ファイブダラーズ~もう一つの楽園 囚われの少女と伝説の秘宝 夏への招待状シリーズ①

二廻歩

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最後の戦い

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日が暮れ闇が深くなった頃、山を登る人影が映し出される。

十を超える行列が松明を持って行進を開始する。

組織だった武装集団。

「まだか。まだ着かんのか」

「うるさい。静かに歩け」

「そうだ。気付かれるだろうが」

「こんな明かりでは前も見えんわ」

「我がままを言うな。文句のある奴は帰って構わん」

「しかし…… 」

「うるさい。下を注意して歩け。昼と夜とでは大違いだぞ」

「だったら昼に移動すればいいのに」

「馬鹿かお前は。気付かれたらお終いだろうが」

「親分。戻りましょうよ」

「そこ情けないことを言うな」

「おい何か見えて来たぞ」

「よしもうすぐだ」


登山を開始して何時間が経っただろうか?

ようやく帰らずの橋へと繋がる一本道へたどり着いた。

「ここからが本番だぞ。気を抜くな」

「オウ」

先頭の男が吠えると皆一斉に手を挙げ応える。


カサカサ
カサカサ

「うん? うん? 」

一人が異変を察知。

「今その辺で音がしなかったか? 」

「気のせいじゃないか」

「親分…… 」

「情けない声を出すな。震えやがって。

俺たちが急襲しマウントシーの奴らを震え上がらせるんだろうが」


カサカサ
ざわざわ

「前だ。ほらそこから音がする。誰だ? 」

「親分? 親分? 」

「まずい逃げろ」

誰かがそう言うと皆戻ろうと走り出し隊列が崩れる。

我先に走るものだからぶつかりパニック。それが引き金となり再びパニックが。

ただでさえ暗い上に舗装されていない山道。走れば怪我するのは目に見えてる。

連鎖は止りそうにない。

「馬鹿野郎。逃げるな」

「そんなこと言っても…… 」

「おい分かってるんだぞ。お前。姿を見せやがれ」

先頭の男が手を振り後ろに指示を送る。


人影が現れた。

「よく来たな。待っていたぞ」

老いた左手を庇う者。

「お前は…… 副村長だと。あり得ない」

「そちらの動きはお見通しじゃ。大人しくお縄を頂戴しろ」

時代がかった副村長。

マウントシーの一大事だとまだ癒えない腕の痛みを押して駆けつける。

「儂を襲い次はマウントシーを狙うとはこの島の恥さらしめが。どう言う了見か」

副村長は興奮気味。

「うるさい。この計画は誰にも漏れていないはず。どうやって嗅ぎつけた? 」

「喚くな。ある人から提供を受けた。彼女はな…… 」

「彼女? まさかあのおばさん連中が裏切りやがったか。まったく……

閉じこめておくんだった。俺たちを裏切りやがるとは…… くそ」

怒り狂う反対派リーダー。

リーダだけあってカリスマ性がある。

とは言え間抜けな集団に違いはないが。


「そちらの事情などどうでも良い。この場から立ち去り下山せよ」

副村長が吠える。

この程度でも効果は抜群。

ただ着いてきただけの者は踵を返そうとする。

あと一押し。そうすれば奴らは大人しく帰るだろう。

「どけ爺さん。そこをどくんだ。また痛い目に遭いたいか? 」

脅迫を始める。

これでは襲撃に関与したと告白してるようなもの。


「おいガキ。この儂が副村長だと分かっての脅しか? それともただの馬鹿か? 」

脅しには屈せず後退することもなく堂々と胸を張る。

「だから分かってるさ。副村長様だろ。だがな俺たちには関係ない。

肩書が通じるのは年寄りぐらいなものだ。俺らは自由にやらせてもらう」

島の若い者が何も知らずに吠えてるに過ぎない。

ただ若いあまりに噛みついていい相手か見極めが出来てない。

「いいからそこをどくんだ」

説得も通じない。どうやらもう引き返せないところまで来てしまったようだ。

「ここを通す訳にはいかない。早く立ち去れ。

マウントシーにお前らのような不届き者を踏み入れさせてなるものか。

それこそ一歩だって立ち入らせるものか」

副村長に圧倒されたのか後ろの者が騒ぎ始めた。

「落ち着けお前ら。こんな爺に支配されたいか? 」

「嫌だ。俺らは自由だ」

もはや老人対若者。

世代間闘争に発展してしまっている。


「いいから立ち去れ。ここは神聖なマウントシー。穢していいところではない」

「黙れ。黙れと言ってるだろ」

怒りを抑えきれずに前へ踏み出す。

「黙るのはお前らの方じゃ。もう復活してしまったのだぞあの怪物が。

マウントシーの守り神がの。もうお前らのことも嗅ぎつけてる頃だろう。

悪いことは言わぬ。大人しくここを立ち去れ。ぐずぐずしていれば餌食になるぞ。

儂とて副村長であり島長。お前らが可愛くない訳ではない」

少々汚いが奴らを返すにはこれが手っ取り早い。

恐怖を覚えれば誰だって逃げ出す。それが自然な反応。

実際昼間に暴れたのは事実なのだから。


「誰がそんな脅しに乗るか。馬鹿にしやがって」

「信じる信じないは勝手じゃ。好きにせい。

じゃがのマウントシーに棲まう怪物がもうすでに暴れ回っているのじゃ。

昼間の一件を知らぬとでも言うのか? 」

副村長の迫力に再び隊列が乱れた。

ここを一気に叩く手もあるができれば穏便に済ませたい。

何とも情けないがこれも副村長としての判断。

下手に騒げば餌食に。目覚めた守り神がいつ襲ってくるか分からない。

巻き込まれたらお終い。

言葉は通じないのだから。

ただ目撃者によればヘリと一緒に消えたとも。

生死は不明。


                  続く                 
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