彼女はニヤリ、と笑みを浮かべた。
……なんか、良からぬことを考えてるんだろうなぁ……。
フフフフ、という彼女の隠しきれていない笑い声を聞き、アキバは呆れた。
せめて悪巧みするならバレないようにしろよ……。
アキバは憐れみの目で彼女を見つめる。
それにしても、コイツやっぱりなんか抜けてるなぁ……。逃げるルートの真反対に行ってしまったことといい、うっかりスイッチ踏んだことといい、カードキー持ってないことといい、悪巧みを隠しきれてないことといい……。俺がいうのもなんだけど、よくこれで裏社会生きてこれたな……。
「…………。」
「…………。」
「あと3分!」
マスコットが明るい声で2人に呼びかけた。
そんなこんなで、20分あった時間も、残りわずか3分となってしまった。
「…ねぇ、解けた?」
「………無理。」
彼女は焦っていた。なぜなら、彼らは一切問題を解けていないからである。
そして、当然だが彼女の作戦は問題が解けなければ成立しない。最初のうちはアキバが問題を解くのを待っているだけだったが、残り10分を切ったところで、彼女も痺れを切らし、脳をフル回転して問題を解き始めた。
しかし、解けない。当然である。こんな理不尽極まりない問題、解けるわけがない。
そもそも、この問題はまともに解くことができないように設定されている。それもそう、これはデスゲームなのだ。観客が見たいのは単なるクイズ番組ではなく人の本性を曝け出した、泥臭い争い。ゆえに、問題を正解しまくってデスゲームが間延びしないよう、基本的にはどの問題も理不尽な難易度に設定されている。そのことだけは、彼女も計算外だった。
………そして、限界が来た。
「あ゛~っ!もうだめよ!こんな問題解けるわけない!」
残り3分を切り、焦りを隠しきれなくなった彼女はついに思考を放棄した。
「そ、そんなこと言うなって!まだ解けるかもしれないだろ。」
アキバは彼女を慰めるように言う。
「じゃあアンタは少しでも解答に近づけたの?」
豹変した彼女の態度に、アキバは動揺しつつ、答える。
「い、いや……」
「だいたい、アンタは使えなさすぎるのよ!」
彼女はアキバの胸ぐらを両手でガシッと掴んだ。
「アンタがカードキー持ってるって思って助けてあげたのに!それなのに、カードキー持ってないって言うし、問題は一向に解けないし!」
「な、なんだと!じゃあカードキー目当てで俺を助けたのか!?」
アキバはカッとなって彼女に怒鳴りかける。
「当たり前でしょ!それ以外になんの価値があるの?」
「な、なんだと!」
アキバが彼女に殴りかかろうとした瞬間、ビビビッ、と首輪から警音が鳴る。
「一定以上の衝撃を感知しました。すぐに離れてください。」
首輪から警告システムの声が発せられた。
しまった!首輪に衝撃を加えすぎた!
警報で少しだけ頭を冷やしたアキバと彼女は、手を振り解いていったん少し距離を取った。そして、再び彼女はアキバに呼びかける。
「第一、アンタはずっと私に頼ってばっかりじゃない!」
「そ、そんなの仕方ないだろ!こっちはこんなこと初めてなんだ!それよりも、こんなことになったのはお前が俺をここに連れてきたからだろ!お前がなんとかしろよ!」
「人のせいにしてる暇があったら、アンタも少しは自分で考えなさいよ!それとも、アンタの頭は人に責任をなすりつけることしか考えられないの?」
「っ!……………。」
……アキバは、何も言い返せなかった。
「あと2分!」
「もうあと2分しかない……ああ、もうどうしようもない……カードキーもないし、問題も解けないし……。こんなつもりじゃ……こんな計画じゃなかったのに……。」
彼女はもはや言い争う気力も無くなったのか、ヘナヘナとその場で足から崩れ落ちた。
……アキバは、ずっと黙り込んでいた。
確かに、いままでずっと「死にたくない」と思いながらも、一度として自分で助かる方法を考えたことはなかった。
どんな時でも、ただ現状を人のせいにしていただけ……か。ぐうの根も出ないな……。
いや、落ち込むのは後だ。今は、
…ぎゅっと拳を握りしめる。
なんとかして、助かる方法を考えないと!
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