ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ

二廻歩

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発進! 空飛ぶ馬車はどこまでも

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「さあ勇者よ。魔王城はすぐそこだ! 」

どうしても魔王城に行かせたいらしい。

ガムが睨む。

「まったく分かったよ…… 」

渋々応じる男。

「これがお望みなんだろう? 」

空飛ぶ馬車。


「それでお幾ら? 」

「ははは! 払えるのか? 金貨一万枚だ! 」

吹っ掛けるだけ吹っ掛ける。最低な男。

「ちょっとそんなに? 」

「まあ往復の場合はな。もし片道でいいと言うのならもう少し安くしてもいい」

「お願いします」

「ははは! 素直でいい。よし金貨も銀貨も全部出せ! 」

気分を良くした男。このまま上手くことが運べばいいんだけど。

「はいはい」

ここは大人しく従う。

「ついでに荷物とそれから身に着けてる物もだ! 」

強欲過ぎる。

「さあどうした? 」

まったくどう言うつもりかしら? 交渉にもならないじゃない。

ビンタで応じる強気なガム。

「冗談だよ。冗談に決まってるだろ。ははは…… 」

「さあ金を全て出すんだ! 」

言われるまま全財産を渡す。

「まあこんなものか。よし乗せてやる」

これでイーチャットに行ける。と思ったのもつかの間……


「居たぞ! 」

追手! しつこいハッシャの連中が数名。

こんな時に面倒なんだから。

「申し訳ないが一緒に行ってやることはできない」

「分かってますって。とにかく急いでください! 」

「よしじゃあ説明するぞ」

「まず出発っと叫べ。そうすると勝手に動いてくれる」

はあ…… 単純なんだ。

「後は操縦すればいい。簡単だろ? もし何もしないとすぐに墜落だぞ」

フムフム。

「高度を保ちキープと一言。後は目的地に方向を合わせジャンプ。最後に目的地に着いたらストップ。
ここはゆっくりだぞ」

一通り説明を終え繰り返す。

「よしそれから…… 」

「まずい! 追手が来る。後はお願いします」

「おお…… 俺が? 」
 
「出発まで時間を稼いでください。分かりましたね」

「はい…… 」

ガムが有無を言わせない。疲れが顔に現れ迫力が増す。


空飛ぶ馬車に乗り込み手を振る。

「さあ行きますよ! 」

空飛ぶ馬車は前に白い馬のような物体が二体。後ろは大きな丸い箱。

それから……

はあはあ
はあはあ

「こら待て! 降りてこい! 」

ハッシャの連中が騒ぎ立てる。

まったく役に立たたないんだから。


「出発! 」

空飛ぶ馬車はゆっくりと走り出した。

「うわ! 馬鹿野郎! 」

反射的に飛びつく。

「うわああ! 」

スピードを上げ高く舞う空飛ぶ馬車。

堪えられずに落ちていく男たち。

「ご苦労さま」

哀れに落ちていく男たちにせめてもの慈悲を。

空飛ぶ馬車はイーチャットを目指し飛び立った。


「ねえガム大丈夫? 」

「問題ありません」

ガムは教えられた通りに操縦している。

高度は安定。前方に大きな山も見られない。空飛ぶ馬車は順調に飛んでいる。

天気も悪くない。日差しが強いが慣れれば問題ない。

急変しなければいいんだけど。

空飛ぶ馬車はイーチャットへ。


その頃ドッドたちは……

「おい! いつまで寝てるんだ? 起きろ! 起きろ! 」

王子がいくら子供と言っても重い。ずっと背負うのは骨が折れる。

「ほら目を覚ませ! 降りるんだ! 」

無理矢理起こす。

「もう眠いよ…… 」

「嘘を吐け! どれだけ眠ったら済むんだ! 」

「えっとね…… 」

王子を降ろし手をつなぐ。


「まったくお荷物なガキだこと」

「我は王子であるぞ! 」

生意気な口を叩く王子。

我慢できずに大声を出せば見つかってしまう。

「ほらこっちだ! ついて来い! 」


戦況は良くない。スティ―たちと別れてから必死に走った。

ローパーまでは見つからずに何とか済んだ。後はローパーでコンプラ王国へ一っ跳びのはず。

だが肝心のおやじが姿を見せない。

まったくまだ寝ていやがるな!

ローパーさえ動かせれば王子を安全に送り届けられるのに。

ちっとも動きそうにない。

「やってられるか! 」

いじくり回しても意味がないことぐらい分かっている。

歩くしかねいか。


きつい山登り。

「あーあやってられない! 」

「おい! なぜ動かさないのじゃ? 」

「まさか王子。動かし方を知っているのか? 」

「へへへ…… 我を誰だと思っている? 」

「ただのガキだと。しかも寝てばかりの困ったガキかと」

「我の悪口を言うとは無礼な奴め。許さん! 」

「いいから早く動かせ! 」

眠りから覚めた王子の腕の見せ所だ。

               続く
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