ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ

二廻歩

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地下牢

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ランと闇夜の散歩に出かける。

屋敷の奥の離れと呼ばれる場所へ。

さらにそこを抜けるとぽつんと明かりが灯った地点。

僅かながら鳥の鳴き声が漏れる。どうやら鶏小屋らしい。夜も更けたと言うのにまだ起きている?

まさかこんなところに卵を盗みに来たはずもなく……
 
「ほらもう少しだから」

ランは鶏小屋に一体何の用が?

鶏たちが侵入者に気付き騒ぎ出した。

「ほら餌よ。静かに! 」

騒ぎになって気づかれては元も子もない。黙らせるラン。

まあ多少うるさくても問題はないが……

「さあ急いで! 」

鶏小屋の奥に地下へ降りる階段が隠されていた。

音を立てないようにゆっくりと降りて行く。


「静かに! 」

夜は見張りが極端に少ない。地下牢は限られた者にしか知られていない。

そうすることによって欺いた訳だが逆に狙われては意味がない。

厳重にすれば疑われる。だからあえて何も無いように警備は最小限。

そのため侵入は容易。

地下牢の音は外に漏れないから一旦中に入ってしまえばこっちのもの。仮に戦闘になっても応援も来ない。

地下牢の見張りは二人。ここまではランが調べてくれた。

さあもう少し。


「ふあああ! まったく交代はまだかよ」

「あと三十分しないと来ないさ」

「えーまだかよ? 冗談じゃない! こんなとこ誰が来るってんだ! まったく何やってんだか」

「そうだな。俺たち本当に意味あるのか分からなくなってくるぜ」

見張りは集中力を切らしている。今がチャンス。


ランが何かを投げ捨てる。

バンバン
バンバン

破裂音と共に光が走る。

「おい! 変な音がしなかったか? 」
 
「こっちだ! 」

暗闇にライトを持った男たちが走ってきた。

光が向けられる。

「はーい」

挨拶を交わす。

「お前! どこから…… ううっ」

暗闇からランの一撃。一人がノックアウト。もう一人は牢の方に逃げ帰る。

そこへすかさず何かを投げつけるラン。

「ヒット! 」

倒れて痛がっているところにロープでぐるぐる巻き。手際がいい。

特に手伝うことなく一人で邪魔者を排除。恐るべき刺客。ああ味方で良かった。敵に回すと厄介。

見張りを封じ脅威は取り除かれた。

「さあこれでコンプリートよ。もうそろそろ私を信じたら? 」

ランと手を組む。


「ではそのゴールドカードを渡してもらいましょうか」

「あなた一体…… 」
 
「それは私が依頼したもの。届けてくれてどうも」

今これを渡せばそのまま逃げられる恐れもある。簡単には渡せない。

彼女が必要だと言うならきっと私にも役立つに違いない。最後の切り札を切るのは愚かな行為。

「どうしたの? 」

「それが…… 」

「信用できないの私のこと? 」

悪い人じゃないと思うけど会ったばかりの人をどこまで信用できるか?

確かに敵ではない。だからと言って相手の思い通りに渡すのも間違っている。

「もう分かったわよ。好きに持ってなさい! その代り絶対落とさないこと。良いわね? 」

ランの方が折れる。

「使い方は分かる? そうそう空に向けて高く掲げる。それから合言葉『新世界へ』を忘れないこと」

「はい…… 」

「必要になったらちゃんと掲げるのよ! いい分かった? 」

「はあ…… 」

いまいち分からない。

「さあ。では王子の元へ急ぎましょう。ぐずぐずしていると仲間がやってくるわよ」

ここは大人しくランに従う。


すぐに小さな光が見えた。

作りから言ってもここが地下牢。太郎が閉じ込められているに違いない。

「さっきからうるさいなあ! 何かあったのか? 」

地下牢から男の声。間違いない太郎だ。

太郎がいる。もうすぐ太郎に会える。

今までの苦労が報われるときがやって来た。

夢ではない。太郎に会える! 太郎と話せる!


「王子! お助けに参りました」

「その声はランではないか。良くここが分かったな」

「はい。随分と苦労しましたよ。もう何日になりますか…… 」

「あの…… 」

長くなりそうなので割り込む。

「うん。そこにもう一人いるのか? 」

「王子! お久しぶりです」

捕まっているとはいえ王子。ド・ラボーとして失礼の無いようにする。

「うん? 誰だ? 顔を見せてみよ」

まったく太郎の癖に上からの物言い。引っ叩きたくなる。
 
「誰だお前は? 」

「太郎。太郎王子! 私です。助けに参りました」

ようやく待ちに待った再会の場面。

しかし太郎の様子がおかしい。

               続く           
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