ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ

二廻歩

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新手 昨日の味方は今日は敵

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困った…… ローパーがあっても肝心のおやじがいない。

どうしてこうもタイミングが悪いのか?


「おいまだか? 」

何と王子はローパーの動かし方が分かるらしい。ここのおやじがやっているのをよく見ていたのだろう。

まったくガキは何にでも興味を示すから困ったもんだ。まあ今回は助けられたがな。

手際がいい。これは行けるか?

「ダメだ! 」

二度三度繰り返すが動かない。

王子は諦めてしまった。

もう少しのところだったのに。まあガキなんだからしょうがないさ。


「どうした? 」

「鍵が無い。どうして鍵が無いのだ? 」

「うん? 」

管理人のおやじが持ち歩いている鍵が無くては動かないらしい。

嘘だろ? 上手く行くと思ったのに。くそ!

やはり歩くしかないか。ああやってられない。

別に歩いたって構わない。王子が疲れたと言えばまた背負えばいい。

体力は問題ない。だが登山では目立ってしまう。

追手を撒いたとは言えどこにいるか分からないのだ。できれば目立ちたくない。

「くそ仕方がない! 行くぞ! 」

迷ってる暇はない。王子を連れて山登り開始。


「おーい! おーい! 」

うん? 呼んでいる?

「おーい! 待ってくれ! 」

管理人のおやじだ。

「やはり王子様でしたか」

息を切らして辛そうだ。無理して走らなくても聞こえてるって。


「さっそく動かしましょう」

ローパーに取り掛る。これで無事に王子を送り届けることができる。

「では王子様乗ってください」

「遅いぞおやじ! 」

「あんた誰? まあいいや。乗った! 乗った! 」

このドッド様を知らないなんてふざけたおやじだ。


ローパーに乗り込もうとした瞬間あることに気付く。

あれちょっと待てよ? もし王子が誘拐されたとすれば今でも血眼になって探してるよな。

俺は裏切ったとはいえまだハッシャだ。信じてくれるだろうか?

いくら連れ戻したと主張してもこの王子が知らないとでも言ったら殺されちまうのでは?

話が通ってる訳もないしなあ…… うーん不安だ。


殺気?

「現れやがったな! 」

あともう少しのところでまったく……

「王子! 俺が食い止める! 早く行くんだ! 」

「これはこれはドッド。王子をどうする気だい? 」

「兄貴! まさか俺らを裏切るんですか? 」

昨日の仲間は今日は敵。やってられねえ。


「おーい」

「待つな! 急げ! 早くしろ! 」

王子はローパーに乗り込んだ。後は動かすだけ。

だが管理人のおやじがもたつく。

「こっちだったかな。いやこっちか」

焦るあまり鍵が見つからないとは情けない。

「あったこれだ。うわわ! 」

鍵を落としてしまう。

「何やってんだ! こんな大事な時に! 」

「おいお前ら! これを動かさせるんじゃねえぞ! 」

「ヘイ! 」

「来るな! 来るんじゃねえ! 」

必死に食い止めようとするが数が違い過ぎる。


「ドッドどうした? かかって来いよ! 」

横をすり抜けた奴らがローパーの前に立ちふさがる。

これでは動かせない。

「いいから早く行け! 」

邪魔者を蹴散らせてでもローパを動かすしかない。多少の犠牲は仕方がない。

鍵を掴んだ管理人が最後の仕上げに入る。

しかし一歩遅かった。

囲まれてしまった。もう降参するしかない。


「待ってくれ! 私は関係ない。ただ言われた通りに動かそうとしただけだ! 」

管理人は命乞いをする。

「へへへ…… 」

「ドッドさんはどんな言い訳してくれるのかな」

ローパ―が動かされることはなかった。王子も無理矢理降ろされる。

「くそあと一歩だったのに! くそ! くそ! 」

諦めるしかない。


裏切者の末路は悲惨なもの。それは良く分かっていた。

でもどうしてもスティ―に協力したかった。昔の仲間を見捨てられなかった。

たとえ裏切り者と罵られようと。自分が選んだ道。後悔はない。


「王子様はこちらへ。丁重に扱わないといけませんのでね」

ヤア! ヤア!

突如雄たけびと共に馬が駆け降りてきた。

「何だ? 何だ? 」

呆気にとられる面々。

「何だ? 何だ? 何が起きた? 」

馬は少なくても五頭。

山の上からやって来たと言うことはコンプラ王国の部隊に違いない。


「ヤア! ヤア! 」

援軍の到着。

助かった……

「まずいぞ! ここは一旦引け! 」

ハッシャたちは逃げ帰る。

こうして危機は脱した。

ふう助かったぜ。これで拷問されずに済んだ。

                続く
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