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ブリリアントの告白 夏の夜の悪夢
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外が何やら騒がしい。少女たちの歌声が聞こえる。
昨夜同様儀式が厳粛に執り行われているのだろう。
つい長話をしてしまった。これもすべてはブリリアントの為。悪い気もするが……
罪悪感って奴か。俺は正しいんだよな? 間違ってないよな?
いくら正しくてもやり方を間違えれば彼女を傷つけることになる。
「分かりました大河さん。長い話になりますがいいですね? 」
頷いて先を促す。
今日もまた儀式に間に合わなった。
さすがにブリリアントを引っ張り過ぎた。酷く後悔している。
ただその甲斐もあり彼女は重い口を開きぽつぽつと語りだした。
事件が起きたのはちょうど三年前。今と同様祭りの準備で島中が大忙し。
夜でも暑くて暑くてたまらない熱帯夜。
近所の大人は祭りの準備や酒盛りで出払っており姉と二人で留守番を任されていた。
親が帰ってこないのをいいことに暗くまで近所の子とふざけ合って遊んでいた。
あの頃は本当に楽しかったな。
日替わりでいたずらする側とされる側に別れてちょっとしたゲームをする。
その名も神隠しゲーム。
その日は私が騙される側で相手の女の子三人で神隠しのイリュージョン。
一人が本当に神隠しのように消えてしまいどこを探しても見当たらない。
「見つかった? 」
「ううん。どうしちゃったんだろう」
「もう遅いから…… 」
その日は結局見つけられずに家に戻って震えて眠った。
私は案外騙される性質で簡単に信じてしまったが今思えばおかしな話。
人が消失するトリックが分からなくて怖くて怖くてあの当時は本当に怖かった。
翌日も皆で一日中探し回ったけどやっぱり見つからなかった。
なぜか笑っている他の二人が怖くて許せなくて腹が立った。
今考えれば彼女たちが仕組んでいたのは分かる。
でも当時はそこまで頭が回らなかった。凄く怖くて堪らなかった。
「ねえまだ見つからないの? 」
この神隠しゲームは見つけるまで終わらない。
「早く探してあげなくちゃかわいそうだよ」
いたずらにしては度が過ぎている。
当時は刺激を求めて過激な遊びをしていたから。
私もただのゲームに飽き飽きしていた。
だから暴走するのも理解できる。でもこれはない。いくらなんでもやり過ぎ。
それにその日に終わらずに翌日も続けるんだからどうかしてる。
消えた女の子は一体どこに? 隠れてるなら出てきてほしい。
大事になっても知らないよ。親に叱られても知らないよ。
もういいよ。早く出てきてよ。
夜になり疲れたので早く寝ることにした。
明日は観光客が……
話を一旦止めるブリリアント。
「どうした続けてくれ。今のところ子供たちの他愛もない遊びに過ぎない。
問題はこの後。一体何が起きたのか教えてくれ」
時間稼ぎのつもりか? そろそろ核心に迫るのだろう。
話すのがつらいのは分かる。だが自分を助けられるのはやはり自分でしかない。
俺は少なくても直接聞く必要がある。その上で判断する。
「分かりました。続けます」
意を決して続けるブリリアント。内容が内容だけにより慎重になる。
「目が覚めました。何時ごろでしょう。まだ陽は昇っておらず暗かった。
眠い目を擦り姉を求めるが反応しない。
寒気がする。もう夏だって言うのに体が寒いんです。
これは良くない兆候。嫌な雰囲気が漂っている。
絶体に何か良くないことが起きている。嫌な予感がしたんです。
眠っている間も悪夢を見ていたようで全身に汗を掻き手が赤黒くなっていた。
寝間着も乱れていて同じく赤黒くなっていた。
近くで眠っている姉に呼び掛けるがやはり反応しない。
どうもおかしい。部屋が散らかっている。
確か寝る前はそんなことなかったし姉は私よりもはるかにきれい好き。
「お姉ちゃん? 朝だよ起きて」
嘘をついて無理矢理起こそうとするがやはり反応が無い。
仕方なく近づいて体を揺する。
「お姉ちゃん? お姉ちゃん? 」
きゃああ!
胸に刃物が突き刺さり絶命している。
どう言うこと? お姉ちゃんが! お姉ちゃんが!
必死に理解しようとするがもはや意味不明。
パニックになり近所へ助けを求めた。でも……
ダンダン
ダンダン
叫びながら力一杯叩く。しかし誰も出てこない。
反応しない? どうして?
夜は大人たちが居ない。昨日も一昨日もそうだった。
一番大きくてもお姉ちゃんぐらいで男は祭りの準備に駆り出され大人は不在。
一大事に頼る者は皆無。
ドンドン
ドンドン
これ以上は埒が明かない。強行突破あるのみ。
鍵の閉まってない窓から室内へ。
きゃあああ!
そこには一人の少女の遺体が置かれていた。
これは一体どういうこと?
再びパニックに陥り意識を失った。
朝目覚めると血相を変えた父と副村長が立っていた。
何も語らず誰にも聞かずに一週間寝込みその後この館に送り出された。
これが私の体験した悪夢。何と表現していいか分からない本当に不思議な出来事。
「そうだなこのままだと何だか分からないな…… 」
「結論はこう。どうやら私は二晩続けて人を殺した。
友人と姉を連続して手にかけてしまった。何で?
ふふふ…… 動機が何なのか自分でも見当がつかない」
淡々と語るブリリアントを見ると寒気を覚える。
これは俺にとっての試練。
本当に彼女を救えるのか?
決して開けてはいけないパンドラの箱を無理矢理こじ開けた。
しかも興味本位で嫌がる彼女を強引に。
「以上です。どうですか何か分かりましたか? 」
不安そうな表情で見つめるブリリアント。つい抱きしめたくなる。
続く
昨夜同様儀式が厳粛に執り行われているのだろう。
つい長話をしてしまった。これもすべてはブリリアントの為。悪い気もするが……
罪悪感って奴か。俺は正しいんだよな? 間違ってないよな?
いくら正しくてもやり方を間違えれば彼女を傷つけることになる。
「分かりました大河さん。長い話になりますがいいですね? 」
頷いて先を促す。
今日もまた儀式に間に合わなった。
さすがにブリリアントを引っ張り過ぎた。酷く後悔している。
ただその甲斐もあり彼女は重い口を開きぽつぽつと語りだした。
事件が起きたのはちょうど三年前。今と同様祭りの準備で島中が大忙し。
夜でも暑くて暑くてたまらない熱帯夜。
近所の大人は祭りの準備や酒盛りで出払っており姉と二人で留守番を任されていた。
親が帰ってこないのをいいことに暗くまで近所の子とふざけ合って遊んでいた。
あの頃は本当に楽しかったな。
日替わりでいたずらする側とされる側に別れてちょっとしたゲームをする。
その名も神隠しゲーム。
その日は私が騙される側で相手の女の子三人で神隠しのイリュージョン。
一人が本当に神隠しのように消えてしまいどこを探しても見当たらない。
「見つかった? 」
「ううん。どうしちゃったんだろう」
「もう遅いから…… 」
その日は結局見つけられずに家に戻って震えて眠った。
私は案外騙される性質で簡単に信じてしまったが今思えばおかしな話。
人が消失するトリックが分からなくて怖くて怖くてあの当時は本当に怖かった。
翌日も皆で一日中探し回ったけどやっぱり見つからなかった。
なぜか笑っている他の二人が怖くて許せなくて腹が立った。
今考えれば彼女たちが仕組んでいたのは分かる。
でも当時はそこまで頭が回らなかった。凄く怖くて堪らなかった。
「ねえまだ見つからないの? 」
この神隠しゲームは見つけるまで終わらない。
「早く探してあげなくちゃかわいそうだよ」
いたずらにしては度が過ぎている。
当時は刺激を求めて過激な遊びをしていたから。
私もただのゲームに飽き飽きしていた。
だから暴走するのも理解できる。でもこれはない。いくらなんでもやり過ぎ。
それにその日に終わらずに翌日も続けるんだからどうかしてる。
消えた女の子は一体どこに? 隠れてるなら出てきてほしい。
大事になっても知らないよ。親に叱られても知らないよ。
もういいよ。早く出てきてよ。
夜になり疲れたので早く寝ることにした。
明日は観光客が……
話を一旦止めるブリリアント。
「どうした続けてくれ。今のところ子供たちの他愛もない遊びに過ぎない。
問題はこの後。一体何が起きたのか教えてくれ」
時間稼ぎのつもりか? そろそろ核心に迫るのだろう。
話すのがつらいのは分かる。だが自分を助けられるのはやはり自分でしかない。
俺は少なくても直接聞く必要がある。その上で判断する。
「分かりました。続けます」
意を決して続けるブリリアント。内容が内容だけにより慎重になる。
「目が覚めました。何時ごろでしょう。まだ陽は昇っておらず暗かった。
眠い目を擦り姉を求めるが反応しない。
寒気がする。もう夏だって言うのに体が寒いんです。
これは良くない兆候。嫌な雰囲気が漂っている。
絶体に何か良くないことが起きている。嫌な予感がしたんです。
眠っている間も悪夢を見ていたようで全身に汗を掻き手が赤黒くなっていた。
寝間着も乱れていて同じく赤黒くなっていた。
近くで眠っている姉に呼び掛けるがやはり反応しない。
どうもおかしい。部屋が散らかっている。
確か寝る前はそんなことなかったし姉は私よりもはるかにきれい好き。
「お姉ちゃん? 朝だよ起きて」
嘘をついて無理矢理起こそうとするがやはり反応が無い。
仕方なく近づいて体を揺する。
「お姉ちゃん? お姉ちゃん? 」
きゃああ!
胸に刃物が突き刺さり絶命している。
どう言うこと? お姉ちゃんが! お姉ちゃんが!
必死に理解しようとするがもはや意味不明。
パニックになり近所へ助けを求めた。でも……
ダンダン
ダンダン
叫びながら力一杯叩く。しかし誰も出てこない。
反応しない? どうして?
夜は大人たちが居ない。昨日も一昨日もそうだった。
一番大きくてもお姉ちゃんぐらいで男は祭りの準備に駆り出され大人は不在。
一大事に頼る者は皆無。
ドンドン
ドンドン
これ以上は埒が明かない。強行突破あるのみ。
鍵の閉まってない窓から室内へ。
きゃあああ!
そこには一人の少女の遺体が置かれていた。
これは一体どういうこと?
再びパニックに陥り意識を失った。
朝目覚めると血相を変えた父と副村長が立っていた。
何も語らず誰にも聞かずに一週間寝込みその後この館に送り出された。
これが私の体験した悪夢。何と表現していいか分からない本当に不思議な出来事。
「そうだなこのままだと何だか分からないな…… 」
「結論はこう。どうやら私は二晩続けて人を殺した。
友人と姉を連続して手にかけてしまった。何で?
ふふふ…… 動機が何なのか自分でも見当がつかない」
淡々と語るブリリアントを見ると寒気を覚える。
これは俺にとっての試練。
本当に彼女を救えるのか?
決して開けてはいけないパンドラの箱を無理矢理こじ開けた。
しかも興味本位で嫌がる彼女を強引に。
「以上です。どうですか何か分かりましたか? 」
不安そうな表情で見つめるブリリアント。つい抱きしめたくなる。
続く
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