94 / 124
突入!
しおりを挟む
イーチャットに戻された太郎王子。
処刑まで残された時間はわずか五日。
太郎待っててね。必ず助けに行くからね。
夜明け前。辺りはまだ真っ暗。
「さあそろそろ支度しろよ」
ドッドが急かす。
「ちょっと待って! あの光は何? 」
ドッドが言うにはこの小屋は隠れ家みたいなものでハッシャの仲間にも知られていない場所。
仮に把握されていたとしても地元の者以外ここを知らないはず。
だからハッシャから裏切り者が出ない限り疑われるはずはない。
そう言う意味ではここは最適な場所。
だがドッドの裏切りを察知されていては無意味だ。
光が揺れる。それも一つや二つではない。
外が騒がしくなってきた。
このまま大人しく夜明けまで待っては危険。
「ドッド…… 」
「済まねえ。俺としたことが…… 」
松明を持った男たちが喚きたてる。間違いなくハッシャの連中だ。
「早く出てこい! 」
「ふざけるな! 」
ばれたようだ。さあどうすればいい? ここに籠城するわけにもいかないし。
光の数がどんどん増えていく。夜明けと同時に突入する考えらしい。
「ほら大人しく降参しろ! 」
脅すだけ脅して決して中に入ってこようとしない。
「くそ! 舐めやがって! 」
「ダメ! もうお終いだわ」
「諦めるなんてスティーらしくない」
「だってもう無理。逃げ切れるわけがない」
「ふふふ…… まあこんな時の為に裏口がある」
「嘘? 」
「ドッド様に抜かりはない! 」
「ドッドあなた…… 」
「あーあ! 仲間はやっぱり裏切れねいや」
意味深な発言。まさか怖気づいた? 確かに今ならギリギリセーフ。
留まるのもドッドの自由。この状況では彼を責められない。
引き渡せば許してもらえるかもしれないのだ。
「そんな顔するなよ。大丈夫だって! 仲間を信じろって! 」
ドッドの励まし。そう彼は昔の仲間。即ち我々に着いたのだ。
「さあ逃げるぞ! 」
投降するわけにはいかない。ここはドッドに任せよう。彼のテリトリーなのだから。
「ステーテル? 」
ガムが異変に気付いた。
「それでは太郎王子はイーチャットに戻ったんですね? 」
ドッドと話し出す。
「交代。夜明けまでもう少しあるので仮眠でもしていてください。私はこの男と話がありますので」
仲間外れになった気分。しょうがないから王子の様子でも見に行きますか。
準備完了。すぐにでもここを抜け出せる。
王子はドッドに任せて太郎を追うことにした。
今太郎はイーチャットにいるらしい。
ドッドの話ではクールシチャット付近に空飛ぶ馬車が置いてあるとのこと。
空飛ぶ馬車。
実際にあるなんて思わなかった。タレイのホラ話だと思っていたがドッドが見ているとなるとほぼ確実。
空飛ぶ馬車で一気にイーチャットまで飛ぶ。
そうすれば少なくても太郎が処刑される前に辿り着くことができる。
危険な賭けだがこのままナナチャットから戻っては絶対に五日以上かかり太郎の命が無い。
どうすればいいかは分からないがもう迷う暇も意味もない。
すぐにでも空飛ぶ馬車を見つけなくては。
でもできればイーチャットにはあまり行きたくないな。随分悪さをしたもの。
松明を持った男たちが前方を包囲し始めた。
もうここも時間の問題。
「よし準備完了。そっちはどうだ? 」
「こちらも問題ありません」
「よし俺はこいつを担いで逃げる」
「気をつけて! 」
「ああそっちもな。俺も王子を送り届け次第合流するつもりだ」
夜明け。
大人しい。どうやら外にいる者も突入の準備ができたようだ。
後はリーダーの突入の合図を待つだけ。
焦ってフライングするせっかちな奴もいるだろう。
「突入! 」
リーダーの指示で雪崩れ込む。
「おい! 居たか? 」
「こっちには誰も」
「同じく! 」
「ちくしょう! 一歩遅かったか。いいからよく探せ! どこに隠れてるとも限らない」
突入の混乱に乗じて裏口から逃走。
ドッドと王子はコンプラ王国へ。
二人はクールシチャットへ。
続く
処刑まで残された時間はわずか五日。
太郎待っててね。必ず助けに行くからね。
夜明け前。辺りはまだ真っ暗。
「さあそろそろ支度しろよ」
ドッドが急かす。
「ちょっと待って! あの光は何? 」
ドッドが言うにはこの小屋は隠れ家みたいなものでハッシャの仲間にも知られていない場所。
仮に把握されていたとしても地元の者以外ここを知らないはず。
だからハッシャから裏切り者が出ない限り疑われるはずはない。
そう言う意味ではここは最適な場所。
だがドッドの裏切りを察知されていては無意味だ。
光が揺れる。それも一つや二つではない。
外が騒がしくなってきた。
このまま大人しく夜明けまで待っては危険。
「ドッド…… 」
「済まねえ。俺としたことが…… 」
松明を持った男たちが喚きたてる。間違いなくハッシャの連中だ。
「早く出てこい! 」
「ふざけるな! 」
ばれたようだ。さあどうすればいい? ここに籠城するわけにもいかないし。
光の数がどんどん増えていく。夜明けと同時に突入する考えらしい。
「ほら大人しく降参しろ! 」
脅すだけ脅して決して中に入ってこようとしない。
「くそ! 舐めやがって! 」
「ダメ! もうお終いだわ」
「諦めるなんてスティーらしくない」
「だってもう無理。逃げ切れるわけがない」
「ふふふ…… まあこんな時の為に裏口がある」
「嘘? 」
「ドッド様に抜かりはない! 」
「ドッドあなた…… 」
「あーあ! 仲間はやっぱり裏切れねいや」
意味深な発言。まさか怖気づいた? 確かに今ならギリギリセーフ。
留まるのもドッドの自由。この状況では彼を責められない。
引き渡せば許してもらえるかもしれないのだ。
「そんな顔するなよ。大丈夫だって! 仲間を信じろって! 」
ドッドの励まし。そう彼は昔の仲間。即ち我々に着いたのだ。
「さあ逃げるぞ! 」
投降するわけにはいかない。ここはドッドに任せよう。彼のテリトリーなのだから。
「ステーテル? 」
ガムが異変に気付いた。
「それでは太郎王子はイーチャットに戻ったんですね? 」
ドッドと話し出す。
「交代。夜明けまでもう少しあるので仮眠でもしていてください。私はこの男と話がありますので」
仲間外れになった気分。しょうがないから王子の様子でも見に行きますか。
準備完了。すぐにでもここを抜け出せる。
王子はドッドに任せて太郎を追うことにした。
今太郎はイーチャットにいるらしい。
ドッドの話ではクールシチャット付近に空飛ぶ馬車が置いてあるとのこと。
空飛ぶ馬車。
実際にあるなんて思わなかった。タレイのホラ話だと思っていたがドッドが見ているとなるとほぼ確実。
空飛ぶ馬車で一気にイーチャットまで飛ぶ。
そうすれば少なくても太郎が処刑される前に辿り着くことができる。
危険な賭けだがこのままナナチャットから戻っては絶対に五日以上かかり太郎の命が無い。
どうすればいいかは分からないがもう迷う暇も意味もない。
すぐにでも空飛ぶ馬車を見つけなくては。
でもできればイーチャットにはあまり行きたくないな。随分悪さをしたもの。
松明を持った男たちが前方を包囲し始めた。
もうここも時間の問題。
「よし準備完了。そっちはどうだ? 」
「こちらも問題ありません」
「よし俺はこいつを担いで逃げる」
「気をつけて! 」
「ああそっちもな。俺も王子を送り届け次第合流するつもりだ」
夜明け。
大人しい。どうやら外にいる者も突入の準備ができたようだ。
後はリーダーの突入の合図を待つだけ。
焦ってフライングするせっかちな奴もいるだろう。
「突入! 」
リーダーの指示で雪崩れ込む。
「おい! 居たか? 」
「こっちには誰も」
「同じく! 」
「ちくしょう! 一歩遅かったか。いいからよく探せ! どこに隠れてるとも限らない」
突入の混乱に乗じて裏口から逃走。
ドッドと王子はコンプラ王国へ。
二人はクールシチャットへ。
続く
0
お気に入りに追加
16
あなたにおすすめの小説
【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。
氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。
私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。
「でも、白い結婚だったのよね……」
奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。
全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。
一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。
断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@2/28コミカライズ発売
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜
平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。
だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。
流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!?
魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。
そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…?
完結済全6話

【完結】内緒で死ぬことにした 〜いつかは思い出してくださいわたしがここにいた事を〜
たろ
恋愛
手術をしなければ助からないと言われました。
でもわたしは利用価値のない人間。
手術代など出してもらえるわけもなく……死ぬまで努力し続ければ、いつかわたしのことを、わたしの存在を思い出してくれるでしょうか?
少しでいいから誰かに愛されてみたい、死ぬまでに一度でいいから必要とされてみたい。
生きることを諦めた女の子の話です
★異世界のゆるい設定です

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから
ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」
結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は……
短いお話です。
新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。
4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる