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山奥の第八王子
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ローパーで一っ跳びのはずが……
交渉中。
おじさんは頑固だ。ちょっとぐらいいいと思うんだけどな。
「ねえおじさん! 」
「うるさい! 無理なものは無理だ」
押し問答を続けるが決して折れようとしない。
「誰も見てないんだからいいじゃない? 」
「そんな訳行くか! 」
「もう! 」
「とにかくお前らは招待状を持っていないのだろう? 」
「はい。どうにかなりませんか」
「なら動かせないな」
「お願いおじさん! 」
迫る。
「いやいや。そんなきれいなお嬢さんに言い寄られたらこっちもイチコロさ」
「ねえお願い! 」
「ふっふふ…… うーん」
「もう早く! 」
「仕方がないなあ…… いや、やっぱりダメだ! 」
交代。
「お願い! 疲れてしまいました。一歩も動けません」
大人の色香で男をたぶらかすガム。
「ねえいいでしょう? 」
「えっへへ…… どうしようかなあ…… 」
「ねえおじさま」
「へっへへ…… ダメだ! 絶対にダメだ! 」
お気に召さなかったらしい。次の手は…… もう何も思いつかない。
男は決して乗せようとはしない。困ったおじさんだこと。
「私はド・ラボー! 」
「はあ…… 」
「コンプラ王国にやって参りました。ド・ラボーのステーテルです」
「いやそんなこと言われて誰が信じる? 」
「おじさん! 」
「たとえそうだとしてもだから何だ? これは許可を得た者以外は乗せられない。
どうしてもコンプラ王国に行きたければ自力でこの山を越えるんだな」
男は決して首を縦に振ろうとしない。
「もう! 」
「うう…… 足が痛いんです。もう動けないんです」
「ダメだ! 」
泣き落としも通じない。
よしこうなったら強行突破。この男を無理矢理……
ガムが制止する。
「どうするつもりですか? 」
「えっと…… 無理やり乗せてもらおうかなあって思ってさ」
「誰が動かすと思ってるんですか? 」
そうこの頑固なおじさんだ……
ガムだってローパーを見たのは初めて。動かし方が分かるはずがない。
どうやってもこのおじさんの協力が不可欠だ。
「ねえお願い! 」
「ダメだ! 」
首を振り続ける男。
「俺だってお前らを乗せてやりたいよ。だがな余計なことをすれば俺が叱られる。分かってくれ! 」
逆に押し切られてしまう。
あーあ! こんなところ来なければよかった。
「ねえ国王一家は? 」
「さあな。忙しい方々だ。でも今日はめでたい。王子が生まれたそうだ。もしかしたら誰かやってくるかもな」
いつ来るとも分からない者を待ち続ける辛さ。耐えられない。
「それまで待てと? 」
「分かったよ! そんな顔をするな」
何が分かったと言うのだろう?
男はようやく折れた。
「これは秘密だぞ。これから一時間後に王子がここにやってくる。第八王子の誕生に駆け付ける訳だかその時に一緒に乗せてやってもいい」
「よろしいんですか? 本当に? 」
ガムが念を押す。
「良いって。良いって」
交渉成立。
粘った甲斐があった。
「しかしなあ…… まあ機嫌が悪いと断られるかもしれない。そこは理解しろ! 」
「それでどなたが? 」
「たぶん第一王子が。失礼の無いように大人しくしてるんだぞ」
「はいはい」
ローパ―の中を先に見せてもらうことにした。
定員は重量もあるものの大体五名。全体が黒のシックな感じの見た目。
中は温かい。これなら寒い今でも快適だ。
「くさ! 」
雨の嫌な臭いに混じって汗と油の独特な臭い。
鼻をつまみたくなる衝動に駆られる。
「これに乗るの? 」
「そうだ! これで一っ跳びだ! 」
「確かにそうだけどさあ…… ちゃんと動くの? 」
「馬鹿言っちゃいけない! 毎日点検してるさ。さあもういいだろ? 少しは大人しくしてな」
一時間が過ぎた。
しかし誰も近づく者がいない。
男の言ったことは当てにできるのか?
「ああ来た来た! 」
男が遠くを見る。
ようやくやって来た王子。
「遅くなったな。済まない」
笑顔の第一王子が姿を見せた。
続く
交渉中。
おじさんは頑固だ。ちょっとぐらいいいと思うんだけどな。
「ねえおじさん! 」
「うるさい! 無理なものは無理だ」
押し問答を続けるが決して折れようとしない。
「誰も見てないんだからいいじゃない? 」
「そんな訳行くか! 」
「もう! 」
「とにかくお前らは招待状を持っていないのだろう? 」
「はい。どうにかなりませんか」
「なら動かせないな」
「お願いおじさん! 」
迫る。
「いやいや。そんなきれいなお嬢さんに言い寄られたらこっちもイチコロさ」
「ねえお願い! 」
「ふっふふ…… うーん」
「もう早く! 」
「仕方がないなあ…… いや、やっぱりダメだ! 」
交代。
「お願い! 疲れてしまいました。一歩も動けません」
大人の色香で男をたぶらかすガム。
「ねえいいでしょう? 」
「えっへへ…… どうしようかなあ…… 」
「ねえおじさま」
「へっへへ…… ダメだ! 絶対にダメだ! 」
お気に召さなかったらしい。次の手は…… もう何も思いつかない。
男は決して乗せようとはしない。困ったおじさんだこと。
「私はド・ラボー! 」
「はあ…… 」
「コンプラ王国にやって参りました。ド・ラボーのステーテルです」
「いやそんなこと言われて誰が信じる? 」
「おじさん! 」
「たとえそうだとしてもだから何だ? これは許可を得た者以外は乗せられない。
どうしてもコンプラ王国に行きたければ自力でこの山を越えるんだな」
男は決して首を縦に振ろうとしない。
「もう! 」
「うう…… 足が痛いんです。もう動けないんです」
「ダメだ! 」
泣き落としも通じない。
よしこうなったら強行突破。この男を無理矢理……
ガムが制止する。
「どうするつもりですか? 」
「えっと…… 無理やり乗せてもらおうかなあって思ってさ」
「誰が動かすと思ってるんですか? 」
そうこの頑固なおじさんだ……
ガムだってローパーを見たのは初めて。動かし方が分かるはずがない。
どうやってもこのおじさんの協力が不可欠だ。
「ねえお願い! 」
「ダメだ! 」
首を振り続ける男。
「俺だってお前らを乗せてやりたいよ。だがな余計なことをすれば俺が叱られる。分かってくれ! 」
逆に押し切られてしまう。
あーあ! こんなところ来なければよかった。
「ねえ国王一家は? 」
「さあな。忙しい方々だ。でも今日はめでたい。王子が生まれたそうだ。もしかしたら誰かやってくるかもな」
いつ来るとも分からない者を待ち続ける辛さ。耐えられない。
「それまで待てと? 」
「分かったよ! そんな顔をするな」
何が分かったと言うのだろう?
男はようやく折れた。
「これは秘密だぞ。これから一時間後に王子がここにやってくる。第八王子の誕生に駆け付ける訳だかその時に一緒に乗せてやってもいい」
「よろしいんですか? 本当に? 」
ガムが念を押す。
「良いって。良いって」
交渉成立。
粘った甲斐があった。
「しかしなあ…… まあ機嫌が悪いと断られるかもしれない。そこは理解しろ! 」
「それでどなたが? 」
「たぶん第一王子が。失礼の無いように大人しくしてるんだぞ」
「はいはい」
ローパ―の中を先に見せてもらうことにした。
定員は重量もあるものの大体五名。全体が黒のシックな感じの見た目。
中は温かい。これなら寒い今でも快適だ。
「くさ! 」
雨の嫌な臭いに混じって汗と油の独特な臭い。
鼻をつまみたくなる衝動に駆られる。
「これに乗るの? 」
「そうだ! これで一っ跳びだ! 」
「確かにそうだけどさあ…… ちゃんと動くの? 」
「馬鹿言っちゃいけない! 毎日点検してるさ。さあもういいだろ? 少しは大人しくしてな」
一時間が過ぎた。
しかし誰も近づく者がいない。
男の言ったことは当てにできるのか?
「ああ来た来た! 」
男が遠くを見る。
ようやくやって来た王子。
「遅くなったな。済まない」
笑顔の第一王子が姿を見せた。
続く
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