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謎の男
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間奏;
目の前の現実が受け入られない。俺は嵌められたのか?
いつだろう? 誰に? 仲間でもいたのか?
分からない! わからない! ワカラナスギル!
あの橋から落ちた後の記憶が無くなっている。ここはどこなんだ?
いやそれよりも現在の状況を打開すべきだろう。
足が動かない。目がかすんでよく見えない。どうしたものか?
現在。
朝、皆が忙しくしている時に流れる島内放送。
重要なことも多いが全島民に関係あるかと言えば決してそうではない。
実にどうでも良いことまで流れているものだから皆聞き流す。
ただの毎日の煩わしい雑音で誰もその内容を気にする様子はない。
<おはようございます。本日は月例会議が副村長宅にて行われます。
関係者の皆様は午前11時までにお集まりください>
以上広報部。
「旦那様、旦那様。早くお着替えください。もうすぐ皆さん来てしまいますよ」
「おお、もうこんな時間か。昨日は飲み過ぎたぞ。
夜更けまで一対一で語り合ったからのう」
乱れた服を直してもらう。
放っておいても勝手にやってくれるのでついつい甘えてしまう。
「今日はその方についても話しておかねばなりませんね」
念押しをされるがどうしたものか。
分かっているがどうも話しづらい。反対意見が出るのが目に見えている。
「目的もはっきりしない。警戒を怠るべきではないと思うがな…… 」
「いきなり訪ねてくるんですものね。ちょっと変わった方だった」
どうやらいい印象を持っていない。自分としても疑問しかない。
「それで彼はどうした? まだ寝ておるのか? 」
「いえとっくに出て行きましたよ」
「そうか…… 上手く行くといいがな…… まあ大丈夫なはずじゃ」
寝間着から島の正装のカラフルなアロハシャツ。
下は島のカラーである青い半ズボンに白の靴下を穿く。
会議室として使っている和室へ。
定刻に会議は開始されいつものように島の課題を取り上げる。
議長の副村長を中心に島を代表した数名が論戦を広げている。
「ええと…… 反対多数により否決と」
「賛成・賛成・反対」
「賛成多数で可決されました」
想定外の動きを見せることはない。そのせいか緊張感が保てずにいる。
「反対・反対・賛成・賛成」
「反対多数で否決されました。それではこれで終われとのことですが他に何か? 」
今回の話し合いの結果をまとめる。
賛成による可決は少なく、ほとんどが反対に反対を重ね否決となった。
基本的に内容は前回とほぼ同じで賛成可決は緊急時の防災対策に関するもの。
要するに反対する必要のないもの。
反対の多くが消極的な考えからくるもので否決されてしまう。
観光客の受け入れ拡大。近隣の島をつなぐ大橋の建設。
これは金がかかるだけではない。
観光客を呼び込むとなれば逆に島の者が他地域へ流出してしまう恐れがある。
とてもではないが賛成など出来はしない。
村が島が死んでしまう。それだけは避けねばならない最悪の事態。
続いては新校舎の建設。
新しく学校を作るとなると莫大な金がかかる。あまりに非現実的。
そこまでのメリットがあるのか。慎重に判断する必要がある。
この島も例に漏れず少子高齢化が進んでおり早急な対策が求められている。
建設しても希望者が少なくては今島に一つある学校で充分だろうとなる。
等々、島独特のものを含め課題は山積だが一応は先送りとなった。
次回に持ち越しと言う奴。
「あの副村長…… 」
目の前の席で正座している気の弱そうな男が意見を求める。
彼は近所の青年でこの中では一番若いが見た目が痩せていて影が薄い。
そのせいで老人に見られることもしばしば。
「今この辺りで持ちっきりの例の若者が副村長宅を訪れたと聞いたのですが」
「皆には伝えていないが昨日の定期船…… ああもう今日の昼。
要するにもう間もなく出港する船に乗っていた一人の若者。
彼が昨晩突然訪ねて来て出たいと言いおった。
最初はとんでもないことをと思ったがな……
詳しく聞くうちに酒を酌み交わした次第じゃよろしく頼む」
ざわざわ
ざわざわ
部屋が騒がしくなる。
「まさか今年ですか? 来年ならまだしも…… 」
「反対・反対」
「いい加減にしてほしいですな」
「冗談じゃない。よそ者を入れる訳にはいかない」
参加者のほとんどが副村長の提案を受け入れようとしなかった。
しかし仕方ないのではと言う見方もあり最終的には副村長に任せることとなった。
最高齢であり最も島の歴史に詳しい島長でありながら副村長と言う重要な人物。
それだけあってか誰からも愛されるお人である。
「あの…… 結局その男は参加を許されたのですね? 今彼はどこに? 」
向かいの席に座る気弱そうな男が心配そうに尋ねる。
彼だけではない。島の老人を中心によそから来た者を受け入れようとしないのだ。
正体不明の若い男が近くをうろついているのは目障りなだけではなく不吉で不気味。
島に災いをもたらすのではないかと口々に話している。
「青年は時に十七、八と若く、多くを語らぬが自分の意思を持った若武者。
何か他に目的があるのではと探りを入れたものの正体を現さず……
仕方なく彼の要望通り人を紹介する手はずだったがどうやら勝手に行ったらしい」
さっきまで大騒ぎしていた者たちは大人しくなり状況を見守る。
月例会議はここでお開きとなった。
だが納得のいかないメンバーが不満を隠しきれずにコソコソと話し合っている。
やはり受け入れ難いのだろう。
続く
目の前の現実が受け入られない。俺は嵌められたのか?
いつだろう? 誰に? 仲間でもいたのか?
分からない! わからない! ワカラナスギル!
あの橋から落ちた後の記憶が無くなっている。ここはどこなんだ?
いやそれよりも現在の状況を打開すべきだろう。
足が動かない。目がかすんでよく見えない。どうしたものか?
現在。
朝、皆が忙しくしている時に流れる島内放送。
重要なことも多いが全島民に関係あるかと言えば決してそうではない。
実にどうでも良いことまで流れているものだから皆聞き流す。
ただの毎日の煩わしい雑音で誰もその内容を気にする様子はない。
<おはようございます。本日は月例会議が副村長宅にて行われます。
関係者の皆様は午前11時までにお集まりください>
以上広報部。
「旦那様、旦那様。早くお着替えください。もうすぐ皆さん来てしまいますよ」
「おお、もうこんな時間か。昨日は飲み過ぎたぞ。
夜更けまで一対一で語り合ったからのう」
乱れた服を直してもらう。
放っておいても勝手にやってくれるのでついつい甘えてしまう。
「今日はその方についても話しておかねばなりませんね」
念押しをされるがどうしたものか。
分かっているがどうも話しづらい。反対意見が出るのが目に見えている。
「目的もはっきりしない。警戒を怠るべきではないと思うがな…… 」
「いきなり訪ねてくるんですものね。ちょっと変わった方だった」
どうやらいい印象を持っていない。自分としても疑問しかない。
「それで彼はどうした? まだ寝ておるのか? 」
「いえとっくに出て行きましたよ」
「そうか…… 上手く行くといいがな…… まあ大丈夫なはずじゃ」
寝間着から島の正装のカラフルなアロハシャツ。
下は島のカラーである青い半ズボンに白の靴下を穿く。
会議室として使っている和室へ。
定刻に会議は開始されいつものように島の課題を取り上げる。
議長の副村長を中心に島を代表した数名が論戦を広げている。
「ええと…… 反対多数により否決と」
「賛成・賛成・反対」
「賛成多数で可決されました」
想定外の動きを見せることはない。そのせいか緊張感が保てずにいる。
「反対・反対・賛成・賛成」
「反対多数で否決されました。それではこれで終われとのことですが他に何か? 」
今回の話し合いの結果をまとめる。
賛成による可決は少なく、ほとんどが反対に反対を重ね否決となった。
基本的に内容は前回とほぼ同じで賛成可決は緊急時の防災対策に関するもの。
要するに反対する必要のないもの。
反対の多くが消極的な考えからくるもので否決されてしまう。
観光客の受け入れ拡大。近隣の島をつなぐ大橋の建設。
これは金がかかるだけではない。
観光客を呼び込むとなれば逆に島の者が他地域へ流出してしまう恐れがある。
とてもではないが賛成など出来はしない。
村が島が死んでしまう。それだけは避けねばならない最悪の事態。
続いては新校舎の建設。
新しく学校を作るとなると莫大な金がかかる。あまりに非現実的。
そこまでのメリットがあるのか。慎重に判断する必要がある。
この島も例に漏れず少子高齢化が進んでおり早急な対策が求められている。
建設しても希望者が少なくては今島に一つある学校で充分だろうとなる。
等々、島独特のものを含め課題は山積だが一応は先送りとなった。
次回に持ち越しと言う奴。
「あの副村長…… 」
目の前の席で正座している気の弱そうな男が意見を求める。
彼は近所の青年でこの中では一番若いが見た目が痩せていて影が薄い。
そのせいで老人に見られることもしばしば。
「今この辺りで持ちっきりの例の若者が副村長宅を訪れたと聞いたのですが」
「皆には伝えていないが昨日の定期船…… ああもう今日の昼。
要するにもう間もなく出港する船に乗っていた一人の若者。
彼が昨晩突然訪ねて来て出たいと言いおった。
最初はとんでもないことをと思ったがな……
詳しく聞くうちに酒を酌み交わした次第じゃよろしく頼む」
ざわざわ
ざわざわ
部屋が騒がしくなる。
「まさか今年ですか? 来年ならまだしも…… 」
「反対・反対」
「いい加減にしてほしいですな」
「冗談じゃない。よそ者を入れる訳にはいかない」
参加者のほとんどが副村長の提案を受け入れようとしなかった。
しかし仕方ないのではと言う見方もあり最終的には副村長に任せることとなった。
最高齢であり最も島の歴史に詳しい島長でありながら副村長と言う重要な人物。
それだけあってか誰からも愛されるお人である。
「あの…… 結局その男は参加を許されたのですね? 今彼はどこに? 」
向かいの席に座る気弱そうな男が心配そうに尋ねる。
彼だけではない。島の老人を中心によそから来た者を受け入れようとしないのだ。
正体不明の若い男が近くをうろついているのは目障りなだけではなく不吉で不気味。
島に災いをもたらすのではないかと口々に話している。
「青年は時に十七、八と若く、多くを語らぬが自分の意思を持った若武者。
何か他に目的があるのではと探りを入れたものの正体を現さず……
仕方なく彼の要望通り人を紹介する手はずだったがどうやら勝手に行ったらしい」
さっきまで大騒ぎしていた者たちは大人しくなり状況を見守る。
月例会議はここでお開きとなった。
だが納得のいかないメンバーが不満を隠しきれずにコソコソと話し合っている。
やはり受け入れ難いのだろう。
続く
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