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タレイのホラ話
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翌朝。
「いやあ。昨日は済まなかった。つい熱くなってしまった」
サンスリン様は私たちよりも遅くにお戻りになられた。だから下手な言い訳をせずに済んだのですが……
「まったくもう少しだったんだが惜しいよ。ステーテルにも見せてやりたかった」
あれから大勝したそうだ。だがそこまでで止めておけばいいものを続けるものだから結局全てを失う。
王家の金。民から巻き上げた金を戻してやる心優しいサンスリン様。心が広いと言うか未熟と言うか。
「それでこの方たちは? 」
「その…… 」
何と説明すればよいのか? 昨日の顛末を話すわけにもいかない。ガムの名誉もある。
「では私からお話いたします」
ガムに任せてみますか。
「こちらはサーチャット王国の第三王子。隣の者はその従者です」
まあ私とガムとの関係みたいなもの。間違ってはいない。
「昨夜私が歩いているとばったりお会いしまして。ステーテルの申し出でお招きいたす運びとなった次第です」
「そうかそうか。うん。では丁重にもてなそう」
ガムの主張は大方間違っていない。だが出会った場所が違う。
ガムはなぜあのような場所に行ったのか。答えは明白な気もする。
「ねえガム! 」
ダメ…… ガムのことをこれ以上追及するのは得策ではない。
「ホホホ…… ごきげんよう」
何とかごまかす。
「ではごゆっくり」
サンスリン様は行ってしまわれた。
あとに残ったのはガムと問題児二人。
さあ話を聞きますか。
「王子はなぜこの国に? 」
サ―チャット第三王子。
名前を忘れたのでここでは乱射王子とする。
ガムが命名したんだけどね。
「うーん。それは言いたくないのう…… 」
この期に及んでまだ隠そうとする。
「タレイ? 」
「もうしょうがないな。俺から言いますぜ」
乱射王子の口からは言いにくい何か。まあ大体予想できるけど……
「王子は追放されたんです」
「追放? あの素朴な女性と婚姻したのでは? 第一王子もそのようにおっしゃってましたが。違うのですか? 」
「はっはは! それがよ。王子様ったらまた豪快にぶっ放し待っちまってよ。国王から見放されたのさ」
「うむ。その通り」
まったく悪ぶれることのない乱射王子。これは反省してないわね。
「俺は王子様と切っても切れない縁があってよお供することになったのさ。まあ一年もすれば許してくれるんじゃねいかと俺は踏んでいる」
「そうだな。国王は常に厳しいお方」
「ではそれまで旅をお続けになるつもりですか? 」
「ああ。ゆっくり諸国を回り見聞を広めるつもりだ」
理由はどうであれ私たちと同じ旅をする者。旅仲間が増えるのは大歓迎。
協力し合うのが理想的だけどどうかしら?
「それでいつまでここに? 」
「うむ。明日一杯まではここでお世話になって次の国へ行くつもりだ」
随分と逞しくなられた。
これなら国王もお許しになるでしょう。
まあ関係ないけれど。
「そうだ知ってるか? 」
タレイは興味深い話をしてくれた。
「これは秘密だぜ。なんと空飛ぶ馬車があるんだとよ」
「ははは! 馬鹿じゃない? 」
ガムは取り合おうとしない。私も同感だけど。
「それが満更ホラでもないそうなんだ」
王子が続ける。
「何でもこの先のヤ―チャットではもう動いてると言うんだ。我も一度は乗って見たくてこうして震えているのだ」
それは単に銃を放ちたいだけでは? 禁断症状が現れている? これは危険な兆候。
「ガムはどう思う? 」
ああ、ついつい聞いちゃった。昨日から口も利いていなかったんだった。
「はい。荒唐無稽かと」
しっかり答えるのね。
「いやちょっと待て! 実際にあるんだから嘘でもなきゃホラでもないだろうが! 」
タレイは譲らない。
「そうカリカリするな。我は信じておるわ」
「まあいいでしょう。訂正します。信じるに値する情報であると」
タレイの情報は鵜呑みに出来ないが王子がそこまで言うのなら…… 私も興味がある。
「それから…… 」
王子たちとサ―チャットの思い出に花を咲かせる。
続く
「いやあ。昨日は済まなかった。つい熱くなってしまった」
サンスリン様は私たちよりも遅くにお戻りになられた。だから下手な言い訳をせずに済んだのですが……
「まったくもう少しだったんだが惜しいよ。ステーテルにも見せてやりたかった」
あれから大勝したそうだ。だがそこまでで止めておけばいいものを続けるものだから結局全てを失う。
王家の金。民から巻き上げた金を戻してやる心優しいサンスリン様。心が広いと言うか未熟と言うか。
「それでこの方たちは? 」
「その…… 」
何と説明すればよいのか? 昨日の顛末を話すわけにもいかない。ガムの名誉もある。
「では私からお話いたします」
ガムに任せてみますか。
「こちらはサーチャット王国の第三王子。隣の者はその従者です」
まあ私とガムとの関係みたいなもの。間違ってはいない。
「昨夜私が歩いているとばったりお会いしまして。ステーテルの申し出でお招きいたす運びとなった次第です」
「そうかそうか。うん。では丁重にもてなそう」
ガムの主張は大方間違っていない。だが出会った場所が違う。
ガムはなぜあのような場所に行ったのか。答えは明白な気もする。
「ねえガム! 」
ダメ…… ガムのことをこれ以上追及するのは得策ではない。
「ホホホ…… ごきげんよう」
何とかごまかす。
「ではごゆっくり」
サンスリン様は行ってしまわれた。
あとに残ったのはガムと問題児二人。
さあ話を聞きますか。
「王子はなぜこの国に? 」
サ―チャット第三王子。
名前を忘れたのでここでは乱射王子とする。
ガムが命名したんだけどね。
「うーん。それは言いたくないのう…… 」
この期に及んでまだ隠そうとする。
「タレイ? 」
「もうしょうがないな。俺から言いますぜ」
乱射王子の口からは言いにくい何か。まあ大体予想できるけど……
「王子は追放されたんです」
「追放? あの素朴な女性と婚姻したのでは? 第一王子もそのようにおっしゃってましたが。違うのですか? 」
「はっはは! それがよ。王子様ったらまた豪快にぶっ放し待っちまってよ。国王から見放されたのさ」
「うむ。その通り」
まったく悪ぶれることのない乱射王子。これは反省してないわね。
「俺は王子様と切っても切れない縁があってよお供することになったのさ。まあ一年もすれば許してくれるんじゃねいかと俺は踏んでいる」
「そうだな。国王は常に厳しいお方」
「ではそれまで旅をお続けになるつもりですか? 」
「ああ。ゆっくり諸国を回り見聞を広めるつもりだ」
理由はどうであれ私たちと同じ旅をする者。旅仲間が増えるのは大歓迎。
協力し合うのが理想的だけどどうかしら?
「それでいつまでここに? 」
「うむ。明日一杯まではここでお世話になって次の国へ行くつもりだ」
随分と逞しくなられた。
これなら国王もお許しになるでしょう。
まあ関係ないけれど。
「そうだ知ってるか? 」
タレイは興味深い話をしてくれた。
「これは秘密だぜ。なんと空飛ぶ馬車があるんだとよ」
「ははは! 馬鹿じゃない? 」
ガムは取り合おうとしない。私も同感だけど。
「それが満更ホラでもないそうなんだ」
王子が続ける。
「何でもこの先のヤ―チャットではもう動いてると言うんだ。我も一度は乗って見たくてこうして震えているのだ」
それは単に銃を放ちたいだけでは? 禁断症状が現れている? これは危険な兆候。
「ガムはどう思う? 」
ああ、ついつい聞いちゃった。昨日から口も利いていなかったんだった。
「はい。荒唐無稽かと」
しっかり答えるのね。
「いやちょっと待て! 実際にあるんだから嘘でもなきゃホラでもないだろうが! 」
タレイは譲らない。
「そうカリカリするな。我は信じておるわ」
「まあいいでしょう。訂正します。信じるに値する情報であると」
タレイの情報は鵜呑みに出来ないが王子がそこまで言うのなら…… 私も興味がある。
「それから…… 」
王子たちとサ―チャットの思い出に花を咲かせる。
続く
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