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最後の戦い
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日が暮れ闇が深くなった頃、山を登る人影が映し出される。
十を超える行列が松明を持って行進を開始する。
組織だった武装集団。
「まだか。まだ着かんのか」
「うるさい。静かに歩け」
「そうだ。気付かれるだろうが」
「こんな明かりでは前も見えんわ」
「我がままを言うな。文句のある奴は帰って構わん」
「しかし…… 」
「うるさい。下を注意して歩け。昼と夜とでは大違いだぞ」
「だったら昼に移動すればいいのに」
「馬鹿かお前は。気付かれたらお終いだろうが」
「親分。戻りましょうよ」
「そこ情けないことを言うな」
「おい何か見えて来たぞ」
「よしもうすぐだ」
登山を開始して何時間が経っただろうか?
ようやく帰らずの橋へと繋がる一本道へたどり着いた。
「ここからが本番だぞ。気を抜くな」
「オウ」
先頭の男が吠えると皆一斉に手を挙げ応える。
カサカサ
カサカサ
「うん? うん? 」
一人が異変を察知。
「今その辺で音がしなかったか? 」
「気のせいじゃないか」
「親分…… 」
「情けない声を出すな。震えやがって。
俺たちが急襲しマウントシーの奴らを震え上がらせるんだろうが」
カサカサ
ざわざわ
「前だ。ほらそこから音がする。誰だ? 」
「親分? 親分? 」
「まずい逃げろ」
誰かがそう言うと皆戻ろうと走り出し隊列が崩れる。
我先に走るものだからぶつかりパニック。それが引き金となり再びパニックが。
ただでさえ暗い上に舗装されていない山道。走れば怪我するのは目に見えてる。
連鎖は止りそうにない。
「馬鹿野郎。逃げるな」
「そんなこと言っても…… 」
「おい分かってるんだぞ。お前。姿を見せやがれ」
先頭の男が手を振り後ろに指示を送る。
人影が現れた。
「よく来たな。待っていたぞ」
老いた左手を庇う者。
「お前は…… 副村長だと。あり得ない」
「そちらの動きはお見通しじゃ。大人しくお縄を頂戴しろ」
時代がかった副村長。
マウントシーの一大事だとまだ癒えない腕の痛みを押して駆けつける。
「儂を襲い次はマウントシーを狙うとはこの島の恥さらしめが。どう言う了見か」
副村長は興奮気味。
「うるさい。この計画は誰にも漏れていないはず。どうやって嗅ぎつけた? 」
「喚くな。ある人から提供を受けた。彼女はな…… 」
「彼女? まさかあのおばさん連中が裏切りやがったか。まったく……
閉じこめておくんだった。俺たちを裏切りやがるとは…… くそ」
怒り狂う反対派リーダー。
リーダだけあってカリスマ性がある。
とは言え間抜けな集団に違いはないが。
「そちらの事情などどうでも良い。この場から立ち去り下山せよ」
副村長が吠える。
この程度でも効果は抜群。
ただ着いてきただけの者は踵を返そうとする。
あと一押し。そうすれば奴らは大人しく帰るだろう。
「どけ爺さん。そこをどくんだ。また痛い目に遭いたいか? 」
脅迫を始める。
これでは襲撃に関与したと告白してるようなもの。
「おいガキ。この儂が副村長だと分かっての脅しか? それともただの馬鹿か? 」
脅しには屈せず後退することもなく堂々と胸を張る。
「だから分かってるさ。副村長様だろ。だがな俺たちには関係ない。
肩書が通じるのは年寄りぐらいなものだ。俺らは自由にやらせてもらう」
島の若い者が何も知らずに吠えてるに過ぎない。
ただ若いあまりに噛みついていい相手か見極めが出来てない。
「いいからそこをどくんだ」
説得も通じない。どうやらもう引き返せないところまで来てしまったようだ。
「ここを通す訳にはいかない。早く立ち去れ。
マウントシーにお前らのような不届き者を踏み入れさせてなるものか。
それこそ一歩だって立ち入らせるものか」
副村長に圧倒されたのか後ろの者が騒ぎ始めた。
「落ち着けお前ら。こんな爺に支配されたいか? 」
「嫌だ。俺らは自由だ」
もはや老人対若者。
世代間闘争に発展してしまっている。
「いいから立ち去れ。ここは神聖なマウントシー。穢していいところではない」
「黙れ。黙れと言ってるだろ」
怒りを抑えきれずに前へ踏み出す。
「黙るのはお前らの方じゃ。もう復活してしまったのだぞあの怪物が。
マウントシーの守り神がの。もうお前らのことも嗅ぎつけてる頃だろう。
悪いことは言わぬ。大人しくここを立ち去れ。ぐずぐずしていれば餌食になるぞ。
儂とて副村長であり島長。お前らが可愛くない訳ではない」
少々汚いが奴らを返すにはこれが手っ取り早い。
恐怖を覚えれば誰だって逃げ出す。それが自然な反応。
実際昼間に暴れたのは事実なのだから。
「誰がそんな脅しに乗るか。馬鹿にしやがって」
「信じる信じないは勝手じゃ。好きにせい。
じゃがのマウントシーに棲まう怪物がもうすでに暴れ回っているのじゃ。
昼間の一件を知らぬとでも言うのか? 」
副村長の迫力に再び隊列が乱れた。
ここを一気に叩く手もあるができれば穏便に済ませたい。
何とも情けないがこれも副村長としての判断。
下手に騒げば餌食に。目覚めた守り神がいつ襲ってくるか分からない。
巻き込まれたらお終い。
言葉は通じないのだから。
ただ目撃者によればヘリと一緒に消えたとも。
生死は不明。
続く
十を超える行列が松明を持って行進を開始する。
組織だった武装集団。
「まだか。まだ着かんのか」
「うるさい。静かに歩け」
「そうだ。気付かれるだろうが」
「こんな明かりでは前も見えんわ」
「我がままを言うな。文句のある奴は帰って構わん」
「しかし…… 」
「うるさい。下を注意して歩け。昼と夜とでは大違いだぞ」
「だったら昼に移動すればいいのに」
「馬鹿かお前は。気付かれたらお終いだろうが」
「親分。戻りましょうよ」
「そこ情けないことを言うな」
「おい何か見えて来たぞ」
「よしもうすぐだ」
登山を開始して何時間が経っただろうか?
ようやく帰らずの橋へと繋がる一本道へたどり着いた。
「ここからが本番だぞ。気を抜くな」
「オウ」
先頭の男が吠えると皆一斉に手を挙げ応える。
カサカサ
カサカサ
「うん? うん? 」
一人が異変を察知。
「今その辺で音がしなかったか? 」
「気のせいじゃないか」
「親分…… 」
「情けない声を出すな。震えやがって。
俺たちが急襲しマウントシーの奴らを震え上がらせるんだろうが」
カサカサ
ざわざわ
「前だ。ほらそこから音がする。誰だ? 」
「親分? 親分? 」
「まずい逃げろ」
誰かがそう言うと皆戻ろうと走り出し隊列が崩れる。
我先に走るものだからぶつかりパニック。それが引き金となり再びパニックが。
ただでさえ暗い上に舗装されていない山道。走れば怪我するのは目に見えてる。
連鎖は止りそうにない。
「馬鹿野郎。逃げるな」
「そんなこと言っても…… 」
「おい分かってるんだぞ。お前。姿を見せやがれ」
先頭の男が手を振り後ろに指示を送る。
人影が現れた。
「よく来たな。待っていたぞ」
老いた左手を庇う者。
「お前は…… 副村長だと。あり得ない」
「そちらの動きはお見通しじゃ。大人しくお縄を頂戴しろ」
時代がかった副村長。
マウントシーの一大事だとまだ癒えない腕の痛みを押して駆けつける。
「儂を襲い次はマウントシーを狙うとはこの島の恥さらしめが。どう言う了見か」
副村長は興奮気味。
「うるさい。この計画は誰にも漏れていないはず。どうやって嗅ぎつけた? 」
「喚くな。ある人から提供を受けた。彼女はな…… 」
「彼女? まさかあのおばさん連中が裏切りやがったか。まったく……
閉じこめておくんだった。俺たちを裏切りやがるとは…… くそ」
怒り狂う反対派リーダー。
リーダだけあってカリスマ性がある。
とは言え間抜けな集団に違いはないが。
「そちらの事情などどうでも良い。この場から立ち去り下山せよ」
副村長が吠える。
この程度でも効果は抜群。
ただ着いてきただけの者は踵を返そうとする。
あと一押し。そうすれば奴らは大人しく帰るだろう。
「どけ爺さん。そこをどくんだ。また痛い目に遭いたいか? 」
脅迫を始める。
これでは襲撃に関与したと告白してるようなもの。
「おいガキ。この儂が副村長だと分かっての脅しか? それともただの馬鹿か? 」
脅しには屈せず後退することもなく堂々と胸を張る。
「だから分かってるさ。副村長様だろ。だがな俺たちには関係ない。
肩書が通じるのは年寄りぐらいなものだ。俺らは自由にやらせてもらう」
島の若い者が何も知らずに吠えてるに過ぎない。
ただ若いあまりに噛みついていい相手か見極めが出来てない。
「いいからそこをどくんだ」
説得も通じない。どうやらもう引き返せないところまで来てしまったようだ。
「ここを通す訳にはいかない。早く立ち去れ。
マウントシーにお前らのような不届き者を踏み入れさせてなるものか。
それこそ一歩だって立ち入らせるものか」
副村長に圧倒されたのか後ろの者が騒ぎ始めた。
「落ち着けお前ら。こんな爺に支配されたいか? 」
「嫌だ。俺らは自由だ」
もはや老人対若者。
世代間闘争に発展してしまっている。
「いいから立ち去れ。ここは神聖なマウントシー。穢していいところではない」
「黙れ。黙れと言ってるだろ」
怒りを抑えきれずに前へ踏み出す。
「黙るのはお前らの方じゃ。もう復活してしまったのだぞあの怪物が。
マウントシーの守り神がの。もうお前らのことも嗅ぎつけてる頃だろう。
悪いことは言わぬ。大人しくここを立ち去れ。ぐずぐずしていれば餌食になるぞ。
儂とて副村長であり島長。お前らが可愛くない訳ではない」
少々汚いが奴らを返すにはこれが手っ取り早い。
恐怖を覚えれば誰だって逃げ出す。それが自然な反応。
実際昼間に暴れたのは事実なのだから。
「誰がそんな脅しに乗るか。馬鹿にしやがって」
「信じる信じないは勝手じゃ。好きにせい。
じゃがのマウントシーに棲まう怪物がもうすでに暴れ回っているのじゃ。
昼間の一件を知らぬとでも言うのか? 」
副村長の迫力に再び隊列が乱れた。
ここを一気に叩く手もあるができれば穏便に済ませたい。
何とも情けないがこれも副村長としての判断。
下手に騒げば餌食に。目覚めた守り神がいつ襲ってくるか分からない。
巻き込まれたらお終い。
言葉は通じないのだから。
ただ目撃者によればヘリと一緒に消えたとも。
生死は不明。
続く
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