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国王激怒! 魔王からの手紙
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訳も分からずに留守を押し付けられ何が何やら……
日が変わる頃。母と姉らしき人物が帰ってくる。
「ああもうダメ! 」
機嫌が悪い。酒に呑まれてしまったようだ。
「あの王子ったら若い子にばかり目が行っちゃってさ…… 最低! 」
「惜しいわね。私もあと少し若ければ。残念! 」
「お母さま…… 」
酔っぱらいの戯言にいちいち付き合ってられない。
「留守番ありがとう。何かあった? 」
「異常ありません」
余計な心配をかけたくない。魔女が来たことは黙っていよう。
「そうだツンデッラ。明日これを宮廷に届けてもらえないかしら」
そう言うと金色に光るカードを渡される。
「これは何? 」
「いいから! 渡してくれればそれでいいの」
酔っぱらっていて要領を得ない。
「へへへ…… おやすみなさい」
そのまま眠ってしまった。お酒が堪えたようだ。
夜明け前に家を出る。
「お母さま行ってきます! ほんの少しの間でしたけど楽しかったです」
ぐっすり眠っている母には聞こえるはずもないが感謝の言葉を述べ家を出る。
宮廷へ。
宮廷。即ち太郎が囚われているところ。もうすぐ。もうすぐよ! 胸が高鳴る。
イーチャットか……
幼い頃は随分と悪さをしたもの。当時の記憶はあまりないけどまあ自慢できるようなことは一つもない。
それにしても随分ここも変わった気がする。馬車も人もあまり見かけない。目につくのはカブだけ。
うーん。気持ち悪い。空気も汚れている。天気だって良くない。どんよりしていて嫌な感じ。
魔王城の宝箱から使いきれないほどの金貨を手に入れていた。もちろん皆と山分けした結果だけど。
それでも困ることはない。食事にも服にも装飾にも使いきれないほど。資金の心配はない。
他国とは比べものにならないほどの発展を遂げたお洒落な町イーチャット。
今向かってる宮廷にはどれほど物があるか見当もつかないが何が隠されていても不思議ではない。
そう言う意味でも興奮する場所。まあ今回はそんな暇ないけれど。
ちょうどいい具合にカブを発見。
カブは自動なので楽でいい。行先を念じると連れて行ってくれる優れもの。
ただしよからぬことを考えていると動かない。そこだけは注意する必要がある。
太郎奪還もよからぬことの一つ。悟られないように気をつける。
宮廷まで超特急。さあ上手く国王の所まで……
「おい! 」
やはり警備は厳重。出入り口で止められてしまう。
「怪しい奴め! 」
一人二人三人と集まってくる。
「国王様にお届け物です」
「はあ? 嘘を吐くな! 」
早朝に訪ねる非常識な者には手厳しい。
「いい加減にしろ! 誰が信じるか! 」
ここで押し問答してる時間はない。
カードを見せる。
金色に輝くカード。どうやら家宝らしいのだが詳しく聞く暇もなかった。
「これを王様が? 確認させてもらう。そこで待ってろ! 」
「急いで! こっちも予定があるんですから! 」
「うるさい! 下手な真似をするな! 命はないぞ! 」
「はいはい」
取り次いでもらうが忙しいと拒否。
仕方がなく勝手に中へ。
「おいふざけるな! 」
押し問答の末にお目通りが叶う。
謁見。
国王が姿を現した。
「どうした無礼者よ? 」
「お届けものです」
「今は明日の準備で忙しい。また日を改めてくれぬか? 」
「それは困ります! すぐに済みますので」
「分かった。分かった」
「これをお納めください」
ゴールドカードを渡す。
「何じゃこれは? 」
国王は身に覚えがないと言う。困った人。
「これを…… うーん。要らぬわ」
元も子もないことを言う。
「しかし…… 」
「要らんと言ってるだろう! 」
どうやら手違いらしい。
「ではこれなどいかかがでしょう」
もちろんこんな時の為に代わりを用意している。
「どうぞお受け取りください! 」
「ううん? 何じゃそれは? 親書? 」
魔王からの手紙を渡す。
『この者の安全を保障せよ! さもなくばどうなるか分かるな? 』
魔王による脅し文句が書かれていた。脅迫状? 挑戦状?
魔王は私の為に一肌脱いでくれた。
まさかただの挑戦状なんて思わなかった。
「何だこれは? 冗談のつもりか? 」
「その…… 卑しき身分ゆえ分かりかねます」
「ふざけるな! こんなもの! 」
国王は怒りに任せてビリビリに破いてしまう。
これは非常にまずい展開。
国王の怒りを鎮めなくては私の身が危ない。
魔王ったら…… もうせっかくの親書も逆効果じゃない。
続く
日が変わる頃。母と姉らしき人物が帰ってくる。
「ああもうダメ! 」
機嫌が悪い。酒に呑まれてしまったようだ。
「あの王子ったら若い子にばかり目が行っちゃってさ…… 最低! 」
「惜しいわね。私もあと少し若ければ。残念! 」
「お母さま…… 」
酔っぱらいの戯言にいちいち付き合ってられない。
「留守番ありがとう。何かあった? 」
「異常ありません」
余計な心配をかけたくない。魔女が来たことは黙っていよう。
「そうだツンデッラ。明日これを宮廷に届けてもらえないかしら」
そう言うと金色に光るカードを渡される。
「これは何? 」
「いいから! 渡してくれればそれでいいの」
酔っぱらっていて要領を得ない。
「へへへ…… おやすみなさい」
そのまま眠ってしまった。お酒が堪えたようだ。
夜明け前に家を出る。
「お母さま行ってきます! ほんの少しの間でしたけど楽しかったです」
ぐっすり眠っている母には聞こえるはずもないが感謝の言葉を述べ家を出る。
宮廷へ。
宮廷。即ち太郎が囚われているところ。もうすぐ。もうすぐよ! 胸が高鳴る。
イーチャットか……
幼い頃は随分と悪さをしたもの。当時の記憶はあまりないけどまあ自慢できるようなことは一つもない。
それにしても随分ここも変わった気がする。馬車も人もあまり見かけない。目につくのはカブだけ。
うーん。気持ち悪い。空気も汚れている。天気だって良くない。どんよりしていて嫌な感じ。
魔王城の宝箱から使いきれないほどの金貨を手に入れていた。もちろん皆と山分けした結果だけど。
それでも困ることはない。食事にも服にも装飾にも使いきれないほど。資金の心配はない。
他国とは比べものにならないほどの発展を遂げたお洒落な町イーチャット。
今向かってる宮廷にはどれほど物があるか見当もつかないが何が隠されていても不思議ではない。
そう言う意味でも興奮する場所。まあ今回はそんな暇ないけれど。
ちょうどいい具合にカブを発見。
カブは自動なので楽でいい。行先を念じると連れて行ってくれる優れもの。
ただしよからぬことを考えていると動かない。そこだけは注意する必要がある。
太郎奪還もよからぬことの一つ。悟られないように気をつける。
宮廷まで超特急。さあ上手く国王の所まで……
「おい! 」
やはり警備は厳重。出入り口で止められてしまう。
「怪しい奴め! 」
一人二人三人と集まってくる。
「国王様にお届け物です」
「はあ? 嘘を吐くな! 」
早朝に訪ねる非常識な者には手厳しい。
「いい加減にしろ! 誰が信じるか! 」
ここで押し問答してる時間はない。
カードを見せる。
金色に輝くカード。どうやら家宝らしいのだが詳しく聞く暇もなかった。
「これを王様が? 確認させてもらう。そこで待ってろ! 」
「急いで! こっちも予定があるんですから! 」
「うるさい! 下手な真似をするな! 命はないぞ! 」
「はいはい」
取り次いでもらうが忙しいと拒否。
仕方がなく勝手に中へ。
「おいふざけるな! 」
押し問答の末にお目通りが叶う。
謁見。
国王が姿を現した。
「どうした無礼者よ? 」
「お届けものです」
「今は明日の準備で忙しい。また日を改めてくれぬか? 」
「それは困ります! すぐに済みますので」
「分かった。分かった」
「これをお納めください」
ゴールドカードを渡す。
「何じゃこれは? 」
国王は身に覚えがないと言う。困った人。
「これを…… うーん。要らぬわ」
元も子もないことを言う。
「しかし…… 」
「要らんと言ってるだろう! 」
どうやら手違いらしい。
「ではこれなどいかかがでしょう」
もちろんこんな時の為に代わりを用意している。
「どうぞお受け取りください! 」
「ううん? 何じゃそれは? 親書? 」
魔王からの手紙を渡す。
『この者の安全を保障せよ! さもなくばどうなるか分かるな? 』
魔王による脅し文句が書かれていた。脅迫状? 挑戦状?
魔王は私の為に一肌脱いでくれた。
まさかただの挑戦状なんて思わなかった。
「何だこれは? 冗談のつもりか? 」
「その…… 卑しき身分ゆえ分かりかねます」
「ふざけるな! こんなもの! 」
国王は怒りに任せてビリビリに破いてしまう。
これは非常にまずい展開。
国王の怒りを鎮めなくては私の身が危ない。
魔王ったら…… もうせっかくの親書も逆効果じゃない。
続く
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