ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ

二廻歩

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没収! 失われた希望

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処刑当日。

さすがに震えている太郎。昨日までの勇ましさは見られない。

「大丈夫だから。ほら元気出して」

もう今にも執行されてもおかしくない状況。

「本当に大丈夫だから。このゴールドカードを掲げれば新たな世界へ飛べるわ」

「新たな世界? 」

「いい太郎? 私の言うことを聞いて」

「でも…… 」

「返事は? 」

「ヘイ! 」


太郎は元の太郎に戻っていた。幼い頃の太郎。情けなくて頼りない太郎。

「心配しないで! 私が守ってあげる! 」

何とか太郎を説得できた。後はこのゴールドカードを掲げるだけ……

出来たらこの世界で太郎と一緒に仲良く暮らしたい。

これは最後の最後。とっておきだとランも言っていた。

甘いのは分かっている。でもギリギリまで使いたくない。


「おい! 二人とも出ろ! 」

ついに大詰め。

檻から出され処刑場へ向かう。

その前に身体検査。

何か武器になるような物は持っていないか念入りに検査。

太郎王子に続いて私まで恥ずかしい思いをする。

「何もある訳ないでしょう! 」

「うるさい! 大人しく従うんだ! 」

「きゃああ! 止めて! 」

「まったく騒がしい奴だ! 分かったよ。これ以上はやらない」

ふう助かった。ふふふ…… 馬鹿なんだら。

懐にしまったゴールドカードを確認。うん。大丈夫。大丈夫。

「おっと。そんなとこに隠し持っていやがったか! 」

気付かれた?

「うん…… 何だこれは? 」
 
ゴールドカードを奪われてしまう。

新たな世界へ飛ぶためのアイテムを没収される。


「ちょっと! これは国王様への献上品。無礼な真似は許しませんよ! 」

「だったら俺たちで渡しておいてやるよ」

「それには及びません。これは自らの手で直接渡さなければならないのです! 」

国王からいらんと突き返されたアイテム。再び突っ返されるのは目に見えている。

でも少なくても自分の手で持っていれば……

結局国王の名前を出しても取り戻すことはできなかった。

「へへへ…… 役に立つとは思えないが念のためだ。預かっておくぜ! 」

非常事態。

ゴールドカードが無くては次の世界へ飛べない。このままでは太郎と共に処刑されてしまう。

哀れと言うか間抜けと言うか。悲惨な結末を迎える未来しかない。


「さあ二人とも心の準備はいいな? 」

「嘘でしょう? お願い! 考え直して! 」

いくら訴えかけても聞く耳を持たない。

「ねえこれは家宝なの。我が家に伝わる大変貴重な物。分かるでしょう? だからお願い! 返して! 」

しかし彼らも馬鹿ではない。

「ではお前の墓に手向けてやろう。それで文句ないな? 」

もうダメ! 望みが途絶えた。

後はただ過ぎ去るのを待つしかない。あーあ。どうしてこんなことに?

悲惨な結末。


地下牢を出て鳥小屋を経由し外へ。

「太郎どうしよう? 」

「もう受け入れるしかないさ。ははは! 」

恐怖のあまりおかしくなってしまった。

どうにもならない現実は存在する。打ち破ることは不可能。

ただ運命に従うだけ。確かにそれが一番自然。太郎と一緒ならそれも悪くないかな。

諦めかけたその時。遠くの方で騒ぎが起きた。


「行ったぞ! そっちに回れ! 」

「どうしたの? 何が? 」

「王子のとこのランみたいだな。お前たちを奪還するつもりらしい」

「ははは! いいぞ! いいぞ! 」

復活の太郎。


もう間もなく処刑されてしまう。一刻の猶予もない。

ランもそれが分かっているから大胆な行動に出ている。

「ラン! 」

王子の叫びは届かない。

まずい。このままだと捕まる。せっかくのチャンスを逃すわけにはいかない。

「ほら何をしている? キリキリ歩け! 」

処刑場までの短い間にランと合流。そうすれば……

だがその考えも虚しくランはあっけなく捕まってしまう。

「残念。これでもうあきらめるしかないな」

太郎は下を向く。

私は奇跡を信じて前を向く。

ついに処刑場である広場に到着。


万事休す。

どこで狂ったのか物語はまさかのバッドエンドへと突き進む。

                続く
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