ファイブダラーズ~もう一つの楽園 囚われの少女と伝説の秘宝 夏への招待状シリーズ①

二廻歩

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違うそうじゃない!

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ブリリアントの部屋へ。

「昨日は済まなかった」

見舞いのリンゴをベッドの脇に置き平静を取り戻したであろう少女に向き合う。


「君たちが夜な夜な別館で儀式をしていたのは知っていた。

ある人から教えてもらった。内緒にしろと言われたので伏せるが心配していたよ。

あんなもの見せられたら俺だって…… 」

「そう裏切者がいるようですね。残念です」

少々恐怖を感じる。ブリリアントが時折見せる冗談と真っ直ぐな目。

「おいそんな言い方はないだろ。心配して俺に告白してくれたんだ」

「では大河さんは分かっていて私の邪魔を。神聖な儀式を汚したことになりますが」

反省を促そうとする。だがもちろんそんな話いちいち聞いてられない。

俺には俺のやり方がある。気に入らなければハッピー先生にでも言えばいい。

恐らく儀式の参加者であり皆を統率する者。

そんな人はここではハッピー先生しかいない。

もう一人の謎の人物こそ彼女に違いない。

だからこそハッピー先生が居なくなると皆が狂ってしまった。

アリアはそう証言していた。

毎日行っていた儀式が行われない事態。

恐怖は計り知れない。

まったく何をやっているのか?


ブリリアントは信心深い。この分だと他の少女たちも似たようなものだろう。

鋭い視線を向けるブリリアント。今までに感じたことのない敵意。

純粋ゆえに許せないのだろう。だがこれも大事なこと。

彼女たちの言葉を借りれば儀式。

解放のための儀式と言える。

理解しろとは言わない。だが絶対に必要なこと。


確かに彼女が怒るのも無理はない。

それだけ神聖であり不可欠な儀式。それを俺が台無しにしたのだ。しかもわざと。

「君を困らすつもりはなかったんだ。ただ君たちが気になって。

どれくらい耐えられるのか。依存度や執着。その結果を知りたくてつい」

いくら言い訳しても無駄なのは分かっている。

彼女たちにとって絶対なもの。俺なんかが興味本位で侵すべきではなかった。

反省はしている。だから謝罪も当然だ。

俺自身が撒いた種。ここは叱責も受け入れる覚悟がある。


謝罪し言い訳する俺を睨みつけるブリリアント。怒りの感情が見え隠れする。

これは奇跡だ。儀式の影響。もっと言ってしまえば薬の影響が薄れてる。

「大河さん。一体どう言うつもりですか? 私たちに何か恨みでもあるんですか?

正直に答えてください」

「怒ってしまったようだね。でもそれでいいんだ。そのままの君でいいんだ。

感情を表に出していくことが大事なんだ」

つい格好つけてしまう。

「では大河さんは習慣になっている儀式に参加するなとそう言うんですか? 」

興奮するブリリアントを宥めるのは簡単ではない。

普段怒り慣れていない者が感情を爆発させたのだから。

「いや無理はさせられない。今夜は儀式に参加するといい。

それまでまだ時間はある。昨日の続きと行こうか」

「昨日の続き…… 」

不満を隠せないブリリアント。


「君は勘違いしている」

敢えて同じように振る舞う。

「詳細を。君がここに来た経緯を教えてくれないか」

「それはちょっと…… 言えません」

「断わるのは構わないがもうあまり時間がないんだ。

どんな手を使ってでも君から話を聞かなくちゃならない。

出来たら協力して欲しい」

脅しをかける。こんなことはしたくなかった。

でも仕方ないんだ。こうでもしなければ俺は生きていけない。

もう頼れるのはブリリアントだけだ。

ブリリアントに迫る。

彼女は拒否しようとするが強くはいけない。

意志が弱いのだ。

「なあ頼むよ」

仕方なく少しずつ要求を受け入れていく心優しき少女。

アリアとは大違い。


「勘違い? 」

「いや正確には記憶違いをしている」

「どう言うことでしょうか大河さん? 」

「君のすべてを知っているってことだ」

「ええっ…… 」

大げさに言過ぎたか震えているのが分かる。

「焦っているようだな」

「だから私は…… 」


俺は別にいたぶるのが好きな変態じゃない。

でもこうでもしないと彼女の心を開くことが出来ない。

目的遂行のためにはどんな手も使う。

非情になれ。それが俺の運命であり彼女たちの運命でもある。

良いことなんだ。決して間違っていない。

俺が皆を解放する。

心を体をすべてを奪うんだ。


「答えられないか。それならそれでいい」

「いえまったくそんなことは…… 」

拒絶すればいいものをその優しさからできる限りのことをしようとする。


いつの間にか十二時を過ぎていた。

昨夜と同じ失敗。

今回はわざとじゃない。ただ思いのほか話が延びてしまっただけだ。

信じてくれブリリアント。


                    続く

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