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後悔
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<現在> ドルチェの部屋。
「君があの時の…… 未だに信じられないよ」
「まだ私を恨んでる? 心のどこかで私を否定してる?
無理しなくていいです大河さん。本当の気持ちを言ってください」
「馬鹿な! 俺が恨んでる? 言ったろ。もう恨んでないと」
真実が分かった今再び感情が揺れ動く。
それは私だけでなく大河さんも。
今まで背けていた真実に立ち向かい互いに分かり合いもした。
それでも拭えない不信感。消えない罪悪感。
「そう…… あの時の女の子は君だったか。その可能性もあるなと思っていた」
帽子を脱ぎ頭を掻く大河さん。
「はい。そうです。この黒い帽子はあなたが落としていったもの。所謂形見ですね」
「ドルチェ…… 」
「私があの男の言うままにあんなことを! あんなことを! 」
振り返るうちに感情が高ぶり制御不能に。
どうしてもあの時の自分が許せない。
「落ち着くんだドルチェ! 」
「私が助けてあげれれば…… 」
「君が…… 君が…… お前さえ! 」
やはり口では許しても心は違う。二人のわだかまりが取れることはない。
ドルチェは下を向く。
「いや君のせいではない。済まなかった」
「私は…… 私は…… 私は! 」
怒りに震えてなお怒りに支配されるドルチェ。
ドルチェが悪いんじゃない。彼女のせいなんかじゃない。
そんなことは百も承知。でも追及しない訳にはいかない。
「もういいんだよドルチェ」
「何がもういいんですか? 」
なぜかドルチェの方が感情をむき出しにする。
確かにあの状況では被害者である俺よりも彼女の方が辛い。
「本当にもういいんだ…… 」
「あなたは私のせいで無茶苦茶にされた。だったら良いことなんて何もない! 」
「だからって君が苦しんでどうする? 」
「本気で言ってるんですか? 」
「ああ何も…… 」
「大河さん! 」
懺悔と後悔の一年だったのだろう。
ハッピー先生の儀式と薬でどうにか堪えていたのだろうがもはや見ていられない。
「そうだ。君を救うことが出来るとしたらそれは俺しかいない。
そしてドルチェ! 俺を救うことが出来るのはやはり君しかいない」
結局あの場所で出会った二人は運命に導かれるように再会した。
落ち込んで再起不能のドルチェに寄り添う。
今優しくすれば落ちる。
そんな邪な気持ち。
絶望に陥っているドルチェを励まし涙を拭ってやる。
どうにか冷静さを取り戻したドルチェ。
「なぜ助かったんですか? 」
橋から落下した後からのことを知りたがっている。
「なぜ助かったかって? それは俺にも良く分からないんだ。
断片的な記憶しかなく一時的に目が見えなくなって……
体が動かなくなった恐怖もあってよく覚えていないってのが正直なところ」
「そうですね。私も倒れていた彼女を山小屋に。
処置が行われている間に疲れて寝てしまいました」
「それから? 」
大河はその後のことを聞こうと先を促す。
「いつの間にか翼なる人物がいなくなっていました。
その後彼女は緊急用のヘリで島の外の大きな病院に送られたと聞いております。
彼女がどうなったかまでは聞かされていません。
私も果てしない罪悪感と疲労で自分を保つのがやっとでした。
ハッピー先生に勧められこの館で暮らすことに」
あの日から今までを話す。
もう大河にすべてを判断してもらう。
「大河さん…… 」
どうしても真っ直ぐ彼を見られない。
見捨てた負い目もある照れもある。
でも今目を背けてはまた苦しむだけ。
今日彼が生きてきたことが分かっただけでもうれしいし解放された気分。
「私ができることは何でもしたい。あなたにしてあげたい。そう思っています」
私の告白はこれまで。後はあなたが語ってくれる番。
もう隠し事はいらない。
あの日出会った二人はきっと運命の糸で結ばれている。
私は彼を思い続けたし彼も私を気にかけていてくれた。
これが仮に彼のやり方だとしても私は彼を信用する。
「済まないドルチェ…… あと少し待ってほしい。
俺は今すぐにでも君にすべてを打ち明けて協力を得たいと思う。
でももう少しだけ猶予をくれないか。少なくても二日。そうしたらすべてを君に。
いや君たちに打ち明けられると思う。その時はぜひ協力してもらいたい」
「はい喜んで」
「ありがとう。それと一つだけ頼みを聞いて欲しい。
君に強いるようなことはしたくないんだけど…… 」
「大河さん。水臭いじゃないですか何でもします。
あなたが望むならどんなことだって。私にできることなら何なりと」
「そうかならばぜひ君と…… あの…… その…… 」
はっきりしない。なぜそこまで照れる必要がある?
「そうですか。あなたが望むならと言いましたが私の立場もあります。
そのような嫌らしい行為はお断りさせてもらいます」
いくら運命の糸で結ばれていようとそれは早すぎる。
お互いをもう少し知ってからでいい。
続く
「君があの時の…… 未だに信じられないよ」
「まだ私を恨んでる? 心のどこかで私を否定してる?
無理しなくていいです大河さん。本当の気持ちを言ってください」
「馬鹿な! 俺が恨んでる? 言ったろ。もう恨んでないと」
真実が分かった今再び感情が揺れ動く。
それは私だけでなく大河さんも。
今まで背けていた真実に立ち向かい互いに分かり合いもした。
それでも拭えない不信感。消えない罪悪感。
「そう…… あの時の女の子は君だったか。その可能性もあるなと思っていた」
帽子を脱ぎ頭を掻く大河さん。
「はい。そうです。この黒い帽子はあなたが落としていったもの。所謂形見ですね」
「ドルチェ…… 」
「私があの男の言うままにあんなことを! あんなことを! 」
振り返るうちに感情が高ぶり制御不能に。
どうしてもあの時の自分が許せない。
「落ち着くんだドルチェ! 」
「私が助けてあげれれば…… 」
「君が…… 君が…… お前さえ! 」
やはり口では許しても心は違う。二人のわだかまりが取れることはない。
ドルチェは下を向く。
「いや君のせいではない。済まなかった」
「私は…… 私は…… 私は! 」
怒りに震えてなお怒りに支配されるドルチェ。
ドルチェが悪いんじゃない。彼女のせいなんかじゃない。
そんなことは百も承知。でも追及しない訳にはいかない。
「もういいんだよドルチェ」
「何がもういいんですか? 」
なぜかドルチェの方が感情をむき出しにする。
確かにあの状況では被害者である俺よりも彼女の方が辛い。
「本当にもういいんだ…… 」
「あなたは私のせいで無茶苦茶にされた。だったら良いことなんて何もない! 」
「だからって君が苦しんでどうする? 」
「本気で言ってるんですか? 」
「ああ何も…… 」
「大河さん! 」
懺悔と後悔の一年だったのだろう。
ハッピー先生の儀式と薬でどうにか堪えていたのだろうがもはや見ていられない。
「そうだ。君を救うことが出来るとしたらそれは俺しかいない。
そしてドルチェ! 俺を救うことが出来るのはやはり君しかいない」
結局あの場所で出会った二人は運命に導かれるように再会した。
落ち込んで再起不能のドルチェに寄り添う。
今優しくすれば落ちる。
そんな邪な気持ち。
絶望に陥っているドルチェを励まし涙を拭ってやる。
どうにか冷静さを取り戻したドルチェ。
「なぜ助かったんですか? 」
橋から落下した後からのことを知りたがっている。
「なぜ助かったかって? それは俺にも良く分からないんだ。
断片的な記憶しかなく一時的に目が見えなくなって……
体が動かなくなった恐怖もあってよく覚えていないってのが正直なところ」
「そうですね。私も倒れていた彼女を山小屋に。
処置が行われている間に疲れて寝てしまいました」
「それから? 」
大河はその後のことを聞こうと先を促す。
「いつの間にか翼なる人物がいなくなっていました。
その後彼女は緊急用のヘリで島の外の大きな病院に送られたと聞いております。
彼女がどうなったかまでは聞かされていません。
私も果てしない罪悪感と疲労で自分を保つのがやっとでした。
ハッピー先生に勧められこの館で暮らすことに」
あの日から今までを話す。
もう大河にすべてを判断してもらう。
「大河さん…… 」
どうしても真っ直ぐ彼を見られない。
見捨てた負い目もある照れもある。
でも今目を背けてはまた苦しむだけ。
今日彼が生きてきたことが分かっただけでもうれしいし解放された気分。
「私ができることは何でもしたい。あなたにしてあげたい。そう思っています」
私の告白はこれまで。後はあなたが語ってくれる番。
もう隠し事はいらない。
あの日出会った二人はきっと運命の糸で結ばれている。
私は彼を思い続けたし彼も私を気にかけていてくれた。
これが仮に彼のやり方だとしても私は彼を信用する。
「済まないドルチェ…… あと少し待ってほしい。
俺は今すぐにでも君にすべてを打ち明けて協力を得たいと思う。
でももう少しだけ猶予をくれないか。少なくても二日。そうしたらすべてを君に。
いや君たちに打ち明けられると思う。その時はぜひ協力してもらいたい」
「はい喜んで」
「ありがとう。それと一つだけ頼みを聞いて欲しい。
君に強いるようなことはしたくないんだけど…… 」
「大河さん。水臭いじゃないですか何でもします。
あなたが望むならどんなことだって。私にできることなら何なりと」
「そうかならばぜひ君と…… あの…… その…… 」
はっきりしない。なぜそこまで照れる必要がある?
「そうですか。あなたが望むならと言いましたが私の立場もあります。
そのような嫌らしい行為はお断りさせてもらいます」
いくら運命の糸で結ばれていようとそれは早すぎる。
お互いをもう少し知ってからでいい。
続く
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