ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ

二廻歩

文字の大きさ
上 下
89 / 124

ロクでもないこと

しおりを挟む
国王退出。

「あの…… 」

「そうか。誰か部屋を案内してやってくれないか」

メイドが走ってきた。

「ちょっと王子…… 」

「ではまた夜にでも」

コンプラ王国は至って普通。激しい抗争を続けているようには見えない。


「ねえあなた。ハッシャについて何か知ってる? 」

困惑するメイド。

「さあどうでしょうか」

「お願い教えて! 何でもいいの。太郎王子を知らない? 」

「太郎? さあ初耳ですね」

ただのメイドに過ぎない。そうであれば知っていることも限られてくる。


「実は…… 」

メイドが語りだした。

「ハッシャなんてロクなものではありません。国王に刃向かうだけでなく村々を転々として悪さをしている連中。
手が付けられません」

やはり評判は良くない。

「国王が取り締まりを強化した為、連中姿を見せなくなってます。でもいつここに現れる心配で心配でなりません。
今王子が生まれたばかり余計な厄介ごとに巻き込まれるのは王様としても不本意でしょう」

「そうだ。もう皆さんお集りになったんですか? 」

「いえ、それが第五王子だけ姿を見せてません。十を超えたとは言えまだまだ子供。何か在ったのでなければいいのですが」

「第五王子? 」

「はい。小さくてかわいらしいお方。いつもロク先生がお付になっているんですがね」

「ロク先生ですか? 」

「はい。ロク先生は教育係。第五王子に今は着いていますが昔からここの教育係として雇われています」

消息不明の第五王子。

「ロク先生と第五王子の姿が見えません。本当にどうしたのでしょう? 心配だわ」

これ以上聞くまでもない。


たっぷりと陽が暮れた頃。

晩餐会スタート。

国王の一言で晩餐会が行われることに。

我々を歓迎してとのことらしいが王子誕生がメインと考えられる。

全員揃うかと思いきややはり第五王子が遅れている。

これはおかしいと国王が騒ぎ始めた。

とりあえず第五王子を抜かし自己紹介。

「ようこそコンプラ王国へ。どうぞごゆっくり」


さあこれから食事と言う時一人の男が息を切らしやって来た。

男が乱入で一堂騒然。

何もできない。ただ様子を見守るしかない。

「申し訳ありません! 本当に申し訳ありません! 」

息を切らした男が国王の方へ。

「ロク…… 」

どうやらこの人がロク先生らしい。

「どうしたロクよ。何があった? 」

異変をいち早く察知した国王。

「申し訳ありません。王子がさらわれました」

「何だと? して心当たりは? 」

「分かりません。一瞬の出来事でしたので」

「分からんだと? 無責任だぞ! 」

「目を離した隙にどこかに行ってしまわれて…… 」

「なぜ早く知らせない? ううん? 」

「そうですよ。落ち度ですよ。罰は逃れられませんよ」

第一王子も反応。

「お前は黙っておれ! 」

国王の機嫌が悪くなる。

早く解決しなくてはまずいことになりそうだ。


「それにしてもなぜ今なんだ? 」

「それは…… 」

「本当にロクのことしないなお前は! 」

抑えてください。父上。

今回が初めてという訳ではないらしい。

「つい…… 修行に夢中で王子を見ていなかった」

ロク先生は国王からの信頼がある。しかし今回のことで一気にその信頼を失った。


「ロクよ。詳しく話してくれるか」

「実は王子に稽古をつけていたのです」

「稽古? 教養ではなくか? 」

「ええ。今後役に立つと思ったので」

「まあよい。続けよ」

「ここ数日嫌な感じがしていたんです。見られているような。視線を感じると言うか」

「何? なぜ早くそれを知らせない! 」

「まあ抑えて抑えて父上。それでロク先生は目を離したと? 」

「ええ。目を瞑り王子の相手を。王子はまだ若く力もなく未熟でやる気もあまり感じられません。だから好きに攻撃していいと言って目を瞑っていたのです」

そのうち王子の声が聞こえなくなり心配になって目を開けると王子が消えていたんです。

王子! 王子!

「呼びかけても反応がありません」

困惑するロク。

「これはおかしいと何度も呼びかけましたがやはり反応がありません。

急いで辺りを探しましたが木の枝が折れる音がしたくらいで忽然と姿を消したのです。どうか信じてください! 」

「ロクよ。儂は信じたい。じゃがお前が一枚噛んでいるとも限らない」

「そんな…… 」

「拘束させてもらうぞ。悪く思うな」

念のための処置。

ロクは連れていかれてしまった。


                       続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

君は妾の子だから、次男がちょうどいい

月山 歩
恋愛
侯爵家のマリアは婚約中だが、彼は王都に住み、彼女は片田舎で遠いため会ったことはなかった。でもある時、マリアは妾の子であると知られる。そんな娘は大事な子息とは結婚させられないと、病気療養中の次男との婚約に一方的に変えさせられる。そして次の日には、迎えの馬車がやって来た。

処理中です...