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別れの儀式
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ゴーン
ゴーン
日暮れの鐘が鳴り響く。
何だちゃんと動いてるじゃない! 魔王の早とちりだったみたいね。
扉を開くと大勢の男たちが列をなし祝福する。
「よくやった! 」
「スティ―! 信じてたよ」
「ステーテル! 」
「スティ―! 」
「ありがとう…… 皆! 」
魔王城から無事脱出できた者はいないと言われている。
難攻不落の魔王城からの帰還者四名。祝福の拍手も尊敬の眼差しも絶えない。
人の手で作られたアーチを潜り、喜びをかみしめてゆっくり歩く。
そこを抜けるとガムの姿があった。
「ガム…… 」
「ステーテル。本当にご無事で…… 」
「ガム! 私…… 」
「ステーテル! いいんです。何も言わずともすべて分かっております」
二人は強く抱き合った。
そして人目も憚らずにきつく抱き合い泣き合った。
「ガム! 」
どれだけの時間が経っただろう? 随分長く抱擁していた気がする。
「もうそれくらいで。さあ参りましょう」
ガムの方が我慢できずに離れる。
「そうね。時間が無いんだったわ。太郎を探さなくちゃ」
その前に…… ナイトたちへの礼を述べる。
「ありがとう皆。助けてくれて本当にありがとう! 」
「うおおお! 」
「スティ―! 」
「スティ―! 」
大合唱。盛り上がりは最高潮。
「では皆さん列になって下さい」
ガムの号令で今度は一列になるナイトたち。
「さあけじめです。ステーテル」
「何それ…… 」
「良いですか。この方たちはあなたのことを想い駆けつけたのです。気持ちに応えないなどド・ラボーとしてあるまじき行為。さあ一人ずつ気持ちを伝えてきてあげて下さい」
ガムに言われるまま一人目。
「我はコンプラ王国第一王子。先日は第五王子の件で世話になったな」
「あなたもいらしていたのですか? 」
「ああ。ド・ラボーのピンチに駆けつけるのは当然のこと」
「ありがとう王子。そしてごめんなさい」
「ええっ? 」
呆然とする王子。
「ほら分からせてあげて下さい。これもあなたの役目ですよ」
ガムが指示を送る。
まさかそんなことできる訳ない…… ガムったら……
「早くお願いします。後がつっかえていますので」
バチン!
豪快に頬を張る。
「ごめんなさい! 」
「では次の方! 」
「ステーテル。今度こそは応えてくれるよね? 」
サンスリン様の姿があった。一瞬ためらったものの決意は固い。
「ごめんなさい! 」
「何するんだ! それはないだろ! 」
「ほら困っているだろサンスリン! 」
「兄上…… 」
エルス様の姿があった。
「どうだいステーテル。また一緒に汗を流さないか? 」
独特の誘い文句。
「ごめんなさい! 無理です! 」
往復ビンタで沈める。
でもこれで本当に良かったのかしら……
続けて王子たちを拒絶。
「我は…… 」
「ごめんなさい! 」
「ステーテル! 我が妃になってくれぬか? 」
「お断りします! 」
バチン!
「我は…… 」
パチン!
「さあいざ進まん! 」
「勝手に一人でどうぞ! 」
ピンタをお見舞い。
「我…… 」
ギャン!
「我と…… 」
ギャン!
「ワレワレハ…… 」
「故郷にお帰り下さい! 」
往復ビンタで応える。
「あらあら余計なものまで混じっていたみたいね」
「ガムもういいでしょう? 」
「もう少々我慢して下さい」
突き放すガム。
「もう鬼なんだから。手も胸もこんなに痛いのに」
「ステーテル! どうだもう一度? 」
乱射王子が迫る。
「まったくあんたは! お世話になったから優しくしてあげる」
パチ
乱射王子無念散る!
「俺もいいか? 」
「あなた誰だったけ? 」
「それはないよ! 王子の付き添いのタレイだろうが。覚えておけよな! 」
「はいはい。次は絶対忘れないわ」
「なあどうだ俺と…… 」
「さようなら」
こういう時は思いっきり引っ叩くに限る。
まだ他には?
バチン!
「うおおお! 」
ドッドが吹っ飛んだ。
「俺も入ってたの? 」
「諦めてねドッド。思い出のスティ―はここには居ません」
「格好つけるね。まあいいや」
「はい。ご苦労さま。最後までよく頑張りましたねステーテル」
顔を腫らす王子またはナイトの面々。
「ではそろそろ行きましょうか」
「うん! 」
改めて皆に向き直る。
「ありがとう皆さん。この御恩は一生忘れません! 」
最後の挨拶を済ませ魔王城を後にする。
続く
ゴーン
日暮れの鐘が鳴り響く。
何だちゃんと動いてるじゃない! 魔王の早とちりだったみたいね。
扉を開くと大勢の男たちが列をなし祝福する。
「よくやった! 」
「スティ―! 信じてたよ」
「ステーテル! 」
「スティ―! 」
「ありがとう…… 皆! 」
魔王城から無事脱出できた者はいないと言われている。
難攻不落の魔王城からの帰還者四名。祝福の拍手も尊敬の眼差しも絶えない。
人の手で作られたアーチを潜り、喜びをかみしめてゆっくり歩く。
そこを抜けるとガムの姿があった。
「ガム…… 」
「ステーテル。本当にご無事で…… 」
「ガム! 私…… 」
「ステーテル! いいんです。何も言わずともすべて分かっております」
二人は強く抱き合った。
そして人目も憚らずにきつく抱き合い泣き合った。
「ガム! 」
どれだけの時間が経っただろう? 随分長く抱擁していた気がする。
「もうそれくらいで。さあ参りましょう」
ガムの方が我慢できずに離れる。
「そうね。時間が無いんだったわ。太郎を探さなくちゃ」
その前に…… ナイトたちへの礼を述べる。
「ありがとう皆。助けてくれて本当にありがとう! 」
「うおおお! 」
「スティ―! 」
「スティ―! 」
大合唱。盛り上がりは最高潮。
「では皆さん列になって下さい」
ガムの号令で今度は一列になるナイトたち。
「さあけじめです。ステーテル」
「何それ…… 」
「良いですか。この方たちはあなたのことを想い駆けつけたのです。気持ちに応えないなどド・ラボーとしてあるまじき行為。さあ一人ずつ気持ちを伝えてきてあげて下さい」
ガムに言われるまま一人目。
「我はコンプラ王国第一王子。先日は第五王子の件で世話になったな」
「あなたもいらしていたのですか? 」
「ああ。ド・ラボーのピンチに駆けつけるのは当然のこと」
「ありがとう王子。そしてごめんなさい」
「ええっ? 」
呆然とする王子。
「ほら分からせてあげて下さい。これもあなたの役目ですよ」
ガムが指示を送る。
まさかそんなことできる訳ない…… ガムったら……
「早くお願いします。後がつっかえていますので」
バチン!
豪快に頬を張る。
「ごめんなさい! 」
「では次の方! 」
「ステーテル。今度こそは応えてくれるよね? 」
サンスリン様の姿があった。一瞬ためらったものの決意は固い。
「ごめんなさい! 」
「何するんだ! それはないだろ! 」
「ほら困っているだろサンスリン! 」
「兄上…… 」
エルス様の姿があった。
「どうだいステーテル。また一緒に汗を流さないか? 」
独特の誘い文句。
「ごめんなさい! 無理です! 」
往復ビンタで沈める。
でもこれで本当に良かったのかしら……
続けて王子たちを拒絶。
「我は…… 」
「ごめんなさい! 」
「ステーテル! 我が妃になってくれぬか? 」
「お断りします! 」
バチン!
「我は…… 」
パチン!
「さあいざ進まん! 」
「勝手に一人でどうぞ! 」
ピンタをお見舞い。
「我…… 」
ギャン!
「我と…… 」
ギャン!
「ワレワレハ…… 」
「故郷にお帰り下さい! 」
往復ビンタで応える。
「あらあら余計なものまで混じっていたみたいね」
「ガムもういいでしょう? 」
「もう少々我慢して下さい」
突き放すガム。
「もう鬼なんだから。手も胸もこんなに痛いのに」
「ステーテル! どうだもう一度? 」
乱射王子が迫る。
「まったくあんたは! お世話になったから優しくしてあげる」
パチ
乱射王子無念散る!
「俺もいいか? 」
「あなた誰だったけ? 」
「それはないよ! 王子の付き添いのタレイだろうが。覚えておけよな! 」
「はいはい。次は絶対忘れないわ」
「なあどうだ俺と…… 」
「さようなら」
こういう時は思いっきり引っ叩くに限る。
まだ他には?
バチン!
「うおおお! 」
ドッドが吹っ飛んだ。
「俺も入ってたの? 」
「諦めてねドッド。思い出のスティ―はここには居ません」
「格好つけるね。まあいいや」
「はい。ご苦労さま。最後までよく頑張りましたねステーテル」
顔を腫らす王子またはナイトの面々。
「ではそろそろ行きましょうか」
「うん! 」
改めて皆に向き直る。
「ありがとう皆さん。この御恩は一生忘れません! 」
最後の挨拶を済ませ魔王城を後にする。
続く
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