ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ

二廻歩

文字の大きさ
上 下
86 / 124

ローパ―

しおりを挟む
「疲れた! 」

我がままを言うガム。

「もう一歩も歩けません! 」

ガムったら本当に大人げない。

ワガママも甘えもド・ラボーの特権だと思っていた。でも違った。

本当にもう歩けないと言って下を向く。

うーん。困ったな……

「ほら大丈夫。もうちょっとだから」

「嘘ばっかり! 」

ここがガムの可愛くないところ。

我がままを続ければいいのに元のガムに戻ってしまう。

「もうちょっとだから…… ねえ頑張ろうガム」

「もうちょっとってどれくらい? 」

「あの山を越えたらコンプラ王国だと思う…… 」

「うう…… 」

確かに大変だ。いくらエリス王子との特訓で足を鍛えたとは言え今日中に登り切るのは難しいかも。


とりあえず一休み。

山の上ににはコンプラ王国がある。そこでは太郎王子の情報も手に入るだろう。ゆっくりしている暇はない。

「さあ歩くわよ! 」

「ステーテル! 先に行ってください。すぐに追いかけますから」

ガムはまだ立ち上がれないでいる。

「ガム…… 私はド・ラボーなのよ」

「分かっております。立派になられて大変うれしく思っております」

ガムがはぐらかす。

お付の者と離れる訳にはいかない。

なぜならド・ラボーとガムは常に行動を共にしなければならないからだ。数少ない決まりごと。

それくらいガムだって分かっているくせに。


「さあ行きましょうガム! 」

「あと少し。あともう少しだけ! 」

「もう! 」

このまま置いていく?

「ステーテル。私に構わずにお先に進みください」

随分と疲れた様子。

今まで馬車や船移動だったものだから今回の旅は堪えるのでしょう。

私だって足が痛い。でもそんなこと言っても始まらない。

「ガム! 」

「あれは何でしょう? 」

ガムはなおもはぐらかそうとする。困ったわね……

「ほらあのロープのようなもの」

「うん? 」

ロープが渡してある。確かにある。今まで気づかなかったのが不思議なぐらい。

「あれは一体何? 」

「行ってみましょう」

ガムは疲れが吹っ飛んだのかロープの出発点と思われる場所へ走りだした。

「もう待ってよガム! 勝手なんだから! 」


思ったよりも遠い。走って三十分はかかっただろうか。

はあはあ
はあはあ

ガムの姿が見えた。

ガムは疲れを感じさせない走りで引き離していた。

もうガム! あれ…… 何これ?

文句を言うのも忘れてただ呆然とする。

「ステーテル。どうですこれ? 」

「どうって言われても…… 」

「乗りたい! 」

ただそう思うのみ。別に体が疲れているからじゃない。全く想像のつかない乗り物に興味を惹かれたのだ。

「乗り心地はどう? 景色は? 落っこちない? ねえこれは何? 」

「私に聞かれても…… 」

「まさか空飛ぶ馬車? 」

「ははは! おかしなことを言う子だね。空飛ぶ馬車などあるわけないじゃないか」

男がバカにする。

「誰? 」

「俺はここの管理人だ」

「管理人? 」

「そうだ。これが動くかどうか点検管理しているわけだ」

動く箱と言う意味では空飛ぶ馬車と大差ない気もするけど。

「うん? ああ初めて見るのか。それはそれは珍しいだろ? 」

男は勝ち誇る。


「おじさんが作ったの? 」

「まさかそんな技術ある訳ない。これはなコンプラ国王の発案である」

「ねえ乗せて! あの山までお願い! 」

「いけません! ド・ラボーともあろう者が」

ガムは厳しい。自分だって乗りたがっていたくせに。

「済まないなあ。俺に頼んでも乗せられない」

「どういうこと? 」

「これはコンプラ国王の発案だって言ったろ」

「ええその話は聞きました」

「これに乗れるのはコンプラ国王かその一族。または招待された者。それ以外は何人たりともお乗せできない」

あっさり断わられる。


「ちなみにこれは何? 」

「ああ、国王発案の…… 」

「名前を聞いてるの! 余計な情報はいいから早く答えなさい! 」

「『ローパー』と言ってな…… 」

「ローパー? 」

聞き慣れない名前。

やはり空飛ぶ馬車ではないようだ。

ローパーね。面白そう。

ますます興味が湧いてきた。

                  続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

【完結】婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

【完結】「君を愛することはない」と言われた公爵令嬢は思い出の夜を繰り返す

おのまとぺ
恋愛
「君を愛することはない!」 鳴り響く鐘の音の中で、三年の婚約期間の末に結ばれるはずだったマルクス様は高らかに宣言しました。隣には彼の義理の妹シシーがピッタリとくっついています。私は笑顔で「承知いたしました」と答え、ガラスの靴を脱ぎ捨てて、一目散に式場の扉へと走り出しました。 え?悲しくないのかですって? そんなこと思うわけないじゃないですか。だって、私はこの三年間、一度たりとも彼を愛したことなどなかったのですから。私が本当に愛していたのはーーー ◇よくある婚約破棄 ◇元サヤはないです ◇タグは増えたりします ◇薬物などの危険物が少し登場します

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

悪役令嬢に転生したら手遅れだったけど悪くない

おこめ
恋愛
アイリーン・バルケスは断罪の場で記憶を取り戻した。 どうせならもっと早く思い出せたら良かったのに! あれ、でも意外と悪くないかも! 断罪され婚約破棄された令嬢のその後の日常。 ※うりぼう名義の「悪役令嬢婚約破棄諸々」に掲載していたものと同じものです。

私は幼い頃に死んだと思われていた侯爵令嬢でした

さこの
恋愛
 幼い頃に誘拐されたマリアベル。保護してくれた男の人をお母さんと呼び、父でもあり兄でもあり家族として暮らしていた。  誘拐される以前の記憶は全くないが、ネックレスにマリアベルと名前が記されていた。  数年後にマリアベルの元に侯爵家の遣いがやってきて、自分は貴族の娘だと知る事になる。  お母さんと呼ぶ男の人と離れるのは嫌だが家に戻り家族と会う事になった。  片田舎で暮らしていたマリアベルは貴族の子女として学ぶ事になるが、不思議と読み書きは出来るし食事のマナーも悪くない。  お母さんと呼ばれていた男は何者だったのだろうか……? マリアベルは貴族社会に馴染めるのか……  っと言った感じのストーリーです。

処理中です...