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再会の抱擁
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イーチャットで悪さをしていたあの頃。
最年長でよく話し相談にも乗っていてくれたドッド。
ドッドは太郎も気にかけてくれていた。口うるさいけど本当に信頼の置ける唯一の人物だった。
「ねえドッド。なぜあなたがここに? 」
ドッドはこれまでのことを語り始めた。
「あれからいろいろあった。まあ昔のことだからな。結局ハッシャになるしかなかった。俺らにはそれしかない。選
択肢なんてないんだ。ここでのし上がっていくしかねえ。俺は馬鹿だからよその辺のことあまり考えずにいた。何とかなるとな。だが結局上手く行くはずもなくハッシャに逃げてきた。俺は今ハッシャのお世話になっている。まあ多少は感謝してるぜ。何て言ったって俺たちみたいなのを受け入れるてくれるんだからな。まあそれも今日までか。さすがに裏切っちまえば追われるだけさ。それにな…… 」
ドッドの告白は続く。だがもうこの辺にしないと。
あの頼りになる理性的なドッドがまさかハッシャになっていたなんてね。
「他の皆は? 」
「さあな。今は連絡を取っていない。でもこれだけははっきりしている。ハッシャにはいない。今はな。どこにいるんだか俺の方が知りたいぜ」
「さあ行きましょう! 積もる話は落ち着いてからでも遅くありません」
ガムに起こしてもらう。
「それもそうだな。さあ行くぞ! 」
王子を背負い夜道を疾走するドッド。
「ほらステーテル。ちゃんと立って! さあ行きますよ」
ハッシャの巣窟から逃げ出す。後は幸運を祈るばかりだ。
早朝。
陽が差しずいぶん明るくなってきた。
本来歓迎すべき太陽。だが今は逃亡中。できればもう少し曇っていてくれると助かるんだけど。
がやがや
がやがや
辺りが騒がしい。
「いないか? 」
「へい! 」
「もう一度良く調べてみろ! 」
「親分。ここにはもういませんぜ。とっくにどこかに行っちまいましたよ」
ガサガサ
ガサガサ
小動物が姿を見せた。
「きゃあ! 何だウサギか…… 脅かさないでよ」
「おい音がしなかったか? 良く調べろ! 」
「へい」
まずいこっちに来る!
「ステーテルこちらです」
逃亡を図ったものの唯一のコンプラ王国に通じる道にハッシャの連中がうようよ。
これではとても突破できそうにない。どうすればいい?
「ねえドッド」
「そう言われてもなあ」
ドッドは頭を掻くだけで頼りない。
「夜まで待ちましょう。彼らにも隙ができるかもしれません」
さすがはガムだ。
一旦立て直す。
「よしついて来い! 」
ドッドの提案で近くの小屋へ。
ここなら連中も気づきはしないだろうとのこと。ドッドのお気に入りの場所なんだとか。
「さあ寛いでくれ」
立派な樫の木で作られた小屋。新しいのか中はピカピカだ。
「まあ一日おきに掃除してるからな」
当然と言った表情。
ドッドはここでよく一人になるのだとか。
「ドッド! 」
抱きしめる。
「何だよ? ガキじゃないんだからよ…… 」
そう言って恥ずかしそうに離れる。
「まあいいや。スティ―会いたかったぜ! 」
改めて再会を祝う。
「助けてくれてありがとうドッド」
「私からも感謝申し上げます」
「まあこれくらい当然だ。昔の仲間を見捨てるドッド様ではないさ」
頼もしい昔の仲間。ドッドは信用できる。口も堅いし頭も回る。
「どうしますステーテル? 」
「明日一番でここを離れましょう」
「分かりました。それまでたっぷり寝ておきましょう」
「もちろん食事も忘れずにね。ドッドお願い」
「へへへ…… さすがはスティ―だ。こき使いやがってまったく! 」
「眠いよ…… 」
王子が起きてしまった。
食事を終えるとすぐに王子はお昼寝。まだまだ子供だ。相当疲れていると見える。
「それで明日はどうします? 」
「二手に分かれよう! 俺が惹きつける。その間にスティ―たちははこの王子を連れて戻ってくれ」
「ちょっと待って! ドッドはどうするつもり? 」
「まだ裏切ったのがばれてないはず。自然に元に戻れればいいんだがそうもいかないだろうな。へへへ。まあ仕方ねいさ。なるようにしかならない」
ドッドの今後も気になるが今はどうやってここを抜け出すかだ。
夜に備えて今のうちに寝ておく。
おやすみなさい。
続く
最年長でよく話し相談にも乗っていてくれたドッド。
ドッドは太郎も気にかけてくれていた。口うるさいけど本当に信頼の置ける唯一の人物だった。
「ねえドッド。なぜあなたがここに? 」
ドッドはこれまでのことを語り始めた。
「あれからいろいろあった。まあ昔のことだからな。結局ハッシャになるしかなかった。俺らにはそれしかない。選
択肢なんてないんだ。ここでのし上がっていくしかねえ。俺は馬鹿だからよその辺のことあまり考えずにいた。何とかなるとな。だが結局上手く行くはずもなくハッシャに逃げてきた。俺は今ハッシャのお世話になっている。まあ多少は感謝してるぜ。何て言ったって俺たちみたいなのを受け入れるてくれるんだからな。まあそれも今日までか。さすがに裏切っちまえば追われるだけさ。それにな…… 」
ドッドの告白は続く。だがもうこの辺にしないと。
あの頼りになる理性的なドッドがまさかハッシャになっていたなんてね。
「他の皆は? 」
「さあな。今は連絡を取っていない。でもこれだけははっきりしている。ハッシャにはいない。今はな。どこにいるんだか俺の方が知りたいぜ」
「さあ行きましょう! 積もる話は落ち着いてからでも遅くありません」
ガムに起こしてもらう。
「それもそうだな。さあ行くぞ! 」
王子を背負い夜道を疾走するドッド。
「ほらステーテル。ちゃんと立って! さあ行きますよ」
ハッシャの巣窟から逃げ出す。後は幸運を祈るばかりだ。
早朝。
陽が差しずいぶん明るくなってきた。
本来歓迎すべき太陽。だが今は逃亡中。できればもう少し曇っていてくれると助かるんだけど。
がやがや
がやがや
辺りが騒がしい。
「いないか? 」
「へい! 」
「もう一度良く調べてみろ! 」
「親分。ここにはもういませんぜ。とっくにどこかに行っちまいましたよ」
ガサガサ
ガサガサ
小動物が姿を見せた。
「きゃあ! 何だウサギか…… 脅かさないでよ」
「おい音がしなかったか? 良く調べろ! 」
「へい」
まずいこっちに来る!
「ステーテルこちらです」
逃亡を図ったものの唯一のコンプラ王国に通じる道にハッシャの連中がうようよ。
これではとても突破できそうにない。どうすればいい?
「ねえドッド」
「そう言われてもなあ」
ドッドは頭を掻くだけで頼りない。
「夜まで待ちましょう。彼らにも隙ができるかもしれません」
さすがはガムだ。
一旦立て直す。
「よしついて来い! 」
ドッドの提案で近くの小屋へ。
ここなら連中も気づきはしないだろうとのこと。ドッドのお気に入りの場所なんだとか。
「さあ寛いでくれ」
立派な樫の木で作られた小屋。新しいのか中はピカピカだ。
「まあ一日おきに掃除してるからな」
当然と言った表情。
ドッドはここでよく一人になるのだとか。
「ドッド! 」
抱きしめる。
「何だよ? ガキじゃないんだからよ…… 」
そう言って恥ずかしそうに離れる。
「まあいいや。スティ―会いたかったぜ! 」
改めて再会を祝う。
「助けてくれてありがとうドッド」
「私からも感謝申し上げます」
「まあこれくらい当然だ。昔の仲間を見捨てるドッド様ではないさ」
頼もしい昔の仲間。ドッドは信用できる。口も堅いし頭も回る。
「どうしますステーテル? 」
「明日一番でここを離れましょう」
「分かりました。それまでたっぷり寝ておきましょう」
「もちろん食事も忘れずにね。ドッドお願い」
「へへへ…… さすがはスティ―だ。こき使いやがってまったく! 」
「眠いよ…… 」
王子が起きてしまった。
食事を終えるとすぐに王子はお昼寝。まだまだ子供だ。相当疲れていると見える。
「それで明日はどうします? 」
「二手に分かれよう! 俺が惹きつける。その間にスティ―たちははこの王子を連れて戻ってくれ」
「ちょっと待って! ドッドはどうするつもり? 」
「まだ裏切ったのがばれてないはず。自然に元に戻れればいいんだがそうもいかないだろうな。へへへ。まあ仕方ねいさ。なるようにしかならない」
ドッドの今後も気になるが今はどうやってここを抜け出すかだ。
夜に備えて今のうちに寝ておく。
おやすみなさい。
続く
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