ファイブダラーズ~もう一つの楽園 囚われの少女と伝説の秘宝 夏への招待状シリーズ①

二廻歩

文字の大きさ
上 下
35 / 104

偽りの真実

しおりを挟む

   ◆◆◆

 いまだ火の手がおさまらぬ王城の門前にて、兵士達が整列していた。
 全員が銃を持ち、パワーアーマーを着ている。
 先ほどまで戦っていたかのような風貌であり、実際その通りであった。
 いまだ銃身が熱を帯びていると錯覚するほどに、兵士達の心はまだ火照っている。
 その熱を帯びた視線は、前方に歩み現れたある一人の男に注がれ始めた。
 その男は普通の風貌では無かった。
 明らかに量産型とは違う、漆黒のパワーアーマーに男は身を包んでいた。
 細かな装飾が多く、高級感すら感じられる。
 しかし背中に背負った巨大な銃剣がその高級感を打ち消し、黒い威圧感だけを残している。
 何者なのか、それを答えるように、兵士の一人が声を上げた。

「ガタノトーア元帥様に敬礼!」

 その声が響いた直後、整列している全兵士が一挙一動そろえて敬礼の姿勢を取った。
 そんな兵士達の前に立ったガタノトーアは大きく声を響かせた。

「諸君、ご苦労であった! 諸君らはいま、歴史の転換点に立っている! ここが新たな始まりの場であり、それを成しえたのは諸君ら一人一人の奮戦によるものである! ゆえに私は誇りに思う!」

 言いながら、ガタノトーアは近くにある壁に視線を誘導するように手で示した。
 その壁には、十名ほどの人間が並び立たされていた。
 全員が縄で拘束されている。
 麻の袋を頭からかぶせられているため顔はわからない。服装から性別だけは判別できる。
 ガタノトーアはその者達を手で示したまま、再び声を上げた。

「その誇りと共に、最後の仕事をかつての英雄の末裔(まつえい)である、アーサーに任せたいと思う!」

 その声と共に、『かつての英雄の末裔』と称された者が前に歩み出た。
 その者もガタノトーアと同じく、量産型とは違うパワーアーマーに身を包んでいた。
 ガタノトーアとは対照的な銀色の装甲。中世の騎士を思わせる形状をしている。
 兜は着けておらず、端正な顔立ちがあらわになっていた。
 その顔は、既に知る誰かに似ていた。性別が違うが、たしかに似ていた。
 アーサーは壁の前に立ち、拘束されている者達に向かってライフルを構えた。
 そしてアーサーは引き金に指をかけながら思った。

(この場にクラリスがいなくて良かった)と。

 こんな姿を妹に晒すことにならなくて本当に良かったと、己をなぐさめながらアーサーは引き金を引いた。 
 
   第八話 ちっちゃいはかわいい。かわいいは正義。ゆえにちっちゃいは正義 に続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

処理中です...