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ガムと国王の戦略 王位継承の行方
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頭の切れるサンスリン様はもう気付いたようだ。
「父上。一芝居打ちましたね」
「それで? 」
「この乱射王子は偽物」
「いや本物だ。そんな面倒なことはせん」
「では何らかの理由で留まった? いや違う…… 初めから仲間だった? 」
サンスリン様は考えを巡らす。しかししっくりこないようだ。
「まあよい。及第点には遠く及ばないが考え方は間違っていない」
「どういうこと! 」
それまで黙っていたがもう我慢の限界。まったく思いつかないエルス王子と共に国王に詰め寄る。
「一体どういうことですか父上? 」
「ははは! ワンド王子が裏切ると読んでいたガムさんにある作戦を授けてもらった。最初に聞いた時は冗談だと思ったがワンドに不審な動きがあったのでな。もちろんエルスお前たちもだ。二人でコソコソやっていただろう? 」
全てお見通しだった。もちろん私はエルス様に言われるまま動いただけ。決して何か企んでいたのではない。
果たしてこんな言い訳通じるかしら?
「ガム? 」
「怖い思いをさせてしまいましたね。ですがこれもワンド王子を油断させるには仕方ないこと」
「ガム分かるように説明してよ」
「ですからワンド王子が今回の黒幕だと言うことです」
「それくらい分かる! 馬鹿にしてるの? 」
「いえ、ちなみに乱射王子はこちらの味方です」
「嘘でしょう? あんなに無茶苦茶撃ったのに? 」
「それは私から話そう」
国王が続ける。
「タレイ君だったかな。彼を使ったんだ」
「タレイ? 」
「ああ。ガムさんの忠告を受け動いたら案の定すでに計画を持ち出した後だった。この男は処刑を免れるために従うしかなかった。だがどうせ後で始末する気だろ? 」
「それは…… 」
「反論できないのが何よりの証拠」
「タレイ君に探ってもらった。だがさすがに口は堅い。ただ脱出する方法が思いついたとだけ漏らしたらしい」
「ああそうだ。その後国王が直々やって来てすべてを吐いたら自由にしてやると言ったので従ったのだ。タレイの奴の口が軽いのが幸いした」
乱射王子は銃口を向けたまま話すものだから気が気でない。
「まあこの銃もだからおもちゃという訳だ」
そう言って一発撃つ。
「では音だけ? 」
「ああ。実際に銃に詳しくなければ分からない」
「ワンドよ。お前は私のコレクションに興味を示さずにただの道具としてのみ見ていたものだからこの仕掛けに気付かなかった。お前の負けだ! さあ連れていけ! 」
両腕を掴まれ退場。乱射王子が入っていた牢に引っ立てられていく。
ある意味屈辱。悲惨なワンド王子。もちろん同情できない。
まあ悪だくみした罰は受けなければならない。だが国王にも非はある。次期国王を選ばずに兄弟を戦わせた。
このような事態が起きうることも予想できたこと。いくら伝統だとしても改善する必要がある。
サンスリン様だって危険な目にあっているのだから。私だって巻き込まれてしまった。
もちろん最初から分かっていてただ勝つために隠していたエルス王子にも問題がある。
結局国王の命令で全ての銃は中身を入れ替えられていた。だからワンド王子が仮に強行に出たとしても危険はない。
「さあどうする? 」
国王は二人の王子に委ねる。
「ではいっそのことカジノで勝った方を次期国王とすればいかがでしょうか? 」
「何を言うサンスリン! 」
エルス王子は分が悪いと思ったのか反対に回る。
「まあそれも良かろう。強運も国王の資質。だがまあそれでは全て運頼りになってしまう。国を任せるには心もとない。もっと良く話し合え! 」
まさかカジノで決めようなど前代未聞。サンスリン様は一体何を考えておられるのか。
サンスリン様への強い思いが薄れていく。やっぱりあの人何も考えていない。
二人で話し合った結果一年後に再戦することで話がまとまった。
「もう少し国王を続けるしかなさそうだな。今度こそ正々堂々と競い合って勝ち取って欲しいものだ」
国王は疲れたと部屋へ。
こうして王位継承争いは持ち越しとなった。
大がかりな捕り物を終え部屋へ。
ふう疲れた。もう冗談じゃないわ。これじゃあムーチャットと大差ないじゃない。
ナナチャットに嫌気がさすステーテルであった。
続く
「父上。一芝居打ちましたね」
「それで? 」
「この乱射王子は偽物」
「いや本物だ。そんな面倒なことはせん」
「では何らかの理由で留まった? いや違う…… 初めから仲間だった? 」
サンスリン様は考えを巡らす。しかししっくりこないようだ。
「まあよい。及第点には遠く及ばないが考え方は間違っていない」
「どういうこと! 」
それまで黙っていたがもう我慢の限界。まったく思いつかないエルス王子と共に国王に詰め寄る。
「一体どういうことですか父上? 」
「ははは! ワンド王子が裏切ると読んでいたガムさんにある作戦を授けてもらった。最初に聞いた時は冗談だと思ったがワンドに不審な動きがあったのでな。もちろんエルスお前たちもだ。二人でコソコソやっていただろう? 」
全てお見通しだった。もちろん私はエルス様に言われるまま動いただけ。決して何か企んでいたのではない。
果たしてこんな言い訳通じるかしら?
「ガム? 」
「怖い思いをさせてしまいましたね。ですがこれもワンド王子を油断させるには仕方ないこと」
「ガム分かるように説明してよ」
「ですからワンド王子が今回の黒幕だと言うことです」
「それくらい分かる! 馬鹿にしてるの? 」
「いえ、ちなみに乱射王子はこちらの味方です」
「嘘でしょう? あんなに無茶苦茶撃ったのに? 」
「それは私から話そう」
国王が続ける。
「タレイ君だったかな。彼を使ったんだ」
「タレイ? 」
「ああ。ガムさんの忠告を受け動いたら案の定すでに計画を持ち出した後だった。この男は処刑を免れるために従うしかなかった。だがどうせ後で始末する気だろ? 」
「それは…… 」
「反論できないのが何よりの証拠」
「タレイ君に探ってもらった。だがさすがに口は堅い。ただ脱出する方法が思いついたとだけ漏らしたらしい」
「ああそうだ。その後国王が直々やって来てすべてを吐いたら自由にしてやると言ったので従ったのだ。タレイの奴の口が軽いのが幸いした」
乱射王子は銃口を向けたまま話すものだから気が気でない。
「まあこの銃もだからおもちゃという訳だ」
そう言って一発撃つ。
「では音だけ? 」
「ああ。実際に銃に詳しくなければ分からない」
「ワンドよ。お前は私のコレクションに興味を示さずにただの道具としてのみ見ていたものだからこの仕掛けに気付かなかった。お前の負けだ! さあ連れていけ! 」
両腕を掴まれ退場。乱射王子が入っていた牢に引っ立てられていく。
ある意味屈辱。悲惨なワンド王子。もちろん同情できない。
まあ悪だくみした罰は受けなければならない。だが国王にも非はある。次期国王を選ばずに兄弟を戦わせた。
このような事態が起きうることも予想できたこと。いくら伝統だとしても改善する必要がある。
サンスリン様だって危険な目にあっているのだから。私だって巻き込まれてしまった。
もちろん最初から分かっていてただ勝つために隠していたエルス王子にも問題がある。
結局国王の命令で全ての銃は中身を入れ替えられていた。だからワンド王子が仮に強行に出たとしても危険はない。
「さあどうする? 」
国王は二人の王子に委ねる。
「ではいっそのことカジノで勝った方を次期国王とすればいかがでしょうか? 」
「何を言うサンスリン! 」
エルス王子は分が悪いと思ったのか反対に回る。
「まあそれも良かろう。強運も国王の資質。だがまあそれでは全て運頼りになってしまう。国を任せるには心もとない。もっと良く話し合え! 」
まさかカジノで決めようなど前代未聞。サンスリン様は一体何を考えておられるのか。
サンスリン様への強い思いが薄れていく。やっぱりあの人何も考えていない。
二人で話し合った結果一年後に再戦することで話がまとまった。
「もう少し国王を続けるしかなさそうだな。今度こそ正々堂々と競い合って勝ち取って欲しいものだ」
国王は疲れたと部屋へ。
こうして王位継承争いは持ち越しとなった。
大がかりな捕り物を終え部屋へ。
ふう疲れた。もう冗談じゃないわ。これじゃあムーチャットと大差ないじゃない。
ナナチャットに嫌気がさすステーテルであった。
続く
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