上 下
98 / 104

最後の戦い

しおりを挟む
日が暮れ闇が深くなった頃、山を登る人影が映し出される。

十を超える行列が松明を持って行進を開始する。

組織だった武装集団。

「まだか。まだ着かんのか」

「うるさい。静かに歩け」

「そうだ。気付かれるだろうが」

「こんな明かりでは前も見えんわ」

「我がままを言うな。文句のある奴は帰って構わん」

「しかし…… 」

「うるさい。下を注意して歩け。昼と夜とでは大違いだぞ」

「だったら昼に移動すればいいのに」

「馬鹿かお前は。気付かれたらお終いだろうが」

「親分。戻りましょうよ」

「そこ情けないことを言うな」

「おい何か見えて来たぞ」

「よしもうすぐだ」


登山を開始して何時間が経っただろうか?

ようやく帰らずの橋へと繋がる一本道へたどり着いた。

「ここからが本番だぞ。気を抜くな」

「オウ」

先頭の男が吠えると皆一斉に手を挙げ応える。


カサカサ
カサカサ

「うん? うん? 」

一人が異変を察知。

「今その辺で音がしなかったか? 」

「気のせいじゃないか」

「親分…… 」

「情けない声を出すな。震えやがって。

俺たちが急襲しマウントシーの奴らを震え上がらせるんだろうが」


カサカサ
ざわざわ

「前だ。ほらそこから音がする。誰だ? 」

「親分? 親分? 」

「まずい逃げろ」

誰かがそう言うと皆戻ろうと走り出し隊列が崩れる。

我先に走るものだからぶつかりパニック。それが引き金となり再びパニックが。

ただでさえ暗い上に舗装されていない山道。走れば怪我するのは目に見えてる。

連鎖は止りそうにない。

「馬鹿野郎。逃げるな」

「そんなこと言っても…… 」

「おい分かってるんだぞ。お前。姿を見せやがれ」

先頭の男が手を振り後ろに指示を送る。


人影が現れた。

「よく来たな。待っていたぞ」

老いた左手を庇う者。

「お前は…… 副村長だと。あり得ない」

「そちらの動きはお見通しじゃ。大人しくお縄を頂戴しろ」

時代がかった副村長。

マウントシーの一大事だとまだ癒えない腕の痛みを押して駆けつける。

「儂を襲い次はマウントシーを狙うとはこの島の恥さらしめが。どう言う了見か」

副村長は興奮気味。

「うるさい。この計画は誰にも漏れていないはず。どうやって嗅ぎつけた? 」

「喚くな。ある人から提供を受けた。彼女はな…… 」

「彼女? まさかあのおばさん連中が裏切りやがったか。まったく……

閉じこめておくんだった。俺たちを裏切りやがるとは…… くそ」

怒り狂う反対派リーダー。

リーダだけあってカリスマ性がある。

とは言え間抜けな集団に違いはないが。


「そちらの事情などどうでも良い。この場から立ち去り下山せよ」

副村長が吠える。

この程度でも効果は抜群。

ただ着いてきただけの者は踵を返そうとする。

あと一押し。そうすれば奴らは大人しく帰るだろう。

「どけ爺さん。そこをどくんだ。また痛い目に遭いたいか? 」

脅迫を始める。

これでは襲撃に関与したと告白してるようなもの。


「おいガキ。この儂が副村長だと分かっての脅しか? それともただの馬鹿か? 」

脅しには屈せず後退することもなく堂々と胸を張る。

「だから分かってるさ。副村長様だろ。だがな俺たちには関係ない。

肩書が通じるのは年寄りぐらいなものだ。俺らは自由にやらせてもらう」

島の若い者が何も知らずに吠えてるに過ぎない。

ただ若いあまりに噛みついていい相手か見極めが出来てない。

「いいからそこをどくんだ」

説得も通じない。どうやらもう引き返せないところまで来てしまったようだ。

「ここを通す訳にはいかない。早く立ち去れ。

マウントシーにお前らのような不届き者を踏み入れさせてなるものか。

それこそ一歩だって立ち入らせるものか」

副村長に圧倒されたのか後ろの者が騒ぎ始めた。

「落ち着けお前ら。こんな爺に支配されたいか? 」

「嫌だ。俺らは自由だ」

もはや老人対若者。

世代間闘争に発展してしまっている。


「いいから立ち去れ。ここは神聖なマウントシー。穢していいところではない」

「黙れ。黙れと言ってるだろ」

怒りを抑えきれずに前へ踏み出す。

「黙るのはお前らの方じゃ。もう復活してしまったのだぞあの怪物が。

マウントシーの守り神がの。もうお前らのことも嗅ぎつけてる頃だろう。

悪いことは言わぬ。大人しくここを立ち去れ。ぐずぐずしていれば餌食になるぞ。

儂とて副村長であり島長。お前らが可愛くない訳ではない」

少々汚いが奴らを返すにはこれが手っ取り早い。

恐怖を覚えれば誰だって逃げ出す。それが自然な反応。

実際昼間に暴れたのは事実なのだから。


「誰がそんな脅しに乗るか。馬鹿にしやがって」

「信じる信じないは勝手じゃ。好きにせい。

じゃがのマウントシーに棲まう怪物がもうすでに暴れ回っているのじゃ。

昼間の一件を知らぬとでも言うのか? 」

副村長の迫力に再び隊列が乱れた。

ここを一気に叩く手もあるができれば穏便に済ませたい。

何とも情けないがこれも副村長としての判断。

下手に騒げば餌食に。目覚めた守り神がいつ襲ってくるか分からない。

巻き込まれたらお終い。

言葉は通じないのだから。

ただ目撃者によればヘリと一緒に消えたとも。

生死は不明。


                  続く                 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

あなたの子ですが、内緒で育てます

椿蛍
恋愛
「本当にあなたの子ですか?」  突然現れた浮気相手、私の夫である国王陛下の子を身籠っているという。  夫、王妃の座、全て奪われ冷遇される日々――王宮から、追われた私のお腹には陛下の子が宿っていた。  私は強くなることを決意する。 「この子は私が育てます!」  お腹にいる子供は王の子。  王の子だけが不思議な力を持つ。  私は育った子供を連れて王宮へ戻る。  ――そして、私を追い出したことを後悔してください。 ※夫の後悔、浮気相手と虐げられからのざまあ ※他サイト様でも掲載しております。 ※hotランキング1位&エールありがとうございます!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

【R18】散らされて

月島れいわ
恋愛
風邪を引いて寝ていた夜。 いきなり黒い袋を頭に被せられ四肢を拘束された。 抵抗する間もなく躰を開かされた鞠花。 絶望の果てに待っていたのは更なる絶望だった……

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

若妻の穴を堪能する夫の話

かめのこたろう
現代文学
内容は題名の通りです。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

処理中です...