ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ

二廻歩

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五分の猶予 

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国王の寛大な処置によってランは解放された。

王子奪還がランの使命。だからランは逃亡することなく近くの木陰に隠れ様子を窺っている。

「では王子も準備が整ったようだ。そろそろ始めるとしようか」

国王の号令でついに刑が処される。


はあはあ
はあはあ

隙を見て飛び出すつもりがこれではとてもとても無理。

まったく何してるのよ。カードを早く使いなさいよ! ゴールドカードはどうしたのよ? 早く! 早く! もう!

木陰に身を隠し奪還のチャンスを伺うが隙が無い。兵士の数が多すぎて近づくことさえままならない。

もう何やってるのよ! カードを早く! 早く! 王子! 王子!

自分の無力さを実感。そのまま崩れ落ちる。

ジ・エンド

ランに出来ることは何もない。再び騒ぎを起こしたとしても無視されるか軽くあしらわれるのがオチ。

やれることは限られる。ただ祈る。それだけだ。


雲が湧いてきた。

さっきまで大地を照らしていた太陽が姿を消す。

いつの間にか北風が強くなり髪が乱れる。

魔女からの贈り物のドレスも崩れてしまっている。

まさかこれが死に装束になるとは思っても見なかった。

相変わらず太郎は震えている。

太郎は大丈夫だと言うけど今にも意識を失いそうで心配だ。まあそうなったら苦しみや痛み、恐怖を味わずに済む。

王子にとっても国王にとってもその方が都合がいい。

できたら苦しまずにと思うのが親心。本当は回避して逃がしてやれればと心では思っているかもしれない。

だが国王としてはたとえ息子であろうと反逆者。立場が許さない。

「太郎! 」

「スティ―! 」

抱き合って最後の審判を待つ。


「ふふふ…… 情けないぞ王子! 罰を受け入れる気はないのか? そこの女! 悪いが一緒に行ってもらうぞ」

「太郎! 」

「スティ―! 」

猟銃を構える国王。

国王の一発が合図。これで一斉射撃が始まる。

この国の伝統的な処刑方法。まず助かる者はいない。

「王子よ。お前には教えたな? なぜ猟銃を使うか理由があったはずだ。答えてみろ! 」

「それは…… 反逆者は人間ではないから。ただの獣と同じ」

「そうだ! お前はもう王子でも子でもない。ただの反逆者であり獣だ」

「自覚しているつもりです」

「そうか。ではなぜ裏切った? なぜあのような恐ろしいことをした? 答えろ! 」

「それは…… 良く分かりません。魔が差したとしか言えません」

「この期に及んでまだそのような戯言を! 情けない奴め! 」

太郎王子の罪は決して消えない。


国王は猟銃を置く。それに倣い兵士も置く。

「準備は整った。いつでも発射できる。だからお前には最後の時間をやろうと思う。

まあ牢屋で随分と時間があったようだから無理にとは言わないがな」

「ご配慮ありがとうございます」

「いやいい。五分だけだぞ」

国王の特別な配慮。王子であることも関係しているのだろう。


五分で覚悟を決める。

心を清める時間にする?

二人の愛を確かめる?

五分あれば何でもできる。

「ねえどうする太郎? 」

「さあ…… 急にそう言われても…… 」

相変わらず優柔不断で自分では何も決められない。今まで出会ったどんな王子よりも情けない。

「太郎…… 」

「なあ祈らないか? 」

「祈る? 」

「ああ。今までの罪を悔い改める。そして祈り許しを請う」

「ちょっと待ってよ! 私は悔い改める罪なんてない。許しを請う必要だってない。ただ巻き込まれただけ! 」

「済まない…… 」

「そんな顔をしないで! もちろん満足してる。太郎にこうして再会できたんだから」

「あーあ。どうしてこうなっちゃったんだろう…… 自分でも良く分からないんだ」

「太郎の馬鹿! 」

「スティ…… よし。じゃあ一緒に祈ろう」

まだ何か言ってる太郎。


「もう! だから悔い改めることなんか…… えっ? 閃いた! そうよ! それよ! 」

最後の五分に全てをかける。

                続く
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