ファイブダラーズ~もう一つの楽園 囚われの少女と伝説の秘宝 夏への招待状シリーズ①

二廻歩

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秘密の訪問

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ドンドン
ドンドン

有無を言わせない強引な訪問者。こんなことするのは恐らく……

食事を済ませベットで寛いでると断りもなく勝手に大河さんが中へ。

ええっ? どう言うこと?

あまりにも突然であまりにも強引なため唖然とするばかり。


「何でしょう? こんな夜中に勝手に入ってくるなんてもう大河さんったら…… 」

これ以上強くは言えない。そういう性格って分かってる。

あーあ。本当に自分が嫌になる。

「済まん済まん。慌てていたものでつい…… 」

すぐ嘘だと分かる下手な言い訳。いくら私が馬鹿でも分かる。


「どのようなご用件でしょうか? 」

時計を見る。大丈夫まだ時間はある。

「ちょっといいかな。君に聞きたいことがあるんだ」

「はあ…… こんな時間にわざわざ? 」

大河さんが私に用? 警戒心や恐怖心よりもなぜかドキドキが勝る。


時刻は午後十一時過ぎ、夜遅くの訪問はあまりにも非常識。

しかも女性の部屋を約束もなしに訪ねる紳士にあるまじき行為。

でも大河さんのことが気になるので求めに応じることに。

「ええっと美波さんだっけ。ここに来てもう長いの? 」

私の名前を憶えていてくれた。嬉しい。でも出来たら下の名前で呼んで欲しい。

「そうですね。ここに来て約三年ってところですかね」

緊張と興奮を隠し敢えて淡々と。

「他の子たちとは付き合いは長い? 」

質問攻めにする大河さん。ああ私に興味があるんだ。

「ええっと…… 最近入ってきたばかりの岬さんを除けば二年、三年経ちますね」

大河さんは一体何を知りたがってる? 私にできることなら何でもしてあげたい。


「君はなぜここへ? 」

「質問ばかりですね。しかも他の女の子の話ばかり」

何とかごまかせた。それだけは知られたくない。

いくら大河さんでも過去の秘密を簡単に話せない。私にも私なりの苦悩がある。

それを一週間かそこらでやって来た男に話せるでしょうか?


「答えてくれないんだね」

寂しそうにする大河さん。ああもうダメ。私には耐えられない。

「分かりましたお答えします。その代わりあなたのことも教えてくださいね」

交換条件を提示。私を見くびらないで大河さん。

謎の男大河。彼の目的は一体何? 皆が訝しんでいた。私だって興味ある。


「俺のこと…… 」

「はい大河さん。あなた一体何者なんですか? 」

「知らない方がいい。俺のことは詮索するな! 」

強い口調で言われると従う癖がついている。

「はい。ああでも…… どこから来たんですか」

「困ったな…… グリーズ島のずっとずっと北の方。

君たちには想像もつかないほど大勢の人が住んでいる。

俺たちから見ればここが別世界であるように君たちにとってもそこは別世界さ。

いや異世界ってところか」

「そうですかでは次の質問を…… 」

「おいおいその前に俺の質問に答えてくれ! 」

語気を強める。いつの間にか怒らせてしまったらしい。

これ以上は危険。


「分かりました。私はこの島の出身である事件をきっかけにマウントシーへ」

ついつい本当のこと。秘密を告白してしまう。

「ある事件とは? 」

追及の手を緩めない大河さん。

「それは…… 言えません。秘密ですから」

慌てて反論する。

「その事件について俺が知っているとしたら君はどうする? 」

変な質問。そもそも知りようがない。

私を嵌める気? もう大河さんったらずるいんだから。

口を噤むしかない。

これ以上の挑発に乗れば感情的になりすべてを告白してしまうだろう。

それこそ大河さんへの密かな想いさえも。


「答えられないか。まあ良い。そちらの番だ」

「グリーズ島や祭りについてどこで知ったんですか? 」

まさかチラシやパンフレットに載っていたと冗談を言うつもり?

「それは…… ある人から教えてもらったんだ。

実は彼女はこの島の出身。島や祭り、この島に伝わる伝説なんかも教えてもらった。

もしかしたら君ともどこかで会ってるかもしれないね」

女性? ではその女性から詳しい話を……


「質問を変えます。ここに来た目的は? 皆さん気にしてますよ。

あなたがなぜこの島に来たのか知りたがっています。特に岬さんが」

揺さぶりをかける。さすがに答えられないだろうとは思うが。

大河は真剣な表情を見せる。

「それはまだ教えることが出来ない」

「そうですか。私も少し興味があったんですけど。なぜか気になるんです。

あなたのことがすごく気になるんです。おかしいですかね? 

だからもう少しあなたについて知りたいと思います大河さん」

あれ何言ってるんだろう私? 明らかに告白じみたことを。

自分でも訳が分からないなら大河さんもお困りでしょうね。

でもこれくらいズバッと言った方がいい。もう儀式の時間も差し迫ってる。

早く彼を追い出さなくちゃ。もし彼に気付かれるようなことになったら……

ううん。記憶なんてない。ただ為されるがまま受け入れてるに過ぎないんだから。

急がなくちゃ。ぐずぐずしていられない。


「あの…… 大河さんには家族や恋人に友人は…… 」

しまった。痛恨のミス。

時間が迫っているのについつい余計な質問をしてしまう。

もう支度する時間。私が引き延ばしてどうする?

儀式にしろ過去にしろ大河さんには絶対知られてはならない。

それはもはや私だけの問題じゃない。

マウントシーの皆を危険にさらすことになる。

                  続く
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