ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ

二廻歩

文字の大きさ
上 下
92 / 124

再会の抱擁

しおりを挟む
イーチャットで悪さをしていたあの頃。

最年長でよく話し相談にも乗っていてくれたドッド。

ドッドは太郎も気にかけてくれていた。口うるさいけど本当に信頼の置ける唯一の人物だった。

「ねえドッド。なぜあなたがここに? 」

ドッドはこれまでのことを語り始めた。


「あれからいろいろあった。まあ昔のことだからな。結局ハッシャになるしかなかった。俺らにはそれしかない。選
択肢なんてないんだ。ここでのし上がっていくしかねえ。俺は馬鹿だからよその辺のことあまり考えずにいた。何とかなるとな。だが結局上手く行くはずもなくハッシャに逃げてきた。俺は今ハッシャのお世話になっている。まあ多少は感謝してるぜ。何て言ったって俺たちみたいなのを受け入れるてくれるんだからな。まあそれも今日までか。さすがに裏切っちまえば追われるだけさ。それにな…… 」


ドッドの告白は続く。だがもうこの辺にしないと。

あの頼りになる理性的なドッドがまさかハッシャになっていたなんてね。

「他の皆は? 」

「さあな。今は連絡を取っていない。でもこれだけははっきりしている。ハッシャにはいない。今はな。どこにいるんだか俺の方が知りたいぜ」

「さあ行きましょう! 積もる話は落ち着いてからでも遅くありません」

ガムに起こしてもらう。

「それもそうだな。さあ行くぞ! 」

王子を背負い夜道を疾走するドッド。

「ほらステーテル。ちゃんと立って! さあ行きますよ」

ハッシャの巣窟から逃げ出す。後は幸運を祈るばかりだ。


早朝。

陽が差しずいぶん明るくなってきた。

本来歓迎すべき太陽。だが今は逃亡中。できればもう少し曇っていてくれると助かるんだけど。

がやがや
がやがや

辺りが騒がしい。

「いないか? 」

「へい! 」

「もう一度良く調べてみろ! 」

「親分。ここにはもういませんぜ。とっくにどこかに行っちまいましたよ」

ガサガサ
ガサガサ

小動物が姿を見せた。

「きゃあ! 何だウサギか…… 脅かさないでよ」

「おい音がしなかったか? 良く調べろ! 」

「へい」

まずいこっちに来る!

「ステーテルこちらです」

逃亡を図ったものの唯一のコンプラ王国に通じる道にハッシャの連中がうようよ。

これではとても突破できそうにない。どうすればいい?

「ねえドッド」

「そう言われてもなあ」

ドッドは頭を掻くだけで頼りない。

「夜まで待ちましょう。彼らにも隙ができるかもしれません」

さすがはガムだ。

一旦立て直す。


「よしついて来い! 」

ドッドの提案で近くの小屋へ。

ここなら連中も気づきはしないだろうとのこと。ドッドのお気に入りの場所なんだとか。

「さあ寛いでくれ」

立派な樫の木で作られた小屋。新しいのか中はピカピカだ。

「まあ一日おきに掃除してるからな」

当然と言った表情。

ドッドはここでよく一人になるのだとか。


「ドッド! 」

抱きしめる。

「何だよ? ガキじゃないんだからよ…… 」

そう言って恥ずかしそうに離れる。

「まあいいや。スティ―会いたかったぜ! 」
 
改めて再会を祝う。

「助けてくれてありがとうドッド」

「私からも感謝申し上げます」

「まあこれくらい当然だ。昔の仲間を見捨てるドッド様ではないさ」

頼もしい昔の仲間。ドッドは信用できる。口も堅いし頭も回る。

「どうしますステーテル? 」

「明日一番でここを離れましょう」

「分かりました。それまでたっぷり寝ておきましょう」

「もちろん食事も忘れずにね。ドッドお願い」

「へへへ…… さすがはスティ―だ。こき使いやがってまったく! 」

「眠いよ…… 」

王子が起きてしまった。

食事を終えるとすぐに王子はお昼寝。まだまだ子供だ。相当疲れていると見える。


「それで明日はどうします? 」

「二手に分かれよう! 俺が惹きつける。その間にスティ―たちははこの王子を連れて戻ってくれ」

「ちょっと待って! ドッドはどうするつもり? 」

「まだ裏切ったのがばれてないはず。自然に元に戻れればいいんだがそうもいかないだろうな。へへへ。まあ仕方ねいさ。なるようにしかならない」

ドッドの今後も気になるが今はどうやってここを抜け出すかだ。

夜に備えて今のうちに寝ておく。

おやすみなさい。

                続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

処理中です...