ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ

二廻歩

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最後の夜 悲しみと喜びの中で

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絶体絶命のピンチ。

今回は救ってくれるナイトは一人もいない。いるのはさっきから生意気な態度の太郎のみ。

交代の二人はぐるぐる巻きになった男を救出。

「こいつだ。こいつらにやられた! 」

「もう一人は? 逃げたようだな。よし王子は問題ない」

「お前も入ってろ! 」

「きゃああ! 」

強引にぶち込まれる。


警備の者にとって王子が脱走するなどあってはならない大問題。

責任を取らされて処分されてしまう。今回は王子が逃げる前に解決できたので一安心。

「ふざけやがって! 大人しくしてるんだぞ! 」

地下牢の扉が閉まり太郎と二人きり。


ようやく二人きりになったのに邪魔をするように尋問を始める野暮な男。

「お前は何者だ? 」

「私は…… 」

「そうか。言いたくなければそれでいい。明朝一緒に始末するだけだ」

「そんな…… 」

「おい待て! 私はこんな女知らないぞ! 」

「王子! 庇うなど情けないですよ」

「いやそうではなく本当に…… 」

厳戒態勢が敷かれ忍び込むのも脱出するのもこれで不可能。


「もう嫌! 」

「それはこっちのセリフだ! 」

太郎の癖に生意気。

辺りが静かになった。

どうやらランは逃げおおせたようだ。後はこの太郎の記憶を蘇らすだけ。

さあ早く思い出すのよ!


「ねえ王子。本当に私のこと思い出せないんですか? 」

「だから何度も言わすな! 我が国の女なら大体は知っている」

イーチャットでの太郎の悪い噂。

女の尻ばかり追いかけるヘタレ王子。風の噂で聞こえてくるのは不確定な太郎像。

相手にされない女の嫉妬と思っていたけど満更嘘でもなさそう。


「ねえ太郎。思い出して! 私たち幼馴染だったじゃない」

まあ実際は親分と子分の関係だったけど。過去をほんの少々美化するのも悪くない。

「ふん! 太郎などではないわ! 」

「ねえ太郎ったら! 」

「だから何度言わせるんだ! 」

徐々に昔の太郎の記憶が薄れていく。あれ自信が……

「本当に覚えてない? これだけ言っても無理なのね! 」

「ふん! 早く寝ろ! 明日は早い」

そうだった明日は処刑当日。

このままランが助けに来なかったら命運が尽き王子と共に処刑されてしまう。まあその為のこのゴールドカード。


「ほら早く寝てしまえ! 」

素っ気ない太郎王子。

「ねえ王子。最後の夜なんですから楽しみませんこと? 」

「誘っているのか? ははは! 興味ない! 」

まったくこっちから誘っているんだから応じるのがマナーってものじゃない。断るなんて失礼しちゃう。

「王子どうしもダメですか? 」

「ふん! 興味ない! それに我は明日果てる身。巻き込んだのは済まないと思っているがだからと言ってそのようなはしたない真似できるか! 」

「太郎! 」

「だから! いやいい。好きに呼ぶがいい」

太郎の態度が軟化した。


「ねえ太郎…… 」

「うるさい! 眠れないだろうが! 」

しつこくし過ぎたせいで太郎は怒ってしまった。

「ふふふ…… 」

「何をする! それ以上近づいてみろ。許さんぞ! 」

「さあ! 」

「止めろ! 」

「さあ! さあ! 」

「止めてくれ! 」

太郎の顔が目の前に。

太郎は焦らすように後ずさり。

「太郎! 」

「うおおお! 止めてくれ! 」

高潔な太郎に迫る罪をお許しください。


ここは狭い牢屋の中。もうこれ以上は後がない。

太郎に迫る。

「ねえ太郎! 」

「止めて…… 」

ついに太郎の唇を奪う。

強引な展開。

でも出来たら太郎の方からやって欲しかった……

最初は強く長く。

諦めた太郎を見計らって優しくゆっくりと。


はあはあ
はあはあ

「何を…… 」

太郎は落ちた。そして涙する。

私を思い出し懐かしくて泣いたのか?

ただ抑え込んでいた感情が爆発したのか?

過去の辛い記憶に苛まれて涙が止まらないのか?

どれであれ太郎の記憶が戻ったのは間違いない。

ランは王子の気持ちを優先しろと言ったけどこの際、少々強引に思い出させるのに躊躇はいらない。


「さあ続きを楽しみましょう。太郎」

「でも…… 」

いくら夜とは言え看守がいる。大胆な行動をとれば気づかれてしまう。太郎はそのことが気にかかるようだ。

そんな些細なこと気にする必要ある? もう私たちには明日は無いのよ。

「太郎…… 」

こうして夜は更けていった。

もちろんランが戻ってくることは無かった。


ついに処刑の朝を迎える。

二人に明るい未来は残されているのか?

               続く
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