ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ

二廻歩

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人違い 怪しげな夜の訪問者

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ざわざわ
ざわざわ

大勢の村人が集まって何か騒いでいる。

「この人は大丈夫かいな? 」

「今お医者様をお呼びしています」

「うん…… あれまったくはしたないったらありゃしない! 」

「ほら起きて! 風邪ひくわよ! 」

「お嬢さん大丈夫。頭でも打ったのかい? 」


「あの…… 」
 
ようやく女の素性が知れる。

「すいません。うちの娘なんです」

「へえ。あんたんとこの。それはそれは誰か手を貸してあげて! 」

「ほら行くわよ! 」

意識を失った少女は母と思しき女に連れられて帰って行く。

疲れ果てた少女は目を開けることなく眠り続ける。まるで眠り姫のように。


夕方。

うーん。いつの間にか眠ってしまったようだ。

あれここは? 一体何が……

ベットに寝かされていた。

ここはどこ? 私は確か……
 
「ああ。ようやく気が付いたか。もう世話が焼けるんだから! 」

「はあ…… 」

「私はこれから出かける。あんたは大人しく留守番してるんだよ! 」

「ちょっと待って! あなたは? 」

「何ふざけてるのさ! 母さんだろ。頭でも打ったのかい? 」

「母さん? 私に母はいませんが。天涯孤独の身。母どころか親戚さえいません」

「まあ確かに血は繋がってないがね。そんな嫌味言わなくたっていいだろう! 」

母と名乗る人物にまったく心当たりがない。

「私には本当に母はいません。あなた誰ですか? 」

「もうふざけないのツンデッラ! あんたの母だろ」

「ええ? 私はステーテルですけど…… 」

「はいはい。いいから留守番よろしくね」

勝手に留守を押し付けられる。


特にやることもないのでボーっと過ごす。

ここはどこなの? 確かガムと別れてからの記憶が無い。

まさか勝手にここまで歩いて来たとか? 何だか自分が信じられなくなっている。

私ステーテルよね? 自問自答。

あのおばさん勘違いしてるみたい。かわいそうに。そうすると私によく似た女の子がいるってこと?

その子は今どこに? もうさっぱり分からない。

まあいいか。それよりも太郎だ。


トントン
トントン

ドアを叩く音。

「はい」

「夜分に申し訳ない。あの寄付をお願いしたいんだがね」

紫のマントを着た怪しげな訪問者。魔女なのだとか。

留守を預かっている身。追い返すわけにもいかない。

銀貨を一枚。


「ありがとうよ。そうだあんたは今晩の舞踏会に参加しないのかい? 」

「舞踏会? 王子様? 」

「そうだよ。確か第二王子のお相手を決めるって話だよ」

「はあ…… 間に合ってます」

「あんたの姉さんもなぜか母さんまで参加するらしいよ。あんたもどうだい? 」

「関係ありません。留守番係ですのでそれでは」

「もう! うじうじと。本当は行きたいんだろ? 」

「いいえ」

「嘘ばっかり! ほらカボチャも用意してあるよ」

「カボチャきらい! 」

野菜の中でもカボチャは大の苦手。あの見た目がどうも受け付けない。

「やせ我慢は体に良くないよ。ほらこのネズミもサービスだ」

「きゃああ! 」

何の嫌がらせ? ネズミを放つなんてイカレテル。子供じゃないんだから本当にもう!

「あれ? 家を間違えたかね…… 」

「迷惑です。お引き取りを! 」

「あんたツンデッラ? ツンデッラだろ? 」

「いいえ! 私はステーテルです。ド・ラボーのステーテルです! 」

「ハア頑固だね。ならこれでどうだい」

ステッキを振る。

そうするとボロボロの服が煌びやかドレスに変身。ついでにガラスの靴まで。何と気前の良い。

「さあ舞踏会に行くといい。王子が待ってるよ」


「ちょっと待って。太郎…… 第三王子は今どこに? 」

「はあ? それはもちろん牢屋の中だろ。あんな大それたことしたんだからね」

「牢屋って? 」

「それは王家の地下牢。そこにに閉じ込められてるはずさ。でも明後日の朝には処刑されるって話だよ。怖いね」

有力な情報を得る。


「ありがとうございます」

「いやそれより舞踏会はどうするね? 」

「はあ? しつこいですよ! 」

「いやだからこの後のお話が…… 」

「お帰り下さい! 」

「続かないって! おーい! 」

追い返す。


まったく何なのあの人? 

まあ太郎の居所が分かったんだからよしとしよう。

                  続く
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