ド・ラボーの地位を得ましたのでさっそく王子様を奪って見せます! 理想の王子様を求めて世界へ

二廻歩

文字の大きさ
上 下
51 / 124

ムーチャットの愉快な仲間たち

しおりを挟む
ぎゃあ!
ぎゃあ!

奇声を上げた召喚獣。翼を羽ばたかせ今にも飛びかかろうとしている。

「わ…… 分かった! 国王には手を出さない。だからその化け物を何とかしてくれ! 」

「ふふふ…… もう遅い…… さあやるのです! 」

「止めてくれ! お願いだ! 俺たちが悪かった! 」

隠れ家を襲撃し国王を亡き者にしようとした蛮行は決して許されるものではない。

「もう遅い。遅すぎるんです。ではごきげんよう」

切れたがガムを誰も止めることはできない。

「そんな…… 」

男たちは一目散に逃げだした。

我先にと倒れた者を踏みつける始末。何と醜いことでしょう。

五分もしないであがった土煙が消え、辺りは静寂に包まれた。


「ガム…… 」

「ははは! ああ! おかしい」

「ガム? 」

「召喚獣って何? いる訳ないじゃない! 」

「えっ? 」

「出任せなのに信じちゃうんだから。本当におかしい」

「出任せって? 」

「この子は召喚獣なんかじゃない。ペガサスなんですよステーテル。餌をあげてるうちに親しくなりまして。
ステーテルにはまだ紹介してなかったですね」

「ふふふ…… ははは…… 」

ガムが笑うのでつい笑ってしまう。

「もうガムったら! 人騒がせなんだから」

どこか怖くもあり頼りにもなる。

ガムの演技力とペガサスの鳴き声で相手を震え上がらせた。

ガムの作戦勝ち。

国王を奪還。


「良いか二人とも以後は気をつけるように」

せっかく助けてあげたのにお礼の一つもせず説教。

確かに後をつけられたことに気が付かず誘ってしまった落ち度はある。

でもそれでも王の命を救ったのは私たち。特にガムだけど。然るべき何かがあってもいいじゃない。


隠れ家は焼き討ちに遭い新たな住処を見つけることに。

人は少ない方がいい。

国王と王女に忠実な部下三名。執事とメイドが同行。

とりあえず仮住まいに魔女のお婆さんの家へ。

「まったく困ったわね。人間を入れるなんて何年ぶりだか」

「人間ではなく国王です! 尊い者です」

「それはもちろん…… 」

国王とも旧知の仲。

良くお邪魔をしていた手前断れないらしく嫌々ながら場所を提供する。

「ではこれで」

森の前で別れる。

魔女の家は森の中と言われているがどこかまでかは知られていない。だからこれでいい。

また後をつけられ家を突き止められたら終わりだ。これ以上の失態は晒せない。

「では行きましょうか」

さあこれからどうしましょう?

考えていても始まらない。

西の川へ。


混乱で食事も睡眠も取れなかった。

お肌にも良くない。

でも仕方ない。非常事態ですものね。

歩き続けて一時間近くになる。もうずいぶん明るくなっている。

「眠いなあ…… 」

「我慢してください。ステーテル」

「でもお腹も空いたし…… 」

この辺には食べ物は見当たらない。レストランも宿もない。困ってしまう。

西の川の上流。

ニッシ―がどこにいるか分からないので川の流れに沿って歩く。

おーい!
おーい!

ちっとも反応しない。

まさか釣れるはずもない。

「ねえガム。どうしましょう」

「そう言われましても…… 」

困り顔。

さすがのガムもこの難題にはお手上げ。

「そうだ。召喚獣を使うのはどう? 刺激を与えればそのうち姿を見せると思うの」

「はい? 」

「だからガムが召喚した獣で…… 」

「あれはペガサスだって言いましたよね? 懐いたのである程度はコントロールできると思いますが」

「なら早くお願い! 」

「もうどこかに行ってしまいましたよ。あの時はたまたま近くにいたので一芝居打ちましたが今回は同行してないので無理です。ほらどこにもいない」

「確かに…… ねえ、本当に召喚できるんでしょう? 」

「どうでしょう…… 」

断言は避けるガム。これ以上聴いても無駄。


「ラララ…… 」

急に歌いだしたガム。頭でも強く打ち付けたとしたら大変だ。

「ほらステーテルも」

「どうしたと言うのガム? 」

「この展開だと歌声に誘われてニッシ―が現れるかもしれません」

「まさか…… 」

「試す価値はあると思います」

しょうがないなあ。付き合うか。


「川に住むニッシ―。
どこにいるの?
ここかしら?
お願い出ておいで
怖がらなくていい。
抱きしめてあげるから。ららら…… 」


「そんな歌ありましたか? 」

「ううん。今、適当に作ってみた」

ニッシ―が現れるまで繰り返す。

「ちょっと…… あまりにも無茶苦茶で耳にも良くありません」

ガムの戯言は無視。歌いながら下流に向かって歩き出す。

「耳が! 耳が! 止めて! 」

ガムの訴えは聞こえない。

「もうガムも手伝ってよね! 」

「しかし…… あまりにも危険です」

耳を塞ぐガム。

「そんなに嫌だったの? 」

「とにかく他の歌でお願いします」

「ではニ―チャットの歌でも」

「もう! 」

歌い始めるとすぐ反応があった。

川の流れる音に混じって獣の鳴き声。

どこ?

音のする方向には……

巨大な鳥。

怪鳥の姿が。

                 続く                      続く
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【コミカライズ2月28日引き下げ予定】実は白い結婚でしたの。元悪役令嬢は未亡人になったので今度こそ推しを見守りたい。

氷雨そら
恋愛
悪役令嬢だと気がついたのは、断罪直後。 私は、五十も年上の辺境伯に嫁いだのだった。 「でも、白い結婚だったのよね……」 奥様を愛していた辺境伯に、孫のように可愛がられた私は、彼の亡き後、王都へと戻ってきていた。 全ては、乙女ゲームの推しを遠くから眺めるため。 一途な年下枠ヒーローに、元悪役令嬢は溺愛される。 断罪に引き続き、私に拒否権はない……たぶん。

【完結】皇太子の愛人が懐妊した事を、お妃様は結婚式の一週間後に知りました。皇太子様はお妃様を愛するつもりは無いようです。

五月ふう
恋愛
 リックストン国皇太子ポール・リックストンの部屋。 「マティア。僕は一生、君を愛するつもりはない。」  今日は結婚式前夜。婚約者のポールの声が部屋に響き渡る。 「そう……。」  マティアは小さく笑みを浮かべ、ゆっくりとソファーに身を預けた。    明日、ポールの花嫁になるはずの彼女の名前はマティア・ドントール。ドントール国第一王女。21歳。  リッカルド国とドントール国の和平のために、マティアはこの国に嫁いできた。ポールとの結婚は政略的なもの。彼らの意志は一切介入していない。 「どんなことがあっても、僕は君を王妃とは認めない。」  ポールはマティアを憎しみを込めた目でマティアを見つめる。美しい黒髪に青い瞳。ドントール国の宝石と評されるマティア。 「私が……ずっと貴方を好きだったと知っても、妻として認めてくれないの……?」 「ちっ……」  ポールは顔をしかめて舌打ちをした。   「……だからどうした。幼いころのくだらない感情に……今更意味はない。」  ポールは険しい顔でマティアを睨みつける。銀色の髪に赤い瞳のポール。マティアにとってポールは大切な初恋の相手。 だが、ポールにはマティアを愛することはできない理由があった。 二人の結婚式が行われた一週間後、マティアは衝撃の事実を知ることになる。 「サラが懐妊したですって‥‥‥!?」

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

婚約者が私以外の人と勝手に結婚したので黙って逃げてやりました〜某国の王子と珍獣ミミルキーを愛でます〜

平川
恋愛
侯爵家の莫大な借金を黒字に塗り替え事業を成功させ続ける才女コリーン。 だが愛する婚約者の為にと寝る間を惜しむほど侯爵家を支えてきたのにも関わらず知らぬ間に裏切られた彼女は一人、誰にも何も告げずに屋敷を飛び出した。 流れ流れて辿り着いたのは獣人が治めるバムダ王国。珍獣ミミルキーが生息するマサラヤマン島でこの国の第一王子ウィンダムに偶然出会い、強引に王宮に連れ去られミミルキーの生態調査に参加する事に!? 魔法使いのウィンロードである王子に溺愛され珍獣に癒されたコリーンは少しずつ自分を取り戻していく。 そして追い掛けて来た元婚約者に対して少女であった彼女が最後に出した答えとは…? 完結済全6話

【完】愛人に王妃の座を奪い取られました。

112
恋愛
クインツ国の王妃アンは、王レイナルドの命を受け廃妃となった。 愛人であったリディア嬢が新しい王妃となり、アンはその日のうちに王宮を出ていく。 実家の伯爵家の屋敷へ帰るが、継母のダーナによって身を寄せることも敵わない。 アンは動じることなく、継母に一つの提案をする。 「私に娼館を紹介してください」 娼婦になると思った継母は喜んでアンを娼館へと送り出して──

あなたが「消えてくれたらいいのに」と言ったから

ちくわぶ(まるどらむぎ)
恋愛
「消えてくれたらいいのに」 結婚式を終えたばかりの新郎の呟きに妻となった王女は…… 短いお話です。 新郎→のち王女に視点を変えての数話予定。 4/16 一話目訂正しました。『一人娘』→『第一王女』

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。

鶯埜 餡
恋愛
 ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。  しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが

僕は君を思うと吐き気がする

月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

処理中です...