ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ

二廻歩

文字の大きさ
上 下
66 / 124

ガムの秘密 風変わりな夜のお店

しおりを挟む
二名様ご案内。

タレイの話ではお食事するところだとか。

本当に大丈夫? いまいち信用できないのよね。

「きゃあ! 」

入ってすぐ真っ暗闇。つまずきそうになる。

「大丈夫だって」

歩きだすとすぐに眩しいくらいの光が店内を照らす。

目によろしくない光線と耳によろしくない大音量の音楽。

ああ、くらくら。目まいがする。苦手なのよね……


「こっちだ! 」

店内は満席。

皆お酒やたばこを楽しんでいる。

ぎゃあ!
ぎゃあ!

下品な叫び声。集団で騒いでいるのかとても不気味。

まるで怪鳥ジャスラのようだ。

声の主は男に入れあげている年配女性。

ここは一体?

お洒落なレストラン? でも何か変なのよね。

女性一人に対して男性が囲むように四人。隣も女性二人に対して男性が三人。その隣も女性三人にして男性五人。

こんな風におかしな状況が続く。なぜかしら……

男の方はずいぶんと若そう。

女性は若い人もいれば年配の方もいる。バラバラだ。


「いらっしゃい。今はちょっと…… 」

混んでいるらしくもう少しかかるそうだ。

「ああ。奥の席空いてる? 」

「すみません。今は…… 」

「ああ気にするな」

タレイは強引に歩き始めた。

「ああ…… お待ちください! 」

制止を振り切って店内の奥に消えていくタレイ。私も仕方なくついて行く。


ガヤガヤ
ガヤガヤ

「シャンパン一つ」

「こっちも! 」

「追加でこっちもお願い! 」

あらあら随分盛況だこと。

奥に進むと部屋が二つ。

あれ? どっち?

部屋は二つあり中に入ったのかタレイの姿が見えない。

まずい…… もう!

仕方がなく近い方へ。


コンコン
コンコン

「どうぞ! 」

ああ。良かった。

タレイ? は見当たらない。間違えた?

えっ? でも……

部屋には女性一人と男四人が座って談笑している。

「うふふふ! もっともっと! 」

甘えた声ではしゃぐ女性。

女性は両隣の男に順に抱き着く。

「ああ王子様! 」

「抑えて抑えて。ははは! 」

お酒のせいなのか女性はずいぶんとご機嫌。

「もう何? お酒? まーだ? 」

目が合う。

えっええ?

「ガム…… ガム? 」

ガム発見。


「あなたガムよね? 」

「人違いでです」

「ガム! ガムでしょう? 顔を良く見せて! 」

「ちょっと! 」

「おいお前! 迷惑だろうが! 何なんだお前は?

髭面の渋い王子様風がすごむ。

「追い出すぞ手伝え! 」

酒とたばこのせいで怖いもの知らずの小っちゃな王子様もどきに腕を掴まれる。

「ほら出て行け! へへへ…… 」

「ちょっと止めろ! 何をやっているお前ら! 」

焦った残りの偽王子風の二人組が必死に止める。

「暴力は良くないぞ! 」

これはまずい。どうしましょう? トラブル発生。

「ウルセ―! 」
 
「だから止めろって! 」

喚き散らす男たち。混乱状態。

ああまずいわ。ガムお願い!

「ガム! 助けて! 」

「何をやってるんですか! 」

いつも守ってくれたガム。お付の者としてド・ラボーに何かがあれば反射的に助けてしまう。

たとえ自分が不利なるとしても。それがガムの役割。使命に忠実なガム。

ガムは仕方なく王子風の二人から引き離してくれた。

「さあ行きますよ! 」

私の腕を掴んで外へ。

男たちは店の外まで追い駆けることはなかった。何とか危機から脱することができた。


「もうつけてたんですね? 」

「へえ? 」

「だから私の後をつけたんでしょう? 」

「ううん。偶然。いや見かけたのは確かだけど…… 」

「ほらやっぱり! 」

「でもそれも偶然で…… 」

「嘘ばっかり! 」

「ガム…… 」

「ステーテル! もういいです! 」

二人の関係にひびが入る。

固い絆で結ばれてきた二人なのに……

あーあ。

ガムは本気で怒っているようだ。話しかけても何も答えてくれない。

嫌な空気になる。


「おーい! 」

タレイの声。

そうだった。タレイの後を追ってきたんだった。

「どうした? 帰るのか? 」

タレイはお構いなし。

「そうだ。紹介してなかったな。こちらサーチャットの第三王子。会ったことあるだろ? 」

どうしてここに王子が? まさかあの店は本当に王子が?

「いやあ。ステーテル久しぶり。元気そうだね」

本物の王子の出現で余計に混乱。

話を整理する前に戻るのが先決だ。

ああ! サンスリン様を置いてきてしまった。

とりあえず王宮に戻るとしましょう。

馬車を手配してもらい夜遅くに戻る。


これ以上混乱するのは避けたい。話は明日にして今日は寝るとしましょう。

あー疲れた。おやすみなさい。


              続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【完結】【35万pt感謝】転生したらお飾りにもならない王妃のようなので自由にやらせていただきます

宇水涼麻
恋愛
王妃レイジーナは出産を期に入れ替わった。現世の知識と前世の記憶を持ったレイジーナは王子を産む道具である現状の脱却に奮闘する。 さらには息子に殺される運命から逃れられるのか。 中世ヨーロッパ風異世界転生。

【完結】婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?

冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。 オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。 だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。 その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・ 「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」 「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

将来を誓い合った王子様は聖女と結ばれるそうです

きぬがやあきら
恋愛
「聖女になれなかったなりそこない。こんなところまで追って来るとはな。そんなに俺を忘れられないなら、一度くらい抱いてやろうか?」 5歳のオリヴィエは、神殿で出会ったアルディアの皇太子、ルーカスと恋に落ちた。アルディア王国では、皇太子が代々聖女を妻に迎える慣わしだ。しかし、13歳の選別式を迎えたオリヴィエは、聖女を落選してしまった。 その上盲目の知恵者オルガノに、若くして命を落とすと予言されたオリヴィエは、せめてルーカスの傍にいたいと、ルーカスが団長を務める聖騎士への道へと足を踏み入れる。しかし、やっとの思いで再開したルーカスは、昔の約束を忘れてしまったのではと錯覚するほど冷たい対応で――?

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

処理中です...