ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ

二廻歩

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魔王の子は魔王

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王子を人質に脱出を図るが……

「好きにするといい。この子ももう子供じゃない」

冷たく切り捨てる。

魔王と王子は親子のはず。なぜここまで非情でいられるのか。もしかして読み誤った?

「どうしてそこまで冷静でいられるわけ? 王子が可愛くないの? 」
 
「ふふふ…… こういうことさ! よく見てるんだな! 」

王子の様子がおかしい。

「あの…… 大丈夫…… 」

王子は突然暴れ出し姿を変える。

変身した王子は魔王そっくり…… いえ魔王そのものだ。

ただ唖然とするばかりでどうすることもできずに立ち尽くす。


「これがこの子の本当の姿さ。どうだ醜いだろう? あんなに可愛く聡明で従順な我が王子の正体がこうなのだ。
こうなってしまえばもう一人前の魔王。誰の言うことも聞かない魔王様の誕生だ。さあ完全に変身する前に元に戻してやらなくては。まだ辛うじて理性がある。私の命令も聞くはずだ」


まさか…… 驚いたなんてものじゃない。ただの情けない王子があの魔王に変身するなんて。

「どうだ? 」

「ホホホ…… なかなか面白いじゃない…… 」

「そうか? 余裕だな。だが顔が引きつっているぞ」

魔王によって元の姿に戻った王子。

「さあもうそれくらいでいいだろ? 王子を放してやってくれないか」

魔王は怒ることもなく疲れたと言って退出。遅れて王子もどこかへ行ってしまった。


危ない。危ない。魔王の逆鱗に触れるところだった。

ただこの親子の秘密に迫ったのは収穫かもしれない。

まさかあの少年のような王子が魔王の姿に変身するなんて。危うく殺されるところだった。

王子があれほどの変身を見せると言うなら魔王自身もどうなってもおかしくない。

見た目に騙されてはいけない。それどころか私たちの常識に囚われては痛い目を見る。

やっぱり自力での脱出は無理かもしれない。ここは大人しく助けを待つしかなさそう。


あれ何これ?

体中が震える。どうしちゃったんだろう?

震えが止まらない。

恐怖体験。

あー怖かった。


外。

壁を登って最上階の窓を目指す。

ちっとも進まない。ちょっと上に登れたと思ったら力尽きて元の地点へ。

それを何度も繰り返す。未だに二階にさえ到達していない。

作戦失敗。


次の手を打つ。ここは正攻法で。

壁に窓とあらゆるところを叩く。もちろん壊すわけではない。

そもそも壊そうと思って壊せるものではない。

皆が協力してことに臨む。

「どうだ? 」

「ダメです。反応がありません」

やっぱり…… こうなったら最後の作戦。


「火事だ! 火事だ! 逃げろ! 」

「お届け物です! 」

「壁が壊れてます。修理させてください! 」

「おすそ分けに来ました」

「道に迷っちゃった。一晩泊めて! 」

ダンダン!
ダンダン!

騒ぎ立てるが反応が無い。

口々に言うものだからまとまりがなく案の定すぐに見破られてしまう。


「ダメか…… 上手く行くと思ったのにな」

「本気? いえ正気なの? 」

「嫌味を言うなよガム。仕方ないだろ? これくらいしか思い浮かばなかったんだから」

「まったく本当に困った人たち」

「ははは! 」

「笑ってる場合じゃないでしょう! 」

最後の作戦も不発。

「魔王も笑ってるじゃない。馬鹿にされてるのよ。即刻中止よ! 」

ガムの一言で我に返るドッドたち。


「くそ! いい考えだと思ったのになあ…… 」

「考えは悪くないけどあからさまだし何より魔王から見えるんだから通用する訳ないでしょう! 」

「ううう…… 何も言えねい」

皆黙ってしまう。

「さあ皆。落ち込んでる暇はないわ。次の手を考えましょう」

難航不落の魔王城。人間如きでは所詮無理なのか?


あっと言う間に昼は過ぎ去り夕方に。

まずい! まずい! まず過ぎる!

焦りが団結を乱す。

「これは? 」

「ダメだって! 」

「無理だよ! 」

「そうかあな…… 」

「いい加減にしろ! 」

もうお手上げ状態。これでは付け込まれてしまう。

と言うか時間がどんどん無駄に消費されていく。

どうしたらいいの? もう手に負えない。


あと二時間で約束の時間だ。

再び話し合い。しかし話は一向にまとまらない。

このまま魔王に屈するのか?

ここに来て疲れがピークに。団結も薄れる。

もう本当にどうしたらいいのか分からない。

ぎりぎりの状態。

                     続く
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