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フラジールからの手紙
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再びマウントシーへ。
「ただいまブリリアント。待っていてくれたのか? 」
「当たり前じゃないですか大河さん。でも帰ってこないんじゃないかと…… 」
主人の帰りを待つ子犬のように尻尾を振る。
「馬鹿な…… 俺を信じろ」
つい抱きしめたくなるが堪える。
「私…… いえ何でもありません」
「済まないブリリアント。心配かけたな」
寂しそうな表情につい堪えきれず抱きしめる。
「大河さん…… 私まだ…… 」
「済まん。つい…… 」
気まずい雰囲気。
「助手だから…… 助手だから待っていてくれたのか? 」
「はい」
無邪気だ。ただ無理に明るく振る舞ってる気がして辛い。
「それで何か分かったか? 」
一応は成果を聞いてみる。
これが俺とブリリアントの日常。
こうすることで落ち着くようだ。それは俺も変わらない。
「そうですね。館内ではこれと言って特に動きは…… 」
引っ掛かる言い方だが慎重なのだろう。彼女らしい。
もう脅威は去った。それは間違いない。
元々裏切者だったフラジールももういない。
元凶の翼も闇の中。
あそこに落ちては助からない。
奇跡的に助かったとしても守り神の住処。
生き残る確率は限りなくゼロに近い。
俺たちは勝利したんだ。
マウントシーを魔の手から守ったのだ。
もちろん俺たちは非力で勝機は無かった。
守り神が味方しなければどうなっていたか……
こうしてマウントシーに再び平穏が訪れた。
今更何があると言うのか。
フラジールの件は残念だがそれはまた別問題。
「もう調べる必要もないしな…… 」
「いえ大河さん。それがまだ…… 不穏な動きがあります」
ブリリアントの情報は正確。だとすればまたこの地に危機が迫っていることになる。
だが果たしてそんなこと有り得るのか?
明日はもう祭り本番。これ以上のゴタゴタがあってたまるか。
「何だって…… それは本当か? 」
「副村長反対派によるマウントシー襲撃計画をキャッチしました。
情報によると今夜。ですから早く大河さんに知らせようと…… 」
「今夜? まさか冗談だろ」
「はいもう間もなくかと。とにかくお伝えしなければと帰りを待っていた次第です。
本当にもう時間がありません。すぐにでも準備願います」
「一応確認するが事実なのか? 」
「はい、残念ながら確かな情報です。何と言っても反対派の一人から聞いた話。
これ以上ない情報。信憑性はかなりのものかと」
「うん? 聞いたってどういうことだ」
「実はハッピー先生に相談に来たんですよ。それをちょっと耳にしまして」
罪の意識からか恥ずかしそうに下を向く。
「ああ盗み聞きね。まったくお前って奴は…… 俺にはするなよな」
「はい」
元気に答えるが守る気はさらさらないな。
「そうだハッピー先生が…… 何でも至急話しておきたいことがあるそうです」
「分かった。他の者は? 」
少女たちが気がかりだ。
ブリリアントアは意外にもタフ。
今回だって冷静に情報収集をしている。
特に心配なのはエレン。まだ立ち直れてない気がする。
「やはり気になりますか。もう皆さん寝てしまいましたよ」
遅すぎたか。まあ今日は疲れただろうからゆっくり眠るといいさ。
明日は祭り本番。さすがに出席しない訳にはいかないだろう。
俺も早くゆっくりしたい。残念ながら出来そうにないが。
「そうか。ご苦労だったなブリリアント」
「ああ待ってください。大河さんから預かっていた手紙をお返ししないと」
慌てた様子のブリリアント。
「手紙って…… フラジールのか? 気が重いな。代わりに読んでくれないか」
「はい。では会議室に行きましょう」
気が乗らないがじっくり聞くことに。
「いいか感情を込めずに淡々と読んでくれ」
注文を付ける。
「はあ…… 」
大河へ。
許してほしい。
もうそれだけしかありません。
許してほしい。
あなたを利用したことを。
許してほしい。
あなたを苦しめたことを。
許してほしい。
皆に嘘をついたことを。
許してほしい。
ハッピー先生を騙していたことを。
許してほしい。
ブリリアント、シンディー、ドルチェ、エレンにアリアを裏切り続けたことを。
大河。あなたとの関係はあの時証明されたと思います。
二人が愛し合った事実は変わらない。
たとえあなたにその気がなかったとしても私は嬉しかった。
それだけで本当に本当に幸せでした。
最後に私の息子のユー君を頼みます。
マウントシーに平和と希望を。
あなたの岬アリアより。
前野フラジール。
「アリア…… 」
「大河さん? 」
「済まない。フラジール…… 」
「大河さん。大丈夫ですか大河さん? 」
「ああ…… 行くぞ」
「まさか…… どこへ? 」
「決戦の舞台へ」
「はい」
こうして最後の戦いへ。
続く
「ただいまブリリアント。待っていてくれたのか? 」
「当たり前じゃないですか大河さん。でも帰ってこないんじゃないかと…… 」
主人の帰りを待つ子犬のように尻尾を振る。
「馬鹿な…… 俺を信じろ」
つい抱きしめたくなるが堪える。
「私…… いえ何でもありません」
「済まないブリリアント。心配かけたな」
寂しそうな表情につい堪えきれず抱きしめる。
「大河さん…… 私まだ…… 」
「済まん。つい…… 」
気まずい雰囲気。
「助手だから…… 助手だから待っていてくれたのか? 」
「はい」
無邪気だ。ただ無理に明るく振る舞ってる気がして辛い。
「それで何か分かったか? 」
一応は成果を聞いてみる。
これが俺とブリリアントの日常。
こうすることで落ち着くようだ。それは俺も変わらない。
「そうですね。館内ではこれと言って特に動きは…… 」
引っ掛かる言い方だが慎重なのだろう。彼女らしい。
もう脅威は去った。それは間違いない。
元々裏切者だったフラジールももういない。
元凶の翼も闇の中。
あそこに落ちては助からない。
奇跡的に助かったとしても守り神の住処。
生き残る確率は限りなくゼロに近い。
俺たちは勝利したんだ。
マウントシーを魔の手から守ったのだ。
もちろん俺たちは非力で勝機は無かった。
守り神が味方しなければどうなっていたか……
こうしてマウントシーに再び平穏が訪れた。
今更何があると言うのか。
フラジールの件は残念だがそれはまた別問題。
「もう調べる必要もないしな…… 」
「いえ大河さん。それがまだ…… 不穏な動きがあります」
ブリリアントの情報は正確。だとすればまたこの地に危機が迫っていることになる。
だが果たしてそんなこと有り得るのか?
明日はもう祭り本番。これ以上のゴタゴタがあってたまるか。
「何だって…… それは本当か? 」
「副村長反対派によるマウントシー襲撃計画をキャッチしました。
情報によると今夜。ですから早く大河さんに知らせようと…… 」
「今夜? まさか冗談だろ」
「はいもう間もなくかと。とにかくお伝えしなければと帰りを待っていた次第です。
本当にもう時間がありません。すぐにでも準備願います」
「一応確認するが事実なのか? 」
「はい、残念ながら確かな情報です。何と言っても反対派の一人から聞いた話。
これ以上ない情報。信憑性はかなりのものかと」
「うん? 聞いたってどういうことだ」
「実はハッピー先生に相談に来たんですよ。それをちょっと耳にしまして」
罪の意識からか恥ずかしそうに下を向く。
「ああ盗み聞きね。まったくお前って奴は…… 俺にはするなよな」
「はい」
元気に答えるが守る気はさらさらないな。
「そうだハッピー先生が…… 何でも至急話しておきたいことがあるそうです」
「分かった。他の者は? 」
少女たちが気がかりだ。
ブリリアントアは意外にもタフ。
今回だって冷静に情報収集をしている。
特に心配なのはエレン。まだ立ち直れてない気がする。
「やはり気になりますか。もう皆さん寝てしまいましたよ」
遅すぎたか。まあ今日は疲れただろうからゆっくり眠るといいさ。
明日は祭り本番。さすがに出席しない訳にはいかないだろう。
俺も早くゆっくりしたい。残念ながら出来そうにないが。
「そうか。ご苦労だったなブリリアント」
「ああ待ってください。大河さんから預かっていた手紙をお返ししないと」
慌てた様子のブリリアント。
「手紙って…… フラジールのか? 気が重いな。代わりに読んでくれないか」
「はい。では会議室に行きましょう」
気が乗らないがじっくり聞くことに。
「いいか感情を込めずに淡々と読んでくれ」
注文を付ける。
「はあ…… 」
大河へ。
許してほしい。
もうそれだけしかありません。
許してほしい。
あなたを利用したことを。
許してほしい。
あなたを苦しめたことを。
許してほしい。
皆に嘘をついたことを。
許してほしい。
ハッピー先生を騙していたことを。
許してほしい。
ブリリアント、シンディー、ドルチェ、エレンにアリアを裏切り続けたことを。
大河。あなたとの関係はあの時証明されたと思います。
二人が愛し合った事実は変わらない。
たとえあなたにその気がなかったとしても私は嬉しかった。
それだけで本当に本当に幸せでした。
最後に私の息子のユー君を頼みます。
マウントシーに平和と希望を。
あなたの岬アリアより。
前野フラジール。
「アリア…… 」
「大河さん? 」
「済まない。フラジール…… 」
「大河さん。大丈夫ですか大河さん? 」
「ああ…… 行くぞ」
「まさか…… どこへ? 」
「決戦の舞台へ」
「はい」
こうして最後の戦いへ。
続く
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