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上陸
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徐々に忍び寄る人影は日常を表すものか、破壊しようとするものか?
雨に濡れた獣道をどこまでもどこまでも汗をまきちらし疾走する姿。
果たして人であろうか? もはや獣の類ではなかろうか?
一日目 <残り14>
おはようございます 今日は月初めですね 頑張ってまいりましょう
今月は待ちに待った ビッグイベント 楽しみにしていた方
大勢いらっしゃる と思います 詳細は後日発表します
以上広報部より。
「まったくよもう昼だちゅうのにこんなギンギンに晴れてるのが分からんのか! 」
「じいちゃん、そんなに興奮しないで何をイライラしているの? 」
「もうすぐ着くはずの定期船が遅れているってさっき連絡があってな……
心配しつつ困ってるんだ。どうしたもんかのうまったく」
「まったくが口癖になってるよ」
「うるさい! 子供は黙っとれ! 」
そうこうしているうちに遅れていた船は港へ無事到着したのだった。
大型船と呼ぶには小さ過ぎ中型船でも言い過ぎぐらいなオンボロ船。
あちこち修繕の痕が見られる。黒ずんで錆びているのが歴史を感じさせる。
定員は定かではないが荷物が多い時は五人が限界である。
近くの島々を結んで週に一回物資の供給と売買の仲介を担っている。
そう、ここは閉ざされた島グリーズアイランド。
グリーズ島へようこそ。
「グリーズ島へようこそ! ここは日本の南端、地図にも載らない小さな島。
観光客の皆さん楽しんでいってください。
お土産にグリーズ島の守り神を模した熊さんまんじゅう。
それから伝説の聖女の涙のしずくジュースはいかがですか」
「グリーズ島へようこそ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
老女二人が交互に船から降りてきた人々に売り込んでいる。
ゆっくり降りてきた最後の客は地元の者。
立ち話もなんなのでこの島で一軒の宿に併設された喫茶店で話し込むこととなった。
「爺さん、ずいぶん久しぶりじゃなあ。元気しとったか」
「おう、故郷に帰っておったで」
「まず、まんじゅうでも食うてや」
「いやいや、余りものではないか」
「わはっはっは いいじゃねえのう。飽きたかい? 」
「それにしても暑いのう」
「もう夏じゃからな」
おしゃべりは長々と続き一時間が経過した頃、今日来た観光客の話題へと移る。
四人のうち一人は都会から来た教師。二人はカメラマンとバックパッカーのペア。
最後は得体の知れない謎の青年。
「四人ともここに泊まるのかい? 」
「いや、教師と二人組は旅行だからね。青年は島長である副村長に用があるって」
「何だか得体が知れないね。気味が悪いよ。不吉なことが起きなきゃいいが」
「ああ、そうだな、もうそろそろだしな…… 」
「そう、そろそろだしね…… 」
「ちょっとすみません」
教師の男がまんじゅうを買い求める。彼は千円札を握りしめていくらか尋ねた。
「あー悪いね。ここでは円は使えないんだわ。
両替所にてこの島の通貨のグリーズアイドルへ交換致します。
1ドル100円となっております」
男は言われるまま近くの両替所で交換しまんじゅうを買い求めた。
そして二階の自分の部屋へ。
島を訪れる者は大抵一週間後の船で帰るのでお土産は最終日の朝と言う人が多い。
彼はおそらくおやつとして買ったのだろう。
島にはここ以外売店はなく食事をするところもない。
島民を含め人がよく集まる場所もここくらいしかない。そんな村である。
楽しみも少ないが自然は豊かで多くの動物が生息し、固有の生態系を有す。
果実も季節には成り、迷宮迷路のような草原道。
まるで世界の果てかのような楽園が広がっている。
都会の者から見れば辺鄙な村であり、どこにでもあるような離島でしかない。
周りの島を含めても住人はわずかで都会から遠く離れている隔絶した島。
観光に来た客でさえすぐにその存在を頭の片隅に追いやる。
まるで存在しないかのような、息をしていないような忘れられた世界。
しかし島民は元気に使命を全うするため、目的遂行のため日々生活している。
このことを決して忘れてはならない。
昼から夕方にかけ島を激しく照らし太陽も引っ込みようやく暑さも収まった夜。
多くの若者が近くの広場で踊りに興じている。異様な風景が広がっている。
ある者は笛を吹き、ある者は太鼓を叩き、絶叫している者まで。
夜遅くまで続く100人近くの者による異常行動にしか見えない乱舞。
動物たちを驚かせている。
うおうおおうううおおう ギャアギャギャー ああおおうう ウウーウウウーウイ やあやあようふうううう チイチピイピイピー はいはいようよう ガウギャアアー おおお……
人と獣たちの合唱があたり一帯をそして島全体を震わせている。
続く
雨に濡れた獣道をどこまでもどこまでも汗をまきちらし疾走する姿。
果たして人であろうか? もはや獣の類ではなかろうか?
一日目 <残り14>
おはようございます 今日は月初めですね 頑張ってまいりましょう
今月は待ちに待った ビッグイベント 楽しみにしていた方
大勢いらっしゃる と思います 詳細は後日発表します
以上広報部より。
「まったくよもう昼だちゅうのにこんなギンギンに晴れてるのが分からんのか! 」
「じいちゃん、そんなに興奮しないで何をイライラしているの? 」
「もうすぐ着くはずの定期船が遅れているってさっき連絡があってな……
心配しつつ困ってるんだ。どうしたもんかのうまったく」
「まったくが口癖になってるよ」
「うるさい! 子供は黙っとれ! 」
そうこうしているうちに遅れていた船は港へ無事到着したのだった。
大型船と呼ぶには小さ過ぎ中型船でも言い過ぎぐらいなオンボロ船。
あちこち修繕の痕が見られる。黒ずんで錆びているのが歴史を感じさせる。
定員は定かではないが荷物が多い時は五人が限界である。
近くの島々を結んで週に一回物資の供給と売買の仲介を担っている。
そう、ここは閉ざされた島グリーズアイランド。
グリーズ島へようこそ。
「グリーズ島へようこそ! ここは日本の南端、地図にも載らない小さな島。
観光客の皆さん楽しんでいってください。
お土産にグリーズ島の守り神を模した熊さんまんじゅう。
それから伝説の聖女の涙のしずくジュースはいかがですか」
「グリーズ島へようこそ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
老女二人が交互に船から降りてきた人々に売り込んでいる。
ゆっくり降りてきた最後の客は地元の者。
立ち話もなんなのでこの島で一軒の宿に併設された喫茶店で話し込むこととなった。
「爺さん、ずいぶん久しぶりじゃなあ。元気しとったか」
「おう、故郷に帰っておったで」
「まず、まんじゅうでも食うてや」
「いやいや、余りものではないか」
「わはっはっは いいじゃねえのう。飽きたかい? 」
「それにしても暑いのう」
「もう夏じゃからな」
おしゃべりは長々と続き一時間が経過した頃、今日来た観光客の話題へと移る。
四人のうち一人は都会から来た教師。二人はカメラマンとバックパッカーのペア。
最後は得体の知れない謎の青年。
「四人ともここに泊まるのかい? 」
「いや、教師と二人組は旅行だからね。青年は島長である副村長に用があるって」
「何だか得体が知れないね。気味が悪いよ。不吉なことが起きなきゃいいが」
「ああ、そうだな、もうそろそろだしな…… 」
「そう、そろそろだしね…… 」
「ちょっとすみません」
教師の男がまんじゅうを買い求める。彼は千円札を握りしめていくらか尋ねた。
「あー悪いね。ここでは円は使えないんだわ。
両替所にてこの島の通貨のグリーズアイドルへ交換致します。
1ドル100円となっております」
男は言われるまま近くの両替所で交換しまんじゅうを買い求めた。
そして二階の自分の部屋へ。
島を訪れる者は大抵一週間後の船で帰るのでお土産は最終日の朝と言う人が多い。
彼はおそらくおやつとして買ったのだろう。
島にはここ以外売店はなく食事をするところもない。
島民を含め人がよく集まる場所もここくらいしかない。そんな村である。
楽しみも少ないが自然は豊かで多くの動物が生息し、固有の生態系を有す。
果実も季節には成り、迷宮迷路のような草原道。
まるで世界の果てかのような楽園が広がっている。
都会の者から見れば辺鄙な村であり、どこにでもあるような離島でしかない。
周りの島を含めても住人はわずかで都会から遠く離れている隔絶した島。
観光に来た客でさえすぐにその存在を頭の片隅に追いやる。
まるで存在しないかのような、息をしていないような忘れられた世界。
しかし島民は元気に使命を全うするため、目的遂行のため日々生活している。
このことを決して忘れてはならない。
昼から夕方にかけ島を激しく照らし太陽も引っ込みようやく暑さも収まった夜。
多くの若者が近くの広場で踊りに興じている。異様な風景が広がっている。
ある者は笛を吹き、ある者は太鼓を叩き、絶叫している者まで。
夜遅くまで続く100人近くの者による異常行動にしか見えない乱舞。
動物たちを驚かせている。
うおうおおうううおおう ギャアギャギャー ああおおうう ウウーウウウーウイ やあやあようふうううう チイチピイピイピー はいはいようよう ガウギャアアー おおお……
人と獣たちの合唱があたり一帯をそして島全体を震わせている。
続く
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