ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ

二廻歩

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売られた太郎

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人質を取られ動きを封じられた。

ノラとドッドを見捨てる?

「おいこのガキどもがどうなってもいいのか? 」

「くそ! ダメだ! 戻るな! 」

奴らの手はお見通し。痛がるところを見せつけるか聞かせればいいと思っている。

その前に逃げなければ奴らの思うままだ。

「済まん! 許してくれ! 」

「うわあ! 助けて! 」

「うおおお! 」

ドッドは耐えているがノラはもう泣き出してしまった。

「おいおい。まだ何もしてないだろ? ただちょと抱きしめただけだ」

馬鹿力で絞めあげるものだから悲鳴があがる。

どうする? このままでは死んでしまう。

「ほら君たち優しいおじさんが相手している間に戻ってこようね。ははは…… お兄さんか」

脅しをかける金髪メガネ。

くそ! 話を聞くしかない。どうせロクな話じゃないが人質を取られては打つ手がない。

「うん。えらいよ。こんな風に素直だとおじさん嬉しいな。君達は賢いね。
クズだとね抵抗してそれはそれは痛い目に合っちゃうんだよね」

別に褒められてもちっとも嬉しくない。

「ええっと。まあいいや」

二人を解放。


それなりに約束を守る男。ここは男の機嫌を取るのが先決。

「すみませんでした! 」

全員でひたすら謝る。

「勝手に住み着き汚してしまいました。どうかお許しください! 」

「ふふふ…… いやいいんだ。別にそのことできたわけではないよ」

奴らは一体何が目的で俺たちに近づいてきた? まさか一人ぐらい寄越せなんて言うんじゃないだろうな?

「実はね。最近ここに顔を出している子がいると思うんだ。心当たりないかな? 」

そう言って皆の顔を見回す。

「隠すと為にならないよ。嘘もいけないよ。知らないかい? 」

首を振る。

「本当かい? 」

「知らねいよ! 」

「最近この辺で仲良くなった子がいただろ? 君たちと同じぐらい。もうちょっと小さいかな」

ヒソヒソ
ヒソヒソ

「なああいつ…… 」

「馬鹿! 仲間を売る気か! 」

「だってよ…… 」

「あれれ? 知っているのかなあ。隠していると為にならないよ。目撃証言も在るんだけどな…… 」

余裕の笑顔。不気味過ぎる。

いたぶるのが好きな男。果たして隠し通せる?


「すみません。人違いです。そんな人ここにはいません」

「そうだ! そうだ! 他を当たれよおっさん! 」

「あらら…… 私がおっさんに見えますか? 」

変なところでキレ始めた金髪メガネ。これはまずい。


「そうですか。では聞いてみましょうね」

一番近くにいた奴を抱きかかえる。

「君は知らないかい? 」

「知るかよ! 放せよ! 」

「あらあら。口の利き方のなっていないガキですね。もう面倒臭いなあ。待たせてるのを連れてきましょうかね」

脅しをかける。

「どうなると思います? 」

「うるせい! 出て行け! 」

「はい捕まえた。さっきから口の悪い子。君は知らないかな? 」

ついに捕まってしまった。だが弟分の太郎を売る訳にはいかない。

「知らねいよ! そんな奴! とっとと出て行けよ! 」

「抵抗するとお仕置きしちゃうよ。ふふふ…… 」

「やめろよバカ! 」

「あれ君は女の子? 」

「うるさい! だから何だ? 」

「どうする? この子がどうなってもいいのかな? ふふふ…… 」

いやらしい笑いで脅す。

「俺実は…… 」

ドッドが耐えられずに口を滑らせる。

「やめろ! 」

「ダメだなあ。知ってるって言ってるようなものでしょう? さあもう観念しようね。時間もないし」

「最近俺たちの仲間になった太郎ってのがいる」

「そうその子。どこにいるのかな? 」

「それは知らない。家に帰ったんだろ」

「家? あるの? 」

「太郎が言ってた…… 」

「よし偉いぞ。ご褒美だ! 」


すぐに部下の男がやって来た。

クッキーやチョコレート、キャンディを袋一杯にして全員に配る。

太郎を売ってしまった。

太郎の身の危険と引き換えに食い物を得る。決して悪い取引ではない。

「ではお邪魔したね。ここに好きなだけいるといいよ」

男たちは出て行った。

こうして危機は去った。


危害を加えられることなく逆に食い物を得た。

それだけではない。住処を保証されたのだ。

皆大喜び。

だが俺は……

            続く
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